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まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『ディア・ベイビー』鼻につかない一冊

2013-10-08 21:55:58 | アメリカの作家

ウィリアム・サローヤン

お久しぶりです!!
今日は休みだったのですが、PhotoshopとIllustratorの再認証をとるのに
2時間以上四苦八苦していたら、ソフトが古すぎて再認証できないっていうじゃない!!
ということで、アンインストールとか再インストールをしているうちに日が暮れました。

たまってしまっている読書感想文から再開しますね。

サローヤンは『リトル・チルドレン』でちょっとした時に読むのに良いわね、と
思ったのですが、こちらもそんな感じで読み終えました。

O・ヘンリ的良い話しもいくつかあったのですが、それはおいといて
印象に残ったいくつかをご紹介します。

『若い男とネズミ(The Story of the Young Man and the Mouse)』
ある日、呑んだくれた若者の部屋に、ネズミが10ドル札をくわえて来ます。
その日からネズミはせっせとドル札を運び、若者は羽振りがよくなります。
しかしホテルの客たちはネズミが盗みを働いていることに気がつきます。
チーズに目が眩んだネズミはネズミ獲りにかかってしまいました。

失ってわかる大切さ…早く気づいてほしかったわ。
ピーター・ラビットの洋裁店のネズミの話を思い出しちゃった。
そりゃ盗みはよくないけどね…

『刃のように花のように
   (Knife-Like,Flower-Like,Like Nothing at All in the World)』
マックスの店で年配の男がピートを待っていると女が入って来ました。
男がピートの父親だと名乗ると女は自分がピートの結婚相手だと言います。
父親が息子は良くない男だと諭しますが、女は敵意剥き出しです。
結局ピートは現れませんでした。

二人が帰ったあとピートが来るんだけど、なんなのよ!それは!!って感じ。
騙す若造が悪いのか、騙される年増が悪いのか、息子に甘い親が悪いのか、
マックスはどーなんだ? とモヤモヤさせられんだけど、なんだか面白かった。

『ハリー(Harry)』
ハリーは幼い頃から家々を訪ね歩いて絵や雑誌や保険を売り歩き
14歳にして600ドルの預金を持ち、その後も金を稼ぎ続けていきました。
しかしハリーは若くして病に倒れ命を落としました。

“ 金より大事なものがある!” というありがちな教訓話ではないです。
最後まで金ではなくセールスに執着した若者の生き様が描かれているような気がします。
ちょっと寂しい一生のような気がしますが、彼が選んだ人生ということでね…

よくできすぎ…と感じたお話しもありましたが、概ね鼻につく話が無く
スラーっと読めた一冊でした。
深ーく読み込めばいろいろ教訓はあるのかもしれませんけど
そこまでは入り込めませんでした。

作者がアルメニア出身の移民で移民街に住んでいたということもあり
やけに◯◯人、◯◯人という注釈がつくのが気になったんだけどね。
出身はどこであれみんなアメリカ人じゃないの?
夢を抱いた各国の移民が、50年ほど前にアメリカの大都会で生きることは
難しかったんだなぁと、かすかに感じることができました。

後々まで記憶に残るかと言うと否定せざるを得ませんが
読んでいて楽しい一冊でした。

ひとことK-POPコーナー
SHINeeの“ EVERYBODY ” のComebackステージのおかげでYouTubeから目が離せないのよぉ
SMTOWNで歌うと思う? 歌うといいよね
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『優しすぎる妻』女性による女性のための・・・

2013-05-24 23:43:15 | アメリカの作家
SISTERS IN CRIME 2 
1990年

評価が高かったという第1巻は持っていないのですが、古本屋さんで購入しました。
名高い、とされる女性ミステリー作家の21話がおさめられています。
読後にまず感じたのはミステリーって幅広い!! ということでしょうか?

もうミステリーの定義がよくわからんぞ…
犯人探しをするもの、猟奇的な話、幻想的な話、小咄のような物語もあれば
ミステリーの範疇におさまりきらない人生の断片を書いたものまで様々ありました。

好きだったお話しをいくつかご紹介します。

『スネーク・プラント/The Snake Plant(ジーン・フィードラー)』
心筋梗塞の発作をおこして入院したダイアンは、同僚から見舞いでもらった鉢植えに
愛着を感じていましたが、夫のブライアンは怪訝な顔をします。
入院前ダイアンとブライアンは離婚の話し合いをしていましたが
退院して帰宅するとブライアンはダイアンに優しくなったようでした。

ただの鉢植えが夫婦にとってお互いの心を探る道具になり
とうとう相手を打ちのめすための武器になります。
どちらが勝利したのかは秘密… 私としてはスッキリしましたけど。

『息子のほほえみ/Andrew,My son(ジョイス・ハリントン)』
子どもの頃から天使のように可愛らしく、あまやかしてしまったアンドルーは
今では悪意のこもった態度しか見せないようになりました。
ドクターはアンドルーがこれまでにしてきたことを何度も語らせようとします。
家を数日空けていたアンドルーは帰宅すると優しさを見せるようになりました。

それまでのアンドルーの極悪ぶりを考えると、ラストちかくに見せるの優しさが
やけに不気味なのですが、母親はそれでも嬉しくなるんですよね。
溺愛してきた息子に対する母親の悲しい期待は報われるのか裏切られるのか…

『嵐よ、つかまえにきて/Storm Warning(ナンシー・ピカード)』
エリザベスは間違い電話がもとでエドと毎晩電話をするようになりました。
父の知人のリチャードの励ましもあり、とうとうエドと会うことにします。
エドは会ったその日に投資の話を持ち出します。

騙されちゃだめー! エリザベスっ!! というような単純な話ではないのです。
エドに騙されたかもしれないということより、もっとエリザベスの心を締め付ける出来事が
ラストに待っているのよね… せつない… 気をつけようっと。

『優しすぎる妻/Kindness(デボラ・ヴァレンタイン)』
心不全で死んだロドリゲスの未亡人は、葬式の後独り家路を辿りながら
50年前に愛した別の男のこと、ロドリゲスとの結婚生活などを思い出します。
未亡人はロドリゲスの入院後、かいがいしく世話をしました。
そんな妻に夫は怯えていました。

うーん… 結果としてそうなったのか、計画的だったのか謎ですが
ある種の完全犯罪と言えなくもない奥さまの行動だったのでした。
手口が気になった奥さまは本屋さんへGo! 気になった旦那さまもどうぞ!!

犯人探し、事件解決というミステリーの王道からは外れているかもしれませんが
人間の内面とか葛藤が深く書かれているようで、上の4篇を選びました。
ミステリーという枠にくくってしまうのは惜しいような物語だと思います。

以前書いたような気がするのですが、ミステリーもこれだけあると
混合玉石な気もしますし、トリックもどこかで見たような… ということが多々あります。
作家の方も大変な苦労をしているでしょうが、それが、例えばトリック暴きとか
アリバイ崩しというような事件解決一辺倒なだけでない作品を生み出させて
ミステリーのスタイルを拡げているのかもしれないですね。

ともあれ、作家が女性だから…というわけではないでしょうが
作品の主人公は全て女性で、女性が共感しやすいテーマを扱っています。
ミステリーが苦手な人でも入り込みやすい一冊じゃないでしょうか。
化粧品によくある “ お試しセット ” みたいな感じかしら?

