田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 107 あの日-福島は生きている

2013-10-27 23:24:21 | 映画観賞・感想

 この映画を観て,結局自分は東日本大震災のことを他人事としてしかとらえていなかったことを痛感させられ、いたく反省した。何かを声高に叫ぶでもないこの映画は一人ひとりの心の中にじ-っと浸みこんでくる力があった。 

               

 10月25日(金)夜、道新ホールにおいて北海道新聞社などが主催する「あの日〜福島は生きている〜」映画上映&トークショー&ミニライブ in 札幌 というイベントが開催された。

 冒頭、この映画の関係者三人が舞台に登場した。この映画を企画したクリエーターの箭内道彦氏、映画監督の今中康平氏、映画の中で猪苗代湖ズの一員として歌うシンガーの渡辺俊美氏の三人である。
 箭内道彦氏の恰好を見て度肝を抜かれた。真っ黄々の金髪を立てて、着ている上着は真っ赤々である。年代はどう見ても40歳をはるかに超えている感じである。「いったいこの人何?」いうのがオヤジ(私のこと)の正直な気持ちだった。他の二人はオヤジから見てもまあまともな服装だったが…。

          
          ※ 写真左が箭内道彦氏、右が映画監督の今中康平氏です。

 映画は震災で被災した福島の若い人たちの日常を淡々と描くドキュメンタリー映画である。まずは彼らのある日の朝食を摂る情景を淡々と撮っていく。そして「あの日の朝食は?」と問いかけるが、誰もがその後のショックの大きさに朝食のことなど憶えてはいない。
 彼らはあまり震災のことを口にしなった。また、置かれた境遇を嘆くこともあまりせずに淡々と現実を受け入れているようだった。
               
 実は、後で分かるのだが描かれている5組の人たち(実家で暮らす若い女性、母とその娘、小さな娘のいる家庭、一人暮らしの若者、若いカップル)にはある共通項があった。
 それは、この映画の企画者でもある箭内道彦の呼びかけで震災から6ヶ月しか経っていない9月に福島県内5ヵ所で開催した「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」というロックコンサートに参加した人たちだった。

          

 コンサートの企画が持ち上がったとき、「あまりにも時期が早いのではないか」との懸念の声が多く聞かれたという。しかし箭内たちは「みんなが沈んでいるからこそ、今こそみんなを元気づけたい」と企画を実行に移した。
 9月14日の奥会津 季の郷 湯ら里を皮切りに、会津若松~猪苗代~郡山~相馬~いわき、と5日間連続で福島県を縦断するようにして開催したという。このコンサートから福島出身の4人のミュージシャンで組んだ「猪苗代湖ズ」が伝説の曲(?)「I love you & I need you ふくしま」が生まれた。

               
           ※ ミュージシャンの渡辺俊美氏です。彼は当日透き通った声で3曲披露してくれました。
             もちろん伝説の曲「I love you & I need you ふくしま」も

 映画の後半は描かれている5組の人たちがそれぞれのコンサートに参加している様子を追っている。その中で彼らは日常では見せなかった生き生きとした姿がとても印象的だった。抑えていた感情を解き放つように…。

 作り込んだものではない。むしろ淡々と彼らの表情を追い続けるドキュメントを凝視続けるうちに、私は彼らの中の深い悲しみを見たような気がした。そして映画の後半には流れ出る涙を止めることができなかった。(年嵩が増して涙もろくなったせいもあるのだが…)

 残念ながら私の筆力ではあの日の私の感動を的確に伝えることはできない。しかし、テレビのドキュメントなどでナレーターが被災地がいかに悲惨な状況であるかを強調されると、どこか鼻白む思いがあったのは事実である。それとは違い、被災者の表情を淡々と追い続けたこの映画の方が私の心の奥深くに届いた何かがあったのは事実である。
 福島をはじめとする東北地方の一日も早い復興をこれまで以上に願った一日だった。