SEA side

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映画「松ヶ根乱射事件」 ~ 良識派眉をしかめる

2007年03月23日 | 映画(マ行)
 あまり予備知識なく見た。
 横溝正史の「八つ墓村」でタタリの元凶になる惨殺事件のような印象の映画かという思い込みがあったのだが、まったく違った。起こるのはタイトルどおりの「乱射事件」なのだが、起こってどうなるではなく、何故乱射されるにいたったかの映画なのである。

 脚色はあるが実話がベースになっている、という断り書きが冒頭に付く。「事実は小説よりも奇なり」を地で行く、「奇妙な」としか言いようのないブラックユーモアが全編にあふれた、特異な作品。
 これでPG-12指定(小学生以下は父兄同伴が望ましい)か?と良識派は思うかもしれない。確かに、驚くばかりの冒頭の子供の行為や、直接的な裸も暴力もある。が、それがねらいではないのだ。
 それにしても、映倫にしては寛大な、という印象だ。

 で、そこのところには目をつむり、大人のための映画としてみると、これはなかなか面白い。良い悪いで単純化出来ない人間の面白さがある。次第に精神のバランスが壊れてくる新井浩文の警察官に、どこか変な彼の家族と、村に紛れ込んで来る不気味なアベックが絡む。このアベックの男を演じる木村祐二の個性が映画全体のトーンを大きく支配している。

 さらに全編の通奏低音のように作用して警察官の精神状態を象徴もしているらしいのが、交番の天井裏にいる(かどうかは分からない)ネズミだ。

 かくして乱射された弾の行方は? 神のみぞ知る、だ。


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