LE VENTRE DE PARIS
1873年 エミール・ゾラ
1ページ目を開いた瞬間から面白かったですよ!
第二帝政期のパリ中央市場を舞台に、ひとりの青年の数奇な運命を描いた物語です。
私はそんなにルーゴン・マッカール叢書を読んでいるわけではございませんが
今まで読んだ中では一番バルザック的な印象を受けております。
どこが…と問われても困るわけなんだが
あえて言うなら…今まで読んだものも、たしかに激しさがあって悲劇的だったけど
悲劇の要因は社会の混沌と本人による要素が多かった気がするのね、
でも『パリの胃袋』の場合、社会のみならず周囲の人たちの悪意が
主人公を絡めとって悲惨なクライマックスへと導いていっている気がしています。
ま、ゾラの作風とか、バルザック=ゾラ比較論は解説本でも読んで下され
主人公は無実の罪で政治犯としてカイエンヌ(ギアナ)に流され、必死で脱走して
パリに戻って来たフロランという痩せ細った青年です。
例によってはしょっていきますよ。
フロランはパリでシャルキュトリ(肉系総菜屋)を営む異父弟のクニュを訪ねます。
クニュの店は、美しくて商才がある妻リザのおかげで手堅く繁盛していました。
我が身を省みず自分を大きくしてくれたフロランを、クニュは大歓迎で迎え
フロランは弟一家の世話になることになりました。
これがフロランと中央市場の悲劇の始まりです。
フロランという人は穏やかで優しく、なんの欲も持たない清廉な人なんだけど
なぜか争いを巻き起こしてしまうわけですね。
まずはクニュの妻リザと、やはり美貌で有名なラ・ノルマンドの
今まで隠していた激しいライバル意識に火を点けます。
そしてラ・ノルマンドと妹のクレールの姉妹対決…この争いは最終的には
母親のメユーダン婆さんも参加して三つ巴の争いになります。
金持ちと噂されるフロランの擁護者カヴァールと、カヴァールの無き妻の姉で
遺産を狙うルクール夫人の争いの激化…などなどです。
忘れてならないのがサジェ婆さんという噂と詮索と陰口が好きな老婦人で
この人が物語を複雑かつ悪意あるものにしていて、バルザック感を増大してます。
フロランの大失敗は、政治犯で捕まっていながら政治的活動をしてしまったこと。
彼自身は、反体制を語っていれば硬派に見えるというエセ反体制派でもないし
酒を飲む口実にしているわけでもなくて真剣にフランスの未来を考えていました。
それに、彼らが集う居酒屋のこじんまりした反体制派の集いなんて
政府にとってはなんら脅威ではなかったはずです。
しかし、フロランが脱走者だったことがことを大きくし、密告者たちを狂喜させます。
なんの邪心もなく、真面目に仕事をこなして政治を語っていた青年にとっては
気の毒なラストとしか言いようがありません。
でもやっぱり浅はかよね…フロラン、まずは一度パリから離れなきゃ!
そして何年かは田舎に身を隠してなくちゃ(どうせ第二帝政はすぐ終わるんだし)
反体制派の飲み会に行くなんてもってのほかじゃない?
女たちの争いだってちょっと気をつければおこらないことだったのに、お人好し…
せめてサジェ婆さんが死ぬまでは大人しくしてなきゃですよ。
世慣れない単純な性格の青年が、成熟していない社会の中で上手く世渡りできなかったために
おこってしまった悲劇…当時は日常茶飯的におこっていたことかもしれませんが
壮大な文学として残したゾラに拍手を送りたいものです。
話しは変わるけど、とにかく食べ物の描写がすごいです。
ちょっとしつこいほどでした。
ゾラは作品を書く前にかなり綿密に調べるみたいで、他の物語でもテーマについての
描写が微に入り細に入りって感じですが、この物語では、野菜・魚・肉・チーズ・花、
どれをとりましても種類から特徴から、細かく詩的に描かれています。
『パリの胃袋』はどこらへんがルーゴン=マッカールかといいますと
クニュの妻リザが『居酒屋』のジェルヴェーズの姉です。
リザの甥として『制作』のクロード・ランチエも登場します。
次は『愛の一ページ』と『生きる喜び』を狙っているんですけどね…
今月は本代を使い果たして買えないの
1873年 エミール・ゾラ
1ページ目を開いた瞬間から面白かったですよ!
