まりっぺのお気楽読書

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『制作』天才とは…悩めば悩むほど不可解

2011-05-03 00:56:35 | フランスの作家
L'CEUVRE 
1886年 エミール・ゾラ

芸術のことはとんとわかりませんが、絵画は好きでちょこちょこ美術館などに出かけます。
抽象画は嫌いで、アヴァンギャルドなものや前衛アートは皆目理解できず
所謂イタリアン・ルネッサンス的な宗教や神話をベースにしたものも苦手です。

風景画とか肖像画が好きですねぇ…なるだけリアルな質感のものがいいです。
印象派とかバルビゾン派…なんて見かけるとすぐ見に行っちゃいます。

それでね、この『制作』という物語はですね、
旧態依然としたフランス芸術界に一石を投じ、外光派なるものの原型を形作っておきながら
自分では絵を仕上げることができない画家クロード・ランティエの苦悩を
ゾラならではの激しい筆遣いで描いた作品です。

クロードには6人の仲間がいます。
作家志望のサンドーズ、建築家志望のデュビューシュ、芸術評論家のジョリー、
彫刻家のマウドー、美術学生のファジュロール、風景画家のガニエール。
若い彼らは毎週一度サンドーズの家に集まったり、カフェで会ったりして
芸術について熱い議論を戦わせます。
彼らの中では、クロードは天才で、これからの芸術を背負って立つ男でした。

しかし(ものすごくはしょりますが)月日は流れ…
7人はあまりにも違う方向を見つめるようになってしまったのね。

自分の才能を活かすために金持ちの娘を妻にももらった人もいます。
小手先の技術を駆使して流行の作品を量産している人、
小さな作品を売って日々の糧を稼いでいる人など様々です。

クロードはというと、結婚して子供が一人いました。
相変わらず構想はいいのに、デッサンは完璧なのに、下描きは非の打ちどころがないのに
なぜか絵の具を塗って仕上げにかかると気に入らず、作品は仕上がりません。
一家は困窮し、モデルを務める妻クリスティーヌの心はすさんでいきます。

サンドーズは、一連のシリーズ作を世に出して成功を収めていました。
これは、もしかして『ルーゴン・マッカール叢書』を書いていたゾラ自身のことかしら?

この後、クロードの絵がサロンに入選して展示された場面、
久しぶりに昔の仲間が集まる場面が展開されますが、どちらも壮絶です。

そしてクライマックスはさらに壮絶に!
こんなに報われない人生、哀れな一生があっていいんでしょうか?
私は、クロードにというより、クリスティーヌに対してそう思います。

自分でも生みの苦しみを知っているゾラなだけに、
そして友人のセザンヌや、知人のマネ・モネ・ルノワールの活動を目にしているからこそ
きっと少なからずリアリティはあるのだと思います、が、ちょいと言っていいですか?

クロードはやけに天才扱いされて、一方、作品をどんどん生み出し人気者になった友人は
芸術家仲間からボロクソに言われているんだけど
一向に作品が仕上がらない、芸術家以外は誰も認めない作品を生み出す人が
果たして天才と言えるものだろうか?

商業主義で一般人に迎合した作品を笑う “ 本物 ” はどの世界にもおりますが
その天才が創りだす作品を誰も受け入れず、忘れられた存在になる場合ってどうなの?
う~ん 難しい問題ですね。

ルーゴン・マッカールだというから「どこらへんが?」と思っていたら
クロードは『居酒屋』のジェルヴェーズと愛人(元内縁の夫)の息子だって。
確かにいましたね、ランチエというどうしようもない男。
クロードは『ナナ』の異父兄ということになりますね。

やはりルーゴン・マッカール叢書は面白いですね!
読破したいのですが、安価では手に入らないのでままならないのが歯がゆいところです

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