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まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『小さな土曜日』タイトル買い、失敗

2014-05-20 21:51:47 | アメリカの作家
GOD WAS HERE BUT HE LEFT EARLY
アーウィン・ショー

可愛らしい題名で、ニューヨークのいい話っぽい短篇集かしらと思っていましたが…
今まで読んだアーウィン・ショーの短篇集は、どれも好きだったのですが
これはどうも好きになれない一冊でした。

各々がそれぞれに言いたいことを含んでいるとは思うのですが
何が言いたいのかはっきりしないのよね。
そしてそのわりにはヘヴィなのよ。

感想はあまりないので、入ってる5篇すべて書いておきます。

『神、ここに在ませり、されど早や去りたまいぬ
                (God Was Here But He Left Early)』
いくつもの嘘を考えていたのに、バートの紹介で訪れたスイスの精神病院で
結局ローズマリィは正直に話してしまって、中絶は認められなかった。
パリで子供の父親に会ったが、なんの解決にもならなかった。

『賢く公正なるものすべて伝わるところ(Where All Things Wise and Fair Descend)』
気分よく目を覚ました日、スティーヴは恋人とランチの約束をして教室へ向かった。
教室では、先週兄を事故で亡くしたクレインが、黒板に詩を書いていた。
クレインに声をかけるとドライブに誘われた。

『混迷の中のささやき(Whispers in Bedlam)』
窓際のアメフト選手ヒューゴーは、耳の負傷でチームメイトのサインが聞き取りづらい。
ヒューゴーは意を決して耳の手術を受ける。
すると、敵のささやきまで聞こえるようになってしまった。

『マニコン溶液(The Mannichon Solution)』
研究所で、さえない部署にいるマニコンは、実験の過程で不思議な反応を見つけた。
マニコンが二人の花形研究者に話をもちかけると、彼らは協力を承諾した。
しかし二人には大きな野望があった。

『小さな土曜日(Small Saturday)』
背が小さいことがコンプレックスのクリストファーは、夢のせいで安眠できなかったが
土曜日に「今夜5フィート8インチ以上の女とセックスするように」という声を聞き
真剣に相手を探し始めた。

のんきに始まるわりに、だんだん重い感じになっていくのはどれも同じです。
あまりに現実的ではない展開のような気もするし
ドラマティックに仕立てすぎという気もする…
今まで読んだアーウィン・ショーとはかなり印象が違うので戸惑いました。

5篇とも、主人公は普段はありえない行動をおこしているんですよね。
ローズマリィは酔った勢いで子供ができちゃった
スティーヴはたいして仲も良くないクレインとのドライブをOKしちゃった
ヒューゴーはガンガン活躍するようになって一目おかれるようになった
マニコンはいきなり花形研究者と一緒に仕事をするようになった
クリストファーはいきなりラブハンターになっちゃった…というわけで
多かれ少なかれ、非日常的な行動をしているわけです。

それがどういう結果を招くかということが、この本を読む楽しみだと思いますが
すみません、私が好きな終わり方ではなかったんですよね。

教訓はなんだろう?
背伸びしないで真面目に生きなさいっていうことかしら?
平凡な毎日が幸せってこと? 普通が一番ってことかな?
アーウィン・ショーが教訓をたれるタイプの作家なのかどうかは知りませんけどね。

ひとことK-POPコーナー
先週2回行ってきた… 韓国ミュージカル『宮』。 実は私はミュージカルが苦手なのですが、すごく楽しかったわ
6列目と2列目だったので~ テミンペンのRちゃんの目はでしたが、あまりの近さに私までになりそうだった!
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『頼むから静かにしてくれ』チリも積もれば大きなイライラ

2014-04-07 22:59:01 | アメリカの作家
THE COMPLETE WORKS OF RAYMOND CAEVER I 
レイモンド・カーヴァー

先日『レイモンド・カーヴァーの子供たち』を読んで
カーヴァー自身の話をあまり覚えてないな… と思い、読み返してみました。

この本には22篇おさめられていますが、覚えていたのは一篇だけでした。
初めて読む本のような気持ちで読めて得した気分。

気になったお話しをいくつかあげてみます。

『ダイエット騒動(They're Not Your Husband)/1972年』
妻をスリムにしようと協力してくれる旦那はありがたいけど、動機が不純?

『あなたお医者様?(Are You a Doctor?)/1973年』
妻が出張中の男の家に電話をかけてきた、未知の女の、強引さがすごい!
なにが彼女をそうさせるのかが不明。

『収集(Collectors)/1975年』
失業中、郵便でくる通知を待っていたら、やってきたのは掃除機のデモンストレーターで
家に入ると、強引に各部屋に掃除機をかけました、っていう話なんですけど
私はこれと同じような体験をしたことがあるんですよね! ということで印象に残りました。

『他人の身になってみること(Put Yourself in My Shoes)/1972年』
嫌がらせ半分で他人の家を訪ねたら、逆にいや~な気分にさせられちゃう話し。

『こういうのはどう?(How About This?)/1970年』
田舎暮らしがしたい! と望んでいる人に、夢と現実の違いを突きつける一編。

とりあえずこれぐらいあげてみましたが、他の話も概ね面白く読めました。

どの話も、町中にゴロゴロ転がっていそうな事がテーマになっています。
たぶん、当事者じゃなければどうでもよくて、たいした問題じゃないエピソード。
その日のテーブルでは話題になっても、次の日には忘れていそうな事が中心で
とても共感しながら読むことができました。

反面、どの話にもちょっとイライラさせられました。
かみ合わない会話とか、いちいち気に障る人、堂々巡り
なかなか抜け出せない…ひとりだけ浮いてる…というシチュエーション、などなど…

たしかに、各々の話が面白いことは面白いのですが
22篇続けて読むと、最後の方にはイライラが大きな塊になってました。

これは、たぶん、作者がわざとそうしているんだと思うのですがどうでしょう?
そしてそれがすごく上手いの。
日々の暮らしの中にはイラつくことやムカつくことがちょこちょこありますよね。
そういう出来事の中から、面白い話になりそうな部分を上手く切り抜いて
巧妙なペンさばきで再現しているような一篇一篇でした。

カーヴァーは何冊かあるので、他の話もそうなのか読んでみようと思っています。

ひとこと漢方コーナー
高麗人参の蜂蜜づけというものを大量にいただいたのね。ものすごく体に良いのはわかっているのだが
独特の苦みがあってパクパク食べるというわけにもいかず… 食べ方をいろいろ探している今日この頃です
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『遠い声 遠い部屋』ビジュアル系小説

2014-03-17 22:09:29 | アメリカの作家
OTHER VOICES,OTHER ROOMS 
1948年 トルーマン・カポーティ

発売当時絶賛されたそうですね。
でも、これはねぇ… 難しいです。
どの登場人物も独特というか特異な美しさを纏っている、ファンタジー色の強い一編で
面白くないわけではないのですが、好きじゃない物語。

文章は、今まで読んできたカポーティ同様、楽しんで読むことができましたし
全篇の3分の2ぐらいまでは本当に没頭して読んでいたのですが
後半はだんだん幻想の深みにはまり、ブクブク沈んでいくような感じで
私にはついていくのが困難になっていきました。

かいつまんで書いてみますと…
母を亡くし、親戚のところに身を寄せていたジョエル・ノックスという美しい少年が
会ったこともない父親エドワードと暮らすことになり
ヌーン・シティという町を訪れるところから物語が始まります。

町にはこれといって何も無く、訪れる手だてさえ無いのですが
父エドワードは、その町の近くに大きな屋敷を持つエイミイ・スカリィという女生と
再婚しているということでした。

