ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

東京大学の総合研究博物館は「鰻博覧会」を開催しています

2011年07月22日 | イノベーション
 7月21日は、夏の土用の丑の日(どようのうしのひ)だったので、「鰻の蒲焼きがよく売れた」と、テレビニュースや新聞記事が報じました。最近はウナギの稚魚の不漁によって、ウナギの販売価格そのものは上昇しているにもかかわらず、鰻屋では鰻重などを求める客が殺到したり、デパートやスーパーでのウナギの蒲焼きがよく売れたりと、ウナギの売れ行きは好調だったようです。ウナギを食べて精力を付けて、猛暑を乗り切ろうという思惑のようです。

 現在、東京大学の文京区本郷キャンパス内にある総合研究博物館は特別展示「鰻博覧会 この不可思議なるもの」を開催しています。入場料は無料です。7月16日(土)から10月16日(日)まで一般公開されています。



 今回の特別展示の目玉は、ニホンウナギの卵です。東京大学大気海洋研究所は、7月10日に「天然のニホンウナギの卵を百数10個採集することに成功した」と発表しました。2011年6月28日から29日にかけて、独立行政法人海洋研究開発機構の学術研究船「白鳳丸」がウナギ産卵場調査航海を行い、天然のニホンウナギ卵を147個を採集することに成功したそうです。採集場所は、2009年度の調査航海の成果から想定されていた太平洋の西マリアナ海嶺(かいれい)と交差する塩分フロントの南側海域(スルガ海山周辺、北緯14度、東経143度)だそうです。

 今回、採集された卵の発達段階などから、「ウナギは新月(月の満ち欠けの始まりの月)の2~4日前の毎晩に、複数の異なる産卵集団を形成して産卵すると考えられる」とのことです。 もし将来、ニホンウナギの産卵場をピンポイントで予測し、卵や仔魚を確実に採集することが可能になれば、現在のウナギ稚魚の不漁を解決する有力な手段が見つかる可能性が高いそうです。

 今回の卵採取の成果として、7粒の卵のホルマリン固定標本を作成ししたそうです。この標本が「鰻博覧会」に展示されています。



 日本の川や池に住むウナギは変な魚です。日本から数1000キロメートルも離れた海の底に産卵しに行き、生まれたウナギの稚魚は数1000キロメートル泳いで、日本の川や池などに戻るという過酷な旅を続ける生態を持っているのですから。

 とはいえ、夏の土用の丑の日に、ウナギの蒲焼きなどを手軽に食べられるようになったのは、ウナギの養殖技術が進んだ結果です。食料に対するイノベーションのお陰です。おそらく1960年より以前は、天然ウナギの蒲焼きなどをたまに食べる程度だったと思います。考えてみれば、ウナギやマグロなどが手軽に食べられる贅沢を、当たり前と考えることが間違いのような気もします。飽食の時代を真剣に反省することから、新しい食文化が始まります。