カンヌ映画祭で審査員賞を受賞し、さらにはスピルバーグ氏によるアメリカ版リメイクのニュースが流れるなど、今話題の映画を観た。重いテーマである。こうしたことが自分に起こったら…、と思いながら映画を観つづけた。
※ “愛した息子を交換できますか?”というキャッチコピーが観る者に問いかけます。
申し分のない学歴や仕事、良き家庭を自分の力で勝ち取ってきた野々宮良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する…。物語はここから始まった。
10月5日(土)午後、「話題の映画をチェックしなくては」(それほどの映画通でも、映画ファンでもないのだが…)との思いから、ユナイテッド・シネマ札幌に赴いた。
産院で子どもが取り違えられていた、という事件はテレビのニュースで伝えられたり、テレビドラマなどにもなったり、ということは見聞きしていたが私には現実感のない他人事としてこれまで考えてきた。
しかし今回、映画の中ではあったがこうした問題に「もし自分が直面したら…」という思いで見ることができたのは映画の力があったからとも思われた。
映画の力とは、ストーリーの力、演出の力、キャストやスタッフの力…、などなどが高いレベルで結集した結果だと思う。
※ 取り違えられた二つの家族です。リリーフランキーの側には他にも子どもがいるが…。
取り違えられた相手の家庭は良多の家庭とは正反対の家庭だった。経済的にはけっして豊かではないものの、庶民的で父親はいつも子どもの遊び相手をしている零細な商店経営者(リリー・フランキー)である。
いくつかの経緯の後、二つの家庭では子どもを本来の家庭で暮らしてみることを試みた。
良多の実子(琉晴)は、良多に馴染まず良多をイライラさせる。一方、反対に育てた子(慶太)はくったくなく商店経営者になついていく…。あゝ、ネタバレになってしまう恐れがあるのでストーリーについてはこの辺りでストップすることにする。
映画は「この後、二人の子どもはどうなるのだろうか…」という思いを観る者が思いつつ余韻を残してthe endとなる。
※ 監督の是枝裕和氏とカンヌ映画祭の審査委員長を務めたスピルバーグ氏が握手をしている絵です。
こうした問題に私が直面したら…。うろたえ、悩み、苦しみながらどんな答えを出すだろうか? 正解のない問題だけに、答えを出せない私だった…。
映画の中では弁護士の口を通して「一般的にはみなさん本来の子どもと交換します」と言うが…。はたしてそんなに簡単に割り切れるものか?
う~ん。最後まで「自分ならどう考え、どう行動するのか」という思いを抱きながらの観賞となった。それを考えさせ続けるだけの力が映画にあったということだと思う。