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まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『シスター・キャリー』中流的欲望の行方

2009-05-27 01:51:05 | アメリカの作家
SISTER CARRIE 
1900年 セオドア・ドライサー

おもしろかったですよ
田舎から都会へやってきた若い女性の、ありがちなサクセスストーリーともいえるし
浅はかなことをしでかした中年男性の転落という、よくある話ともいえます。

キャリーは憧れを胸に、大都会シカゴの姉夫婦の家に身を寄せた18歳の女性ですが
抱いていた理想と現実のギャップに戸惑い、とうとう田舎に帰されそうになります。

それで、上京する汽車で出会った羽振りのいいドルーエという男性と再会すると
誘われるままに同棲し、少し不満を覚えたところへドルーエの知人のハーストウッドという
40歳手前の高級酒場の支配人が現れると、みるみる間になびいてしまいました。

いきなり慎重さを欠いたハーストウッドの浮気は妻に知れて離婚訴訟をおこされます。
しかもキャリーにも家庭持ちだということがバレて別れを告げられふんだりけったり
ふとしたことから店の大金を持ち出したハーストウッドはキャリーを嘘で連れ出して
ニューヨークへ逃げ出すのですが、キャリーも結局承諾してしまいます。

ここから紆余曲折の末、キャリーは劇団の女優になって人生の坂を上り始めて
ハーストウッドはあれよあれよと転がり落ちていくのですけど…

キャリーはというと、帝政期に描かれた娼婦のようなタイプの女性ではなくて
流されるまま次々と男性と不適切な暮らしをしてしまって、生活のために女優になったら
人気が出て…という感じでして、サクセスストーリーの主人公にしては
ガッツが感じられないのよね。

じゃあ男を手玉にとった女が落ちぶれて散々な結末を迎えるのか、というとそうではなくて
なんだかキャリーはこの先堅実に生きて行きそうよ

ハーストウッドは、湯水のように女につぎ込んだ末の破滅ではなくて
失職して、事業失敗して、就職難で仕事無くて、というタイミングの不幸さが招いた
成れの果て、という感がありまして「ほ~ら、ごらんなさい」というのも可哀想かな、と…
そりゃキャリーに目がくらんだばっかりにバカな考えをおこしたからなんだけどね。

キャリーとハーストウッド、ふたりの行く末はあまりにもアンバランスなんじゃないかと
思ったりもしますが、その対比がおもしろいのかもしれませんね。

やはり貴族社会のないアメリカ、ロックフェラー家とかヴァンダービルト家みたいに
貴族より金持ちな家はあったでしょうが、同じような内容のフランス小説に比べたら
ゴージャスの焦点が定まっていないという嫌いはあるような気がします。
それともゴージャスのレベルが低いというのかしら?

“ 都会派小説のはしり ” と言われているということで、中流階級の増加にともなう
小市民的なゴージャスの蔓延を反映していると考えればよいのでしょうか?

シスター・キャリー〈上〉岩波書店


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まずは上巻から…
コメント (2)
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『ナイン・ストーリーズ』バイバイ、セラピスト

2009-05-14 01:15:51 | アメリカの作家
NINE STORIES 
1953年 J・D・サリンジャー

“ あとがき ”によるとサリンジャーはこの9篇以外の短編を封印してしまったということで
よほどの自信作だと思われますし、たしかに面白く読めました。

正直言って私はこのタイプの小説はあまり好きではありません。
物語の随所にセラピストが顔を出して “ ◯◯症候群 ” やら“ ◯◯シンドローム ” と
言い出しそうな人物ばかりが登場する話なんて…

でも面白かったんだよねぇ…どうしてだろう?
主人公は皆ちょっとだけ正気じゃないと思うんだけど、いたって普通に生活してるわけ。
こういう人、今となっては隣の部屋に住んでそうだし会社にもいそう。
へたしたら自分も人から見ればイカれてる部分があるかもしれない、なんて
思いながら1冊読んでしまいました。

好きだった3篇をあげてみます。

『小舟のほとりで(Down at the Dinghy)』
ふたりのメードがキッチンでおしゃべりしていると、女主人のブーブーがやって来て
4歳の息子ライオネルが「家出をするらしい」と言って出て行きます。
ブーブーは小舟の上のライオネルの気を引くため海軍中将のふりをしますが
彼はまったくのってきてくれません。

これは唯一可愛げのある子供が出てくるので好きなのよね。
子供には子供なりに深刻な悩みがあるわけよ、たとえ意味は分からなくても。

『ド・ドーミエ=スミスの青の時代(De Daumier-Smith's Blue Period)』
パリから帰国したジャンはケベックの美術学校の教員採用に応募して見事合格します。
しかし、母の再婚相手ボビーとニューヨークに別れを告げた彼を待っていたのは
教員が風変わりなヨショト夫妻だけというアパートの一室でした。
ジャンは生徒であるアーマという尼僧が描いた絵に感銘を受け手紙を出します。

不本意だと思いつつ働かなければならないというのは大人だったら誰もが経験すること、
思い通りの職を得られる人というのはそうそういるものではないんですもの。
早く見切りをつけるもの賢明な策ではありますけど
そこに踏みとどまってどんなやりがいを見いだすか、というのも大事かもね。

『テディ(Teddy)』
イギリスからアメリカへ向かう船上、10歳の天才少年テディはある男と議論します。
男はテディが他人の死を予言できるのかを聞き出そうとしますが、テディはそれに答えて
「自分だって今すぐ死ぬかもしれない」と答えます。

最近すごいIQの少女が現れましたね?
勉強にせよスポーツにせよ、子供の時に天才的だったからといって大物になるとは
限らないわけでね…小さい頃「この子は天才!」って言われたことって
思った以上に多くの人が経験してたりするんですよね。

サリンジャーがアメリカ文学の進むべきひとつの道を指し示したことは
否定のしようがありませんが、こういうタイプの小説は誰が書いても上手くいく、
というものではないですよね?
きちんとした筋書きがないとただのおバカがハチャメチャをしているだけになってしまふ。

きっと有象無象の作家志望の青年たちが “ なんちゃってサリンジャー ” な作品に手を出し
夢破れて打ちひしがれたことでしょう

ナイン・ストーリーズ 新潮社


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『ミザリー』キャシー・ベイツにやられるっ!

