ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

大阪大と東工大は産学連携向けの新棟をそれぞれ建設しています

2011年07月01日 | イノベーション
 大阪大学は企業と大型共同研究を実施する大型ラボ施設「大阪大学テクノアライアンス棟」を平成23年(2011年)3月に吹田キャンパス(大阪府吹田市山田丘)の中央部分に建設し、現在は同棟に入居する企業との共同研究契約を締結し始めています。大阪大キャンパスの中に、企業の研究所の“出島”ができるという意味です。

 東京工業大学の環境エネルギー機構は現在、「環境エネルギーイノベーション(EEI)棟」を大岡山キャンパス(東京都目黒区)内に建設中です。今年末に竣工する予定です。

 大阪大と東工大がそれぞれ建てている新棟は、大学の先端的な研究成果を企業などで実用化・製品化してもらうことで、大学の“知”を社会に還元する貢献を果たしたいという狙いによってつくられたものです。

 大阪大大学院は平成18年度(2006年度)から工学研究科を中心に全学で「Industry on Campus」を合い言葉に、企業との共同研究講座制度を設け、産学連携による研究開発を活発化させました。企業との本格的な産学連携による共同研究講座制度をさらに発展させたものが、今回のテクノアライアンス棟です。企業の研究所の一部が阪大吹田キャンパス内に引っ越してくるからです。

 テクノアライアンス棟は、地上9階建て鉄筋ビルで、棟全体の延べ床面積は約1万1000平方メートルです。建設前に描かれた完成予想図です。



 企業の研究エリアは3階から8階までは、1階当たりの延べ床面積が約1000平方メートル、9階は実験室・研究室の面積が約100平方メートルです。

 「企業側にとっての利点は大阪大の高度な教育・研究環境を用いて先進的な研究開発を戦略的に実施し、優れた研究開発成果を上げると同時に、企業の研究人材の再教育の場として活用できる利点がある」と、担当者の方は説明します。大阪大にとっては「企業との人材交流によって若手研究者を高度に育成できる効果を期待している」という。大阪大大学院の学生を人材育成する実践の場としたいという意味です。

 大阪大は企業とのイコールパートナーシップによる共同研究開発を拡充することによって、大阪大全体の研究開発能力を一層高め、国内で抜き出た優れた研究環境を持つ大学・大学院としての地位を固める構えです。

 東工大が建設中の環境エネルギーイノベーション棟は、最先端の環境技術装置を集結させた「ゼロ・エミッション・ビル」を目指しています。例えばCO2(2酸化炭素)の排出量は、従来の同等の建屋に比べて、排出量を約70%削減します。当然、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)を導入し、その実践データを企業などに提供する予定です。



 上の画像は環境エネルギーイノベーション(EEI)棟の完成予想図です。

 東工大は環境技術やエネルギー技術の最先端装置を実際に利用する研究開発環境を整えることで、企業などの環境事業やエネルギー事業に対して応用技術面で大きな貢献を図ることを目指しているようです。東日本大震災以降に高まったエネルギー利用・活用に求められる新しい「知」を提供し、日本の産業振興に貢献することを目指しています。

 建設中の環境エネルギーイノベーション棟は、太陽光発電システムを約580キロワット備え、燃料電池(PAFC)システムや地中熱利用のヒートポンプなどを導入します。この燃料電池の高温側の排熱を利用する吸収式冷凍機や燃料電池の低温側の排熱を利用するデシカント空調機も備え、徹底した省エネルギー化を図る計画だそうです。照明にはELD照明を採用し、人感センサーなどと組み合わせて照明の仕方を最適に制御する計画です。最先端のエネルギー技術の稼働しているショールームになりそうです。