田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

ボーダーツーリズムを考える

2014-10-07 21:40:01 | 講演・講義・フォーラム等
 ボーダーツーリズム、直訳すると「国境観光」ということになる。つまり「国境」であることが観光資源になるのではないか、という提案である。北海道では今、宗谷海峡を挟んで極東ロシアと国境を接する稚内市がその取り組みを広げようとしているようだ。 

 10月2日(木)午後、ホテルガーデンパレスで北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)、他が主催する「ボーダーツーリズム(国境観光)シンポジウム in HOKKAIDO」が開催され、参加してきた。
 テーマは「日本初の国境観光を創る ―北海道・稚内の挑戦-」というものだった。

 プログラムは、最初に北大スラブ・ユーラシア研の岩下明裕教授が「日本初の国境観光の可能性と北海道」と題して基調報告を行った。
 続いて、5人の方が登壇し「国境観光-稚内モデルの可能性を考える」と題してのパネルディスカッションが行われた。
 登壇者は次のとおりである。
《パネリスト》
  ◇伊豆 芳人 氏(ANAセールス〔株〕常勤顧問)
  ◇米田 正博 氏(北都観光〔株〕専務取締役)
  ◇藤田 幸洋 氏(藤建設〔株〕代表取締役・稚内日露経済交流会会長)
  ◇岩下 明裕 氏(北大スラブ・ユーラシア研究センター教授)
《コーディネーター》
  ◇高田 喜博 氏(HIECC上席研究員)

 今や“国境”というと、岩下氏と言っても良いほど、「尖閣諸島」、「竹島」、そして「北方領土」問題などにコミットしているようである。
 今回は“国境”を政治的な問題としては扱うのではなく、“国境”を経済活動の対象として考えようというシンポジウムである。
 岩下氏は基調報告の中で、日本人は周囲を海に囲まれているため「国境意識」が薄いと指摘した。互いに国境を接している国々の人たちは「国境は動くもの」、そして「国境は観光の対象として潤うものである」と考えているとした。

 その後、パネルディスカッションではそれぞれの立場から“ボーダーツーリズム(国境観光)”について言及した。登壇者の主な発言を切り取ると…。

 伊豆氏は、旅行会社の立場から、現在はコストなどさまざまな障壁があって“国境観光”の商品はないが、将来的には道北-サハリンを巡るようなツアーを実現してみたい、と語った。

 米田氏は、ロシアが2009年に72時間滞在ビザ免除制度を実施したのに伴い、小規模ながら1泊2日や3泊4日のツアーを実施している会社である。これから社業としても宗谷⇔サハリン間のフェリー利用者を増やそうとしていた矢先、来年度中のフェリーの運航中止のニュースは痛い。

 藤田氏は、日露経済交流会会長という立場からだろうか、フェリーの運航継続のためにも物流の活発化を提言された。それは、日本で生産される高級野菜を、宗谷⇔サハリン、そして鉄路によってヨーロッパへ輸出できないだろうか、というものだ。

 岩下氏は最後に、「国境地域は重層性で見ることが必要」と語った。この意味するところは、国境問題というと、紛争、あるいは国の辺地といったような単一眼で見るのではなく、見方によっては都会にない魅力、国境を接することでの観光的魅力等々、さまざまな視点から見ることの必要性を指摘したようだ。

 岩下氏は言う。日本で“国境”というと、隣国と係争中のところが思い浮かぶが、日本の中で、「対馬」と「宗谷」だけは係争とは無縁の地であると…。そうした地からこそ“ボーダーツーリズム(国境観光)”を興していくべきではないか、というのが趣旨のシンポジウムだった。