2009-05-07 00:59:38 | アメリカの作家
MISERY 
1987年 スティーヴン・キング

私はアニー・ウィルクスにキャシー・ベイツというキャスティングには
なんら誤りはないと思いますが、やはり原作のアニーは怖いっ!!
けれども、映像で観ているとキャシー・ベイツがアニー以外の何者でもないという…
原作と映画の双方が触発し合う、身の毛がよだつ作品でした。

簡単に説明すると『ミザリー』というのは、人気作家ポール・シェルダンが生み出した
ベストセラー・シリーズの主人公なのですが
彼はそのシリーズにうんざりして主人公の死で物語を終わらせたのです。
その最後の5行を書き上げる時、ポールは可笑しくて涙が止まりませんでした。

一方アニーは『ミザリー』の大ファンで、近所で交通事故にあったポールを助け出すと
自宅に監禁し、続きを書くように強要します。
それこそあの手この手を使って…主に苦痛ですけど。

この物語の恐ろしさは、虚構の中にいくつかの理解可能な恐怖が潜んでいるところに
あるような気がします。

例えば地下鉄の中でマスクを被った男がチェーンソーを振り回したり
人里離れた小屋でひとりひとりが謎の死を遂げる…というのは
絶対に無いとはいえませんが、安易に想像がつくものではないですよね?

でも監禁となると、ある日一人の人間が消えたからといって
家々を隈無く捜すことは不可能に近いし、現によく耳にしたりします。

それから熱烈なファンとストーカーとの一線をどこに引くのかというのも
悩ましい問題です。
マーク・チャップマン(ジョン・レノンを射殺した犯人)とスティーヴン・キングの
サインの1件は有名な話ですが、村上春樹氏『やがて哀しき外国語』によれば
キングには他にも迷惑な愛読者が多々いたようで、もしかしたら実体験が
大きく物を言っているのかもしれません。
命まで狙われかねないのですから有名人も大変ですね。

この物語には恐ろしいこと以外にも、作家の本能のようなものが滲み出る場面が
いくつかあるのですが、それはそれで鬼気迫るものがあります。
例えば、ポールは『ミザリー』の新作を書き上げてしまったら、アニーに殺されるのが
分かっているのですが、浮かんできた文章を書き留めずにはいられなくなって
眠る時間を削ってタイプライターに向かったりします。

とうとう『ミザリーの生還』を書き上げたポールは、それが今までの中で
最高の傑作だということが分かっていました。
しかしその傑作がアニーへの最終兵器でした。

最後の最後までハラハラしますよ。
原作は内容もさることながら、なんていうか…字の面(ツラ)が怖いというか
字を追っているだけで恐ろしいのです。
(翻訳版ですが)ところどころで太字を使っているとか、擬音が多いとか
いきなり手書き風とか、いろいろ文句はあるかもしれませんが
ことさらグロテスクなことを書き連ねているわけではないのに背筋寒くなりますよ。

私はホラーとかオカルトの類いはほとんど読まないのですが
S・キングには一時期はまりました。
映画化されたものはあまりなくて、扶桑社ミステリーのものが揃ってます。
たぶん、怖い思いより先に文章の面白さに惹かれたのだと思います。
『ミザリー』ももちろん、震えながらも面白く読めた1冊です。

ミザリー 文藝春秋


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『若草物語』100% “ 良書 ”

2009-05-03 22:29:29 | アメリカの作家
LITTLE WOMAN 
1867年 ルイザ・メイ・オールコット

『ハイジ』を読んでいたらことのほか楽しかったので少女文学など読んでみようかと
ご存知!『若草物語』に手を伸ばしてみました。

ご存知!とは言っても四人姉妹だという以外に内容はご存知ですか?
私は子供の頃少年少女文学全集という箱入り挿絵入りの全集で読んだのですが
ほとんど覚えていませんでした。

四姉妹の、あるクリスマスから翌年のクリスマスまでの1年を描いた物語です。
一家はもともと裕福だったのですが、父のマーチ氏が友人のために財産を失い
以前のような羽振り良さはありません。
マーチ氏は慰問のため戦地(南北戦争?)に赴いていて不在です。
母のマーチ夫人は優しく穏やかで貧しい人たちへの慈善を怠りません。

長女のメグは16歳でしっかり者ではありますが、裕福だった頃が忘れられず
きれいなドレスが欲しいな…などと思いながら家庭教師で家計を助けています。

次女のジョーは15歳で男の子になりたいと思っている作家志望の少女です。
少しお行儀が悪いけれど素直で、裕福で頑固なマーチおばさんのお気に入りです。

三女ベスは13歳、大人しくてとても内気な音楽好きの女の子です。
不平も言わずせっせと働くので家族の皆のお気に入りです。

四女エミィは12歳で、おしゃれに余念がないおませさんです。
勝ち気でプライドが高く、体罰が気に入らず学校を退学したりします。

なにしろ年若い姉妹のことですから喧嘩もあり、良い子になろうと誓っても
つい仕事や勉強を怠けたり、お姫様のように贅沢な生活を夢見たりするわけですが
姉妹のお手本となる賢母マーチ夫人に諭されて正しい道を見いだしていきます。
また、隣人のローレンス様やその孫ローリィ、長年仕えてくれるハンナなど
温かい人たちに囲まれて優しい気持ちを取り戻しながら成長していくのです。