登場人物はざっと30人ほどなのですが、大きく二つに分かれます。
ジョエルが、もともといた世界(ニューオーリンズ)に残してきた人たちと
ヌーン・シティに着いて新たに知り合った人たちです。

新たに知り合った人たちは、ほぼ全員が、一般的にノーマルと呼ぶには
人間離れした感性の持ち主のように(私には)思えて仕方がないわけなのですが
そんな人たちの中に、ジョエルは投げ込まれてしまったようなものなのね。
頼りになるはずの父親は、まったく頼りにならない状況にありました。

もうこれ以上は書かないんだけどさ…
私は最初から、このストーリーがジョエルに対して残酷だと思いながら読んでいました。
そして、好転を待ち望みながら読み続けていましたが、事態は悪くなる一方に思えました。

この展開とラストが、不幸なのか幸福なのかは見解のわかれるところかもしれませんが
というか、だいたい何を象徴しているラストなのかもはっきりしなかったわけですが
私はジョエルを不憫だと思うし、正直言ってかなり落胆しました。
できたら違う形で終わってほしかったと思っています。

どうやら、少年が大人になる過程を、抽象的に描いた話のようでもあるのですが
あまりに抽象的すぎて、ジョエルがピーターパンの変種みたいに思える。
現実的に暮らしていたニューオーリンズ時代の方が大人に思えるのは、私の気のせい?

短編集『夜の樹』で感じたカポーティ感が凝縮された中篇のような気がします。
そのラインが好きな方にはたまらない一冊かもしれません。

私にとっては、カポーティの美意識の計り知れなさを見せられたように感じた一冊でした。
マリリン・マンソンみたいなさ、白~くてグロ美しい感じの人が
頭に浮かんでは消え浮かんでは消えっていう状態で読んでいました。
ちょいと疲れたね。

ひとこと韓流コーナー
職場のAさんが、ドラマ『主君の太陽 』を貸してくれたので観たらすごく面白くて17話一気に観ちゃったよ こらこら
ソ・ジソブ=哀愁を背負った暗い人(役)という印象でしたが、ラブコメもいけるんですね
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『バースデイ・ストーリーズ』どんな誕生日もめでたいといいね

2014-03-03 08:46:28 | アメリカの作家

R・バンクス/D・ジョンソン/W・トレヴァー/D・ライオンズ/L・セクソン/P・セロー
D・F・ウォレス/E・ケイニン/A・リー/R・カーヴァー/C・キーガン/L・ロビンソン/
村上 春樹

『恋しくて』に続き読んでみた、村上春樹さん編訳の一冊です。
一筋縄ではいかないバースデイの物語ばかりで面白かったのですが
私の好みからいうと、ラッキーなバースデイと、アンラッキーなバースデイが
半々とまではいかなくても3:7ぐらいの割合で入っていたら
もう少し楽しめたかなぁ…などと思っています。

印象に残ったお話しをいくつかあげてみます。

『バースデイ・ケーキ(The Birthday Cake)/1993年 ダニエル・ライオンズ』
ルチアは、戦時中から毎週土曜日に夫の好物のホワイト・ケーキを買っていて
夫の死後も欠かさず続けていました。
少し閉店を過ぎてしまいましたが、いつものようにロレンツォのベーカリーに行くと
マリアが待っていて、娘の誕生日なので最後の1個だったケーキを譲って欲しいと言います。

ルチアは意地悪だと思う、それはもう! だけど味方せずにはいられなかったです。
自分を曲げない頑固なばあさん… 自分にはなかなか真似できないだけに憧れるわ。
名前から見て、家族を愛するイタリア系のマンマだと見ましたが、最後が悲しいのよね…
マリアに対する仕打ちへの罰のようにも思える痛ましさでした。

『慈愛の天使、怒りの天使(Angel of Mercy,Angel of Wrath)
                    /1991年 イーサン・ケイニン』
71歳の誕生日の朝、カラスの大群に窓から入り込まれたニューヨークのエリナーは
デンバーにいる息子のバーナードに電話をします。
バーナードは動物愛護教会を呼べと言って電話を切りました。
取り残された2羽を逃すために、動物愛護教会から若い女性がやって来ました。

若けりゃ逆に大騒ぎして、思い出に残る誕生日ってことにできるのでしょうが
一人暮らしの老女の家ではそうもいきませんよね。
それはさておき、バーナード~、だめじゃーん。
これもつらい話だけど、最後はほんのちょっとだけいい話で終わってます。

『ライド(Ride)/2003年 ルイス・ロビンソン』
オールデンは、母親と離婚後別々に暮らしている父親から誘われて
16歳の誕生日に小旅行に出かけます。
トラック運転手の父親は、絵画をニューヨークまで運ぶと言っていましたが
途中である計画をもちかけてきます。

最初は、どんな父親なんだよー!!と思いましたが、最終的には
誕生日にグレイトな経験をさせてあげられて良かったね!ということ? 違うよね。
計画が上手くいってもいかなくても、息子の人生を変えてしまうんだもの。
クールに父親にふり回されてる息子に、なんだかグッときてしまいました。

おさめられているお話しの誕生日は、みなスペシャルなエピソードを孕んでいますが
どちらかというと、あんまり良いことではありません。

確かに、家に帰ったら家族や友人が待っていて、祝福されてプレゼントもらって
ひとしきり騒いで寝ました… なんていう話、面白くないものね。
誕生日にプロポーズされて嬉しくて涙にむせぶ、ってのも、他人にはどうでもいい話よ。
物語としては、誕生日なのに…! というエピソードの方が読み応えありますね。

誕生日って、だんだん憂鬱になってくるわぁ… できることなら忘れてしまいたい。
いっそこの世から無くなってほしいぐらいよ。

とはいえ誕生日は、毎年、全ての人にぬかりなくやってくるわけね。
何もないよりはいいのかもしれないけど、できたら良いことがおこるといいですね。

ひとことK-POPコーナー
昨日行った人生初のファンイベントですが、まーくーはーりー! 遠かったよ…
でもすごくいい席だったの!! コンサートとは違う雰囲気で楽しかったです。
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『O・ヘンリー・ミステリー傑作選』苦しいこじつけが・・・

2014-03-02 14:18:21 | アメリカの作家

O・ヘンリー

新潮社の『O・ヘンリ短編集』で46篇の短篇を読んで、たぶん厳選された短編集なんだろうし
当分読まなくていいかしら…などと思っていたのですが
ミステリーも書いていたのね、と思い買ってみた一冊、なんだけど…
これをミステリーって言っちゃう?

