まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

取締役による株主の指名―授権資本制度

2008-01-15 00:20:09 | 商事法務

     取締役等の役員は株主総会で選任されますね。しかし、実質は違いますね。ケースとしては、①会社のオーナー、あるいは持株比率は相当低下しても、創業者一族が支配し、経営者を自ら勤めるなり、自分の息のかかった人を指名して、総会で選任してもらうケース。②大企業など株主が分散している場合は、現在の会長・社長等が後継者として、代表取締役を指名し、また新任取締役を実質指名し、形式的に総会で選任。代表取締役については、総会直後の取締役会で選定しますね。ともあれ、建前は株主が総会で選任します。

○ 一方、会社法では授権株式制度が採用されています1132項という、まあ、ご丁寧というか、どうでもよいような条項に続いて3項では以下のように規定されています。(設立時は373項)

2項 「定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。」

3項 「定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。」

     (会社法上の)公開会社では、定款で定めれば(定款変更の特別決議で承認を受ければ)、発行済株式総数の4倍まで発行可能株式総数を定めることができ、その範囲内では、取締役会の決議で発行が出来ますね。但し、特に有利な価額で発行する場合は除きますけどね。(株式全部譲渡制限会社では、株主割当の場合だけ、定款にその定めがあれば、取締役会で決定出来ますが、それ以外の例えば第三者割当の場合等は、総会特別決議ですね。)

     何故4倍なのでしょう?(*) 多すぎますね。これでは、取締役が第三者割当で株主を選べますね。株主が、取締役を選任するという大原則をひっくり返せますね。これはちょっとおかしいのではないでしょうか。

       既存の株主にしてみれば保有株の希釈化も甚だしい訳ですね。1/3で拒否権を保有している株主も、拒否権を失います(まあ、経営陣も大株主には事前相談するのが常識ですが、経営陣と一部株主が対立している場合もありますからね)。

       昔から「4倍」という数字に慣れて鈍感になってしまっていますね。この数字を疑う必要があるのではないでしょうか。持ち合い時代の物言わぬ株主時代からの悪弊が続いています。既存株主は、ある日突然持ち株比率が1/4になると言うことが起こりうるわけですね。

       やはり、授権資本=発行可能株式総数は、発行済株式数の1.5倍ぐらいにして欲しいと思います。

○ 先日の日経新聞スイッチオン・マンデーに、英国は全株主に新株引受権を与える割当が基本。米ニューヨーク証券取引所は、発行済株式数の20%を超す新株発行は株主総会の承認を得るよう上場規則で定めていると書いてありました。

*4倍となったのは、戦前の株金分割払制度が原因だと思います。

この授権資本制度は、米国の制度をまねて昭和25年の商法改正で導入されたらしいですね。それまでは、株金分割払込の制度だったとの事。その制度では、株式を発行するときには、株金の1/4以上を払い込めばよい。残りの未払いの株金は、取締役が払込を催告したときに払い込めば良かったと言うことです。しかし、払込を求められたときには金の無い株主とか、業績が悪化しているときには払い込みに応じない株主がいるため、うまく機能しなかったため、昭和23年に株金全額を払い込む制度にしたが、昭和25年に米国の制度を見習って導入したと言うことです。

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