第二帝政期のパリ中央市場を舞台に、ひとりの青年の数奇な運命を描いた物語です。
私はそんなにルーゴン・マッカール叢書を読んでいるわけではございませんが
今まで読んだ中では一番バルザック的な印象を受けております。
どこが…と問われても困るわけなんだが
あえて言うなら…今まで読んだものも、たしかに激しさがあって悲劇的だったけど
悲劇の要因は社会の混沌と本人による要素が多かった気がするのね、
でも『パリの胃袋』の場合、社会のみならず周囲の人たちの悪意が
主人公を絡めとって悲惨なクライマックスへと導いていっている気がしています。
ま、ゾラの作風とか、バルザック=ゾラ比較論は解説本でも読んで下され
主人公は無実の罪で政治犯としてカイエンヌ(ギアナ)に流され、必死で脱走して
パリに戻って来たフロランという痩せ細った青年です。
例によってはしょっていきますよ。
フロランはパリでシャルキュトリ(肉系総菜屋)を営む異父弟のクニュを訪ねます。
クニュの店は、美しくて商才がある妻リザのおかげで手堅く繁盛していました。
我が身を省みず自分を大きくしてくれたフロランを、クニュは大歓迎で迎え
フロランは弟一家の世話になることになりました。
これがフロランと中央市場の悲劇の始まりです。
フロランという人は穏やかで優しく、なんの欲も持たない清廉な人なんだけど
なぜか争いを巻き起こしてしまうわけですね。
まずはクニュの妻リザと、やはり美貌で有名なラ・ノルマンドの
今まで隠していた激しいライバル意識に火を点けます。
そしてラ・ノルマンドと妹のクレールの姉妹対決…この争いは最終的には
母親のメユーダン婆さんも参加して三つ巴の争いになります。
金持ちと噂されるフロランの擁護者カヴァールと、カヴァールの無き妻の姉で
遺産を狙うルクール夫人の争いの激化…などなどです。
忘れてならないのがサジェ婆さんという噂と詮索と陰口が好きな老婦人で
この人が物語を複雑かつ悪意あるものにしていて、バルザック感を増大してます。
フロランの大失敗は、政治犯で捕まっていながら政治的活動をしてしまったこと。
彼自身は、反体制を語っていれば硬派に見えるというエセ反体制派でもないし
酒を飲む口実にしているわけでもなくて真剣にフランスの未来を考えていました。
それに、彼らが集う居酒屋のこじんまりした反体制派の集いなんて
政府にとってはなんら脅威ではなかったはずです。
しかし、フロランが脱走者だったことがことを大きくし、密告者たちを狂喜させます。
なんの邪心もなく、真面目に仕事をこなして政治を語っていた青年にとっては
気の毒なラストとしか言いようがありません。
でもやっぱり浅はかよね…フロラン、まずは一度パリから離れなきゃ!
そして何年かは田舎に身を隠してなくちゃ(どうせ第二帝政はすぐ終わるんだし)
反体制派の飲み会に行くなんてもってのほかじゃない?
女たちの争いだってちょっと気をつければおこらないことだったのに、お人好し…
せめてサジェ婆さんが死ぬまでは大人しくしてなきゃですよ。
世慣れない単純な性格の青年が、成熟していない社会の中で上手く世渡りできなかったために
おこってしまった悲劇…当時は日常茶飯的におこっていたことかもしれませんが
壮大な文学として残したゾラに拍手を送りたいものです。
話しは変わるけど、とにかく食べ物の描写がすごいです。
ちょっとしつこいほどでした。
ゾラは作品を書く前にかなり綿密に調べるみたいで、他の物語でもテーマについての
描写が微に入り細に入りって感じですが、この物語では、野菜・魚・肉・チーズ・花、
どれをとりましても種類から特徴から、細かく詩的に描かれています。
『パリの胃袋』はどこらへんがルーゴン=マッカールかといいますと
クニュの妻リザが『居酒屋』のジェルヴェーズの姉です。
リザの甥として『制作』のクロード・ランチエも登場します。
次は『愛の一ページ』と『生きる喜び』を狙っているんですけどね…
今月は本代を使い果たして買えないの