まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

計算書類、財務諸表と内部統制の監査

2008-01-08 00:32:45 | 商事法務

【計算書類の監査等】

       日本の会社法には、計算書類についての規定があります。会社法第5章ですね。431条に従い、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従って作成しなければなりません。そして、作成された計算書類は、監査役の監査を受け、取締役会の承認を得て、定時総会で承認を受けるのが原則ですね(438条2項)。「この承認は、計算が正当であることを承認する総会の決議である」(神田 会社法7版P226)と学者は言われていますが、株主が帳簿閲覧権を行使して調べる訳でもなく、経営成績・財政状態の結果表示の書類である計算書類だけを見て「正当である」等とどうして言えるのでしょう? 書類作成過程で不正経理をされていても、株主に分かる筈もないのに、どうして株主が「正当であること」を認めて承認するのか理解出来ませんね。後から不正経理等時々出てきますよね。これが正当だったのですか?れについては、先に(2007/6/1のBlog↓)「計算書類承認の意味」として記載しました。

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2007/06/post_4884.html

       総会の承認が原則ですが、上場企業等では承認は不要で、内容を報告するだけですね。会計監査人設置会社ですからね(439条)。会計監査人設置会社の場合は、会計監査人・監査役の適法意見が揃えば、取締役会の承認でファイナルです(4363項)

       米国のDelawareNew York会社法等では、計算書類・財務諸表に関する規定はなさそうです。米国では、「計算書類の承認」は総会の決議事項ではありませんね。勿論連邦証券取引法では、公開企業に作成が義務化されおり、Annual Report 10-K, Quarterly Report 10-Q,Current Report 8-K等で詳細・正確・公正な作成が要求され、きちんとした開示が求められますけれども。(模範事業会社法では、16.20条にFINANCIAL STATEMENTS FOR SHAREHOLDERSが規定されていますけれども)

【財務諸表・内部統制の監査等】

       内部統制の会社法の規定は362条(委員会設置会社は41611号)ですね。36246号では、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備を求めています。これを受けて施行規則100条に、求められる体制の規定がされています。

       金融商品取引法の内部統制報告の規定は、24条の44財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価の規定です。即ち、「有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、有価証券の発行者である会社は、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。」としています。

       内部統制監査と財務諸表監査の関係

更に、内部統制の監査を監査人に要求しています。内部統制監査は、原則として同一の監査人により、財務諸表監査と一体となって行われることとされています。監査チームを同一として、内部統制監査報告書財務諸表監査報告書とを一つに統合した「統合監査報告書」とすることとされています。財務諸表は、数字という切り口から会社全体をみるものですし、内部統制は、体制整備という切り口から会社全体及び重要な業務を見ますね。監査証拠と内部統制監査の証拠は、相互に密接に関連しますし、監査業務の効率化とコスト低減からも同一の会計監査人が担当する方が良いということらしいですね。

=内部統制監査迄は過大要求=

・ しかし、私には腑に落ちない点があります。日本の監査法人は、会社法監査、金融商品取引法の財務諸表監査と内部統制監査と三重の監査を行う事になってしまいました。財務諸表の監査までは確かに監査法人が行っても良いと思いますが、内部統制監査まで行うのは過大ではないでしょうか?

・ 金融商品取引法では、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価を経営陣が行い、その監査を監査法人が行います。これって実質は、財務諸表の監査だけではないですよね。それ以上の要求ですね。独立監査人は、内部統制の監査も行わなければなりません。独立監査人の業務が、計算書類・財務諸表監査を越えて、内部統制監査にまで拡大しています。内部統制は、単に財務諸表の監査だけでなく、会社のあらゆる業務が適正に行われるためのプロセスコントロールですね。事業の内容まで十分に踏み込まないとこんな監査まで出来ません。会計士が、そう言った監査を行うプロでしょうか?知見・経験・ノウハウをどれだけ持っているのでしょうか?またそういった分野にまで踏み込むべきでしょうか?今の監査法人は大変ですね。

・ こんなに一挙に業務が拡大した原因は、金融商品取引法ですが、もとを正せば米国SOX法の猿まねですね。企業不祥事は昔からあります。最近のカネボウ事件や西武鉄道等だけではありません。法務省・金融庁や学者が、日米会社法、日米の証券取引法、SECルール、企業文化・風土、慣行、規制の実態・あり方、整合性、全体像まで十分に検討を重ねて、内部統制を日本に(少し手直ししていますが)導入したとは到底思えませんね。日本のこの猿まね体質は止めて欲しいと思いますね。

コメント
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