まりっぺのお気楽読書

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『太平洋 モーム短編集2』さらに、南の島で・・・

2009-01-21 01:12:50 | イギリス・アイルランドの作家
THE PACIFIC 
1921年 サマセット・モーム

『雨・赤毛』に続きモームです。
こちらも島が舞台です。

当時は南の島に行くというだけで一大事という時代ですから
こういうエキゾティックな土地を舞台にした物語は話題になったでしょう。
それでモームを大衆作家だという人もいますし
評価していない批評家もいらっしゃるみたいなんですが
そんなことは気にせず、私はモームを愛す!

プロローグ的な『太平洋』の他に3篇おさめられています。

『マッキントッシ』
植民地の若い役人マッキントッシは、野蛮で暴君のような行政官のやり方についていけず
行政官に恨みを抱いた現地人の犯罪を見て見ぬふりをします。
しかし、彼の死に祭し嘆き悲しむ島の人たちを目にして・・・

私もこの行政官が善人なのか悪人なのか、ちょっと判断に苦しむところです。
ただ上司だったらいやだろうな・・・とは思いますけど。
このマッキントッシは少しデリケートすぎるかもしれませんね。

『エドワード・バーナードの転落』
友人で、愛する女性の婚約者エドワード・バーナードをタヒチに訪れたベイトマンは
エドワードの変わり果てた姿に愕然とします。
あんなに都会的なエリートだったエドワードが、シャツ1枚で商店で働き
タヒチの女性を妻に持つ、アメリカでは札付きの男性とつるんでいたのです。
エドワードはベイトマンに「自由だ」と言います。

この後サンフランシスコに戻ったベイトマンは、婚約者だった女性と
「エドワードも落ちぶれちゃって・・・」と嘆く訳ですが
私もできることならエドワードみたいに生きたいと思いますけどね。
でもなかなかねぇ・・・

『淵』
美しい土地の娘と結婚したばっかりにはまり込んでしまった生活に苦悩する白人男性。
貧しい白人に対する妻やその親類の仕打ちに耐えられなくなった彼は
酒浸りになっていきます。
彼はとうとう英国に帰る決心をするのですが、結局帰ることはできませんでした。

愛に縛られる人生というのは、ある意味自虐的でドラマティックな気もしますが
相手の親や親類たちに縛られるのはカンベンですよね。
けれども、逆から見れば妻の落胆も大きかったのではないでしょうか?

舞台は風変わりでも、人の心はいずこも同じ。
愛もあり、落胆も焦燥も嫉妬も、なにも変わるところはありません。
ただ、南の島の、楽園とはほど遠いリアルライフに取り残された当時の英国人は
そこから逃れる術を徐々に失い、孤独のうちに悲壮な状態に陥ってしまったみたい。
モームはそういったところをこれらの物語の中で描きたかったのでしょうか?

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