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まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『天の牧場』この世に天国は見つかりますか?

2008-12-19 21:58:38 | アメリカの作家
PASTURES OF HEAVEN 
1932年 ジョン・スタインベック

この『 天の牧場 』は、『スタインベック短篇集』の中に2編収められているのを読んで
どうしても読みたくなり、ネットで探してけっこう高値で購入しましたが・・・
いやぁ! 買って良かったです。
なぜ絶版になってしまったのか、まったく理解できない。
私にとってはとても読み心地よい作品でした。

20世帯あまりの人々が暮らす “ 天の牧場 ” と呼ばれる肥沃な谷があります。
その中で起こった印象的なエピソードが12の章によって紹介されていますが
各章に題名はなく、1~12のナンバリングがされています。

ひとつひとつが短篇小説としても成立していますが
全てを集めるとひとつの村の姿が浮かび上がり、さらに印象深いものになります。
『キャナリー・ロウ』 もこういう形式がとられていましたが
あちらはもう少し各章に繋がりがあって、長編小説ともいえるものでした。

スタインベックが、アンダスンの『ワインズバーグ・オハイオ』にインスパイアされたと
『 キャナリー・ロウ 』の解説で読みましたが
こちらの方がより影響をうけているのではないかと思います。

少しいびつな誠実さや、笑うに笑えない虚栄心、異なる正義感、人を縛りつける理想、
純粋な心の病などが、住民の姿を通して描き出されています。
時代や環境はまったく違っても、人が抱える闇はあまり変化がないということを
感じることができました。
“ 天の牧場 ” などという平和そうで牧歌的な土地においても同じことです。

どれもが心に何かを投げかけてくるお話なのですが
特に印象に残ったものをささっとあげてみますと

5. 
ヘレンは、不幸を背負うことが自分の人生だと思っていました。
不幸な病を持つ娘ヒルダを、頑なに自分の手で育てようとするヘレンは
病がひどくなる娘をつれて “ 天の牧場 ” に移り住んできます。

7. 
家以外は何も残さず父が死んでしまい、残されたローサとマリアは
自慢のスペイン料理の店を開きますが、客があまり訪れません。
しかし、ローサがとったある行動で店は繁盛し始めます。

10. 
意地悪な両親の言いなりになって働いてきたパット・ランバートは
隣人マンロー家の娘メエのひと言で、両親の死後開かずの間になっていた居間を改装し
美しい部屋にして、彼女を迎えにいきます。

みなハッピーエンドではありません。
「 これから頑張って!! 」と言うのもなにか違う・・・
彼らは励ましの言葉や救いの手が欲しいのではないような気がします。
与えられた人生を受け入れて生きる潔さ・・・というのかな?
だからハッピーエンドじゃないけど、ど~んより気が沈むというのとも
少し違った読後感があります。

12. では遊覧客が谷の上から “ 天の牧場 ” を見ている場面なのですが
“ 天の牧場 ” が開発され、大きな農場が切り売りされ
家が増えて都会に変わっていくのでは? という今後を感じさせます。
それが一番寂しい印象をうけました。

今のアメリカを見れば、“ 天の牧場 ” のような村々がどうなっていったかは
言わずもがな・・・時は流れる・・・です。

“ 天の牧場 ” とはもちろん、その土地の景観の美しさもあるのでしょうが
なんだか、羊ならぬ人間が、神が造りたもうた地上の放牧場に解き放たれた様子を
指しているのかしら・・・? などと考えた1冊でした。

               
            こちら、アメリカ版1964年エディションだそうです
                       雰囲気がありますね


スタインベック全集 (1)
スタインベック
大阪教育図書


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『スタインベック短編集』荒野が見える!!

2008-12-04 02:17:06 | アメリカの作家

ジョン・スタインベック

80年前のアメリカの牧草地や町などを舞台にした
バラエティーに富んだ物語が収載された短編集です。

どの物語も目の前に牧場の囲いや、木造の小屋や、豊穣な麦畑が見えるようです。
これより50年前に書かれたゾラの『大地』の中で
フランスの農園主がしきりに「アメリカの小麦にやられる」と言っていましたが
この短編集を読んでいると、確かにアメリカの農場は広大で収穫量が多そうです。

特に情景が目の前に浮かんだのは『逃亡』で、これは人を殺してしまった青年が
ひたすら逃げる話しなんですが、『明日に向かって撃て』で
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが馬でひた走っていた乾いた荒野が
ぱーっと目の前に広がりました。

印象に残った物語をあげてみます。

『肩あて(The Harness)/1938年』
村で尊敬を集めている農夫ピーター・ランドールは
なぜ妻エンマが亡くなると変貌してしまったのでしょうか?
ピーターは、エンマに着けさせられていた肩あてを取り去った時
本当に妻の呪縛から逃れることができたのでしょうか?