ひとことK-POPコーナー
ジョンヒョンおかえりー!! 他の4人までやけにはりっきっている姿が微笑ましかったよ
ところでSHINeeといい4Minuteといい、今K-popはゾンビがブームなのかしら? SHINHWA 1位おめでとー!!
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『ニューヨーク』圧巻の医者一族伝説

2013-05-09 02:07:12 | アメリカの作家
CITY OF DRAM 
2001年 ベヴァリー・スワーリング

エミール・ゾラの『パリ』とエドワード・ラザファードの『ロンドン』が読みたいなと
ずっと思っているのですが、お高いので躊躇していたところ古本屋さんで見つけた一冊。

作家のお名前も知らず、なんの前情報も無く、二段組で600ページ以上もあるので
最後まで読み通せるか不安でしたが杞憂でした。
圧巻でしたよ! この物語が処女作と知って驚いているところです。

ニューヨークという大都市を舞台に、ある一族の確執と争いを描いた物語なのですが
アメリカの歴史が絡んで、ただの内輪もめではない壮大なお話しになっています。

長いのでね… ものすごくかいつまんで紹介しますね。

1661年、オランダの植民地だったアメリカのニューアムステルダムに
ルーカスとサリーというターナー兄妹が下り立つところから物語が始まります。

この二人は英国とオランダで極貧と戦い、やっとの思いでアメリカに渡ってきました。
兄ルーカスは床屋兼外科医で妹サリーは薬剤師、腕の良い二人の評判は高まり
アメリカでの生活は順調に始まります。

ところが、ある事件をきっかけに兄と妹は金輪際顔を会わせることが無くなります。
主にサリーの方がルーカスを憎む…という構図なのですが、その気持ちはよくわかる!
なんでかは書かないけどね~
そしてこの確執が延々と一族に続く怨恨の第一歩になります。

話は1711年にとび、ルーカスの孫にあたる外科医クリストファーが
没交渉だったサリーの娘のレッド・ベスから突然の訪問を受けたところから
第二の確執がスタート。
レッド・ベスの娘にあたるタムシンとその夫の内科医ザカリー・クラドックが
クリストファーに仕掛けたと言える諍いは一族に広がりをみせていきます。

クリストファーの娘ジェネットはとても美しい少女になります。
レッド・ベスの弟、すなわちサリーの息子ウィレム・デヴリーの息子ケイレブは
ジェネットに恋をして婚約までこぎつけるのですが、ある秘密がわかり破談になります。
しかも、ジェネットがすぐにユダヤ人の大富豪ソロモン・ダシルヴァと結婚したことが
ケイレブの憎しみを誘い、後のジェネット対ケイレブの死闘へと発展します。

その死闘に巻き込まれたばっかりに、ジェネットの息子モーガンは
ジェネットの兄にあたる外科医ルーカスの一家の恨みをかうことに…
さらに母親のやり方に堪えられなくなったモーガンが家を飛び出します。

あっちでもこっちでも誤解と詮索と怨恨が渦巻いてますよ!

先住民の反抗と壮絶な攻防、欧州による植民地の奪い合い、奴隷の反乱という
数々の試練をくぐり抜けてきたアメリカの植民者がじわじわと立ち上がります。
本国イギリスによる圧政と搾取に堪えきれなくなったのです。

独立戦争の中、ニューヨークでは愛国派(独立派)と保守派(英国派)が入り乱れて
お互いを傷つけ合います。
親子も兄弟も二派に分かれてむごい戦争に加わります。

ターナー家、デヴリー家も例外ではありません。
ずっと歪み合ってきた二つの家系でしたが
自分たちの争いなどの比ではない独立戦争に向き合ってどうなっていったのでしょうか?

はたから見れば「話せばわかる!」っていうことだと思うんですが
一度火がついた憎しみって、血の繋がりがある方が根深いのかしらね?

人間関係がわかりずらいでしょー?
でも巻頭に家系図がついていますのでご安心を。

主人公となっている一族は代々お医者様と薬剤師を輩出している医療一家なのですが
当時の医療事情には驚きますよ!!

麻酔がないとか輸血が妖しげな儀式に見られるというのも驚きますが
まあ300~400年前のことだから当然かしらね、とも考えられます。

それより、外科医の方が内科医より数段格が低かったらしく蔑まれてるのに驚いたわ。
手術ができる方がヒルなんかに頼る治療より信頼できそうですけどね。
それから、女性が医療行為をするのは禁止どころか極刑になったってことですよ!
死刑ですよ!! 薬剤師はよかったらしい… 不思議ですね。

『アボンリーへの道』では長女フェリシティが医大に行ってましたが何年ごろの話し?
ヴィクトリア女王時代だったような気がするので1800~1900年ぐらいかしら?

それにしても、戦争はいつの時代も酷いものですね。
原住民や奴隷に対する植民者のふるまいも、白人に対する原住民や奴隷の反抗も
一度は優勢にたった英国派の兵士の行いも、独立を勝ち取った愛国派のその後の行いも…
残虐なことにおいては皆同じ穴の狢ね。
ものすごく迫力がある描き方でむごさがありありと浮かびました。

人間は有利な立場に立った時、集団で少数を相手にする時、自分が正義だと信じこんだ時、
とんでもないことをするのだなと呆れるばかりです。
でも自分がそうしないとは誓えないのが情けないところ…
とにかく、不毛な争いがおこらないように願うばかりです。

“ 読書で三都物語 ” 、 まずは『ニューヨーク』を読破です。

ひとことK-POPコーナー
SHINHWAの新しいCDがすごいらしい!! っていう噂だけで18日発売の『THE CLASSIC』を予約しちゃったよ
豪華特典写真集ってのも気になるところ…
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『小悪魔アザゼル18の物語』小さな親切、ものすごく大きなお世話!

2013-04-27 22:24:12 | アメリカの作家
AZAZEL 
1988年 アイザック・アシモフ

アイザック・アシモフって有名ですよね! って、実は読んだことがないと思う…
スペース・ファンタジー系の作家ですよね?

古本屋さんで見つけて面白そうだったので買ってみました。
宇宙とはほとんど関係ない18篇からなる一冊です。

全てのお話しは、アザゼルという2cmの悪魔に魔術を使わせることができるという
ジョージ・ビターナットという男が、作家に語ったこれまでの善行(?)です。

ただし、ビターナットが行った善行はほぼ全て失敗に終わっているのよね。
しかも頼まれてもいないのにやっちゃうの。

印象に残ったお話しをいくつか書きますね。

『強い者勝ち』
条件は揃っているのになぜか女性と縁がないことを嘆く友人テオフィルスを見て
女性にモテるようにしてあげました。
次に会った時、テオフィルスは女性に囲まれてうんざり顔をしていました。

モテるっていっても限度があるわよね。
すれ違っただけでどの女性もクラクラしてしまうなんて、面倒くさそう…
結局テオフィルスはとんでもない相手に出会うことになります。

『酒は諸悪のもと』
完璧な美女なのに厳しく育てられたせいで男性とつきあえないイシュタルを可哀想に思い
お酒が飲める体質に変えてあげることにします。
酔ったイシュタルは大胆になり、何人もの男性をおとしていきますが…

“ 男性と付き合う ” の意味が違うと思うんですけど…
しかもお酒ばっかり飲ましてたらどうなりますか? 想像力が欠如している!!
ということでイシュタルのゆく末はとても悲惨なものになりそうです。

『見る人が見れば』
親友の娘で、不器量だけど優しく心が綺麗なメリサンドが熱烈な恋をし結婚しました。
11年後、夫のために美しくなりたいと嘆くメリサンドを見て願いを叶えてあげます。
数日後、沈んだ様子の夫を見かけました。

美しくなった奥さんはおしゃれに目覚め、さらに美しくなっていくじゃない?
そしたら世の男性がほっとかないじゃない? というわけで、この夫婦には危機が訪れます。
11年間幸せに暮らしてきた夫婦になにしてくれちゃうわけ!?