ミステリーはキャパシティが広いので、そう言えなくもないと思いますが
やっぱり、“ いい話 ” という印象が否めない話が多かったですね。

28篇中、好きだったお話しをいくつかあげてみます。

『虚栄と毛皮(Vanity and Some Sables)』
モリーに説得されて悪事から足を洗ったキッドが、真面目に働いて8ヶ月が過ぎました。
ある日、キッドがモリーに、とても高価そうな毛皮を送りました。
ところが、キッドが仕事をしに行った家で、高価な毛皮が無くなったことがわかりました。

ありがちな話だけど、若いキッドのプライドが微笑ましい。

『X嬢の告白(The Confession of…)』
イギリスで6年間、上流社会教育を終えて帰国したリネットの前に
身分の高いクランストン卿が現れました。
しかし、あまりの完璧さに疑念を抱かずにはいられません。

最後びっくり!&笑えます。リネットの母親がどうかと思うわ…

『感謝祭の二人の紳士(Two Thanksgiving Day Gentlemen)』
その日、浮浪者のビートは、公園のいつものベンチに座りました。
ビートは、ひょんなことからはちきれそうに満腹でした。
けれども、毎年感謝祭の日にディナーをごちそうしてくれる老紳士を
失望させてはならないと、ごちそうになる決心をします。

イギリスっぽい感じがしますけど、これぞ O・ヘンリー!というお話しです。

『平和の衣(The Robe of Peace)』
上流社会の中でも最上流で、誰もが認めるベスト・ドレッサーでもあった
ベルチェインバーズが、突然失踪してから一年ほどたちました。
彼の古くからの友人二人が、スイスを旅行中に、極上のリキュール酒に惹かれて
険しい尾根にある修道院を訪ねると、なんと、そこに
ボロを身に纏ったベルチェインバーズが、修道士として暮らしていました。

これはねぇ、教訓も含まれているのかもしれないけど、かなり粋な話だと思います。

以上4篇の結末は、一般人としてホッとするところに落ち着きます。
面白くなさそうに聞こえるかもしれませんが、ちゃんと面白いです。

4篇には上から順に、嫌疑・詐欺・浮浪者・失踪と、ミステリーくさい副題が
つけられているのですが、かなりこじつけに思えます。

それ以外の話にも、殺人者とか罠とかそれらしい副題がついています。
そりゃそうなんだけどさぁ、無理くりミステリーにくくらなくても…と
笑えるものもあったりして…編者の苦労が伺えました。

後半にシャーロック・ホームズのパロディ『シャムロック・ジョーンズ』のシリーズ3篇と
詐欺師のジェフ・ピーターズが主人公のシリーズが5篇おさめられていて
一応ミステリー仕立てになっているのですが、逆になんだかつまらなかったかな…

短篇の名士ではあっても、ミステリーには向かない作家だったのかもしれませんね。
だんだんいい話になってっちゃって、謎解きとか関係なくなっちゃうんですもの。
そもそも謎解き不要な話しばかりだし…

ミステリーは幅広い!ってことで、良しとしますか?

ひとことK-POPコーナー
わたくし、この年になって、今日生まれて初めてファンイベントってものに行ってきます。
だってハードロックにはそういうのが無かったんですもの… どんなことするのでしょうね?
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『世界短篇文学全集14 アメリカ文学20世紀』出版社にお願い!

2014-02-27 23:04:07 | アメリカの作家


古本屋さんで見つけて買った後で『アメリカ短篇24』の装丁違い?と思ったのですが
いくつか重複していたっものの、違うものでした。 よかった

こちらも24篇おさめられています。
『アメリカ短篇24』にもあった『いちご寒』『亡き妻フィービー』をはじめ
フォークナーの『乾いた九月』、モールツの『世界一幸福な男』
アンダスンの『森の中の死』など、けっこう読んだことがある話があったのですが
またまた楽しむことができました。
その他、スタインベックやヘミングウェイ、カポーティなど盛りだくさんです。

いくつかご紹介します。

『メイ・デイ(May Day)/スコット・フィッツジェラルド』
1919年5月1日、ビルトモア・ホテルをゴードンというくたびれた青年が訪れ
イェール大学の同級生だった宿泊客のディーンに面会します。
ゴードンは久しぶりに会ったディーンに借金を申し入れて断られます。

もう、ね! 金策に走る男を書かせたら、フィッツジェラルドは五本の指に入るね!!
これが彼のパーソナリティとどう関係しているかは知りませんけど…
借金の申し出を断るディーンは、決して悪い人じゃないと思います。
ゴードンが哀れだからって、ディーンを誤解しちゃいけないわ。

『特だね(A Front-Page Story)/ジェイムズ・T・ファレル』
大学を担当している取材記者は、女学生ルース・サマーの葬儀に参加して
死の真相をつきとめました。
しかし、彼には特ダネを手にしたという嬉しさはありませんでした。

この記者はすごく頑張って、なるべく感動的なストーリーに仕上げるんだけど
それでも記事にはするのよね。
たしかにその記事を読んで、私もルースの人生にホロリときました。
マスコミを嫌う人々は多いけど、良心を持って伝えている人もいるはず… と信じよう。

『ざくろ園(The Pomegranate Trees)/ウィリアム・サローヤン』
夢見がちなメリックおじが、広大な砂漠を買い果樹園を造るというので手伝うことにします。
手始めにざくろを700本植え、トラクターを買い、土地を耕しました。
しかし、どんなに頑張っても水が足りません。

カリフォルニアに畑を造った実話ってなかったですっけ?
しかし、誰か止めなかったの… 夢見がちにもほどがあるでしょうよ。
だけど男の人が夢を真剣に追い始めたら、誰にも止められないのかもね。
おじさんの老後が心配だけど、家族愛は強そうだからなんとかなるかな?

ああ楽しかった!
1900年代のものが中心ですので、人種問題にふれたものや
現代から見れば古い感じがするものもありますが、やはり読み継がれる名作だけあって
中だるみすることなく一冊読み通せました。

こういう全集は、いろいろな作家の作品が楽しめて本当にいいですね。
各出版社、どんどん出していただきたいわ。
ただ、どうしても同じ作品がかぶるのが悲しいですね。
そこをなんとかしていただいて… 復刻でもいいからお願いします。

ひとことK-POPコーナー
『SURPRISE VACATION』DVD6枚+特典ポーチが本日到着! 放送とは違う編集で新鮮ね
で、輸入盤だからしかたないけど日本語字幕がないんだよ~  一時停止を駆使して英語字幕で頑張って見ています 
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『レイモンド・カーヴァーの子供たち』もう一回カーヴァーを読もうっと!

2014-02-20 21:05:54 | アメリカの作家
20 UNDER 30 
1986年

一時期、少しだけレイモンド・カーヴァーにはまったことがあります。
村上春樹さんの影響なんですけどね。
たぶん、その時に買ったんだと思うけど、例によって覚えがないので読んでみました。

レイモンド・カーヴァーに影響を受けたであろう
(当時の)若手の作品が11篇おさめられていますが
聞いたことがあるのはデイヴィッド・レーヴィットだけでした。

どこらへんがカーヴァーっぽいのか、文学をちゃんと学んでいない私には
わかったもんではありませんが、そう言われりゃそうかもね。

ま、カーヴァーっぽいのかそうでないのかは別にして
印象に残ったお話しをいくつかご紹介します。

『感謝祭(Thanksgiving Day)/スーザン・マイノット』
ガスとロージーのヴィンセント夫妻と6人の子供たちは
感謝祭にガスのパッパとマッマの家を訪れる。
つづいて、ガスの兄チャーリーの一家と、姉フランの一家も到着した。

息子夫妻に娘夫妻、おおぜいの孫たちに囲まれて、郊外で過ごす休日なんて
隠居した夫婦の理想よね!といいたいところですが、
長年連れ添ってきた夫婦の刺々しいやりとりを聞かされる身にもなってほしい。
自分たちだけの愛情表現だとしても、孫が来ている間ぐらいはさぁ…

『配管工(This Plumber)/ブレット・ロット』
今日やって来た配管工は、まず、ノックが良かったし、握手の仕方も心得ていた。
妻が出て行ってがらんとした部屋のバスタブを見ながら、彼が水漏れについて語る。
彼が帰ろうとした時、つい引き止めてしまった。

こ、これは… この後禁断の愛に突入か? と思ったら、男らしい話でした。
“ プロフェッショナル ” を目にした時の、男性の胸の高鳴りが感じられる一編。
でもこの配管工の人、水漏れを直せなかったんだけどさ、それはおいといて…

『ドリーマー(Dreamer)/マージョリー・サンダー』
わが家には、何代かに一人夢想家が生まれるという伝説がある。
パパは、パパの母ギッテルもその一人だと考えているらしかったが
ママは、ギッテルはただの自分勝手な女だと言う。

ここからギッテル伝説が語られるわけですけど
パパとママのどちらの言い分が正しいのかは、読者次第でしょうねぇ…
私は好きだけど、近所にいたら嫌いかもしれないし、友だちにはなれそうにないね。
でも、職場にいたら好きかもしれない…自分はできないからね、憧れの部分もあります。

カーヴァーの影響を受けているからといって、カーヴァーのような小説を書くというのが
正しい後継者の姿ではないですよね、きっと。
自分のオリジナリティやカラーをどれだけ反映できるかが才能の成せる技なのでしょうね。

影響を受けたからって、同じようなスタイルで同じような歌を歌っていたら
コピーバンドの延長で終わってしまうってことですか? って
…この例えはどうなんだ?