知りたいですね、夫をうまく操る方法って。
魅力なのか魔力なのか分かりませんが、エンマという奥さんは尊敬に値するね!

『聖処女ケティ(Saint Katy the Virgin)/1938年』
性悪男ロアークに飼われていたケティは、飼い主も驚くほどの性悪な豚でした。
しかし、ある日税金の変わりに僧院に納められそうになって暴れるケティに十字架をかざすと
ケティは涙を流して改心します。

笑い話なのか、布教のためのありがたい物語なのかよく分かりませんが
とにかく豚が聖人として崇められるという、奇想天外なお話です。
でもこんなに人間味あふれる豚がいるなら、ぜひ見てみたいものです。

『怠惰(The Pastures of Heaven:Part6)/1932年』
からだを壊して “ 天国の牧場 ” にやってきた会計士ジュニアス・モルトビーは
田舎の美しさを楽しむあまりとんでもない怠け者になってしまいます。
そして息子ロビーと、貧しくも自由な暮らしを送るのですが
ある日ロビーが学校で見かねた村人から衣服の施しをうけてしまいます。

『 天国の牧場 』という連作ものの小説からは、もう一編『敗北』という物語が
選ばれていて、どうしても『天国の牧場』をまるまる1冊読みたくなってしまったのです。
そんなわけで、先ほどネットで購入してしまいました(高かった)

今までなぜスタインベックを避けてきたのだろう?
と後悔しきりな気分にさせられた1冊でした。

スタインベック短篇集 新潮社


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『夜の樹』心暖まらないファンタジー

2008-11-20 22:36:18 | アメリカの作家
A TREE OF NIGHT 
1945年~ トルーマン・カポーティ

私がカポーティに対して抱いている先入観は
たぶんこの本によるところが大きかったでしょう。
少しグロテスクで冷たい印象って言うのか、“ とりつく島がない ” って感じ
ちくま文庫版の短編集は南部やヨーロッパを舞台にしていて
けっこう人間味があったような気がしてるんですけど。

田舎や郊外を舞台にした作品と、ニューヨークなどの大都会を舞台にした作品に
決して小さくはない乖離を感じるのは私だけ?
あたかも田舎のカポーティと、都会のカポーティが二人いて、
好き勝手に創作活動をしているようにさえ思えます。
あまりにも作品に入り込んだため? 二重人格的な性格? 興味深いです。
短篇2冊読んだだけでこんなこと言うのもおこがましいんですが・・・

『最後の扉を閉めて(Shut a Final Door)』
初めての友人から奪ったマーガレット、パーティーで出会った女相続人ローザ、
そして恩人で恋人のアンヌ、次々と人を傷つけておきながらなぜ嫌われるかが
理解できないウォルターは会社もクビになってしまいます。
ニューヨークを去ろうと考えていると、見知らぬ誰かからの電話がかかります。

『ミリアム(Miriam)』
ある冬の日、ひとりで気持ちよい生活を送っている未亡人のミセス・ミラーは
優雅で弱々しい少女ミリアムと出会います。
ゆきずりのことだと思っていたのに、数日後ミリアムが
ミセス・ミラーの家のベルを鳴らします。 それも執拗に・・・

『夜の樹(A Tree of Night)/1945年』
女子大生のケイは、叔父の葬式の帰りに、汽車でひと組の男女の向かいに座ります。
いきなりしゃべりだした50歳ぐらいのだらしない派手な女に辟易するケイですが
次第にどうしようもない気持ちに襲われます。
女が水をくみに席を立つと、眠っていたような男がケイの方へ手をさしのべてきます。

以上、特にモヤモヤする3篇をあげてみました。

一種フリークスのようなファンタジー、夢のない幻想、
そして氷のように冷たく美しい、そんな物語でしょうか?
ハートウォーミングなものではありませんよね。

カポーティに関しては興味が湧いてきたので、他の作品も読まねば・・・
と思っています。

夜の樹 新潮社


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『本町通り』開拓者の末裔たち

2008-10-20 00:52:03 | アメリカの作家
MAIN STREET 
1920年 ハリィ・シンクレア・ルイス

裕福な有閑夫人の悩み、といってしまえばそれまでなんですが
それだけではないような…

完全に自分の進む道と居場所を間違えてしまった女性、
妻になるべきではなかった女性、一時代早く生まれてしまった女性、
自分を過信しすぎる女性、口ばっかりの怠け者女性、
主人公のキャロルをどう考えたらいいんでしょう?