マーチ氏の重病、母の不在、そしてベスの危篤などを乗り越えた時
一家揃っての幸せに満ち満ちたクリスマスがやってきます。

内容について言えば何ひとつ汚れたところがなく清らかで
少女たちに読んでいただくのに適している物語だというのは分かります。
ただ文章は月並みだし、展開は見えてるし、「こんなこと言いそう…」と思えば
その通りのことしか言わないしで、あんまり面白みのある物語ではありませんね。

無くなったっていいやとは思いませんが、今となっては誰が買うんだろうか?
10代の女の子はこういうの読みますか?
私はどんな本だったか思い出せずに買いましたが、覚えていたら買わなかったでしょう。
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『ママがプールを洗う日』アメリカ人て楽そう・・・

2009-04-26 00:19:05 | アメリカの作家
ONE WAY OR ANOTHER 
1986年 ピーター・キャメロン

80年代のアメリカが舞台になっている物語が13篇つまっている短篇集です。
決して明るい話ではないのですが、深刻さがなくて、行き当たりバッタリで
「なんとかなるさ」な風が吹きまくっています。

主人公たちは失業したり、恋人と別れたり、両親が離婚したりと
アンラッキーな目にあっているのですが、かなり淡々と暮らしています。
アメリカ人はおおらかなのかしら?
まあ、いつもいつも苦悩している人たちよりは付き合いやすいよね。

『大移動(Grounded)』
住み慣れたコネチカットを離れて、カリフォルニアの両親のところへ移り住むおばあちゃんを
車で連れて行くことになったので、恋人のアンを誘うことにします。
家の前でセールをやってゴミも出して、さあ出かけようという時になって
アンは「行けない」と言い出しました。

『フレディ、髪を切る(Fredie's Haircut)』
ピアスをあけてみたフレディですが母親以外誰も気がつきません。
会社でちょっと気になる同僚のダイアンが「髪が長いせいだ」と言って
切ってくれていたら所長に見つかってクビになりました。
髪を整えに入った美容院を出た時、フレディは泣かないようにこらえていました。

『その日のできごと(What Do People Do All Day?)』
ダイアンは夏の間マークとウィルのベビー・シットをしています。
ふたりの父テッドはテレビ局に入るため就職活動中、ウィルの母のヘレンはパート中。
テッドの別れた妻でマークの母アネットは、毎日ふたりが出かけると
庭のプールに泳ぎにやってきます。
ダイアンは1ヶ月前にテッドとの不倫を清算されてしまいましたが
週に1回だけは会ってやってもいいと言われました。

以上、別離と解雇と不倫がテーマになっているものを紹介しました。
どの話にも「なんでなんだよ!」と取り乱す人はおらずサッパリしてます。

ママやパパ、兄弟姉妹などファミリーはよく登場しますけど
会話がある割にはほのぼのムードが無く、むしろ孤独感さえ漂っています。
この本を読んで「両親は大切にしなきゃ」とか「家族ってありがたいな」という
教訓は得られません。
これらの家族を言い表すとしたら “ つかずはなれず ” がピッタリです。
アメリカ人的独立心の現れか? はたまた家族愛の欠如か?

それから、どの話にも結論らしきものがありません。
ただ「これからどうなるの?」と知りたくなるということもありません。
まぁ、人間の毎日なんてそんなもの… Let it be でございます。
そうやって生きて行く方が楽なのかもしれませんね。

読んでいる時はとても面白いエピソードに思えました。
でも特に心に残るという内容ではありませんでしたね。
そのかわり、世間の問題はいつも変わらぬものよだなぁ…と実感しました。

ママがプールを洗う日 筑摩書房


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こちらは単行本
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『マラマッド短編集』頑な人々の悲哀

2009-04-17 23:15:13 | アメリカの作家
THE MAGIC BARREL 
1958年 バーナード・マラマッド

単純にこの本から受けた印象だけを述べているので、怒らないで下さいね。
ユダヤ人の方々は頑固ですかね? そしてちょっと図々しいのかしら?

“ 頑固 ”という言葉を “ 我慢強い ” と言い換えてもいいのですが
じっと耐え忍んでます、登場人物たち。
“ 図々しい ” は文字どおりで、てこでも動かんぞ!何言われても気にせんぞ! と
いう姿勢に脱帽です(でも、なるべく関わり合いたくないかも…)
そんな図々しい人と我慢強い人のやりとりは、おかしくもあり哀しくもあり…
どちらかというと哀愁が漂っています。

収められている13篇中、10篇がユダヤ人の物語ですが
そういうことは関係なく特に好きだった物語をあげてみます。

『弔う人々(The Mourners)』
年金で慎ましく暮らす頑固な老人ケスラーは
アパートの管理人と仲違いしたばっかりに家主のグルーバーから立ち退きを迫られます。
断固として居座るケスラーは、とうとう家具ごと路上に放り出されてしまいました。

両隣のイタリア人母子とドイツ人夫婦が泣けるのよね。
ニューヨークの片隅で暮らす異国人たちの連帯感というのでしょうか。
友人が暮らしていたロンドンのフラットのイタリア人は…やめときます。

『夏の読書(A Summer's Reading)』
仕事をせずにぶらぶらしているジョージは、ある夏の夜の散歩中
カンタラザ氏に虚栄心から「夏の間に100冊の本を読む」という嘘をつきます。
翌日から街の人々の感じが良くなりいい気分になったジョージですが
どうしても本を読む気にならず、次第にいたたまれなくなります。

