まりっぺのお気楽読書

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『危険な関係』手紙の功と罪

2009-07-06 00:17:38 | フランスの作家
LES LIAISONS DANGEREUSES 
1782年 ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ

うぅぅむ…手紙って危険極まりないものだと思うんです。
こっぱすかしいポエムを書きとめた日記帳ぐらいデンジャラス!!
ラヴレターなんて書いてる時やもらった時には嬉しくてハッピーでしょうが
他人が読んだら噴飯ものだし、ヘタすれば人ひとり陥れることも可能ですからね。

っていうお話でございます。 すべてが手紙の形で語られています。

修道院から出されて結婚話に戸惑うセシル・ヴォランジュの手紙
ツールヴェル夫人をものにすると誓うヴァルモン子爵からメルトイユ侯爵夫人への手紙
そんな人はやめてセシルにしなさいよ、というメルトイユ侯爵夫人の返事
ヴァルモンには気をつけなさいとツールヴェル夫人に忠告するヴォランジュ夫人の手紙
ぎこちなく愛を告白するダンスニーからセシルへの手紙

などなどから物語は始まりますが、次第に手紙の内容が変化を見せ始めます。

最初は必死でヴァルモンの誘惑をはねつけていたツールヴェル夫人の手紙には
隠しきれない愛の苦悩が見え隠れするようになります。
恋を禁じられてヴァルモンとメルトイユ夫人にいいように手玉にとられる
セシルとダンスニーの手紙には戸惑いや不満があらわれてきます。

ここらへんから少しまどろっこしくなってくるんですよね。
「口で言っちゃえば早いじゃん!」とまったく情緒のないこと言って申し訳ないのですが
長~い手紙を書く暇があったらひとっ走り行ったほうが早くはないの?

特にヴァルモンとツールヴェル夫人の手紙は、微妙に変化が見えるとは言え
延々と「いいじゃん」「いやよ」の繰り返しでうんざりしてきちゃった
その微妙な心の変化が面白いのだというのは分かりますが、ツールヴェル夫人たら
“ いやよいやよも好きのうち ” っていうのがミエミエなんですもの。

結局ツールヴェル夫人は「幸せです」「不幸のどん底です」と
いちいちヴァルモンの伯母ロズモンド夫人に手紙を書き送ることになるのよ。
伯母さまいい迷惑

そして後半、お互いを完全に理解し合っていると思えた
ヴァルモンとメルトイユ夫人のやりとりに変化がおこります。
手練手管を自慢し合って、相手のラヴ・アフェアを祝い、アドバイスを与え合っていた
ふたりなのに、少しずつ非難めいた言葉が増えていき、最後は大変なことに!

だってふたりは、自分の恋愛遊戯やら陰謀やら何もかもがあからさまに書いてある
相手の手紙を持ってるんですもの。
これは社交界の中で評判だけを頼りに生きている人にはすごい最終兵器でしょ?

ふたりはこの手紙を利用してお互いを陥れようとするのですけれど
どちらが上手く利用できたのかの判断は難しいところがありますね。
私はヴァルモンの方が一枚上手だったんじゃないかと思うけど…

手紙はメールよりたしかに気持ちがこもっているようだし
もらった方も印象深いとは思いますが、くれぐれも相手の手元に
残ってしまうものだってことを忘れないようにしなきゃいけませんね。
内容によっては悪魔の契約書に署名したような状態になっちゃいますからね。

そして何度でも言わせてもらうけど、他に考えることはないのかよ~、フランス人。
1日中愛とか恋とか逢い引きのことばっかり考えてるんじゃないわよ!!
(あくまで昔の貴族に限って言わせていただいております)

危険な関係〈上〉 岩波書店


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