ハンセン病への偏見が生んだ悲劇からの再生をテーマにした作品。
法的扱いが偏見を生んでいたことが理解できる。しかし、特効薬の開発で完治が可能となり、かつての患者の社会復帰も進んでいるようだ。
死んだと知らされていた祖父を受け入れる家族の波紋が主筋となる。病のためにステージデビューできなかったかつてのジャズバンド仲間を、祖父と孫が訪ね歩くロードムービーである。
老いたメンバーにベテランを配し、涙の再開が胸を熱くする。
さてその「ふたたび」の舞台だが、やや唐突にスタートするステージ演奏は主人公の幻想シーンかと思っていたら、そうではなかった。ロードムービーからクライマックスのステージに至る繋ぎが、脚本の書き込み不足で粗くやや不自然な印象になっている。
また、ハンセン病に対する偏見はいまだに根強く、孫娘はそのために破談になるのだが、全体がステージ再現でハッピームードの中でその孫娘の胸中をどう描くべきか、脚本家も監督も、完全無視状態で、画面に出てくる孫娘役もなんとなく居心地が悪そうで気の毒だ。
しかし、渡辺貞夫も特別出演の演奏シーンは素晴らしい。悪い映画ではないのでもう少し細部を丁寧に作って欲しかったな、というのが感想。