この物語は、ただ単に羨ましかっただけなのね。
何もしないで本だけ読んでりゃいい夏なんて…素敵すぎる。
でも実はもっと奥が深い物語です。

『魔法の樽(The Magic Barrel)』
ラビになるリオは結婚した方がいいと教えられ仲介業者サルマンズに依頼しました。
しかし彼が紹介する女性はどれも気に入りません。
ある日サルマンズが無理矢理置いていった写真の1枚に運命の女性を見つけます。
ところがサルマンズは、その女性だけは相応しくないと言い張ります。

もしかしたら策略かもしれないのですが、それでもいいじゃないの、と思えます。
サルマンズが可哀想すぎて… 私も営業やってましたのでね。
しかし仲介業者に頼むのがポピュラーというのはびっくりしました。

『借金(The Loan)』という、友人に借金を頼みにいく人の話しが好きなのですが
以前『アメリカ短篇24』で紹介していたので割愛します。

どの物語も、究めて現実的に、いやになるほど現実的に進んでいくのですが
最後の最後に「およ?」と終わるものが多々あり、それがちょっとむずがゆい。
それでも総じて面白く読める1冊でした。

「ヒットラー」「ナチスの焼却室」などの言葉もあって、時代的に無理もないですが
ユダヤ人のこの強い疎外感は他人の私が読んでいても辛くなります。
作中にも「どこへ行っても嫌われてばかりだ」と嘆く人が登場します。
50年ほど前の物語ですから今は違うと(そうあってほしいと)思いますが…

喋る馬 スイッチパブリッシング


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この短篇集、すごく欲しい・・・迷ってます
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『犬は吠える1』“2”はあるんでしょうか?

2009-04-15 01:22:59 | アメリカの作家
THE DOGS BARK 
トルーマン・カポーティ

各国を巡って綴った『ローカル・カラー』と
いろいろな有名人の印象を書き留めた『観察日記』の2部構成になっています。

『ローカル・カラー』の何篇かはちくま書房の『カポーティ短篇集』
収められていて既読ですが、再度読んでも印象深さに変わりはありませんでした。
旅先で書かれているとはいえ、各地の名所案内をしているわけではなく
その土地で出会った人々の瑞々しいスケッチが記されています。

気になった土地ではなく人々をあげてみます。

『ブルックリン』のミスQ、地下室で働きづめの若い女性です。
同じく『ブルックリン』のチェロキーホテルに長期滞在する老人たち。
『ハリウッド』で30年間サバイブしてきた女性P。
『ヨーロッパへ』のヴェネチアの不良少女ルチア。
『イスキア』の料理女ジョコンダ。
『タンジール』で古い街を守ろうとへとへとになるジョニー・ウィナー。

まだまだ気になる人はたくさんいるのですが厳選してみました。

特に『ローラ』が秀逸です
カラスのローラがやって来て去って行くまでの話しですが
中でもローマで向かいに住んでいたシニョール・フィオリが・・・
くどくどと描かれていないのに、ローラのことが可愛くてしかたがないという
様子がものすごく良く分かります。

『ローカル・カラー』は、ちょっとモームっぽい気がします。
『コスモポリタンズ』かしら?
あくまでもパッセンジャーとして深入りせず、訪れた地で出会う人たちの
断片を伝えることで、読者である私たちにストーリーを想像させてくれます。

『観察日記』では、アイザック・ディネーセン(『アフリカの日々』ですね)や
モンロー、アームストロング、ボギーなどそうそうたる人々のことを記しています。

印象深かったのはエズラ・パウンドです。
最近読んだ『移動祝祭日』の中でもヘミングウェイが書いていましたが
なんて慈悲深い人なんだろう・・・ こんな人がいるとは思えない。

カポーティの、どちらかというと素朴で善き人である面が表れた1冊だと思ったら
最後の『自画像』で、理屈屋であり皮肉屋である側面が顔を出します。
それはそれで面白いのです。
『自画像』はカポーティのインタビューなのですが、本当にインタビューされているのか
インタビューの形をとって自分のことを書いているのか分かりません。

ますますカポーティという人が分からなくなってきて
俄然興味がわいてきました。

ローカル・カラー/観察記録―犬は吠える〈1〉早川書房


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詩神の声聞こゆ―犬は吠える〈2〉早川書房


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“ 2 ” がありました! 買いました。
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『ベンジャミン・バトン』人間てよくできてる!

2009-04-05 00:37:14 | アメリカの作家
THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON 
スコット・フィツジェラルド

映画を観に行く気は(今のところ)ないのですが
表紙が “ ナイトホークス ” だったので、つい買ってしまいました。

『ベンジャミン・バトン』だけに限って言えば、まちがいなく面白いです!
でもこのまま映画にしたらせつなすぎるんじゃないかしら?

『ベンジャミン・バトン(The Curious Case of Benjamin Button)/1922年』
バトン家に生まれた70歳のベイビーが歩む数奇な人生。
最初の友人は祖父でした。 そして父親と気心が知れ合うようになり、結婚し
大学に入り、息子に叱られるようになり、孫と保育園に通います。
最後は乳母の手に委ねられ、記憶は薄れていきます。

例えばこれが当たり前の世界だったらどうなんでしょう?
でもこう言っちゃなんだけど、年をとって老いてから亡くなる方が
若返ってあどけない姿で亡くなるよりあきらめがつきそうだものね?
ベンジャミンは逆さまの人生を生きてしまったために
普通の人が受けられる愛情を与えられていないと思うのですが…
映画はどうなっているのかしら?

