まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

M&A-FA起用の問題点

2011-03-06 12:02:05 | M&A

○ 新日鉄・住金の合併検討が大きく報道されています。大企業ですし、国内のみならず海外にも多くの連結子会社等を有しているでしょうから、日本国内の子会社のみならず海外子会社の再編・合併などの検討も必要ですね。合併検討と報道されていますが、方式として合併がよいのか株式移転が良いか、これからいろいろ検討されると思います。

○ 報道によれば、財務アドバイザー(Financial Adviser=FA)として、報道直後から、各証券会社が両社に営業攻勢をかけ、結局各4社計8社が起用されるようですね。新日鉄は、三菱UFJモルガン・スタンレー、みずほ、メリルリンチ日本、JPモルガン、一方住金は、ゴールドマン・サックス、日興コーディアル、大和証券キャピタル・マーケット、ドイツ証券ということで大変ですね。新日鉄・住金にとっては、この4者の棲み分け、分担、コントロールも大変です。これだけ大きな再編・合併ですから、大作業が発生しますし、その雑用の一部、FAを起用してやってもらうのも良いと思いますが、まあ4社というのはちょっとやり過ぎでしょうね、2社ぐらいで十分だと思います。

○ FAの機能については、200793日のブログ、M&A-FAと弁護士の機能 をご参照ください。FAの機能は雑用係です。例えば、両者の合併に関する会社法の手続きは弁護士をアドバイザーにして、当事会社で行わざるを得ません。独禁法の審査に必要な製品毎の詳細マーケット規模及びそのシェアーを示すデータの整理・加工等も当然新日鉄・住金+日本や世界の鉄鋼連盟等の資料ですね。FAの保有データとは雲泥の差です。最大の作業である、合併による財務諸表の統合(存続会社の受入記帳等)は当然当事会社しかできません。人事制度・グループ人事制度の統合、退職給付債務・厚生年金基金の統合等については、FAは殆ど知識すら持っていません。合併契約、あるいは承認総会が終了したら、お金だけもらって去って行きますね。

○ だいぶ横道にそれましたが、FA起用の問題点を思いつくままにいくつか書いてみましょう。

1)  企業評価・合併比率算定両社とも上場企業ですので株価があります。これを見れば、大体見当がつきます。ということで、企業比較法、とかDCF法等は、かなり自由に数字を作れる算定方式ですが、最初から結論・落としどころが分かっていますので、FAは、妥結するように作るんですねそれをあたかも、公正・妥当な評価であるように、一杯Excel等を駆使して装いますね。

2)  意見書(Fairness Opinion)の作成:総会決議の事前開示書類には、「合併対価の相当性に関する事項・参考となるべき事項(会社法施行規則1821)」が含まれます。即ち、上記の合併比率算定理由書と、それが相当であるという意見書です。意見書の結論は簡単です。「弊社は、本意見書の日付現在において、本合併比率は貴社株主にとって財務的見地から公正なものであると考えます」などと言うのが意見書の最後の文章です。この意見書はFAが作成します。自分から起用してくれと新日鉄・住金に営業をかけて、お金(報酬)も顧客企業からもらいます。最初から結論はわかりきっています。何がFairness Opinionですかね。こんな信用できないUnfair な意見書はありません。欺瞞に満ちています。ただの「やらせ」です。

3)  秘密保持義務違反:新日鉄は、例えばブラジルで高炉を建設するとか・中止するとかは、現地のウジミナス等と契約を結んでいます。膨大な重要契約を結んでいますが、これらの契約には、殆ど守秘義務条項がある筈ですね。新日鉄は、重要な契約の内容の一部はFAに開示するでしょうね。これは明らかに新日鉄の守秘義務の契約違反です。またFAとのアドバイザリー契約の中には当然守秘義務条項があります、相手のFAや住金とも守秘義務契約は結ぶかもしれません。しかし、守秘義務契約を結んだところには開示して良いとは書いていませんね。契約相手方の書面による事前同意が必要等と記載されている筈です。でも、そんな同意をいちいちとりますか?取ってないですよね。FAが新日鉄から入手し加工した秘密情報・資料は、FAを通じて住金に開示されます。「合併検討」という大義名分は守秘義務違反を免責してくれません。みんなそろって守秘義務違反というのがM&Aなのです。

4) 個人情報保護法違反従業員の個人情報は、当然個人情報保護法の対象で す。本人の同意無くして個人情報を第三者に提供してはいけません。例外としては法令に基づく場合、生命・身体・財産保護の場合、国などに協力する場合(事業者が税務署に顧客情報や個人への支払調書を出していますね)。FA、相手方のFA経由、相手方に個人を特定出来る情報(人事組織図等=個人名が記載されていなくても他の情報と照合すれば容易に特定できる場合を含む)を、本人の同意無く提供するのは、個人情報保護法違反です。新日鉄・FA/FA・住金間で人事・組織に関する情報交換をするだろうと思いますが、これは個人情報保護法違反に該当するでしょうね。

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