キャロルは都会の大学を出て、都会で働いてきた女性。
進歩的な考えを持って、自分の仕事は、美しく近代的な町を造ることだと考えます。

自分の考えを理解してくれそうな医者ウィルと結婚して
彼が暮らすゴーファー・プレアリィーに移り住んだキャロルは
その町並みにも、旧弊な考えを持つ町民にも幻滅します。

新しい事を始めようとするキャロルの試みは、ことごとく失敗し
いつしか彼女もけむたがられるようになってしまいます。

様々な事件を経て町を出た彼女ですが、2年のワシントン暮らしの末
町へ帰る決心をします。

おおまかにいえばこんな物語ですが、20世初頭のアメリカにおける
田舎町が本当にこんなものだったのか?
ちょっと信じ難いものがありますね

『大草原の小さな家』から50年あまり、都会はすでに発展著しいのに
ちょっと離れた田舎町が、こんなにも閉鎖的で旧態依然としているなんて

例えば、この物語に黒人やインディアンは出てこないんですが
スウェーデン人やドイツ人に対してかなりの差別意識があります。
それから、小さな町の中でも階級意識がしっかり根付いています。

自由を求めてアメリカに渡って来た人々が、後からやって来た他国の移民に
こんなに冷たいなんて…

それに、なぜキャロルをはじめ“上流”の妻が働いちゃいけないんでしょうかね?
そして、上流階級と下級階級の境目はいったいどこなの?
同じ職業でも仲間に入れる人と入れない人の差は? 謎です。

主人公のキャロルに目を向けてみれば、志や考えは立派なんだけれども
安定している生活を壊すほどの情熱は持てないという、女性にはかなり多いタイプの人物。
「自分はもっとできるはず」「こんなはずじゃなかった」と思いながら
毎日が過ぎ去ってしまうという・・・

キャロルと対照的に書かれているのが、女教師ヴィーダ。
彼女は地道に静かに何年もかけて町を良くしようと働きかけ
新しい校舎を建てさせることに成功します。

“急いては事をし損じる”ってことでしょうか?

キャロルは、自由だ権利だとうるさい忌み嫌うべき人物か?
それとも自分の主張を貫く、新しいタイプの女性だと崇めるべきか?
作者がどう見せたいのかわかりづらい物語でした。
多分、後者だと思いますが、少し自己中心的すぎるようだし・・・

キャロルの夫ウィルはかなり年上で、辛抱強く仕事熱心ですが
現状に満足しきっている凡庸な夫。
賛否両論分かれると思いますが、私はこの旦那さんじゃなかったら、
キャロルはこんなに(ある意味)幸せではいられなかったと思いますけどねぇ・・・

夢や野望が叶わずに悶々とする女性は多いと思いますが
キャロルの望みは大きすぎたかも。
町を1個、自分好みにしちゃおうってんだから

ドバイの王様ぐらい財力がなくっちゃあね

本町通り 上 岩波書店


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まずは上巻から…

 ちょっとひと言
この本、最初に解説がついてるんですけど
ざっと読んでたらだいたい内容が分かっちゃったという・・・
困るわぁ、これから読むって時に。
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『O・ヘンリ短編集』素直な心で読みたい

2008-09-23 22:41:42 | アメリカの作家

O・ヘンリ(ウィリアム・シドニィ・ポーター)

1906年から1917年の間に出版された、10冊の短篇集から抜粋した46話を収載しています。

『善女のパン』『賢者の贈り物』『二十年後』『最後の一葉』『よみがえったっ改心』など
誰もが知っている良い話しを含め、人々の小さな良心や
ちょっとしたイタズラ心からおこるユーモアを軽妙に書き綴ったお話が収められています。