全部で7篇収められている短篇集です。
好きというわけではないが、気になったという作品をあげてみます。

『レイモンドの謎(The Mystery of The Raymond Mortage)/1909年』
レイモンド家の娘と使用人が殺され、夫人が行方不明になります。
警察署長イーガンと新聞記者サイレルが謎を解いていきます。

珍しくミステリーですよ!でも面白くないんだよね。
消えた抵当証書はどうなっちゃったわけ? なんて思っていたら、なんと
13歳の時に書いた物語なんですってさ! しかも雑誌に掲載されたんですって。
作家になるべくしてなった人だったわけですね。

『モコモコの朝(Shaggy's Morning)/1935年』
おばあちゃんが出かけてしまったので、友達と駆け回り疲れて帰ってきた犬の目の前で
仲良しの大きな犬が轢かれてしまいました。
おばあちゃんは帰って来ると骨付きのごちそうを出してくれました。

ありがちな動物目線小説です。
主人公のワンちゃんははいきいきしていますが、 とりたてて面白くありません。
ただフィツジェラルドがこういうの書く? と思いまして…
晩年ですから、小銭を得るために書いていたのでしょうかね?

むかし凝りまして、『グレイト・ギャツビー』をはじめ何冊か持っていますが
彼は南部にかなり偏見がありますよね?
南北戦争はとうに終わっているというのに、1920年代はまだ南部VS北部の
考え方が根強く残っていたのかしら?
それとも何か恨みでも? そういえばゼルダは南部出身ではないですか?
ゼルダのなにかが理解できなかったのでしょうか?

ベンジャミン・バトン 角川グループパブリッシング


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余談です
先日見つけたんですが、カポーティの『叶えられた祈り』の表紙もナイトホークスです。
ホッパーはアメリカ作家に大人気なのかしら? 私も大好きですが。
村上春樹さん訳のペイリーもホッパーですもんね。

              
                  こちらがカポーティ

余談2です
今週発売のテレビブロス、村上春樹特集やっててすごく面白いんだけど!
本人の写真が載っていますが、許可だしたんですかね?
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『アンダスン短編集』大国アメリカの薄闇

2009-03-13 01:18:07 | アメリカの作家

1919年~ シャーウッド・アンダスン

20世紀初頭のアメリカといえば(たぶん)人が増え大都市が出来、経済も成長著しく
大国としての歩みを加速していた時代にあたると思うのですが
そういう成長の波に乗り切れない、あるいは取り残されがちな人々を描いた
せつない9編が収められています。

もう、ものすごく好きなラインの1冊です。

『卵(The Egg)』
養鶏場の経営に失敗した両親が、辺鄙な駅の向いでレストランを開店しました。
ふたりは交代で朝から夜中まで真面目に営業し、わずかな常連もついたのですが
寡黙で陰気な父が、急に愉快な人気者のおやじになって店を繁盛させようと決心します。
それは悲劇を招く決心でした。

あるがままの自分でもちゃんとお客さんは増えていったと思うのに
どうして人気者おやじになろうなんて考えついたのでしょう?
少しでも繁栄を享受したいという小さな欲望がもたらしたのでしょうか?
人には、向き不向きがあるのでねぇ… 心がけは立派でも上手くいかないことがあります。

『悲しいホルン吹きたち(The Sad Horn Blowers)』
子供っぽい父がびっくりパーティではしゃぎすぎたばっかりに大けがをしてしまい
冬の生活が台無しになってしまったウィルは仕事を得ようと都会に出ます。
列車の中で出会ったホルン吹きの老人の下宿に部屋を借りたウィルですが、
なかなか都会に馴染めず、つまはじきになっている老人の話し相手にされてしまいます。

ウィルって優しい人ですよ… 老人たら毎晩部屋にやってきてはおしゃべりするんです。
私なら「ちょっと眠いんで 」とか言って出ていってもらいます、きっと。
故郷を出るということが、簡単なことではなかった時代を少し感じることができました。
でも長年いれば都会に染まっていくのでしょうね?  そういうもんです。

『森の中の死(Death in The Woods)』
農家の女中からならず者の妻になり、ならず者の母親になった女性の辛いだけの一生。
彼女は家族や家畜や飼い犬に食べさせることだけに人生を捧げていました。
ある雪の日、彼女は食料を買いに出かけ、森の中で一休みをして、そのまま死にました。

これは… 時代やシチュエーション関係なく、こういう女性はいると思うんですけど
世が世なだけにならず者のレベルが違いますよね。
「死んだ方が幸せだったろう」と他人が言うのは、とても残酷なことですが
そう思わずにはいられない人もいるんじゃないかなぁ…

『とうもろこし蒔き』はドーデーの『老人』という話しが思い出されて好きでした。

ヘミングウェイの『移動祝祭日』の中でアンダスンを褒めたたえている部分がありました。
また、スタインベックもかなりアンダスンの影響を受けていたということです。
ノーベル文学賞を受賞した作家たちに認められていたというのは
もちろん作家としての才能もあるのかもしれませんが
アンダスンの物語の中にアメリカの魂みたいなものが宿っているからかもしれないですね。
悲しいかな、私には容易に見つけられませんけれど…
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『移動祝祭日』パリのアメリカ人たち

2009-03-11 22:13:41 | アメリカの作家
A MOVEABLE FEAST 
1960年 アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイの小説、1冊も読んでないんですよね。
本棚に『日はまたのぼる』と『短篇集2』がありますが、読んだ覚えがないのです。
これは私の読まず嫌いによるものです。
ヘミングウェイって私の中では、男臭い荒くれ者のイメージが強いんですよね。
小説の内容も武勇伝ぽいものばかりなんじゃないかと思っているんです。

