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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

「シャルリ・エブド」について考える

2015-07-27 22:59:17 | 大学公開講座
 「シャルリ・エブド」と聞いて、いったい何人の人が「あゝ、あの事件かぁ」と思い出すだろうか? 私も最初に耳にした時「何それ?」という感じだった。それほどニュースは次々と過去のものへと流されていく。改めて「シャルリ・エブド」事件を考えた…。 

 北大の法学研究科が主催する講座「表現の自由と秩序」(4回シリーズ)が始まった。
 その第1回講座が7月23日(木)夜にあった。実はこの日は以前から受講していた「人と環境が抱える難問~その解決の最前線~」の最終第8回講座とダブっていた。悩んだ末に、こちらの講座を選択したのだった。

 その第1回講座のテーマが「『シャルリ・エブド』と表現の自由を考える ~移民、風刺、宗教~」というテーマで、法学研究科の吉田徹准教授が講師を務めた。

               

 さて、シャルリ・エブドだが、フランスのパリにある風刺画を主とする週刊誌を発行する「シャルリ・エブド」社が今年1月、イスラム教徒の襲撃によって社員12人が死亡したのをはじめ、多くの負傷者を出した事件である。そして、このことに抗議するため、あるいは「表現の自由」を守るためにと、欧州各国の首脳をはじめ世界各国で340万人もの人たちがデモに集まったことでも注目された。

 この事件について、朝日新聞は社説で「テロを非難しつつも、挑発的とも言える風刺画の掲載は、部数を増やす話題づくりの側面がうかがえる」と、シャルリ・エブド側のやり方にやや批判的な論調で伝えたという。確かに、シャルリ・エブドの風刺画を見てみたが、私には正視に耐えられないようなものも散見され、朝日の見方は日本人の一般的な見方かな、とも思われた。

 しかし、吉田准教授は、コトはそれほど単純ではないとした。
 この辺りからは私の理解力、表現力の限界を超えはじめた。したがって、以下は私が吉田准教授の話から理解できたこと、私が伝えられることを私の責任によって記すことをお断りしておきたい。

 まず、フランスにおける「表現の自由」については、フランス革命に遡って「人間と市民の権利の宣言」において確立した権利であり、他者に危害を加えることを目的としない限りで、例外なく認めるべきだというのがフランス社会のルールとなっているとする。したがって、シャルリ・エブドの表現も認めるべきだということになるようだ。
 実際にヨーロッパにおいては、日本などとは違いカリカチュアの文化が定着しているようである。

 さて、一方でなぜフランスにおいてこのような事件が起きたのかということについての考察である。(フランスではシャルリ・エブド事件の翌日にも警官1人と市民6名が殺害される事件が起こっている)
 フランスは移民に対して、北欧やイギリスのような多文化主義政策はとらず、宗教を基準とした社会制度は認めない「ライシテ(政教分離)」の原理を国是としている国だという。この考え方は、宗教だけではなく、出自や人種を問わず、法の下では万人は平等でなければならないとする考え方を反映したものだという。
 しかし、現実はフランスにおいても宗教や人種による実質的な差別が存在することが現実だともいう。ムスリムを含む移民系のマイノリティが教育や就業機会に恵まれず。社会的な敗者となっていることも事実のようだ。
 
 こうした状況もふまえながら、吉田氏は、「シャルリ・エブド」の事件、多発するジハード、「アラブの春」の失敗、等々を受けて、次のように今の世界を概観する。
 グローバル化と近代化は、世界的な「世俗化」をもたらし、「宗教」の影響力は後退したかに見えたが、「ポスト世俗化」と言われる今、状況は複雑化しているという。
 吉田氏はここで社会学者のベックの言説を紹介した。それは「近代化が進み、伝統から切り離されて個人が解放されていくほどに、人々は自らのアイディンティティを自らの手で選択、創造していかなければならない状況に追い込まれている」という。そうした状況の中で、宗教的なものへの希求も強まってきていると分析する。

 「グローバル・ジハード」「ローン・ウルフ」「ホームグロウン・テロ」…、テロは世界各地に広がり、個人が、どこででもテロを起こしている状況に対して、有効な手立てを打ち立てられていないのが現実ではないだろうか?
 一般的には、テロを根絶するためには司法と軍事という短期的・直接的な手段に加えて、社会経済の発展による世俗化という長期的・間接的手段を用いるべきとする考え方が主流だという。
 しかし、吉田氏はその考え方にも素直には賛成しかねる、という考え方のように私には映った…。(それは、状況は複雑化していて解決方法は簡単ではない、という吉田氏流の警告とも受け取れた)

 う~ん。今回のレポは、苦労した割にはもう一つまとまりのないレポになってしまった…。