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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

人間はどこまで自然に手を出せるのか

2015-07-14 21:56:08 | 大学公開講座
 なかなか興味深いテーマだった…。しかし、結論としては、人間と自然がどこで折り合いをつけるのか、その時々に真剣に考え・対処していく必要がある、ということだった。北大総合博物館のセミナーを聴いた。 

 北大総合博物館の土曜市民セミナーが始まった。このセミナーは、博物館学の今を市民向けに解説してくれる講座として人気が高い。私も数年前から受講しているが、今年度のセミナーが先日7月11日から始まり、これから毎月来年3月まで計9回の講座が予定されている。
 北大の総合博物館は現在リニューアル改修中である。いつもは博物館内での講義なのだが、今年度は近くの人文科学研究棟での講義となった。

 第1回は「利尻・礼文の植物保全研究 ~人間はどこまで自然に手を出せるのか ~」というテーマで、植物体系学の高橋秀樹教授が講義した。

          
          ※ 講義中の高橋教授です。写真は今回のではなく博物館での講義の様子です。

 礼文島にはレブンアツモリソウ、利尻島にはリシリヒナゲシという絶滅が心配される植物種があるという。
 レブンアツモリソウは国の特定国内希少野生動植物種(RDB)の絶滅危惧種IB類に分類されている。
 一方のリシリヒナゲシの方は、北海道の希少野生動植物種に指定されているとのことで、若干の差異はあるようである。

 レブンアツモリソウは、礼文島にだけ自生する野生のランで、花弁が淡いクリーム色なのが特徴だそうだ。(一般には花弁が赤いアツモリソウが広く分布している)
 その希少価値から1980年代に盗掘が繰り返され、絶滅寸前となったが1994年にRDB入りして、保護・増殖の努力が続けられているということだ。
 ところが、レブンアツモリソウの世代更新の仕組みは複雑かつ繊細なため、自然界においては今現在も減り続けているという。
 ただ、人工増殖の手法が確立されているということで、その手法を用いた人工培養は可能のようだ。しかし、それは厳密に言えば、人が自然に手を出したことになる典型例である。
 そのあたりが、今後減り続けるレブンアツモリソウの保護との関わり合いの中でどう折り合いをつけていくか、ということなのだろう…。

               

 一方、リシリヒナゲシの方も植生地である利尻山々頂付近の山体崩壊などで危機に瀕しているそうだ。さらには栽培ヒナゲシとの交雑も心配されている状況だという。
 こちらも良く似たヒナゲシを栽培し、繁殖することは可能なのだが、リシリヒナゲシとはDNAに違いがあるという。

               

 こうした事例から、高橋教授は自然保護と人間との関係について私たちにクエッションを投げかけたものと受け止めたが、研究者の間では絶えず議論が交わされているテーマなのだと思われる。

 タイトルのテーマは、現代世界においてさまざまな分野で議論を巻き起こしているテーマである。
 自然の中で生きる人間…。自然の恵みを享受する人間…。持続可能な地球を模索する人間…。等々、重い課題ではあるが、今や一人ひとりが真剣に向き合わねばならないテーマの一つでもある、と感じた講座だった。