『ガラテア』
古い友人の娘で彫刻家のエルダベリーは、完璧な男性の像を造り上げ愛してしまいました。
硬い大理石から柔らかい人間に変わって抱きしめてくれればいいのにと嘆く彼女を見て
願いを叶えてあげることにします。
数日後彼女を訪ねると怒り心頭でした。

“ 柔らかい ” っていうところがポイント!
悪魔に伝える時に細かい部分の説明を怠ってしまったからなのね。 ちょっと下ネタです。
エルダベリーはこの先この男性を抱えてどうすればいいんでしょうね?

ビターナットは悪い人ではないのでしょうが困り者ですね。
勝手に「善いことしよう!」って人生メチャクチャにされてもねぇ…
責任のとれないことにまで手を出すのはやめてほしいものです。
親切とはいえターゲットにはなりたくないですね。

悪魔がいたり魔術が使えるなんてことがないにしても
親切はありがたいがほっといてほしい…という人はいますね 。
知らない間に事が大きくなってたりしてね…

何も考えず、のほほんと読み流せる一冊だと思いますが
深く読み込むとけっこう教訓が潜んでいるのかもしれません。
2cmの悪魔は見てみたい気がする… 2cmって…虫と間違えて踏んじゃうかもしれん…

ひとことK-POPコーナー
イ・ハイってどんどん可愛くなりません? 最近彼女を見るのが楽しみになってきました。
『 it's over』のクマもかわいいね  誰かに似ている…
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『ジャズ』迷路で立ち往生…てな気分

2013-03-17 23:20:23 | アメリカの作家
JAZZ 
1992年 トニ・モリスン

『パラダイス』にものすごく感激してしまって、すぐこの本を買っちゃったんだけど…
難しい… 実は1回読んだだけでは理解できなくて2回読んでしまいました。

この物語でも人種の問題を取り入れているようですが
それはそれとして、目まぐるしく変化していく物語の展開を追っていくことが
とても楽しくもあり苦しくもある一冊でした。

ある女性が若い娘の葬式で、横たわる娘の顔を斬りつけようとしたところから
物語が始まります。

斬りつけた女性はヴァイオレット・トレイス。
もぐりの美容師をしている40代後半の女性です。

斬りつけられたのはドーカスという、ヴァイオレットの夫ジョーが夢中になっていた
18歳の少女でした。

ジョーはドーカスが他の男といるところに現れ彼女を射殺したのですが
証拠不十分というか目撃者がいなかったため不起訴になったのでした。

その後ヴァイオレットはドーカスのことが知りたくなって
育ての親だったおばのアリス・マンフレッドを訪ねるようになります。
アリスは腕の良い仕立て屋ですが、暴動という暗い思い出から白人を恐れています。

ヴァイオレットとアリスの微妙な交流も興味深いところです。

それでね、この物語が難しくなっていくのはここから話が遡っていくことなんですが…

まずはヴァイオレットの母ローズ・ディアのエピソードがあり
祖母トルーベルの話しへと移ります。

トルーベルが長い間仕えていたヴェラ・ルイーズと彼女が生んだゴールデンという息子、
ゴールデンが探し求めた父親と見られる黒人男性ヘンリ・レストーリ、
ヘンリ・レストーリが託されたワイルドという狂女は、どうやらジョーの母親らしい…
遡っていくと登場人物たちが不思議につながっていくんですね。

ここで少しこんがらがってしまって、またまた家系図なんかを書きながら読みました。
ただ、難しいけど面白いくだりで読み進めるのは苦痛ではありませんでした。

最後には現代に戻ってきて、ヴァイオレットとジョーのその後が書かれています。
このラストをどう見るかは人それぞれだと思いますが
私はヴァイオレットに「良かったね」と言ってあげたいような気がします。

かなりはしょりましたので、ただのセンセーショナルな物語に思えるかもしれませんが
それは私の書き方のせいでして、本当はもっと奥深い人の過去と現在の妙が描かれています。

『パラダイス』同様、恐ろしさと悲しさと独特の美しさを孕んだファンタジーで
物語としてたいへん面白いものでありました。
なにしろ2回続けて読んでも途中で飽きることがなかったからね!

ひとことK-POPコーナー
PARADISEといえば… Infiniteの爽やかなティーザーも4日めになり期待が膨らむ一方ですね!!
あと3日か…
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『アメリカ短編小説傑作選 2000』世の中は問題山積なのね

2013-03-14 03:14:54 | アメリカの作家
THE BEST AMERICAN SHORT STORIES 2000 
2000年

なんで今頃2000年の傑作選か… と言いますと、本棚で見つけちゃったから。
読んだ覚えが無いので読み返してみました。

現実的でしんみり、あるいはのんびりした、解り易~い物語好きの私ですが
若い頃はこういうのが好きだったんでしょうね?

ありきたりな恋愛小説や家族のいい話を書くのはやめましょう!という
作家の意気込みが感じられる一冊です。

評論家やコメンテイターとは違った角度から社会問題に切り込んでるっていう感じかしら?
傑作選ですから面白くないわけではありません。
ただ、どの話も大小さまざまな問題を孕んでいて疲れちゃうのよ。

問題はあれど好きだったお話しをいくつかあげてみます。

『フラワー・チルドレン(Flower Children)/マキシン・スワン』
子供たちは好きな時に、野山、牧場、沼地などをかけまわり、自由に育っていました。
しかし麻薬常用者だった父さんは他の女のもとへ行き、同じく麻薬常用者の母さんは
ボーイフレンドを連れてくるようになります。

最初は、自然って子供たちにとってなんていい環境なんでしょ!と思いながら
読んでいたんですけど、自由に、というより放任なのね。
子供たちは学校に行くようになって規則を身につける機会が訪れますけど
親にはもうそんな機会はないわけで… 子供たちにエールを送るしかありません。

『共同戦線(Unified Front)/アントーニャ・ネルソン』
ジェイコブとシーシーはフロリダのテーマパークを訪れています。
シーシーは、ずっと子だくさんの一家の双子の後を追いかけ回しています。
ついに両親がアトラクションに入り、子どもだけが残された瞬間が訪れました。

もとは夫の不倫から始まり、相手の子供が死んでしまったりして
シーシーは子供が欲しいという思いに取り憑かれてしまっているようです。
気持はわからないでもないが、肯定するかと聞かれればNoですね。
しかしこのご時世、子どもだけを残していなくなっちゃうのはどうかと思うよ。