現代より素朴な時代だったとはいえ、舞台はニューヨークなどの大都会。
当時でいえば最先端の街です。
人間関係も田舎よりは疎遠だったでしょう。
そんな当時のアメリカでイキイキと生きている人たちのエピソード。
良い人は良い人だと、素直に認められる心で読みたい短編集でした。

(一)~(三)の中で、各々好きだった一編をあげてみます。

『水車のある風景(The Church with an Overshot-Wheel)/1911年』
避暑地レイクランズにある水車にまつわる悲しいエピソード。
水車の持ち主ストロング氏は十数年前、突然娘が姿を消してしまいました。
ある夏、彼はアトランタからやって来たチェスター嬢に出会います。

『ハーレムの悲劇(A Harlem Tragedy)/1910年』
フィンク夫人は、階下の友人カシディ夫人のように
夫から愛ある折檻を受けたいと切望しています。
ある休日、夫を怒らせようとしかけてみますが・・・

『荒野の王子様(A Chaparral Prince)/1907年』
11歳でつらい奉公に出された少女レナは、唯一の娯楽であるグリム童話まで
取り上げられてしまい、死を決意して母に手紙を書きますが
その手紙を運ぶ郵便配達員が、盗賊に襲われてしまいます。

短編の名人と言われたO・ヘンリ。
しかしこれだけたくさんあると、確かにやっつけっぽい話しもあります。
素朴すぎて、現代では少しこそばゆい物語もあるかもしれません。
でも、人間何が大切か?っていうことが少しは分かるような話しが満載です。

NHKも『中学生日記』とか流さないでさぁ(誰も観てないって!!)
どうせ現実味が無い話しだったら、この短編集の話しをドラマにして流したらどうかな?

“そんなバカな” なんて気持ちを持たずに、素直に読みたい短編集ですね。

余談です
O・ヘンリって本名じゃないんだね!
彼は詐欺で逮捕され刑務所に入ってた頃、ペンネームで小説を書き始めたらしいです。

今だったら、つい刑務所体験記とか出しちゃいそうだけど
彼は頑に過去のことを話すのを嫌がってたらしいよ。

才能だけで再出発した彼に拍手

今って、有名人とかの体験記があまりにも多すぎない?
そういうのって才能なのかな?

O・ヘンリ短編集 (1) 新潮社


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まずは1冊目から…
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『キャナリー・ロウ』単純で何が悪い!(>_<、)

2008-09-22 22:35:53 | アメリカの作家
CANNERY ROW 
1944年 ジョン・スタインベック

スタインベックといえば、ノーベル賞作家で
『二十日鼠と人間』や『怒りの葡萄』など、社会派の作家と思ってました。
したがって読んだこと無かったんですが、古本市で見つけて
ちょっと面白そうなので読んでみました。

たぶん、書いてて楽しかっただろうな と思える一冊でした。
登場人物の中に根っからの悪人はいません。
エピソードは純朴なものや、慈善精神が感じられるものばかり。
素朴な人々の交流は温かく、村を取り囲む自然は優しい。
ハムサンドやステーキはとてもおいしそうです

街のはなつまみ者マックとその仲間が人の良い先生のためにビックリパーティーを開こうと
企てたことから起こる小事件、大事件に、街の人々の小さなエピソードが盛り込まれ
最後はパーティーが成功のうちに終わる、っていう素朴で単純なお話です。

この物語はスタインベックが『怒りのぶどう』を書いた後に書かれたもので
箸休め的な作品に思われがちです。
人々の心理なんかも深く描かれているわけではありません。

でも、何気ない人々の日常にこそ物語が潜んでいるんだなぁ、としみじみ思われて
(当時の)アメリカ人に愛されたっていうのが分かる気がします。

単純な労働、単純な毎日、単純な人間関係、単純な風景
今となっては取り戻すことができなさそうなだけにセンチメンタルな気持ちになります

突然関係ないエピソードが登場して と思っていたら
アンダスンの『『ワインズバーグ・オハイオ』に影響を受けたと聞いて納得です。
無論、あちらはもう少し沈みがちだったけど、やはり一つの街を舞台にしたエピソードが
織り込まれている良い作品だったもの。

どうやらスタインベックは、実際に物語の舞台になった街に住んでいたみたいで
短篇の中にも度々登場します。
よっぽど愛着があったんですね

スタインベック全集 (9) 大阪教育図書


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こちらに『キャナリー・ロウ』が収められているらしいです
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『カポーティ短篇集』すっかり忘れてましたc(>ω<)