ヘミングウェイが最初の妻ハドリーとパリで暮らしていた5年間のことを綴った1冊ですが
彼のイメージが少し変わり、穏やかで寡黙な人に思えてきました。
もしこの本のとおりの人だったらですけどね。

その当時のヘミングウェイは大作を発表する前で、新聞に寄稿したり記事を書いたりした
原稿料で生活していたようですが、貧乏自慢っていうのかしら?
貧しかった頃の日常を楽し気に描いています。
地位や名声、成功や富を手に入れた人って「昔は貧乏でさぁ」って話しが好きよね?
すごく嬉しそうに「あんなものまで食べたよ」「こんなバイトもしてたよ」ってね。
「オレは昔相当のワルでさ」という人の話しよりは好きです、私は。

好きだったのは “ シェイクスピア書店 “ のエピソード、素敵な書店でした。
若い才能が集まって文学について語り合う、そんな書店の女主人になれたらいいですね。

やはりパリだなぁ、と思ったのはアカデミックなアメリカ人たちの
ちょっとしたコミュニティができていることですかね?
画家などの芸術家が集まるという印象はあったけれど
作家や詩人もパリを目ざしたんですね。
ヘミングウェイとパリ、なんだか似合わない気がしますが、わりとしっくりいってます。

パリで交際した著名人も多数登場するのですが、あの人もこの人も知っている、と
いうような自慢タラタラなものではなく、やっぱり芸術家なのね~と思わされる
何かを超越した人々のエピソードにある意味感心してしまいました。

スコット・フィッツジェラルドとヘミングウェイは仲が悪いと承知していましたが
パリでは(ヘミングウェイの忍耐によって)仲良くやっていたみたいですね?
ヘミングウェイはフィッツジェラルドの堕落が妻ゼルダに負うところが大きいと
考えていたのか、彼女に対してはけっこう辛辣です。

私の勝手な想像ですが、この1冊だけからうけた印象では、ヘミングウェイは
最初の妻ハドリーのことは本当に愛していたみたいなんだけど
ふたり目の妻ポーリーンは「やっちゃったなぁ…」と思っていたような気がします。
そこのところ、どうなんでしょうね?

スペイン篇やキーウウエスト篇もあるのでしょうか? あったら読んでみましょう。
もしかしたら、そこでは荒くれ者のヘミングウェイの姿が見られるかも…
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『デイジー・ミラー』最後まで読んでみて!

2009-02-27 00:11:04 | アメリカの作家
DAISY MILLER 
1878年 ヘンリー・ジェイムズ

最後の最後まで “ つまんない話し~ ” と思いつつ読んでましたよ。
ところが最後の6ページでちょっと考えが変わりました。

長年ジュネーヴで暮らしてきたアメリカ人青年フレデリックが
アメリカからヨーロッパ旅行に来ていた若い娘デイジー・ミラーに魅せられ
彼女と関わった半年あまりの間の物語です。

デイジー・ミラーは、おきまりのとてもとても美しい娘で
自分でも十分そのことを認識している様子…かなり高慢ちきにみえます。
無邪気で奔放で、当時の堅苦しいヨーロッパの(上流階級の)考え方や習慣は
理解できないし、理解したくもないというタイプです。

一方のフレデリックはアメリカ人ですが、長くヨーロッパで暮らしたために
思考がヨーロッパ的になっているし、一緒にいる伯母が昔気質で
蓮っ葉で下品な女は大嫌い、ときています。

夏のヴェヴェーで3日ばかりの親交を結んだふたりは冬のローマで再会しますが
デイジーはかの地で常識人なら眉をひそめるほど目に余る行動をしていました。
(といっても、男性とふたりで出歩いたり夜遅く男性の客があったり、という
 ぐらいのことなんですけどね)
フレデリックは、美貌のイタリア男性ジョヴァネリと連れ立って歩くデイジーを
不快に思いながらも慕い続けますが、ある夜、突然彼女への思いが冷めます。

フレデリックという人は、デイジーに会った瞬間からメロメロで
お世辞三昧だわ、彼女を庇うわ、言いなりになるわで見ててムカムカするのよね。
ローマでは、ジョヴァネリと出かけて留守だったり、ジョヴァネリと
一緒だったりするのに何度も何度もデイジーを訪ね、バカにされても顔を見に行って…
「なんだこいつ」状態ですよ。
顔がきれいだったらそれでいいのか~  そりゃそうだろうけど…

そんなわけで私はてっきり、面食いフレデリックの恋と破局、あるいは成就までを
綴ったものだと考えていたわけですが、最後にもしかしてそれは間違いではないか?
これはデイジーの恋の物語ではないか? と思ったのです。

物語の中に、デイジーが “ ◯◯と思った ” という場面や
デイジーの感情を表す言葉は一切でてきません。
ところどころ “ 怒ったようだった ” とか “ 無関心そうに ” などと書かれていますが
それは全てフレデリックが感じたことで彼女がそうだったというわけではないのです。
けれども最後にデイジーの恋心が、手に取るように、というのは大袈裟だとしても
かなり鮮明に見えるのです。

幼稚で未熟なアプローチだったかもしれませんが、若い娘なりに一生懸命悩んで
考えだしたと思われる “ 相手の気を惹こう作戦 ” 。
このやり方は失敗も多いしあまり賢明だとは思えませんが、健気です。

とりあえず最後まで読んでよかった

デイジー・ミラー 新潮社


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『フォークナー短編集』白と黒の呪縛

2009-02-26 01:26:15 | アメリカの作家

ウィリアム・フォークナー

なんて言えばいいんでしょう?
私はこの本の中に収められている8篇の、どの登場人物にも
好意を抱くことができません … なんらかの感情すら持てないですね。

これらの短編の多くは舞台が南部で、白人、黒人、インディアンが登場している
ストーリーなのですが、当時どういう行いが “ 是 ” とされて
何が “ 非 ” とされるのかを判断するのはとても難しいという思いしかありません。

