「第三の男」とは違うが、こちらもなかなかの名作。3つの都市の3つの話が並行的に語られる群像劇になっている。中の一人がリーアム・ニーソン演じる小説家である。
自分自身のことを小説に書いているが、作中では「彼」と三人称で表現している。タイトルはそこから来ている。3つの話は子供に対する親の責任、という共通項があり、どこかで奇妙にリンクし、別の場所の話のはずが、空間的に重なったりもする。
ひょっとしたら観客は主人公が書いている小説の中身を見せられているのではないかという疑問もわいてくる。明快な説明はないが、観客はそんな迷宮に放り込まれて、自分がどこにどう立って物語と対峙しているのかを考えることになる、そんな不思議な鑑賞体験を味わえる作品である。
脚本家の頭で緻密に構成された世界をフィルムに再現するには自分で撮るしかないだろう。というわけで、名脚本家にして、名監督のポール・ハギスの世界が堪能できる。
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