『家族の絆(Welding with Children)/ティム・ガトロー』
家内がカジノに行く日、四人の未婚の娘たちが子供をひとりづつ預けて行きました。
幼い子供たちが良くない言葉を使い、母親のボーイフレンドの事を話します。
気を取り直して聖書を読んでやると、口を挟んで内容をめちゃくちゃにしてしまいました。

おじいちゃんは大変だし、近所の目も気になりましょうが、なんかいい話なのよね。
悪戦苦闘しながら食事を与えるおじいちゃんと、小さな手と口を動かす四人の孫たちの
あーでもない、こーでもない、という場面を思い浮かべると自然と顔がほころびます。

問題は他にもいろいろ目白押しですよ。
親が犯した罪、宗教社会のイニシアティブ争いに巻き込まれる親、妻と娘の家出、
自分の不倫に親の不倫、娘の里帰り… まだまだ続く… もう書かないけどね。

自分の身にふりかからなければどうでもいいようなことから社会問題、病気などなど
世の中には頭を悩ませることがこんなにもあるのですね。

その上天災があるというのに、なぜに人々は争ってるのか?
この一冊にはそういうメッセージでも含まれているのでしょうか?

不勉強なせいだと思いますが、20世紀の名作選と比較すると
「21世紀は、この人!」という代名詞的な作家が見あたらないのが寂しいですね。
作家が増えすぎたのか、天才が減ったのか
はたまた、日本における翻訳小説市場がぐっと狭まったのかはわかりませんが…
いずれにしても、傑作選という名の下に会した作家の作品集だけあって
侮れない一冊であることは間違いないと思います。

ひとことK-POPコーナー
今日(正しくは昨日)仕事から帰ったら宅配BOXにTOWER RECORDSからお届けものが…SHINeeの『Fire』でした
もちろん!旦那が寝静まってから見ましたとも!! いい気持ちで眠れそうです。
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『怒りの葡萄』弱者は切り捨てろ!

2013-02-22 02:25:26 | アメリカの作家
THE GRAPES OF WRATH 
1939年 ジョン・スタインベック

私は、強い者が勝つっていう考え方も、努力は報われないっていう現実も肯定します。
でもちゃんと働いている人が普通に生きることさえままならないっていうのは
やっぱり国の責任で、なにかシステムがおかしいんじゃないかね? と思いますけどね。

映画にもなったという『怒りの葡萄』
こんなに強いメッセージを含んだ映画が、娯楽万歳!な当時のハリウッド映画の中で
ウケたのかどうかは知りませんが、本はすごく面白かったです。

『二十日鼠と人間』同様、農場が舞台になっていますが
決定的に違うのは『二十日鼠~』に登場する労働者たちは
事情があるとはいえ、自ら季節労働者を選んだ大人の男たちでした。

けれどもこの物語で農場から農場へと彷徨っているのは膨大な数の家族。
老人も子供も、病人も妊婦も含まれる人々が故郷を追われ、仕事を求めて
カリフォルニアに向かっています。

彼らはなにも「カリフォルニアってオシャレよね!」とその地を目指しているわけでなく
仕事があると聞いて、オンボロの車に積めるだけの家財道具を押し込み
高値でふっかけられるガソリンや食べ物にあえぎながら進んでいるのです。

彼らを追い出したのは農場の大規模経営に乗り出した銀行です。
土地を抵当に入れていた農民を村から丸ごと追い出し、機械化して収益を得るためです。

長い話でもあり、随所にスタインベックが抱く今後の農場経営への危惧や
公然と行われている “ 移民 ” への不当な扱いに言及する章が挟み込まれているので
到底数行のあらすじでは表しきれないのですが、ざっくり書いてみますね。

やむを得ず殺人を犯したトム・ジョードという若者が仮釈放になり
再会した元説教師ケーシーとオクラホマの故郷に戻ると村はもぬけの殻でした。
伯父の家に身を寄せていた一家に追いつきますが、伯父の村も立退き寸前でした。
一家とケーシーは西へ向かいます。

ジョード一家は、トム、じいさまとばあさま、父母、兄ノアと弟アル、
身重の妹ローザシャーンとその夫コニー、幼い妹ルーシーと弟ウィンフィールド
ジョン伯父の総勢12名です。
しかし、じいさまは出発間際になって「行かない」と言い張り村に残ります。

ここから西までの道程は長いので省きますが、かいつまんでいうと
道中助け合うことになった人々との別れがあり、ケーシーもある事情から去り
家族も一人抜け、二人抜けして最後には6人になります。
必死で働いたのに結局定住はできず、暗澹たる状況に陥ります。

スタインベックはジョード一家に当時の農民たちの苦境を投影させて
旅を続けさせます。
「この正直な人々を見よ! 彼らの理不尽な苦しみを見よ!」と。

この先離散した家族は会えるのでしょうか?
一家が夢見た家族が暮らせる家は手に入るのでしょうか?
以前と同じような収入が得られ妥当な値段で食糧が買えるのでしょうか?

物語を読んで見える答えは “ No ” です。
後から後からに押し寄せる人々にどの店も必需品を高値で売りつけようとします。
泊まる場所が無い人々を警官は追い出します。
農場ではありとあらゆる手を使い賃金を搾取します。
少しでも他より高い賃金を払う雇用主は協会に睨まれ融資を受けられなくなります。

今でもそうだとは言いません。
災害に遭った地域にとっとと大統領が出向いたりすぐに募金が集まったり、
スターたちの募金額も桁違い…アメリカって慈善精神に富んだ国よね。
ニュースになった可哀想な犬や猫の引き取り手も多いしね。

ただね、世界一正義感を持ってると言い張るアメリカの過去がこんなに無慈悲だったとは…と
けっこう衝撃を受けましたよ。

さすがに現代は… と思うけど、マイケル・ムーアのドキュメントとか
リーマンショックのニュースから考えるに、弱者後回し感は否めないわ。
まずはホワイトカラーを救おうっていう感じ。
日本も人ごとじゃないですけどね。

ラストはものすごく感動的でした。
具体的な未来は見えませんが、人間の底力と勇気が感じられます。
移民として彷徨っている人々に今日よりましな明日が訪れそうな期待が持てる
そんなクライマックスでした。
『風と共に去りぬ』のラストっぽいかもしれないね。 前向きってことか?

ひとことK-POPコーナー
ちょいとちょいと!  SHINeeの『Dream Girl』聴きましてっ!? 素敵ですね!!
いまのところ、Wild Sideなオニュ炸裂の Dynamaite と Hitchhiking が好きです
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『社交ダンスが終わった夜に』書き残したことはないですか?