カーヴァーという作家を意識しすぎなければ、面白かったのかもしれないし
でも、そうでなければ真剣に読まなかったかもしれない…
本の題名にかなり踊らされてしまったような気がしています。

そこで、本家カーヴァーってどんな感じだったかしら? と思い出そうとしてみました。
いくつかの話は覚えていたのですが、あまりちゃんと思い出せないので
もう一回読んでみることにします。

ひとことオリンピックコーナー
昔からフィギュアスケート好きなんだけど、職場のディープなフィギュアファンNさんによると
羽生君は羽生キュンて呼ばれているんですってね! それ聞いて名付けた方のセンスに感動しちゃいました
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『厭な物語』私は冷酷なのかしらね?

2014-02-11 21:03:04 | アメリカの作家
DISTURBING FICTION 
A・クリスティー/P・ハイスミス/M・ルヴェル/J・R・ランズデール/S・ジャクスン
U・ソローキン/F・カフカ/R・C・マシスン/R・ブロック/F・オコナー/F・ブラウン

アメリカ生まれの作家が多かったので、とりあえずアメリカの作家にいれてみました。

それにしてもこの表紙…
書店で “ 読後感最悪 ” というオビを見て、フラフラと手にとった一冊。
でも、全体的にはそんなにイヤ~な感じではなかったのですけれどもね、私は。

とりあえず、全篇で人が死にます、自然死ではなく。
そのパターンがいろいろあって、たしかに嫌悪を覚えるものもありました。
ただ、ストーリーの中で必然と思われるものや、哀愁が感じられるものもあり
“ 厭 ” というひと言ではかたずけられないように思えました。

11篇のお話しの中で、私が心から、やな感じ~ と思ったのは4篇です。
でも、あくまでも私の感想であって、その中に悲哀を見つけられる方もいるかもしれません。

印象に残ったお話しをいくつかあげてみます。

『フェリシテ(Felicite)/モーリス・ルヴェル』
フェリシテは娼婦だが、慎ましく、身なりやふるまいも堅気のようだったので
街の人々は大目に見て、挨拶なども交わしていた。
ある日フェリシテは、四十代の紳士ムッシュウ・カシュウに出会った。
二人が毎週土曜日の夜に会い、静かに語り合うようになって2年がたった。

『くじ(The Lottery)/1948年 シャーリィ・ジャクソン』
6月27日のからりと晴れた朝、300人の村人たちが広場に集まってくる。
子供たちは走りまわり、男たちは仕事や政治の話をし、女性たちもエプロンを外して。
いよいよ進行役のサマーズ氏が登場して、くじが始まった。

『赤(Red)/1988年 リチャード・クリスチャン・マシスン)
彼は、暑い中を歩き続けた。
探しているほとんどのものは袋の中に拾い集めたが、それでも歩いた。
人だかりが彼を待っているが、彼はある地点で何かに気づき、そっと座り込んだ。

『善人はそういない(A Good Man Is Hard to Find)/1953年 フラナリー・オコナー
祖母はフロリダへ行きたくないと言い続けていたが、息子のベイリーは聞いてくれず
結局ベイリー夫婦と幼い三兄妹とともに車に乗り込んだ。
もうすぐジョージアを抜けようかという時、祖母は若い頃に訪ねた農園のことを思い出して
そこへ寄って行こうと言い出した。

いかがでしょう?
長閑そうに思える話もありますが、結果から言ってどれも死者がでます。

『フェリシテ』は、私にはものすごく悲しい話に思えましたが
こう言っちゃなんだけど、死に方は特に衝撃的ではないのよね。
でも女性として、気持がわからないでもない、いえ、かなり共感できるお話しでした。

以下3篇は、死に至るまでの過程がものすごく残酷ですが、それでも悲哀が漂ってました。

『くじ』は、人間の集団心理の恐ろしさが…
こういう心理がけっこう悲劇を生んでいるのではないかと思わされます。
あと、伝統ってどこまでこだわって守るべきなのか、考えさせられますね。

『赤』は、主人公の気持を思うと、ものすごくつらい話しです。

『善人はそういない』は、ものすごい作り話だけど、ものすごく正直な内容に思えました。
にぎやかに旅を続けていた一家が感じた恐怖を考えると、死ぬことより怖いわ。
最後にベイリーが母親思いのところを見せるのよ… 泣けたね。

私がいい印象を受けなかった話について、なぜでしょう?と考えてみると
他の物語のように、死の必然性が感じられないということでしょうか? 理由無き死?
罪の意識が欠落している人がまわりにウジャウジャいるのかと思うと、背筋が寒いわ。
どの話しかは書かないけどね。

この本の落ち着きどころは、死=厭、ということになるのかもしれませんが
人が死ななくても厭な話はたくさんあります。
むしろそっちを読んだ方が最悪な気分になれるかも… なりたきゃね。
バルザックなんてどうでしょう?

ま、厭な話しは世の中にいっっっっぱい転がっているので
あえて読まなくてもいいのかもしれませんけど…

ひとことK-POPコーナー
テソンが6月にやって来るらしい! 7月には韓国でソロアルバムも出るんですってね!!
両方待ち遠しい!!! けど、BIGBANGのカムバックはいつなのかしら? そちらも楽しみです
 
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『ブルックリン・フォリーズ』いいじゃない!夢物語

2014-01-13 21:02:17 | アメリカの作家
THE BROOKLYN FOLLIES 
2006年 ポール・オースター

ドラマや娯楽映画などではハッピーエンドが喜ばれるものですが
小説では大団円だと、できすぎた話だとか言われがちな気がします。
なんとなく不幸を引きずっていそうだったり、曖昧な結末な方が深みがありそうでね…
勝手な思い込みですが。

このあいだ読んだオースターの『最後の物たちの国で』がまさにそんな感じでした。
ものすごく面白かったので、すぐにこの本を買って読んでみました。

この『ブルックリン・フォリーズ』もとても楽しく読んだのですが
『最後の~』とはまったく違うタイプの面白さで、正直びっくりしました。
本当に同じ作者&訳者(柴田元幸氏)なの?

