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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ジェニファーズ・ボディ」

2010年08月02日 | 映画(サ行)

 久々にオカルトと呼べる映画だ。描かれるのは吸血鬼ではなく悪魔である。

 ラストのクレジットまで含めてストーリーをなしており、一種の復讐劇の体裁をとる。

 華やかな存在であったジェニファーのために復讐を果たすのが、風采の上がらない親友ニーディだが、ジェニファーを殺したのはそのニーディ、というところが屈折している。

 主人公の親友という脇役ながらやがて輝きを増して行き、次は彼女を主役にした続編が作られるかも知れない。が、本作に関する限り主役はミーガン・フォックス演じるジェニファーで、その体に何が起きたのかが主筋となる。

 冒頭で「キャリー」を思わせるような災害が発生する。がそれは単なる事故で、それが発端となってジェニファーに力が宿ることになる出来事へと発展する。

 結局、親友がその敵を討つことになるのだが、なぜジェニファーは級友の男の子たちを襲う前に自分で復讐しなかったのか?と思ってしまった。 

映画 「ザ・ウォーカー」

2010年07月15日 | 映画(サ行)

 核戦争後の殺伐とした近未来世界にさす一条の光を描いているが、テイストは西部劇であり、チャンバラ時代劇である。ただし、モノクロに近い色調も含め見事にスタイリッシュだ。

 デンゼル・ワシントンとゲイリー・オールドマンの配役だから、正義と悪の対立が予想される。それに加わる薬味が一冊の本だ。世界を滅ぼし、人心に強い影響を持つ本と言えば・・・。

 それを後世に伝えるための技術がテーマとも言える。すなわち口伝と印刷だ。これらがどこにどのような形で登場するかがお楽しみ、となる。

映画 「シーサイドモーテル」

2010年07月02日 | 映画(サ行)
 このブログのタイトルと共通している。

 今どきの豪華配役は・・・生田斗真、麻生久美子、山田孝之、玉山鉄二、成海璃子、古田新太、温水洋一、・・・と見事にそろっており、話も面白ければ、冒頭とラストをまったく同じ写真でリンクさせた語り口もなかなか凝っているのだが・・・、映画としてはイマイチ感がある。

 山の中のいかがわしいモーテルの4つの部屋で別々に進行する群像劇風の物語が、微妙に絡み合う。

 脇役まで含めた個性的な俳優陣は健闘、たぶん絶妙の間の演技を披露しているはずだ。だけど舞台と違って、映像は編集される。そのリズムが意外と単調でメリハリに乏しく、山場がない。終わったと思ったらまだ話が続く、という繰り返しでなかなか終わらない。

 アナザーバージョンを作ったらとびっきり面白くなった!という可能性もありうる、もったいないほどの素材だ。

映画 「シャッター・アイランド」

2010年04月20日 | 映画(サ行)
 レオナルド・ディカプリオ最新作。

 孤立した場所で行方不明の女性を探すというシチュエーションは「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」に似ているが、ジャンルがまったく違う。どちらもミステリー系作品の体裁だが、本作の場合はそのミスリードが作品の面白さにつながっている。

 意外にも切なく哀しい人間ドラマで、人間の精神の不思議さがストーリーを生んでいることが分かる。RPGの世界に近いが、そちら側に軸足を置いて、それが映画の描くリアルワールドだと思わせる仕掛けになっている。

 劇中でディカプリオ捜査官が看護士に「普通と違うことがあったか」を問うと、何を持って普通というのか、逆にその定義を迫られる場面がある。ここは普通ではないことが当たり前の世界なんですよ、というわけだ。

 このセルフが映画全体に効いて来る。

 ラストにある一つの判断がディカプリオの運命を決定するが、その判断は正しかったのか?余韻を残す終わり方だ。

映画 「シャーロック・ホームズ」

2010年03月29日 | 映画(サ行)
 古典的探偵がまったく新しい命を与えられた。ホームズもワトソンも現代的な人物像が魅力的だ。2人の関係もこれまでのイメージを一新した対等なパートナーといえる。

 ホームズの知性があらゆる面でいかに生かされていたかを映像で見せてくれる。
 決闘では相手を分析した上で、どう技を繰り出せばどう反応するか、をシミュレーションした上でそれを忠実に再現する、というのが彼の戦い方だ。
 ほんの一瞬の脳内のひらめきだろうが、思わず納得してしまう。

 テンポが速いので乗り遅れないように必死で付いて行ったが、面白かった。最近のファンタジーものに多いダークな色調の映画だ。19世紀末ロンドンの時代色には良く似合う。

 ただ、音響がものすごい。馬車の走る効果音だろうが劇中音楽だろうが大音響で鳴り響く。ボリュームを落とせないかと本気で思った映画はこれが初めてだ。

 サウンドトラックの音量は劇場では調整できないようになっているのだろうか?

