ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

旭硝子財団が開催した2011助成研究発表会を拝聴しました

2011年07月27日 | イノベーション
 旭硝子系の公益財団法人の旭硝子財団は、大学などの教員・研究者の学術研究に研究資金を助成しています。その助成研究発表会の2011年度版が東京都新宿区内で開催されました。

 合計73件の研究成果が、午前9時30分から昼食を挟んで午後6時まで発表されました。各研究成果は口頭発表として3分間解説され、その後は当該研究成果をポスター発表にまとめ、ポスター発表の73件を3回に別けて、そのポスターの前で、研究発表者と聴衆者が質疑応答します。原則はA0判のポスターに、自分の研究成果を数枚の図や表を中心に使って、その周辺に説明文を配置します。



 旭硝子財団の研究助成なので、化学系や物理系などの基礎物性や、機械系や電子系、情報系の基盤研究テーマへの助成が中心でした。しかし、「第3分野」「人文・社会科学」という分類の14件は、広義の社会科学系の研究テーマであるために知らない話が多く、大変興味深かったです。

 その中で興味を持ったのは、東北芸術工科大学の三浦秀一准教授が発表した「森林資源を活用した地域熱供給システムの構築に関する研究」でした。日本の国土の3分の2を占めている森林を“森林バイオマス”と考えると、降り注ぐ太陽光エネルギーを森林の生長として受け止めれば、地域の熱供給システムを100%まかなえるとの見通しになったそうです。

 日本の農村部の集落に類似しているオーストリアの都市部の周辺の集落での森林資源を活用した地域熱供給システムの熱エネルギー収支を考えと、日本の成長の速い森林資源では十分に採算が採れるそうです。「地域熱供給システム」とは、簡単にいえば薪ストーブなどのことです。要するに、大正や昭和初期までの薪を主役にした暖房や調理システムに戻りましょうという提案だと思いました。温故知新ということです。





 最近は農村部でも住民の高年齢化が進み、入会地などでの薪収拾が減っているそうです。電気やガスを利用した加熱システムが増え、薪を利用しない態勢になりつつあるそうです。森林と共存する生活スタイルの良さを再発見しましょうという研究成果の発表のように思いました。福島原発事故以降の日本のエネルギーシステムをどう再構築するかに新しい視点を与える研究成果だと感じました。

 また、「第3分野」「人文・社会科学」の研究成果の発表は半数は女性でした。日本の少子高年齢化やEUの難民受け入れ政策などの研究成果の発表は斬新さを感じました。こんなことも研究テーマになるのだと感心しきりでした。