2008-09-04 02:32:44 | アメリカの作家
12 STORIES BY TRUMAN CAPOTE 
1946 - 1980年 トルーマン・カポーティ

先入観て良くないね。

読んだ覚えはないんだけど、カポーティが6冊うちにありまして
この本に至っては2冊あったという・・・
とりあえず短篇集から手をつけてみたところ、予想に反して好きでした。

カポーティといえば、都会的でクールで少々グロテスクな物語という
印象を抱いていたんですが、この中では最後の『無頭の鷹』が
ちょっとそんな感じだっただけで、後は暖かく人間味溢れるお話でした。
しかも、人を惹き付けて離さない書き方なのよね。 すごく良かった

『もてなし(Hospitality)/1980年』
叔父と叔母が営む南部の農場でふるまわれた腹一杯の昼食。
二人は通りすがりの人たちにも、庭のテーブルで心良くごちそうします。
そんな人たちの中で、印象に残った3人をピックアップしています。

南部って南北戦争の影響か、冷たい差別主義者っていう印象がありますが
ジェニングス叔父とメアリ・アイダ叔母のおおらかさって
でっかいアメリカ大陸に育まれた人柄って気がして素敵です。

『窓辺の灯(A Lamp of a Window)/1980年』
森の中で途方に暮れていた時見つけた、ポーチのある小さな家。
猫に囲まれて暮らす老婆の暖かいもてなしと、心地よい一夜の宿のお話。
最後にお婆さんから、ちょっと変わった秘密を打ち明けられます。

夜中に目が覚めたら、老婆が包丁を磨いで・・・というお話ではありません。
まるで現代のおとぎ話、いいお婆さんなんです、ホントに。
物騒な世の中でなけりゃ、こんな風に人に親切にしたいですね。

1~6話まではヨーロッパを旅した時の旅行記(っぽい話)ですが
カラフルな人たちが登場して、読んでいるだけで
とても愉快な気分になってきました

本当か嘘かは知らないけど、ゲイ(あるいはバイ)という噂があったカポーティ、
ちょこちょことそれらしいことを書いています。

『夜の樹』『草の竪琴』『ティファニーで朝食を』『遠い声 遠い部屋』 があるんですが
何一つ覚えてないので近々に読もうと思っています。

カポーティ短篇集 筑摩書房


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『ある婦人の肖像』ラスト、これでいいの?

2008-08-12 01:41:30 | アメリカの作家
THE PORTRAIT OF A LADY 
1881年 ヘンリー・ジェイムズ

いやぁ、期待しないで読んだら良かったわ
ヘンリー・ジェイムズの短篇集の表紙には“哲学のような小説”と書かれてるんですよね。
難しい?と構えて読んじゃったんだけどそんなことないです。
ちょこちょこ持って回った説明とかありますけどね

時代やスケールは違えども、バリバリやってる女性なら
だいたい同じようなことを感じるんじゃないでしょうか?

主人公イザベルはアメリカ生まれの才気あふれる若い女性です。
小さな頃から「賢い、賢い」と育てられて
自分の知性に並々ならぬ自信とプライドがあるわけです。

アメリカでもイギリスでも何人かの男性に熱烈に言い寄られる中彼女が選んだのは
高い知性と高邁な精神を持っていそうなギルバートという芸術家肌の世捨て人でした。
周囲の人たちの反対を押し切って彼と結婚した彼女ですが
結婚前と結婚後のギャップが早々に夫婦仲を冷めたものにしていきます。

ね、ありがちでしょ?

親や友達は「あんなやつたいしたもんじゃない」って言うんだけど
「私が選んだ人に間違いは無い」って結婚したのにっていう・・・

しかしラストがねぇ・・・
読者の自由判断に任せるって言われても困るんだが。

私の予想としては、アメリカからイザベルを追って来たキャスパーって人は
ストーカーのように彼女をつけまわるでしょう、ってことでしょうか?
だってしつこいんですもの

しかしイザベルって人はちょっと自分に自信あり過ぎでしょ。
まだ20歳そこそこなのに、人あしらいの生意気なことったら!
目上の人にその口のきき方はなんですかっ!て言いたいわ。