舞台はニューヨークのブルックリンです。
主人公はネイサン・グラスという59歳の男性です。
肺癌を宣告されて仕事を早期退職し、そのうえ妻から離婚されてしまい
「もうな~んにも無い」と、静かな死に場所を求めて
3歳の時に離れたブルックリンに56年ぶりに戻ってきました。

道楽以外に特にやることもなくブラブラしているネイサンなのでしたが
ある日、たまに行く古本屋で7年ぶりに甥に再会します。

甥のトム・ウッドは子供の頃から頭がよくて、国文学の博士になるのでは?と
ネイサンが期待をよせていたのですが、2年前に大学をやめてタクシーの運転手になり
半年前から古本屋の店員として働いていました。

物語の中心は、この、全て無くして世捨て人のようになった初老の男性と
すっかり太っちまった、エリート脱落者のがっかりな甥の二人なのですが
トムと再会したことで、ネイサンはいろいろな人と繋がりを持つようになり
彼らのトラブルに巻き込まれ、忙しい毎日を送ることになります。

あらすじはやめといて、主な登場人物を紹介しますね。

オーロラ、通称ローリーはトムの美しい妹です。
二人の母、すなわちネイサンの妹が再婚した後家を飛び出して、未婚の母になり
アダルトビデオの女優になり、ミュージシャンと駆け落ちして別れ
その後一度トムに「結婚する」と言いにきたきり3年間行方不明になっています。

ルーシーはローリーが生んだ9歳の娘です。
ある日ひょっこりトムのアパートを訪ねて来ますが、絶対に母親の居所を言いません。
幼いけれど、絶対自分の意志を通そうとする頑固者です。

トムが働く書店のオーナーは、ハリー・ブライトマンという愉快なゲイですが
過去にシカゴで絵画詐欺を働き服役したことがあります。
ネイサンとトムに、大金を手にするチャンスをつかんだと打ち明けます。

トムが想いを寄せるナンシー・マズッケリは、アクセサリーを作っている人妻で
子供たちに愛情を注ぐ “ B.P.M(ビューティフル・パーフェクト・マザー )” です。

ナンシーの母ジョイスは数年前に夫を亡くした寛大な未亡人で
ネイサン&トム一族は後々とってもお世話になります。

ここまでが主要な人物で、物語の展開に欠かせないのが以下の方々。

ネイサンが妻と離婚後にけんかしてしまってから音信不通の、母親似の娘レイチェル。
古本屋の店員でハリーの恋人、ドラッグ・クィーンでもあるルーファス。
ネイサンとトムとルーシーが数日間泊まったインのオーナー、スタンリーと娘ハニー。
ローリーの夫で、ある宗派の狂信者デイヴィッド・マイナー。
ハリーの元恋人で画家のゴードン・ドライヤーは、シカゴの詐欺の首謀者でした。

もっともっといるのですが、とりあえずこれぐらい押さえておけば大丈夫かと…

あとは死ぬだけ… と思っていたネイサンですが、ここからはスーパーマン並みに活躍!

ある人を窮地から救い出し、ある人の不正を暴き、ある人の恋を(少し)手助けし
誰かが悲しんでいれば話を聞いてあげて、誰かが迷っていれば相談相手になり
店番もするし、シッターもするしで、皆から頼られっぱなし。
ちなみに、ネイサンはもと保険外交員、しかも成績優秀だったらしい。
そういうことも頼りにされる人柄になにか関係しているのでしょうか?

そんなわけで、物語は皆ハッピーにラストを迎えます。
あ、不幸かもしれない人が二人いますけど… 考えようによっては三人かな?

まぁ、それはおいといて…
ネイサンには恋人ができるし、あることがきっかけでレイチェルの愛を取り戻すし
癌は転移してないしといいことだらけ。
トムはやりたかったことができるだけの大金を手にし、結婚もしたし、痩せたしね。

ローリーも幸せ、ナンシーも幸せ、ハニーもジョイスも幸せ、ばんざーい!!

どーよ? これ。
少しぐらいひねりがあるかと思いましたが、そんなことはなく、紙面は幸せ一杯よ。
この屈託の無さ、いいですね。
しかも “ いい話~ ” “ 泣けます~ ” 臭がしないところがよいですね。
そういうのはウンザリ

ひねりは無いと書きましたが、少し読者に刺激を与えてあげようという小技は効いています。
読み終える頃にはこっちもハッピーになって、まさに言うこと無しでした。

けれども最後の最後に「幸せ!」とも言ってられない、世界的な不幸が示唆されます。
もしかすると、登場人物の中に、この不幸に巻き込まれてしまう人がいるのかも…
その不幸の影と、主人公の最後のひと言が印象的で、やけに気にかかるラストでした。

最後の最後の行だけ書いちゃうね。
「わが友人たちよ、かつてこの世に生きた誰にも劣らず、私は幸福だったのだ。」

ね! 気にならない?

ひとことK-POPコーナー
SISTERのヒョリンがソロ出したでしょ? 2曲MV見ましたが… さすがいろっぽい… いろっぽすぎる
でも曲はいいんだよねぇ、歌が上手いからさらに良く聞こえるのね
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『店員』上質紙じゃなくてもいいと思うの…

2014-01-11 02:25:20 | アメリカの作家
THE ASSISTANT 
1957年 バーナード・マラマッド

今まで短篇ばかり読んできたマラマッドの長篇を初めて読んだ感想は…
この本、感想を書くのが難しい~

短篇でグッときた、まっすぐで我慢強いユダヤ人たちを凝縮したような主人公の
頑張って生きているのに上手くいかないことの悲しさが全篇に溢れている一冊でした。

あらすじを書きますね。

60歳のモリス・ボーバーという男性がいます。
彼は若い頃アメリカに渡ってきたユダヤ人で、食料品店を営んでいます。
ボーバーの食料品店は良い時も悪い時もありましたが、生活はずっとカツカツでした。
そして今はどん底… 近所に新しいドイツ人経営の食料品店がオープンして
少なかったお客までもっていかれました。

口やかましい妻アイダはそんな亭主をあきらめていますが
やはり人並みの生活がしたいのよ!というわけで
店を売りたがり、娘には良い相手と結婚してもらいたいと望んでいます。

一人娘のヘレンは23歳の美しい女性ですが、大学をあきらめて就職し
同じことを繰り返す毎日と悪くなる一方の家の状況に、絶望さえ覚えていました。

ボーバーが店を開いているブロックはユダヤ人街ではありませんが
隣ではジュリアス・カープというユダヤ人が酒屋を営んで繁盛しています。
そしてドイツ人に近所の店を売ったのはこの人、ってわけで、ボーバーは彼が嫌いです。

その隣ではサム・パールというユダヤ人がキャンディ・ショップをやっています。
商売はそこそこですが、競馬にめっぽう強くてそちらで食べているという噂です。

アイダは、羽振りの良いカープの跡取り息子ルイスか
奨学金で大学に通い、ゆくゆくは弁護士になるであろうパールの息子ナットと
ヘレンを結婚させたがっています。

物語冒頭、ボーバーの貧しい暮らしと哀しいやりくりが細か~く描かれていて
読んでるこっちまでドーンと落ち込みそうな雰囲気
いい人なんだけどね…

その上、ボーバーは強盗にあって大けがをする始末… とことん不運。

ただでさえ稼ぎの無い店で怪我人抱えてどうするの? というところで
ふらりとフランク・アルバインという青年が現れます。

彼はたびたび店に来るうちに、どーにもこーにも強引に店員になってしまいます。
将来店をやりたいから、ただでもいいから、モリスがよくなるまで…
でも、これは本音じゃないらしい… では目的はなんでしょうね?

