牛耳る

ここ１ヶ月。
用事のないときはかなりの確率で近所のショッピングモールに行っている。

こんなに来ているんだから、常連と呼ばれてもおかしくないだろう。
これが喫茶店だったら、そろそろ「いつもの」と言ってもいいくらいだ。

「いつもの」

言ってみたいよなぁ。
憧れだよなぁ。

でも、ショッピングモールでは買物するわけじゃない。
プラプラと散歩しているだけ。
何も買ってないわけだから、「いつもの」はないんだよねぇ。
通路をウロウロするだけで、店に入ることすらない。

でも、毎日ほぼ同じ時間に行ってるんだから、そろそろ覚えられてるかな。
いつも閉店間際にトロトロと散策してんだもん。
ショッピングモール全体を歩いてんだから、あちこちで見られているハズだ。

「あいつ何者だ？」という噂がショッピングモール内の各店舗で立ち上がってもおかしくない。

「実はショッピングモールのお偉いさんで、毎日視察してるらしい」という偽情報が流れてくれないものか。

そしたら快適だぞ～！

何しろボクの姿が見えたら、店舗のスタッフが背筋をピンと伸ばすのだ。
ボクに嫌われないと振る舞うのだ。

ご飯を食べにいったら、こっそりオカズを１品サービスしてくれるだろう。
ズボンを買ったら、裾上げを無料にしてくれるだろう。
ゲーセンに行ったら、ＵＦＯキャッチャーの縫いぐるみを取りやすく置き直してくれるだろう。
マックに行ったら、１個上のサイズのシェイクをくれるだろう。
売れ残ったお惣菜を持って帰っていいと言ってくれるだろう。

いいよなぁ。
夢のような生活だ。
成功者の姿と言っても過言ではない。

よ～し。
どうにかしてその偽情報を流していこう。
どこかの店員を買収すれば、簡単にいけそうな気がする。

あのショッピングモールを牛耳る日も近いね。