若い時に、実力以上にすごいすごいと褒め讃えられるのは
あまりいいことじゃないですね。
イザベルが賢いって言ったって、IQがどうとか博士号がどうとかっていう
明確な基準があるわけじゃないのね。
本をたくさん読んでいて、難しい話しに口をつっこみたがるってだけで。
会話の絶妙さからして頭の回転はいいのかもしれませんが。

こういうふうに持ち上げられてスポイルされた人たちを
私たちは何人も見てきてるんじゃないかしら?
まあ、イザベルはこの先何かやってくれそうな予感はありますけどね。

ある婦人の肖像 (上) 岩波書店


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とりあえず上巻から…
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『アメリカ短篇24』軍配はこちらです(勝手に)

2008-08-03 17:53:26 | アメリカの作家
MODERN AMERICAN STORIES 

岩波文庫『アメリカ短篇選』 がちょっとだけ納得いかなかったので
集英社版を読んでみました。

勝手に戦わせてみた結果、主に好き嫌いの問題ですけど
私はこちらに軍配を上げます。

作家陣に多少の違いはあれど、やはり有名どころは顔を揃えています。
でも、こちらの方が割と素朴な物語が多かったかな?
(しかし J・バース! こちらでも難解

例によって好きな作品をあげてみます。

『いちご寒(Blackberry Winter)/1952年 ロバート・P・ウォレン』
大雨の降った翌日、浮浪者が農場にやって来た少年時代の思い出を鮮明に綴った物語です。
短い話しの中で、厳粛な雰囲気を鮮やかに描き出しています。

この人、ぜんぜん知らなかったんだけど、すごくいい!!
大雨とか濁流とか浮浪者とか、一見物騒なものなのに
少年になったような、純粋な気持ちで見られるような気がします。

『借金(Loan)/1958年 B・マラマッド
移民のパン屋の家に、同郷の友人が訪ねて来て借金を申し入れます。
夫は貸してあげたいと思いますが、妻はどうしても承知しません。
つらい事情を訴える友人に、妻はロシアで受けた迫害のつらさを語って抵抗します。

男の人ってセンチメンタルだからさ
やっぱり女の人がきっちり締めてかからないとダメなんだよね。
ほっといたら印鑑とか渡しちゃいそうだもん。

『亡き妻フィービー(The Lost Phoebe)/1915年 T・ドライサー』
田舎で単純かつ、幸福な人生を送ってきた老夫婦の妻が先立ちます。
その後、何度か妻を見かけたような気がした夫は、妻が生きていると思い込み
彼女を捜して放浪します。

先立ったのが旦那さんだったら、奥さんピンピンしてたりして…
こういうふうに仲良く歳とっていけたら幸せでしょうけど
ここまで思い詰めちゃうというのはどうでしょう?
男の人の方がダメージに弱いというのは、やっぱり本当なんですかね?

どちらかというと集英社版の方が、黒人やユダヤ人、インディアンなど
登場人物も多彩でバラエティーに富んでいるようです。
ま、あくまでも私の勝手な比較なのでね。
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『アメリカ短篇選』“アメリカ人“の出来上がり

2008-08-03 17:53:08 | アメリカの作家
上下巻で27話が収められています。

上巻については、20世紀前半の作品を収載。
O・ヘンリー、フォークナー、フィッツジェラルド、ヘミングウェイなど
名だたる作者が名を連ねています。

独立して150年あまり、“アメリカ人”という概念はあるのでしょうが
おじいちゃんやおばあちゃんの国はバラバラという、“過渡期”な感じがします。

ただ、やんわりと白人中心に仕上がっているのね。
フォークナー以外は、「マイノリティーはいないってことで…」と
暮らしていらっしゃったみたいな気がします。


下巻は20世紀後半の作品を収載。
抽象的でよく分かんない話しが多かったんですけど…わたしったらおバカさん
特にナボコフ、D・バーセルミ、J・バースですか? さっぱりっす。

上巻に比べ、やけに生活水準が上がって、より奔放になっている気がいたします。
“アメリカ人”の国民性が完成されたってことでしょうか?