はしょりますけど、物語はこの後もボーバー一家をおそう不幸と不運のオンパレードで
けっして楽しい展開ではないです。

だからあらすじはおいといて気になったことだけ書いちゃうわね。

しつこいほど書いてますけど、私は韓国ドラマ大好き!
見どころは、なんといってもヒロインに献身的な男性陣です。
特に、 “ 影からヒロインを見つめる ” 攻撃と “ 好きだ!って言い続ける ” 攻撃、
“ どこへでもついて行く ” 攻撃なんですけどね。 羨ましいったらありゃしない。
とにかくいつも近くにいるのよぉ、旦那に言わせりゃストーカーってことになるんですが…

なんだけど、映像で観てると素敵なことが、文字で読むと恐ろしいぞ…

ご想像通り! フランクはヘレンを想うようになりまして
店員になった時同様の粘り強さと強引さを発揮するんだけど、そしてとても献身的なんだけど
これが(私は)かなり気持ち悪かったんですよね。

騎士道精神とか、人生を捧げる愛とか、だぶんハーレクィン・ロマンスなんかにもあって
ときめく内容になってるのでしょうけど、これはそうじゃない…

なぜだかはわかりません。
ただ、フランクという人のキャラクターにその行動が似会わないような気がしています。

どうなんだろう? 映像になったらフランクの行動も「これこそ愛 」って思えるかしら?
映像は文章よりストレートに、考える間もなくうったえかけられるからね。
でも文章は映像より細かい心の動きが感じられそうだし… 難題です。 今後の課題にします。

暗い、暗いと書きましたが、けっして面白くないわけではないのでね。
なんだかんだ言ってするする読み終えました。

街の片隅で生きる名も無き一家をテーマにして、ほぼその家だけが舞台になっているのに
ちゃんと読み応えがある物語になっているあたり、さすがです。
それから、登場人物の箇々のパーソナリティーが明確で入り込み易かったです。

こんな終わり方ってひどい~… と思った後も物語は続きまして
最後は少しだけ明るい未来、いや、微々たる光が見えるラストが訪れます。
この一家の今後に幸あれ! と祈るばかりです。

ところでこの本、表紙も銀の箔とか使っちゃって立派なんですが
中面に光沢の真っ白い紙使ってるんですよね。
紙は普通でいいからもう少し安くしてくれるとありがたいんだけどなぁ…

ひとことK-POPコーナー
SHINeeのオニュが『ミス・コリア』のOSTで歌ってるじゃないですかぁ『Moonlight』
ここ何日かずーっと聞いてるんですけど、やっぱりきれいな声ですよねぇ… 癒されるわぁ
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『シカゴ育ち』都市的で詩的、不思議な一冊

2014-01-06 21:10:02 | アメリカの作家
THE COAST OF CHICAGO 
1981~1990年 スチュアート・ダイベック

例によって紀伊国屋書店で衝動買いしてしまった一冊ですが、すごく不思議な読後感です。
すごーく面白いか? 好きな話か? と聞かれたら、そうでもないのですが
良い後味が残っています。
内容云々というより、印象に残る一行が多い… という感じでしょうか?

アル中、ヤク中、暴力的な映画やら男に襲われそうになって死んだ娘などなど
決して美しいものがテーマではないのに、なんだかきれいな詩を読んだみたい。
吟味に吟味を重ねた単語をつなげて書いているというわけでもなさそうなのですが
なぜかいちいち心にひっかかりました。

六つのショートショートと六つの短篇、二つの連作から構成されていて
どれが一番好きとかそうでもないとかいうのは難しいのですが…
気になったものをいくつかあげてみますね。

『荒廃地域(Blight)』
朝鮮戦争とベトナム戦争の間のある年、町が公認荒廃地域に指定された。
バットで頭を殴られてから有名人や聖人を見続けているジギー、
モリーナに恋をし続けているペパー、完成しない小説を書き続けているディージョと
4人でバンドを結成し、荒廃団(ブライターズ)と名付けた。

これは以前、『and other stories』で読んだ時には、特に良いと思わなかったのですが
この短篇集で読んだらとても印象的だったのよね。
訳者(柴田元幸氏)も同じなのに… やはり同時掲載作品とか掲載順て重要なんですね。
若者がアメリカ的無茶をやっているようで、かなりせつない物語に思えます。

『夜鷹(Nighthawks)』
これは九つのお話しから成る連作で、各々に関連性はないけれど
主に夜中の風景・眠れない人たちがテーマになっています。
特に好きだったのは『不眠症』という話で
これはもう、完全にホッパーの “ ナイトホークス ” の世界!
          
これね! これがこのまんま頭の中に浮かびます。

『熱い氷(Hot Ice)』
これも五つのお話しからなる連作で、こちらは続き物です。
ええっとですね、これは、最初に書いたアル中、ヤク中、死んだ娘云々に加えて
刑務所に入ったイッちゃってる人が登場する話で、けっこうワイルドな内容なのですが
たとえば、娘が死んでいる情景がオフィーリアの絵画みたいに頭に浮かんだりして
おとぎ話的にキレイな印象が残っています。

『ペット・ミルク(Pet Milk)』
インスタントコーヒーにペットミルクを入れて飲んでいる。
ペットミルクがコーヒーの中で描く渦を見るのが好きだ。
ガールフレンドと通ったチェコ料理店のカクテルで見た渦を思い出す。

貧しいわけではないの、渦が好きなの。
コーヒーではなく、ミルクの渦にこだわる… 違いがわかる人ではないが詩的ではある。

私は “ ワル ” とかダーティーさを前面に押し出す話はあまり好きではないのですが
この一冊はまったく不快感を感じずに読み通せました。
話の中に垣間見える風景や情景が美しく儚く感じられたのが大きかったような気がします。
それが文章によるものだとしたらまさにペンによるミラクル!

柴田元幸さんは(背表紙によると)これまで訳した中で最高の一冊と断言していらっしゃる。
申し訳ないことに、私にとっては最高の一冊ではないのですが
ダイベックがとても気になる作家になったことは間違いない! と断言できます。

ひとことK-POPコーナー
BSで東方神起の日産スタジアムのライブやってたのを録っていたので観てみました。 さすがにすごーい迫力!
ところで 日産スタジアムって何人入るの? 後ろの方の人見えるのかしら? ドームだって小さ~いのに
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『最後の物たちの国で』生きることだけが願いの国とは…

2013-11-11 23:14:22 | アメリカの作家
IN THE COUNTRY OF LAST THINGS 
1987年 ポール・オースター

9月から異動した職場のそばに、困ったことに紀伊国屋書店がありまして
時間があるとついのぞいてしまいます。
そして、のぞいてしまうとつい買ってしまいます。
K-POPビンボーに加え紀伊国屋貧乏… 本当に困るわ

オースターは、名前はもちろん知っていたのですが読んだ覚えは無いんですよね。
紀伊国屋書店で見つけ、題名に惹かれて買った一冊です。

こういってしまうと語弊があるのかもしれませんが、すごく面白かったです。

ものすごく暗く冷たく残酷な物語なのですが、目が離せない状態で
通勤中もうとうとすることなく読み、ちょっとでも暇があれば開いて読んでました。

内容を説明するのが難しいのですが、頑張って書きますね。
よく判らなくても許してほしい…

アンナ・ブルームという女性が、ある男性に向けて書いている手紙がベースなのですが
これは彼女が、行方不明になった兄を捜しにある国を訪ねてから現在まで
どうやって生き延びてきたのか、という記録を綴ったようなものです。

その国を覆っている惨状から始まり、はびこる強奪、暴力、破壊、
襲いかかってくる空腹や寒さや、限りない物資の欠乏にどのように耐え
人々がどのように死んでいくのかが記されています。

アンナはその国に到着すると同時に荒廃しきった町を目にして呆然とします。
その時点でアメリカに引き返していればよかったのに! と思うのですが
彼女は兄を捜すために残ります。

どうやらアンナはアメリカでは裕福な家庭の娘だったようなのですが
その国では生き延びるために “ ごみ拾い業 ” の職につきます。
これはれっきとした仕事で、許可証無しにおこなうと重い刑を科せられます。
なぜかというと、その国ではゴミも死体も貴重なエネルギーだから。
勝手に拾ったり埋葬したりしてはいけないのね。