2013-02-14 02:57:46 | アメリカの作家
ONE MORE FOR THE ROAD 
2002年 レイ・ブラッドベリ

レイ・ブラッドベリは短篇集を何冊か持っているのですが
失礼なことに、もうとっくの昔に亡くなっている作家だと思っていましたら
去年亡くなったんですね?
本屋さんで “ 巨星、逝く ” という帯を見まして手に取ってしまいました。

ご自身のあとがきを含めると26篇からなる短篇集で、とにかく幅広いです。
メロウなものから悪ふざけっぽいもの、難解な話、ホロリとくる話とてんこもり!
けれども、やはりブラッドベリスタイルに仕上がっている気がします。

わたくし的には、好きな話と好きではない話が半々ぐらいの割合でした。
誰が読んでもひとつは好きな物語が見つけられるのではないかと思います。
無かったらごめんなさい

特に気になったお話しをいくつかご紹介します。

『頭をよせて(Teta-a-Teta)』
ある夏の夕暮れ、友人と遊歩道を歩いていると老夫婦が言い争いをしていました。
二人は何年も、毎晩同じベンチで言い争いをしています。
いきなりベンチが無人になり、夫が亡くなったことを知りました。
一週間後、妻がベンチに座り、亡くなったはずの夫と言い争いをしていました。

一歩間違うと危ないお婆さんのお話しになってしまうのですが、私は良い話と見ました。
周りの人々の気遣いが嬉しい… 都会なのにね。

『秋の終日(Autumn Afternoon)』
使い終わったカレンダーを欲しがる幼い姪ジュリエットを残して屋根裏部屋に行った
ミス・シモンズは古いカレンダーの山を見つけました。
カレンダーにはミス・ソモンズ自身の手でたくさんの書き込みがされていました。

この話しは、なんだかマンスフィールドっぽいの。
若い頃に記録したもの、例えば日記とかアルバムとか…
どんな気持で見るかはその時の状況によるけど、女性にはけっこう酷なものだと思うよ。

『夢街道いま一度(One More for the Road)』
ある日、作家志望のフォレットという男が沢山の板切れを持って来ました。
彼は小説が書かれた板切れを貼付け、大陸を横断しシアトルで完結するという
クロスカントリー小説を提案してきました。

面白いと思うんだけどね… 小説を読むためにアメリカを横断するなんて。
でも面倒くさいからYouTubeでアップされたのを読んじゃうよね、やっぱり。

『炉辺のコオロギ(The Cricket on the Hearth)』
ジョン・マーチンが帰宅すると妻が怯えていて、誰かが盗聴マイクを仕掛けて行ったと
隣人から聞いたと言います。
なるべく普段通りに暮らそうとする二人… ジョンは珍しく花を買って帰ったり
妻の手料理を褒めたりします。

(浮気隠し以外なら)どんな状況であれ、夫が優しくなるのは嬉しいですよね。
妻の気持はよくわかる! って感じのお話しです。

ブラッドベリがSF作家という先入観無しに読むといいのではないかしら?
たま~に思い浮かんじゃうけど、そういったジャンルわけは超えちゃってると思う。
文章だけ読んでいると、いつの時代の、何歳の作家かまったく見当つきません。
一生を創作型の作家として生きてきた人の底力が感じられる一冊です。

この本を読んでいたら、まだまだ書きたいことがあっただろうなぁ… と
思わずにはいられません。

ひとことK-POPコーナー
こないだ演芸パレードという番組でボーッとCOWCOWを見ていたら、いきなりBIGBANGが映って驚いたよ!
すぐ録画体制に入ったけど撮れなかったよぉ… この番組は予想外すぎる
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『ウィークエンド』愛を壊す正直さってどう思う?

2013-02-04 21:34:55 | アメリカの作家
WEEKEND 
1994年 ピーター・キャメロン

『最終目的地』『うるう年の恋人たち』でキャメロンファンになって
Amazonで購入した本でございます。

前出2冊でも男性の愛が描かれていましたが、男女間の愛もありました。
しかしこの『ウィークエンド』はがっつり男性同士の愛が描かれていまして
途中までは感情移入できるかどうか不安でした。

でも読み終えると、愛が始まって愛を育んで愛の終わりを迎えるという過程には
男女間の恋愛であれ、同性同士であれ変わりはないものなのね… と思えました。
主人公の恋人たちが男性と男性だったというだけで、内容は共感できるものでした。

ライルという美術評論家が、ロバートという画家志望の青年をつれて
ニューヨークから田舎へ週末を過ごしに向かうところから物語が始まります。

二人が訪ねるのはジョンとマリアン夫婦の家です。
ジョンは、ライルの十年来の恋人だったトニーの異父兄です。
トニーは前年の夏にエイズで亡くなっています。

マリアンは、ライルが新しい恋人を連れて来ることがどうにも納得いきません。
ディナーには近所の別荘にいるイタリア人のローラを招いていて
4人のはずが5人になってしまうことも気に入りません。

ものすごーく端折りますけど、マリアン、ジョン、ローラにも
なんだかハッキリはわからないけど、なにやら抱え込んでいるものがありそうです。
さあ!楽しい週末!! なんて雰囲気じゃない感じ。

物語は二人がジョンの家に到着してからディナーまで、ディナーの間の出来事、
ディナーを終えてからロバートが家を飛び出すまで、そしてその後…というように
週末の二日間を描くかたわら、ライルとロバートの出会いや付き合うきっかけ、
ライルとトニーが過ごした週末、トニーの最期などがちりばめられています。

例によって場面や時間がいったりきたりするのですが
各章に分けられていたので読み易かったです。

どうしてロバートが出て行ってしまったかっていうのを…
どうしよう…書いちゃおうかなぁ この場合書いた方がいい気がする…

つまり、ライルはロバートが一番聞きたい言葉「愛してる」を
どうしても、どうしても言えないの。
「愛してると言うと嘘になる」と言って頑なに拒むのです。

どうなんでしょう?
相手が心から望んでいるひと言を言わない正直さって、必要なんでしょうか?
だってライルは遊びじゃないのだし、心からロバートが好きなのよ。
嘘にはならないと思うけどね… それこそ “ やさしい嘘 ” でもいいじゃないの?

それとも、やはり愛にはとことん正直な方がいいのかしら?
たとえそれが自分にとっては辛い結果を招いても…

物語のラストでは、ロバートがライルの態度を受け止め
これからどう生きていくかが示唆されています。
もしかすうと、ライルの馬鹿正直さがロバートにとっては救いだったのかもしれません。

ライルはなーんにも考えていないように見えるんだけどな…
果たして今後ロバートとどうするつもりなのか気になります。

ライルとロバートの愛に関するやりとりは、同性愛だからということは全く関係ないです。
どちらかというと年齢の差、というか経験の差が原因のように、私には見えました。
もう少し経験があれば、ロバートにもライルの言う意味が理解できたかもしれません。

それから、ライルは恋愛をするには(思考が)老成しすぎなんじゃないかしら?
愛に年齢は関係はないと言いますね、もちろんその通りかもしれませんけど
いざという時に「もう若くないから」と自分で言っちゃうぐらいならやめとけば~?
相手が困ると思うよ。

ひとことK-POPコーナー
NHK韓国語講座の『2PMのワンポイントハングル』にニックンが戻ってきましたね
おめでとうございます
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『猫は14の謎をもつ』恩知らずとは言わせないわ

