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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

陽子線治療の最前線を聴く

2015-07-05 22:21:53 | 大学公開講座
 癌の先進医療として名高い「陽子線治療」が北大病院に導入されたと聞いていたが、そこではさらに進んだ陽子線医療技術の開発が行われていることを知った。一般市民向けに優しく説いてくれた講師の話に聞き入った。

 
 本年度、私にとっては3本目となる北大の全学企画による公開講座「人と環境が抱える難問~その解決の最前線~」が始まった。
 7月2日(木)夜、その第1講目が行われた。テーマは「癌に対する動体追跡陽子線治療」という講義題で、医学研究科の白土博樹教授が務められた。
 調べてみると、白土氏は北大の放射線医学分野のリーダーを務めておられる方のようである。

               

 私が理解したことは以下の通りであるが、医学的知識も放射線の知識も全くない私の理解であるから、誤解している点が多いかもしれないということを先にお断りしておきたい。

 白土氏はまず、数ある癌の治療法の中での放射線医療の現状について次のように語った。それは「科学的にものを考えることができるようになっており、経験や技に頼ることが手術より少ない」と語ったことが印象的だった。つまり、手術の場合は担当する医師によって成否が分かれる場合があると指摘したと私は理解した。

 次いで、これまでの放射線治療と陽子線治療の違いについては、状来の放射線治療が必要のない部位まで放射線が当てられてしまう危険が大きかったが、陽子線は必要な部位を狙って当てることのできる性質を持っているということだった。つまり治療によって外部被曝などの危険を避けることができるということだ。

            

 さて、そうなると人間の身体の内部に存する内臓(癌の部位)は呼吸や生理現象によって絶えず動くために、その狙いを定めることがとても困難なことらしい。
 そこで北大の放射線教室が開発したのが「動体追跡陽子線治療」という技術だということだ。
 「動体追跡陽子線治療」とは、二つの技術から成っているという。一つは「陽子線スポットスキャン技術」、そしてもう一つが「動体追跡照射技術」だそうだ。
 「陽子線スポットスキャン技術」とは、従来は癌の形に合わせて一挙に照射していたものを、より微細な陽子線にして細かく分けて癌に照射する最先端技術だそうだ。
 次に「動体追跡照射技術」だが、癌の部位が内臓に付着していることから、呼吸や生理現象によって部位が絶えず動いている状態の中で癌の部位だけに陽子線を照射することはとても難しい技術だということだ。その難題を北大の放射線教室では「金(gold)の球(マーカー)」を使用することで、癌の位置を可視化することに成功し、その動きを計算して予測し、照射するという方法を開発したということだ。

 こうした二つの技術は、世界初の技術として放射線医療の世界では高く評価され、京大やアメリカの有名病院での導入も決まっているとのことだった。

 講義の要旨を粗くまとめると以上のようになるが、ともかく私たちの身近なところで世界最先端の癌医療の技術が開発され、それが実用化されているというお話は頼もしいお話であった。
 癌は罹患しないことに越したことないが、高齢化時代を迎え現在60歳代の人の20年後に罹患するリスクは35%で、死亡するリスクは15%だという統計も講義では示された。
 もし、罹患した場合には、癌の部位にもよるが「陽子線治療」は有力な対処方法だと理解することができた。