この国はかなりの無政府状態に見えるのですが、警察権力はあるし
無茶苦茶な政策や法律も生み出されているところをみると、一応国なのですね?
ただ、国民が知らないうちに政府はコロコロ変わっているようです。

アンナは19歳でその国に渡っているのですが
数年間で一生分の苦痛や恐怖を味わったような印象です。
細かくは書かないけど…

たしかにラッキーとしか思えないような展開のところもありますが
ぬくぬくと育った少女が、そこまでたくましくなれるのか… と感心するばかり。

アンナは、他人を信じられないその国で、何人かの善き人たちと親しくなりますが
皆将来を考えるより今日を生き抜くのに必死なのは変わりません。

誰と出会ってどんな事がおこったかっていうことは書きませんよ。
読んでほしいぃぃ! 引き込まれていくと思いますよ。

アメリカ、フランス、ロシアなど外国の名は出てきますが
舞台になっている国がどこを指すのかは不明です。
登場人物の名前もいろいろな国のものがあるし、人種も特定しにくい…
地域も不明だし、この国に侵攻しようとしている国もはっきりしません。

こういった小説だと『1984年』から連想される旧ソ連やヒトラー政権下のドイツ、
『メトロポリス』から思い浮かぶ産業革命下のイギリスやドイツなど
モデルになっていそうな国がありそうなものですが
いくらなんでもこんなにメチャクチャな国は無いでしょうよ! と考えたいですね。

けれども、まったく地上に存在しない架空の国の、完全なフィクションかというと
そうも思えないところが、恐ろしさを感じさせます。

心温まる話しではないですし、期待が高まる展開でもありません。
中には汚い描写や残酷なシーンもあります。
ラストでは祈るだけ… という感じでしたが、不思議と清々しく読み終えることができました。
こういう気分が味わえるから、読書ってやめられないんですよねぇ。

ひとことK-POPコーナー
実は私、ハングル文字が読めるんです(覚えちゃうと簡単なんです) 発音はおいといて…
だからバラードだと歌詞カード見ながら歌えるのですが、意味がわからないという… 今さら単語は覚えられないと思ふの
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『結婚しよう』誰がハッキリさせるのか?

2013-11-01 02:45:50 | アメリカの作家
MARRY ME 
1971年 ジョン・アップダイク

実際にそういう状況に陥ってみないとわからないものかもしれませんが
じれったいのよー という物語。

ちょっとあらすじを書いてみますね。

ジェリー・コウナントとサリー・マサイアスはW不倫関係にあります。
お互い自由になって一緒になりたいという希望を持っていますが
サリーは、ジェリーが自分ほどそれを望んでいるのか不安になります。

ジェリーが2日間の出張に出かけた時、サリーはいてもたってもいられず
ぐずる子どもたちや呆れるシッターを残してジェリーを追いかけます。
しかし、そこでもジェリーのちょっとしたひと言に不安を覚えます。

そんな二人をさらに不安にさせる航空会社のストライキ。
さすがですね! 何時間も空港で待たされる、人々が増え続け座る場所も無くなる、
同じ言葉を繰り返すだけの空港職員…
二人の焦りが濃くなるにつれて悲観的になっていくサリーをうまーく重ね合わせてます。

この出張の件は何ごともなくおさまったのですが
結局、二人の関係はジェリーの妻ルースにばれてしまいます。

実はルースはサリーの夫リチャードと関係を持っていました。
それは1年足らずの関係で、すでに終わっていました。

ルースは、夫婦がこれからどうするか決定するまで連絡を取らないようにと
ジェリーとサリーに約束させますが、盛り上がってる二人が聞くもんか!
約束破る → ルース怒る、の繰り返しです。

面白いのは、女二人がお互い相手のことを自分に都合のいいように脚色して伝えるとこ。
悪口じゃないのよ、悪口言うと嫌われちゃうからね。
彼女のことは好きだ…などと言いながら脚色して良くない感じの女に仕立てちゃう。
こういうの、覚えておかないと!
ま、後々悪口を言い合うんですけどね。

とうとうリチャードも気づきまして、「四人で話し合おう」と提案します。
えー! 会っちゃう?
『メイプル夫妻の物語』でも夫の浮気相手の夫婦に会いに行く妻の話があったけど…
作者の実体験?

ここで面白いのは、女がお互い自分を被害者に見せようという努力。
「あなたのせいで私がつらいかったから子どもたちもかわいそうだった…」
「私をダシにして泣くんじゃない!」

リチャードは、今後のことはジェリーの決断にまかせると言います。

ここまでも長かったのですが、物語はまだ続きます。
あまり書くとネタバレになるのでやめときますけどね。
2組の夫婦はどうなるんでしょうね?

もうさ~、近所の人たちにもばれちゃって興味津々の目で見られ
相手のことを悪く言えばかばうなんて仕打ちを何度もうけて
どうして「戻って来て」なんて言えるのかしら?

皆クールに見えてなんだか逃げ腰なのよ。
誰かが決めてくれたら従うけどさ、という迷路で右往左往してるだけ。
外でいろいろ言われちゃう子どもたちが可哀想ですよね!

誰がこの関係を終わらせようと断固とした態度に出るのだ? と
途中からイライラしっぱなしよ!!

実は私、ラストもよく理解できない状況なんですよね。
どうしてそうなって、さらにそうなって、そういう結論になるのか?
離婚に至る道のりは険しい、ということを言いたいのでしょうか?

確かに、カードの名義の書き換えとか、名字が変わることをいちいち説明したりとか
考えると面倒くさそうだけど… そういうことじゃなくてメンタルなことか?

ひとことK-POPコーナー
オニュ首大丈夫? EVERYBODYのカムバックだけじゃなくて
SMTOWNでも去年バージョンで激しく首振ってたものね… 痛かったろう  早くよくなりますように
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『悲しき酒場の唄』邦題はおっさんくさいよね・・・

2013-10-27 19:26:08 | アメリカの作家
THE BALLAD OF SAD CAFE 
1951年 カーソン・マッカラーズ

確かに訳すとそうなるのでしょうが…
原題がグッとくるでしょ! Sad Cafeですよ!!
ハードボイルドっぽく聞こえなくもないけど
わけありな男が無言で飲んでそうな、暗~い酒場の雰囲気が滲み出てて好きです。
けっして日本の酒場を想像しないでね。

でも表紙のピカソはどーよ? 悲しそうには見えないね。

4篇おさめられていますが、メインは『悲しき酒場の唄』で
他3篇はかなり短いです。

『悲しき酒場の唄』
100メートルほどしかないメインストリートと、街道で作業する囚人たちの歌声以外には
何も無いさびれた町に、かつては人々が集まる酒場がありました。
今ではすっかり朽ち果て今にも倒れそうな酒場にいったいどんな過去があったのでしょう。

主な登場人物は三人です。
酒場の所有者で、まるで男のように働く守銭奴アメリア・エヴァンズと
突然いとこだと名乗って現れた醜い小男ライマン・ウィリス、
そして過去にアメリアとたった10日間だけの奇妙な結婚をしたマーヴィン・メイシー。
三人ともそれぞれに常人には理解し難く、軌道を逸しています。

内容は詳しく書きませんが、三人は町中が見守る中で激しい憎悪と復讐の争いを繰り広げ
その結果、人々は唯一の憩いの場だった酒場を失ってしまうことになります。
どちらかというと荒々しい内容なのですが、文章が落ち着いていて
雰囲気がしっとりしているので浸りやすい一篇でした。