2013-01-11 21:48:40 | アメリカの作家
THE CAT WHO HAD 14 TALES 
1988年 リリアン・J・ブラウン

今さら…ですが、あけましておめでとうございます。
年明け早々インフルエンザに罹り寝込んでおりました。
初めて罹ったけど苦しいね… 皆様もお気をつけ下さい。

そんなわけで、今年一回目のアップは、大好きな猫のお話しがつまった
こちらの一冊の感想文にしてみました。

リリアン・J・ブラウンという方はミステリー作家だそうで
猫ちゃんが謎解きをするシリーズを書いていらっしゃるそうです。
そちらは読んだことがないのですが、古本屋さんで見つけて購入しました。

猫嫌いの人は、猫のことを「わがまま」とか「三日で恩を忘れる」なんて申しますが
この本を読んだらそんなことは言わせませんよ。
恩や愛を忘れない立派な猫が登場するお話しがいくつかありました。
いくつか紹介しますね。

『黒い猫(The Dark One)』
ダク・ウォンは、人里離れた地で飼い主のヒルダの愛を受けて幸福に過ごしていました。
しかし、週末にヒルダの夫ジャックが帰って来ると家は居心地の悪い場所になりました。
ある晩、ヒルダとジャックの口論はピークに達しました。
家を飛び出たヒルダをジャックが「殺す」と言って追って行きます。

ダク・ウォンは自分に力が無いことを自覚しているし、とても怯えているのね。
でも、どうにかして自分を愛してくれたヒルダを救いたいと思うの。
“ 自己犠牲 ” という概念が猫にあるのかどうかは別として
とにかく助けたいと言う一心がとらせたギリギリの行動に目頭が熱くなります。

『ススと八時半の幽霊(SuSu and the 8:30 Ghost)』
ススは同じ階に越して来たばかりの風変わりの老人ミスター・ヴァンをすっかり気に入り
ミスター・ヴァンもススが気に入ったのか、頻繁に訪ねて来るようになりました。
しかし、ある日、老人は精神病院に入れられたと不気味な介護人から聞かされました。

飼い主は面倒な客が来なくなってホッとするのですが、ススはそうではなかったのね。
お客がやって来たようにはしゃぎまわる猫の行動に、飼い主はハッとします。
そこからある疑問が浮かび、そしてそれは確信へ…
可愛がってくれた人を慕う猫の思いが通じたってことでしょう、きっと。

『マダム・フロイの罪(The Sin of Madame Phloi)』
猫としてのプライドを失わないマダム・フロイは、息子のサプシムを溺愛していました。
ある日隣の部屋に粗野で乱暴そうな、猫嫌いの男が越して来ました。
家人の留守中窓から外の桟に出たマダム・フロイとサプシムを隣の男が呼びます。
すぐ人間や食べ物にじゃれつくサプシムは男に近づき、そして10階から落下しました。

ペット問題が起こした悲劇なわけですが、ややこしくなるのでそれはおいときます。
猫ちゃんにも親の愛はある!ってことで、マダム・フロイは復讐に乗り出します。
一昔前なら猫の復讐と言えば、呪いとか化け猫…という展開でしょうが現代は違う!
持ち前の冷静さと知性を総動員して男のもとへ… 上手くいくんでしょうか?

題名からわかるように14篇のお話しが収められています。
作家ならではのミステリー仕立てのものもありますが、猫ちゃんが解決するというより
まわりにいる人間に訴えかけるようにして謎への注意を促すって感じでしょうか?
いずれにしても、愛する人や優しくしてくれた人への思いがそうさせています。

他にも、敵対する群れに属する二匹の猫が恋に落ちる悲劇的なお話し
その名も『イースト・サイド・ストーリー』ですとか
酒場の店主が猫をめぐって役所と戦うお話し『ディプシーと公衆衛生局』など
良いお話しがありました。

主人公になっている猫は、ほとんどが作者が飼っているシャム猫でして
どちらかというとクールでプライドが高いタイプ。
だから猫ちゃんの可愛いしぐさの描写はあまりありません。
でも、じゃれつかないのに、相手をしてくれないのに、気の向く時しか見つめてくれないのに
愛おしくて仕方が無いというのが猫なのです。

じーっと部屋の隅を見つめている猫の、視線のその先の不気味さより
猫ちゃんに何が見えているのか、何を考えているのかが気になります。
そんな飼い主の思いもまた、謎解きに繋がっているのかもしれません。

さしあたりシャム猫ココシリーズを購入する気はありませんが
他にこういう短篇集があるなら読んでみたいな。

ひとことK-POPコーナー
INFINITEのソンギュのソロ『60秒』のMVを見ました。
ソンギュの「寝ているような目(by 序列王)」って、歌っている時、セクシーでオーラがありますよね
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『リトル・チルドレン』大アメリカの小さな話し

2012-11-20 22:54:34 | アメリカの作家
LITTLE CHILDREN 
1937年 ウィリアム・サローヤン

ウィリアム・サローヤンて私は3冊しか持っていないのですが
けっこう翻訳が出てますね。

アメリカががんがん成長していた時代に、移民の子として過ごした作者の
自伝的短篇集だそうでございます。

少年が主人公のもの、まわりの大人に焦点をあてているもの、様々なお話しがありますが
概ね “ 涙ホロリ ” なお話しのような気がします。

17篇の中から好きだったお話しをご紹介します。

『メキシコ人(The Mexicans)』
ホアン・カブラルは、ある日妻と5人の子供と、脚の悪いいとこと4匹の犬を連れて
おじの畑にやって来ると「仕事をくれ」といいました。
雇わないと言うおじに対しホアンは安い賃金では嫌だと言って一歩も引きません。

結局、メキシコ人「働いてやる」、おじさん「光栄です(嫌味)」ってところに
おさまるんですが、かみあわない会話が読者をニヤッとさせます。
後半、メキシコ人移民と日本人移民の比較論が展開されます。
まぁ “ ジャップ ” て言われちゃってるんだけどねぇ… 昔の話だし…

『農夫の幸せ(The Peasant)』
アルメニアのグルティクという村からやってきたサルキスは
知人のいない異国での孤独を乗り越え、農場を手に入れ、成功し結婚しました。
時は経ち、子供たちは巣立ちし、生活は贅沢と言っても良いほど豊かになりましたが
サルキスは故郷のグルティクが恋しいままでした。

一昔前、アメリカンドリームを手に入れた異国人は、故国では羨ましがられる人でしたよね。
大国の威信は薄れたとは言え、今でもアメリカでヒットしたという物事は
ニュースになるほどです。
それでも貧しさのあまり後にしたという故国が懐かしいという思いが涙を誘います。

『撲は礼儀知らずなんかじゃない
        (Where I Come from People Are Polite)』
ある朝事務所に行くと、簿記係のミセス・ギルプリーが泣いていました。
ミセス・ギルプリーは自ら辞めたのだと言いましたが、会社が給料の安い自分を選び
彼女をクビにしたということがすぐにわかりました。
せっかく得た良い仕事でしたが、ミセス・ギルプリーを犠牲にするわけにはいきません。

仕事に対するアメリカ人のドライぶりが印象に残っている私としては
おとぎ話し、あるいは昔ながらの話としか思えませんが、まぁ、いい話ではあります。
皆自分の生活、家族の生活がかかっていますのでなかなかできることではありませんが
アメリカっぽい、O・ヘンリ的正義感が感じられる話ではありました。