上下巻からひとつづつ気に入ったものをあげてみます。

『人を率いるもの(The Reader of the People)/1945年 J・スタインベック』
西部開拓者の先頭に立って大陸を縦断した話しを繰り返し繰り返し語る祖父に
一家の平穏な暮らしがかき乱されます。

おじいちゃんが、過去の武勇伝を語りだすと確かに困るのよね。
でも、数日のことだからガマンしてあげましょうよ。
一緒に住んでたら・・・私なら無視しちゃうかなぁ。

『動物園で(In the Zoo)/1953年 J・スタフォード』
二人の中年にさしかかった姉妹が
ひなびた動物園のベンチでみじめな少女時代を思い出している物語です。

この話は、かなり暗いです。
女の人って、どうも若い頃に何かやり残したような気がして
時々反省とか後悔とかしちゃうんですよね? 私だけかな?

ふだん読みそうも無い人の作品にふれるという点で
こういう短篇集はありがたいですよね。

20世紀アメリカ短篇選〈上〉岩波書店


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まずは上巻から…
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『ブッシュのホワイトハウス』血迷ってました

2008-08-01 02:48:40 | アメリカの作家
STATE OF DENIAL 
2007年 ボブ・ウッドワード

自分でもどうしてこの本を買っちゃったか分からないのよね。
当時テレビで見て面白そうだと思ったんだけど、まったくの畑違い。
買っちゃったから読みましたけどね。
読んだら結構ためになりましたけどね。

愕然としたのは、8年間この人に世界屈指の大国を任せていたということ。
この本で見る限り、彼は指導力よりは
(主にパパブッシュの)人脈で大統領職を執っている感じ。
人脈も大事でしょうけど。

ブッシュが立候補してから、大統領就任し、9.11が起こり
再選するまでを、主に軍事面からレポートしています。

国防相(ラムズフェルド)VS 国務省(パウエル)の主導権争いや
ライス長官のいたたまれなさなど、どこの国も同じですね、政治って。
しかし、チェイニー、アーミテージあたりまでは理解できても
あとの人は何がなんだか・・・ 

不幸なのはイラクに行かされた兵士たち。
ワシントンでイニシアティブの争奪戦をしている間
人員、資金、時間がすべて不足する状況の中、戦闘は激化していくんだから。

いかにして有能な人材が去って行き、有益な意見が葬り去られたか
当事者のコメントを交えながら検証していますが
とにかく、各ポジション入り乱れてお互いを無能呼ばわりしています。

次がマケインかオバマかは分かりませんが
こんなに巨大で複雑な軍部が、おとなしく言うこと聞くとは思えませんけど。
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『どん底の人びと』ロンドンが見たロンドン

2008-07-13 20:02:50 | アメリカの作家
THE PEOPLE OF ABYSS 
1903年 ジャック・ロンドン

紛らわしいけどジャック・ロンドンはアメリカ人です。
その J・ロンドンが、貧民街をレポートするために潜り込んだのが
天下の大英帝国の首都、ロンドンのイーストエンドです。

この本が書かれた当時は、イギリスが主役だった産業革命はすでに過去の話で
アメリカやドイツが台頭した第二次産業革命の直後でした。

彼は貧民街で、一部屋に数人で暮らすひもじい人びとを目にします。
何十年も休みを取ったことがない汚い女、公園でパンのために体を売る女
公園の開門を待って雨の街を夜中じゅうさまよう老婆を目にします。

ホップ農場、息の詰まる作業場、波止場、酒場で
その日の賃金を貧しい食事に費やす人びとの話を聞きます。

救世軍の給食所、浮浪者収容所で小羊のように卑屈な態度の浮浪者を見て
横柄な世話人の対応と不衛生な環境や、浮浪者を陥れる不毛なシステムを体験します。

英国の労働条件・賃金・保障・自殺・一家心中・子供の死亡率などのデータを挙げ
英国の労働政策・貧民対策・金持ちの矛盾した慈善を鋭く批判し
貧しさが代々受け継がれて行く社会構造の危険を説きます。

イギリスはこの本の出版時、かなりナーバスになったとみえて
(そりゃあ、成り上がりのアメリカ人にこんなこと書かれちゃね、あくまでも当時ね)
アメリカでの好評ぶりに対して「大げさに書いている」と反論した模様です。
しかし、少しは懲りて改善されたんでしょうね?と思いたいところ。

ただ、この本の30年後に書かれたジョージ・オーウェルの
『パリ・ロンドン放浪記』によるとあんまり変わってないようなのですが…

日本も格差社会と言われて久しいですけど、いつかは解決するのでしょうか?
それとも拡大するとこういう社会がやってくるのかしら?

どん底の人びと―ロンドン1902 岩波書店


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