もちろん奴隷制度や一人種による他人種への迫害などが悪であることは
現代に生きるものなら理解していることですが、それが当たり前とされる環境に
生きていたら自分がどういう行動をとるか、まったく予測がつきません。
いったいどうしているだろう? 私は長いものに巻かれるタイプだからなぁ…

たぶん、南北戦争直後(1865年)あたりの物語が描かれているのですが
フォークナーはこちらが悪でこちらが善である、という書き方はしておらず
起こった事のみを淡々と連ねています。
人物の性格や感情などはできるだけ排除され、事の成り行きに釈明などもなく
善悪を判断する材料を与えることさえ拒んでいるようにみえます。
ありのままを受け入れろということでしょうか?

いくらか好きな物語は他にあったのですが、人種にふれた作品をあげてみます。

『あの夕陽(That Evening Sun)/1931年』
コンプトン家の料理人ナンシーは姿を消した夫ジーズアスを怖れて
独りで自分の小屋へ帰りたがらず、家の子たち3人を執拗に誘って連れ帰ります。
子供を迎えにきたコンプトン氏は恐怖に怯えるナンシーを独り残して小屋を後にします。

『乾燥の九月(Dry September)/1931年』
中年のミス・クーパーが黒人男性のウィル・メイズに乱暴されたと言いだし
町の白人男性たちはいきり立ちます。
ふたりを知る理髪師ブッチは濡れ衣だとウィルを庇いますが、怒った男たちの
私刑(リンチ)を止めることはできませんでした。

『孫むすめ(Wash)/1934年』
戦争後も北部へ行かず、20年もの間サトペン大佐に仕えてきた老人ワッシは
落ちぶれ酒浸りになった60歳ちかい主人が、自分の15歳の孫むすめに
手をだした時も責めようとはしませんでした。
しかし、孫むすめが女の子を生んだ時「雌馬なら立派な小屋を造ってやるのに」と
いうサトペンの言葉を聞いたワッシは今までにない行動にでます。

『あの夕陽』は黒人夫婦の問題になるべく立ち入るまいとする主人一家の話しです。
憐れみをかけてあげるでもなく、放り出すでもなく…
使用人に煩わされたくないという姿勢がみてとれます。

他2篇は、概要だけ読むと白人の横暴ということになるのでしょうが
彼らは何十年もそうやって生きてきた人たちです。
「あなたたちのやっていることは酷いことなのだ」と言われたところで
キョトンとするだけでしょうし、笑い出すかもしれません。

この本を十何年ぶりに読んだ今、オバマ大統領の就任がアメリカにとって
どれだけ大きなCHANGE!であるか、少しだけ分かったような気がします。

余談です
『納屋は燃える』(Barn Burning)というのがありまして
怒りのあまり納屋に火をつけてばかりいる男性の話しなんですが
放火の理由は全く違うけど、村上春樹氏に『納屋を焼く』という短編がありますよね?
なにかインスパイアされたのかしら? それとも無関係かしら?
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『ゲイルズバーグの春を愛す』あぁ、勘違い ヾ(_ _。)

2009-01-15 22:21:34 | アメリカの作家
I LOVE GALESBURG IN THE SPRINGTIME 
1962年 ジャック・フィニィ

大掃除で見つけた本、第2弾ですが・・・
わたくし、完全にアンダスンの『ワインズバーグ・オハイオ』と混同してました

表題の『ゲイルズバーグ~』の主人公が若い新聞記者だったことと
昔ながらの町の雰囲気に、完全にゲイルズバーグを舞台にした連作だろうと思ってました。

しかし、この短編集に収められているのは
アメリカの各地を舞台にしたファンタジックでノスタルジックな物語の数々でした。

『ゲイルズバーグの春を愛す(I Love Galesburg in the Spring Time)』
新聞記者オスカーは、町で起こる不思議な出来事に気がついていました。
ゲイルズバーグの古き良き町並みを守ろうと、過去から廃止された市電や旧式の消防車
亡くなった人々が姿を現すのです。

『クルーエット夫妻の家(Where the Cluetts Are)』
若いクルーエット夫妻は、設計士ハリーの家で見つけた古い設計図どおりに
19世紀さながらの家を建てます。
しばらくしてハリーが訪ねてみると、二人はまるで19世紀にかえったような
ドレスやスタイルで生活をしていました。

『時に境界なし(Time Has No Boundaries)』
大学教授ウェイガンはイリーン警部に呼ばれ、不可解な失踪事件を聞かされます。
失踪しているのは微罪を犯した人々で、みな過去に逃げていると言うのです。
そして、彼らを過去に逃したのはウェイガンだろうときめつけます。

以上、特に郷愁の感がある3作をあげてみました。
いわゆるタイムマシーンもののような、冒険がらみの物語ではありません。
過去を懐かしみ愛するあまりに説明のつかない出来事を肯定してしまう人たちの
不思議で素敵なエピソードです。

私も小花柄のスモックドレスなんかを着て、大草原の小さな家的に過ごしてみたいわ
などと憧れたものですが、これだけ何もかも揃っている現代に暮らしていると
難しいものかもしれませんね・・・不便で。

たとえばブルーレイ内蔵テレビとか、お掃除ロボットとか、ミストサウナなんかの
便利すぎるものは無くなっても耐えられるとして、冷蔵庫や洗濯機がないなんて
考えただけでウンザリ  主婦の重労働が増えてしまふ・・・
だいたい、電気やガスがないっていうのが信じられないですよね。
どうやって生活しろというのかね?
それから乗り物! 馬飼わなきゃ!!