もともと移民の国でありながら、後々やって来る移民には冷たいイメージがあるアメリカ。
そんな国の片隅で新興移民としてやって来た人々の小さな苦労や幸せをちりばめた
心温まるとはいきませんが、心を冷まさない一冊でした。

すごく面白いとは言いませんけど、読んで良かったとは思います。
他の2冊も読まもうと思っていますが、さしあたって増やす予定はありませんけどね…

ひとことK-POPコーナー
今日のBGMはBEASTのナイスミニアルバム Midnight Sunです。
MidnightのPVは韓国語バージョンも日本語バージョンも、どちらも良いですね
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『ハイウェイとゴミ溜め』読んじゃってすみません

2012-11-05 22:57:35 | アメリカの作家
DROWN 
1996年 ジュノ・ディアズ

最近、移民の作家が書いた短篇集をけっこう読んでいまして
どれもそれなりに異国で暮らすことの苦悩や故国に抱く複雑な想いを
ほんの少し、それこそ雀の涙ぐらいは理解できた気でたのですが
この一冊はちょっと苦手…

たしかにつらかったろう… 言葉には言い尽くせない苦労があったでしょう。
それを筆にぶつけて見事に書き上げた才能もすごいと思います。

でも私の頭の中には荒々しさしか残っていないんですよね。
ちゃんとした人が読めば、文章に込められた悲しさが読み取れるのかもしれません。
しかしながら、私は共感して読む前に心が折れてしまいました。

自叙伝的小説だそうで、一人称で書かれている主人公ユニオールが作者自身と思われます。
アメリカに渡るにあたっては父親の奔放ぶりが原因だったようで
そこには同情の余地があるかも… と思っております。

『フィエスタ、1980(Fiesta,1980)』
子供の頃、車に乗せられてパピーのプエルトリコ女の家に連れて行かれた。
兄のラファと一緒の時もあって、何回かはテーブルを一緒に囲んだりした。
ある日、マミーと二人きりの時、マミーは撲を追いつめた。

前半はアメリカに渡って来た親戚の家で開かれたパーティーのことが書かれていますが
なんか教育上よろしくない一家だなぁ… なんて思っていたら後半を読んでどうかと思ったさ!
人柄・下半身ともども荒々しい父親とは対照的に描かれている母親が
せめてもの救いって感じの話でした。

『待ちくたびれて(Aguantando)』
暮らしはそれはそれは貧しくて、マミーは12時間シフトで働いていた。
4歳の時にアメリカに渡っていたパピーのことは、9歳までいないものと思っていた。
パピーからは何度も迎えに行くという手紙が届き、マミーは馬鹿みたいに信じていた。

結局父親は迎えに来たのですが「良かったね!」と言える話なのかどうかわかりません。
貧しい兄弟は、国では制服が買えず汚れていてもからかわれることはなかったそうです。
アメリカの都会っ子が二人をどう受け入れたのかはわかりませんが
後半の荒れっぷりを読むと、故郷と同じではなかったのではないでしょうか?

『ビジネス(Negocios)』
父は浮気が母にばれた後、女とは別れたが一人でアメリカへ発った。
まずはマイアミへ、そしてニューヨークへ。
そこでアメリカの女と結婚し、撲にそっくりな子供もいた。
その後何年もしてからアメリカ妻ニルダに会ったが、父は何年も前に出て行っていた。

最後に収められていたお話しです。
父がニルダの家を出た足で自分たちを迎えに来たと信じたい…というように
締めくくられているのですが、この父親ならどうだかわかんないよね。
でもニルダに会いに行った青年は礼儀正しく接してまして
更正してくれて良かったよ~、と少しハッピーな気持で読み終えることができました。

年代は前後していますが、収められている順になっています。

全編に漂ういや~な感じは、乱暴な言葉遣いや下ネタだけが原因じゃないと思うのよね…
結局私が好きなラインの作家じゃないってことですね。
私なんかに読まれた上に、好きじゃないなんて書かれちゃう作家もいい迷惑!

子供時代の話しは、庇護を必要とする子供には残酷すぎるような気がするし
青年時代の荒れっぷりも「移民だから」ってことと関係あるのかどうか知らないけど
読まされてもさぁ… とにかく読んだ私が悪うございました。
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『and other stories』訳者がすごいのよ!

2012-10-12 20:13:37 | アメリカの作家

W・P・キンセラ/W・キトリッジ/R・スケニック/G・ペイリー
S・ダイベック/S・ミルハウザー/D・シュウォーツ/J・F・パワーズ
J・A・フィリップス/M・モリス/D・パーカー

アメリカの作家の短編を集めた一冊ですけど、錚々たる訳者陣なのよ。
村上春樹氏、柴田元幸氏、斎藤英治氏、川本三郎氏…常々読ましていただいてます。
すみません、畑中佳樹氏は覚えが無かったのですけど『モーテル・クロニクルズ』は
持ってますので今度読んでみます。

収載されている物語には村上春樹氏によるグレイス・ペイリー2篇を筆頭に
ちょいと私ではついてゆけないものがいくつかありました。
これは完全に私の読書脳がコンテンポラリー向きじゃないせいで
作家、訳者の方々、ならびに作品がつまらないと言っているわけではございません。

読んでいて「あぁ、引き離されていく~!」と感じました。
20世紀末の傑作を知ることのないまま一生を終えそうで怖いわ…

では、気になった物語をいくつかご紹介します。

『イン・ザ・ペニー・アーケード
        (In The Penny Arcade)/1981年 S・ミルハウザー』
12歳の誕生日、両親をゲートに残して独りでペニー・アーケードに入りました。
カウボーイ人形はのろのろとピストルを抜き、覗き眼鏡の女性は期待はずれでした。
すっかり廃れたアーケードを進み、ロープの奥の暗闇を覗き込んだとき景色が一変します。

訳者は柴田元幸さんなのですけど、ミルハウザーは同氏の『夜の姉妹団』でも
紹介されていて、なんとなく好きでした。
少し恐ろしく非現実的なようで、青春時代になら体験できそうなピュアさと
1970年、80年代ぽいノスタルジアが、そこはかとなく漂っています。

『愛で責任が始まる(In Dreams Began Responsibilities)/1937年 D・シュワーツ』
1909年、映画館にいるようです。
そしてスクリーンには結婚前のパパとママが映っていて、デートにでかけるようです。
二人はコニーアイランドのレストランに入り、パパがママにプロポーズをしました。
撲は思わず立ち上がり「結婚しちゃいけない!」と叫んでいました。

あらら、けっこう古い作品でしたが、80年近く前の作品とは思えない新鮮さです。
二人の将来を知っている息子の心の叫び…なんか怖いですね。
結婚前の二人は誰が見ても幸せそうなものですが、いつまで続くかは人それぞれ…
あまりにベタベタしている芸能人夫婦とか見ると、離婚する時が心配(&楽しみ)になる私。
大きなお世話ですよね。

『嵐の孤児(Orphans of the Storm)/1985年 M・モリス』
休日になると血がつながっていない姉アリスと夫ジムの家を訪ねていました。
美しく完璧なアリスは15年間ジムに夢中です。
アリスとジムの夫妻、そして二人の娘たちの家庭は完璧です。
アリスの誕生日に訪ねると、アリスは山のようなジムの衣類を洗濯中でした。

はっきりとしたテーマがある話ではないのですが、文章の流れがとても好きな一編でした。
アリスが洗濯をしていたわけは、夫の衣服に香水のにおいがついていたから…
15年間熱愛していた夫の浮気を知った後のアリスの行動は…見習いたいぞ!
このまま終わってしまうわけでもなさそうな余韻も心憎いラストでございました。

多くの作品を手がけてきた訳者がお気に入りを持ち寄った一冊なのでしょうね。
好みの違いが反映されている分ブツ切り感は否めませんが
好きか嫌いかはさておき、この5人で一冊の短篇集を発刊できたというのは快挙では?