私は(女だからという理由ではなく)物語の展開から言ってアメリアが不憫でなりませんが
読む人によっては違う人物が哀れに思えるかもしれませんね。
誰もが違った形の悲しさを抱えている… そんなお話しでした。

『騎手』
シーズン中のホテルの食堂の入口から、ジョッキーは、トレーナーとノミ屋と馬主の三人が
座っているテーブルをじっと見つめます。
そしていきなりテーブルに近づくと、怪我をした同僚の話しを始めます。

『家庭の事情』
マーチン・メドウズは、メイドが休みをとる木曜日だったので急いで帰宅します。
居間では子どもたちが食事もとらず電気のコードで遊んでいました。
ベッドルームに行くと、妻がシェリー酒の匂いをさせながらよろよろと近づいて来ました。

『木石雲』
少年が新聞配達を終えて夜明け前のダイナーに入りコーヒーを飲み終えると
一人の酔った男から呼び止められます。
彼は1年9ヶ月間暮らし男と出て行った妻を探しまわってきた話しを始めました。

『悲しき~』以外の3篇は特に結末がある話しではありません。
でも「それでもいっかな~」と思えるお話し。
日常生活でも何から何まで結末があるわけではありませんよね。
うやむやの積み重ねと言ってもいいかもしれない…
そんなうやむやな一瞬ばかりを見事に描いたお話しという気がします。

カーソン・マッカラーズは、何篇かは他の短篇集でも読んだ気がしますが
ただただ暗いのよぉ。
特にこの一冊はひとかけらのユーモアも感じられないんですけど…

でも文章の雰囲気はすごく好きです。
一点を見つめて淡々と話しているような感じで、読んでいて落ち着きます。
もっとまとまった短篇集を読んでみたいですね。
読み終わってどーんよりするかもしれないけど
今の浮かれた私にはそれぐらいがいいのかも…

ひとことK-POPコーナー
SMTOWN 1日しか当たらなかったからね… 今日はおとなしく家にいます
それにしても東方神起が出た時の真っ赤な会場の迫力 神秘的ですごかったわ! あのペンライトTになるんだね

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『恋しくて』ハルキストの方、ここ飛ばして下さい、お願い!

2013-10-21 21:10:43 | アメリカの作家
TEN SELECTED LOVE STORIES 

村上春樹さんが集めたラブストーリーをおさめている短篇集です。

あ! 「編者の意図をまったくわかってない!!」と叱られたくないので
村上春樹さんファンは読まないで飛ばしていただいた方がお互い幸せかと…

最初にちらっと見た時、表紙が竹久夢二だったので
てっきり村上春樹さんの新刊かと思ったのですが翻訳本でした。
ギャップを漂わせつつ『恋しくて』感を醸し出していますね? 違う?

実はおさめられているのはアメリカの作家の小説だけではありません。
ロシア、カナダ、スイスの作家の作品が1篇づつと
村上春樹さん自身の書き下ろしが入っています。

恋や愛をテーマに集められた10話ですが、各作品の印象はかなり違います。
私はアリス・マンロー以外の作家は読んだ記憶が無いのですが
どの方の物語もかなり面白かったです。
特に印象が強かったいくつかをご紹介します。

『愛し合う二人に代わって(The Proxy Marriage)/マイリー・メロイ』
ウィリアムはハイスクール時代にブライディーに恋をしました。
けれども自分に自信が無くなかなか告白することができません。
イラク戦争が始まりました。
ウィリアムはブライディーの父親から代理結婚の相談を持ちかけられ
ブライディーと二人で何回も代理結婚式を挙げました。

この物語は何年にもわたっていて、途中主人公二人は離ればなれになるのですが
帰省中とかクリスマス休暇に代理結婚式を挙げています。
戦地に赴いた若者の切実な思いが二人を忙しくさせているわけで…せつないですね。
それはさておき、私はこれが10篇の中では一番単純明快なラブストーリーだと思います。

『L・デバードとアリエット_愛の物語
  (L.Debard And Aliette-A Love Story)/ローレン・グロフ)』
1918年のニューヨークで、43歳の水泳の元メダリストで詩人のL・デバードは
病気で足が悪い16歳の資産家令嬢アリエットの水泳コーチをすることになりました。
水泳の上達とともにアリエットの足は良くなり、二人は愛し合うようになります。
アリエットが妊娠したことがわかると二人は資産家のもとを逃げ出しました。
生まれた息子にはコンパスという名前をつけたいとアリエットが言います。

韓国ドラマが好きだったりするわりに “ 永遠の愛 ” に懐疑的なんですよね。
信じられます? いつまでもいつまでも一人の相手を想い続けるなんてねぇぇぇ
ま、そうでないとドラマは面白くないわけなんだが…
この物語は短篇とはいえけっこう長いお話で、ハッピーエンドではない(と思う)のですが
後日談がとても美しい一篇でした。

『ジャック・ランダ・ホテル(The Jack Randa Hotel)/アリス・マンロー
ゲイルは、若い演劇人サンドラと逃げて行った夫ウィルを追うため
ブティックを売り変装してオーストラリアまでやって来ました。
すでに死亡していた見知らぬ女性にウィルが送った手紙を手に入れたゲイルは
その女性の部屋を借り、女性に成りすまして返事を書きます。

ストーカーみたいに思えるかもしれないけど、そうとは言えない興味深い内容。
初老の捨てられた妻の奮闘ぶりをそんなふうに思ってもらっちゃ困るのよ。
書かれている通りにラストを迎えるのであればバンザーイ(ザマミロ)! なんだけど
終わらなそうな余韻があるんですよねぇ。
夫の母、夫と若い女性の現在、下の階の住人のことを隠し味のように効かせていて
一番多面的な物語に思えました。
アリス・マンローがノーベル文学賞だってね! さすが!! って思える一篇。

あとはさらっと気になる二篇を…

『恋と水素(Love And Hydrogen)/ジム・シェパード』は
有名なヒンデンブルク号を舞台にしている物語です。
愛と爆発事故がどうリンクしているんでしょうか? 気になるでしょ?

『恋するザムザ(Samsa In Love)/村上春樹』
一行目で笑っちゃったんですけど、笑っていいとこですよね?
ただ物語が進むにつれてしんみりしちゃいました。
今後の二人をものすごく応援したい… せめて再会して!

村上春樹さんが各小説に解説をつけていて、恋愛甘味度というのを☆で示しています。
これはブログを書くまでは見ないようにしようと思ってまだ読んでいませんので
どう考えていらっしゃるかは不明… まったく違ってたらどうしよう~ 恥ずかしいな。

思春期の少年のほろ苦い片思い、発展したらドロドロになりそうな淡い三角関係、
同棲を始めたばかりの若いカップル、不倫を終わらせようと思っている男女、
ぜったいにバレてはならない状況下での同性愛など、恋愛のパターンはいろいろ。

どちらかというとドラマチックな盛り上がりはない物語が多いですが
実際のの恋愛はわりと淡々と進むものよね?
恋愛中の人もそうでない人も、ハルキストじゃない人も読んじゃって下さい。
短篇集としてとても面白いです。

こういうふうにテーマ別で短篇をまとめてくれるとありがたいですね。
表現する人によってどれだけ違う印象を与えてもらえるのか考えるだけでわくわくします。

今思い浮かぶリクエストとしては、子どもが主役の短篇集と酒飲みが主役の短篇集ですね。

ひとことK-POPコーナー

『EVERYBODY』のしおり可愛いね! ちなみに私はオニュでした
ポスターとトレカはあきらめるけど、しおりはコンプリートしたい気分…
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