ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

三菱電機が進めているスマートグリッド実証実験の概要を伺いました

2011年07月24日 | イノベーション
 研究・技術計画学会が7月23日午後に主催したシンポジウム「日本産業再考のための戦略的な技術経営」の特別講演の第4弾は「近未来におけるスマートグリッドのインパクト」です(昨日の続きです)。

 この講演は、三菱電機系統変電システム製作所(神戸市)の電力流通プロジェクトグループの塚本幸辰サブグループリーダーが担当しました。日本の大手電機メーカーが次世代のエネルギー社会システムの実証事業として、「マイクログリッド」「スマートグリッド」などの次世代の電力流通システムを、どのように製品化・事業化しようとしているかについての概要を分かりやすく説明しました。想定される製品化・事業化の概要は説明されましたが、三菱電機がどの部分で強みを発揮し、事業収益を上げる戦略なのかは、当然、お話されませんでした。



  この講演の冒頭で、この製品化・事業化の概要や実証実験などは、東日本大震災が起こる前に計画されたもので、今後、原子力発電の役割の見直しなどを含めた日本のエネルギー社会システムの方向付けによっては中身が変わるものと説明されました。三菱電機は「2020年以降に登場すると想定される送配電網に対して、約70億円の研究開発費をかけてスマートグリッド実証実験を実施している最中だ」と話されました。

  三菱電機は同社の兵庫県尼崎市の尼崎地区を中心に和歌山地区も含めて、スマートグリッドシステムの実証実験を進めているそうです。自社内での基幹系送電システムや配電システムを通して、全体最適化などの実証実験を進めています。「各電力会社の系統安定化制御および最適電源運用、次世代配電運用システムのスマートグリッド、計量自動化のスマートメーター、デマンドサイドマネジメントのスマートハウスなどの全体最適運用を検証する」と説明します。

  例えば、スマートハウスは大船地区で「大船スマートハウス」という自立循環型住宅のガイドラインに沿った高気密断熱住宅(東京大学大学院工学系研究科の坂本雄三教授が監修)を建て、自然エネルギー活用と高効率省エネルギー機器による節電を実証実験しているそうです。この住宅の中には、日産自動車の電気自動車「リーフ」と三菱自動車の「i-MiEV」の2台が収められています。



 日本の電機メーカーとして、太陽光発電モジュールを製品として事業化している三菱電機ですが、これからのスマートグリッド系の事業、すなわち何で収益を上げるかは、まったく説明されませんでした。もちろん、最大の企業秘密だからです。

 今回の講演を拝聴し、研究開発を総花的に進めており、事業戦略ができているのかどうかよく分からないとの印象を受けました。例えば、太陽光発電モジュール製品は市場としてはドイツとスペインなどに先行され、製品・事業化では中国や韓国に先行され始めています。まるで、半導体のDRAMや液晶パネルなどの事業モデルの推移に近い様相を呈しています。日本企業の事業化の成算がどこにあるのかは、なかなかの難問です。