文藝春秋! ありがとう!!
欧米文学好きには素敵な贈り物でございました。
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『うるう年の恋人たち』おもしろすぎる! いくつもの恋もよう

2012-10-03 23:49:05 | アメリカの作家
LEAP YEAR 
1990年 ピーター・キャメロン

『ママがプールを洗う日』がことの他面白かったので
この本は発売当時に買って読んだはずなのですが、あまり覚えていませんでした。
で、『最終目的地』があまりに面白かったものでいつか読み返そう!!と思ってました。

読み返して良かったよぉ すごくおもしろかったです。

何組かの男女の恋愛もようが絡み合う…
というよりは、あまりにもランダムにちりばめられていて読みづらいところもありますが
いやいや、そのとりとめの無さも物語をぐっとおもしろくしているのです。

難しいんだけど、ちょっとあらすじを書いてみますね。

デイヴィッド・パリッシュという機内誌の編集者がいます。
別れた妻ローレンとの間にケイトという娘がいます。
ウェイター兼カメラマンのヒース・ジャクソンという男性の恋人がいます。

ローレンにはグレゴリー・マンシーニというテレビ局勤務の恋人がいます。

ローレンの母ジュディスは夫のレナードがインドにいっている間ニューヨークに来ていて
そしてヴェトナム人男性ヘンリー・ファンクと知り合いました。

ヒースはアマンダ・パインという女性から、いきなり写真展の開催を打診されます。
アマンダはボスであるギャラリー経営者アントン・ショーワンガングと
愛人関係にありましたが、別れてしばらくたっていました。
アントンは出て行った妻ソランジをパリまで追いかけヨリを戻すことにしました。

ローレンの親友リリアンはどうしても子供が欲しくて
デイヴィッドの激励に力づけられ精子バンクに登録しました。

これらの人々の愛が深まったり冷めたりしている間にいろいろな事件がおこって
愛の行方が変わったりするんだけど… どう書けばいいのかな?

グレゴリーはロス勤務が決まったのを機にローレンにプロポーズしますが
ローレンは迷います。
そんなおり、ケイトがお友達の父親に誘拐されます。

ヒースは写真展の開催が決まりました。
しかし、オープニングパーティー会場でソランジが撃たれ
ヒースは犯人にされてしまいます。

ジュディスは「いけないわ」と思いつつヘンリーと深い関係になりますが
レナードがいきなり帰国し、関係を知られてしまいました。

リリアンは見事身ごもりましたが、その直後、愛する男性は誰かに気付きます。

もう、目白押しですよね!
しかも、意識不明から回復しそうになるソランジを狙う真犯人とか
デイヴィッドとローレンの復縁話とか、リリアンのお腹の子(精子)の父親とか
エピソードはあとからあとから出てきます。

普通、これだけ様々な要素が盛り込まれていれば、忙しくて落ち着きがない
ワサワサした物語になりそうですが、この本にはそんなところがありません。
冷静に、クールに物語は進みます。

登場人物のパーソナリティを絶妙にぼかし、時間軸を見事に交差させて
あれよあれよという間にエピソードが展開していき、クライマックスへ。
物語好きにはたまらない、ほんとぉぉぉにすごく良い一冊だったですよ。

ピーター・キャメロンはおもしろいなぁ…
他に翻訳された本はないのかしら? ってことで、今からAmazonで探してみます。
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『ワシントン・スクエア』親の反対を押し切らないで!

2012-09-17 02:22:17 | アメリカの作家
WASHINGTON SQUARE 
1880年 ヘンリー・ジェイムズ

このブログを読んでくださっている方はご存知かと思いますが、私は韓流好きです。
で、韓流ドラマの中で恋の邪魔になる三大要素と言えば
“ 身分違い ” “ 出生・生立ちの秘密 ” “ 親の大反対 ” ということになります。
もちろん、そんなもの全てに打ち勝って恋を成就させて~! と思いながら見ているわけです。

この『ワシントン・スクエア』は、若い女性が初めての恋をしたところ
父親に反対されるというお話しなのね。
いつもなら「親の反対なんかに負けないで~!」と応援するところですが
この物語では、反対する親を応援してしまった私…なぜなんでしょう?

将来有望な医師スローパーは、美しく優雅なキャサリンを妻に迎え
申し分の無い日々を送っていましたが、理想の妻キャサリンは
娘のキャサリンを生んでしばらくして亡くなってしましました。

キャサリンは同名の母親とは違って凡庸で見栄えのしない娘さんに成長します。
しかし心は優しくとても純粋でした。
そして何より、裕福な母親の遺産を持ち、今後は父親の多額の遺産も入るという…
とにかく大金持ちになる見込み大の女性でした。

21歳の時、キャサリンは従妹の婚約パーティーで
モリス・タウンゼントというハンサムで誰にでも好かれそうな青年と出会います。

モリスは最初からキャサリンに興味津々でした。
キャサリンの教育係でもある夢見がちな叔母ペニマン夫人に気に入られ
戸惑うキャサリンに猛アタックしてきます。
このあたり、恋心に気付いたら一直線な韓流の主人公みたい…

けれども、キャサリンの父スローパーは最初からモリスが気に入らず
財産目当てだと決めつけて二人の交際に反対します。
スローパーは知的で理性があり、二人が何を言っても決して取り乱さないんだけど
穏やかに、しかし徹底的に、そして冷酷に反対の意思を伝え続けます。

キャサリンは財産を放棄してもいいと言うし、モリスは財産目当てでは無いと主張しますが…

はてさて、二人の恋の行方は? そして、その結末で良かったのか?
なかなかに考えさせられる一冊でした。

ヘンリー・ジェイムズと言えば、なんだか観念的で回りくどい文章を書き連ね
話をわざと難解にしているという印象が拭えない私ですが
この一冊はかなり解り易くて、どちらかというと “ 端折られている ” 気さえします。
けれどもそれがかえってこの物語を面白く読ませてくれたような気がします。

人の本当の気持はよくわからない…という概念を覆す書きっぷり。
最初からみえみえのモリスの気持と、解り易すぎる展開ですが、あまりに明白すぎて
途中で「もしかして、私が抱いている印象が間違っているのかも…」という
疑問を抱かずにはいられなくなりました。

「やっぱり…」とも「おぉ、そうなるか…」とも思えるラスト。
キャサリンとモリスが選んだ道が二人にとってどうだったのかは想像するしかないのですが
今後は韓流ドラマの見方を少し変えなければならんかも… とまで思えた一冊でした。

ヘンリー・ジェイムズって、読めば読むほど面白くなってくるわ。
長編より長めの中篇が読み易く楽しめるような気がします。
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