結局、過去は懐かしむためにあるものなんですね。
戻れないから素敵に思えるものなんでしょうねぇ・・・
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『ジェニィ』猫には猫の哲学がある!

2009-01-09 00:58:31 | アメリカの作家
JENNIE 
1950年 ポール・ギャリコ

主役は2匹の猫ちゃんです。
これが  愛あり、冒険あり、人情ありの素晴らしい物語なんですよ。

ポール・ギャリコの作品は『ポセイドン・アドベンチャー』が映画化されていますが
『ジェニィ』も映画化してほしい~っ。
本物の猫ちゃんでやると動物虐待になっちゃうかもしれないから
(けっこうハードなシーンが多いと思いますよ)
CGとかコマネコちゃんみたいな人形ではどうでしょう?

8歳のピーター・ブラウンはいきなり白い猫になってしまいます。

こういう “ 朝起きたら虫になってました ” 的な話しは苦手なんですけど
猫だから・・・と思い読み進むと、もう止まらない。

献身的にピーター猫を世話し導いてくれる、高貴な血統の雌猫ジェニィと
助け合って生きるうち、ピーター猫はたくましく成長します。

途中から、この本は猫が書いたんじゃなかろうか? と戸惑うほどでした。
だって、ジェニィが教える猫としての作法や掟は
どれをとってももっともなことばかりなんですもの。

大ネズミと小ネズミの捕まえ方の違い、ミルクを飲む時の舌使い、
毛繕いのタイミング、道の歩き方、いかにして船乗り猫になるか
犬種別犬のあしらい方、他の猫の縄張りでのご挨拶などなど
まるで本当に猫が語っているように道理にかなっています。

確かに、ピーターが初めてネズミを食べるところなんか
「オエ~」って思っちゃうのですが、生きるためですからね。

船乗り猫となってグラスゴウまで行く途中船から落ちて溺れたり、野犬に襲われたり
高い塔からハシゴ車で助けられたりという危機を一緒に乗り越えた2匹はまるで恋人同士

あぁ、それなのに・・・
妖婦タイプのシャム猫ルルウに惑わされてしまうピーター。
男って人間も猫も同じなのかしらん?

結局ジェニィこそが大切なパートナーだと気がついたピーターですが
彼女には野蛮猫デンプシィの魔の手がせまっていました。
ピーターは果敢に決闘を挑みます。
さて、その結末は?

やっぱ、そうなっちゃう? というラストはいささか残念でしたが
仕方がないのかもしれません。

とびきりのファンタジーを堪能できた1冊でした。

ジェニィ 新潮社


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 余談です
ポール・ギャリコの『猫語の教科書』というのも持ってるのですが未読です。
「猫が好きなんだね」と思っていたら、24匹も飼ってたんですって!
猫カフェみたい・・・うらやましいです。
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『ワインズバーグ・オハイオ』若者は都会を夢見る

2008-12-27 07:36:46 | アメリカの作家
WINESBURG,OHIO 
1919年 シャーウッド・アンダスン

スタインベックを続けて読んだら、アンダスンを思い出してしまって
『ワインズバーグ・オハイオ』を再読してみました。
訳者(橋本福夫氏)も一緒だったせいか、同じ本を読んでるのかと思ってしまいましたが
どちらかというとこちらの方が暗いですね・・・
あたかもワインズバーグという町が
夢破れた人たちの吹きだまりのように思えてしまいます。

25の短い物語には、切実な思いと孤独を抱いた様々な人たちが描かれていますが
全篇通して読むと1冊の物語に思えるのは、ジョージ・ウィラードという
ひとりの若者の存在によるものです。

ジョージ・ウィラードはワインズバーグ・イーグル紙という新聞社で
記者をしている十代の少年です。
老人も、変わり者も、なぜかジョージに打ち明け話をしたくなってしまい
彼は随所に顔を出します。
ジョージ自身も作家になりたいという希望と、思春期なりの悩みを持ち
また、父親と母親も人生に憎しみと不満を抱えています。

物語はジョージ・ウィラードの青春と家庭内の問題に
町の住人の奇異な行動をリンクさせて進んでいくわけですが
大きく分けると2パターンあるようです。

まず、人生の晩年にさしかかった人たちの後悔と絶望があります。
うまくいかなかった自分の人生、取り返しのつかない年月を哀れんで
あきらめとともに日々を送る人たち。

それから若者の焦燥感と満たされない欲望があります。
彼らが辿り着く答えは “ 都会 ” です。
都会へ行きたいという思いが叶わない人、出ていく人、帰って来た人、
などなどが登場します。
都会に行けばどうにか道が開けるだろうという思いに駆られるのは、今も昔も同じですね。
当時の都会と田舎にどれほどのギャップがあったのかは分かりませんが
やはり憧れの都で花開く自分の姿って、若者なら一度は夢見るものですよね。

物語はジョージ・ウィラードが都会に出発するところで幕を閉じます。
彼は作家になるため、都会の新聞社で働こうという目標を持っています。

ジョージの父親は旅立ちにあたって息子に
「 抜け目のない人間になれ 」という言葉を贈ると同時に
「 財布を無くすな 、ぼやぼやするな、世間知らずだと思われるな 」という
簡潔かつ完璧なアドバイスを与えています。
都会って恐ろしそうですものね。
ジョージは都会で成功できたのかしら?
けっこうぼんやりしてる子に見えるんですけど。

この物語がアンダスンの自伝的要素を含んでいるのだとすれば
(アンダスンもオハイオ出身です)
ジョージもひとかどの人物になれたのかもしれないですね。
       
                 
            こちらアメリカでの初版です。やっぱり暗そう・・・
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