映画 「しあわせの隠れ場所」

2010年03月05日 | 映画(サ行)

 ある善意に満ちたアメリカの家族の物語。実話の映画化だ。

 家族崩壊劇ばかり見せられて、もうホームドラマは存在しないのかと思われたが、往年のアメリカン・ファミリーを髣髴とさせる、理想的な家族がまだ存在した。

 肝っ玉母さんをサンドラ・ブロックがいい感じで演じている。

 素性の知れない巨漢の黒人青年を同居させる、というだけで「アメリカの良識」は眉をひそめるが、この家族は、夫はもちろん娘も息子もまったく屈託が無い。お母さんがやると決めたことに家族は絶大な信頼を寄せているのだ。

 不幸な境遇ゆえに眠っていた才能が、思わぬ形で開花していく奇跡を観客も目にする。同時に、そうした幸運にめぐり会うことなく散っていった他の青春にもキチンと眼を向けている。

 アカデミー賞作品賞と主演女優賞のノミネートだが、開票結果が待たれる。

映画 「ずっとあなたを愛してる」

2010年01月27日 | 映画(サ行)

 フランスの小説家が初めて手がけた監督作だというが、とてもよく出来ている。抑制の効いた演出で、ヒロインの閉ざされた心がゆっくりと開いていく、そのプロセスが描かれる。

 何が起きたのかボンヤリと分かるが、それがだんだんハッキリした実像を結んでくる。それは映画のために意図されたミステリーなどでは無く、15年の不在の後にヒロインの実像が世界に認知される過程そのものなのだ。

 主演のクリスティン・スコット・トーマスが素晴らしい。ラストに「私は、ここにいる」という台詞が二度繰り返される。二度目は自分自身に向かって言っているように聞こえる。

 「アバター」も面白く見たが、その一方でこういう作品もキチンと作られ、それを日本でも鑑賞できるのがうれしい。

映画 「色即ぜねれいしょん」

2010年01月08日 | 映画(サ行)

 監督の田口トモロヲは、ロック魂を持った人だから、昨年はの俳優として「少年メリケンサック」での怪演もあったし、タイトルの響きからもパンク系のエネルギーが炸裂したような作品かと思っていた。

 が、意外やナイーブで爽やかな青春映画として楽しめた。ロックにあこがれる高校生、ユースホステル、という70年代のゆるい空気感が画面から漂ってくる。
 東京ではなく京都を舞台にしていることもあり、言葉の浮遊感がファンタジックに響く。

 帰ってこない青春を懐かしむことが出来る。が、本人たちは当時、いたって真面目に自分の人生を生きていたのだ。

 山下敦弘監督の女性版、「リンダ リンダ リンダ」と見比べるのも面白いかも。

映画 「さそり」

2010年01月07日 | 映画(サ行)
 梶芽衣子主演のヒットシリーズ「女囚さそり」のリメイクに当たる。水野美紀主演の日本・香港合作映画で、出演陣も日本、香港、台湾という無国籍風アジア映画の趣だ。台詞は広東語で字幕付だ。
 残虐趣味に彩られたサバイバル復讐劇である。

 オリジナル版が大きな影響を与えたタランティーノ監督作品「キル・ビル」同様、荒唐無稽で壮大な話だが、ストーリーはキッチリ押さえた「キル・ビル」に対し、本作はとにかく映像美の迫力で最後まで押してくる。

 だから復讐劇という大きな流れさえ把握してしまえば、あとは登場人物やストーリーの細かいところはどうなっているのか、よく分からないし、どうでも良いと割り切ることが正しい鑑賞法といえるのかも知れない。

 台湾の人気俳優、ディラン・クォが水野の恋人役で出演しているが、あまり見せ場はない。

映画 「ゼロの焦点」

2009年12月22日 | 映画(サ行)
 松本清張原作のミステリー。生誕100年を記念して映画化されている。

 清張ものには名作「砂の器」があるのでつい比較してしまう。警官が知るある人物の過去がもたらす悲劇、という共通項で括ることができる。が話も表現もまったく違う。

 赤いコートの女が鍵となるが、この描写がブライアン・デ・パルマ監督調のショッカーかホラーかという雰囲気で処理されていることに加え、中谷美紀の狂気の演出が全体のあるべきトーンを壊していないか気になるところだ。

 時代描写と、暗い日本海の迫力ある映像に期待は高まったのだが、やや淡白にサクサクとストーリーが進行してしまう。

 女たちが「時代を生きるためにとった行為の哀しさ」に焦点を当ててじっくり描いて欲しかった。