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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画「蝉しぐれ」 ~ TV版も良かった。

2005年10月29日 | 映画(サ行)
 以前放送されたNHKテレビ版も良かったが、映画もまた良かった。庄内の豊かな自然が大スクリーンで堪能できる。

 テレビ版では時間が長い分だけ各エピソードがじっくり描かれていた。映画版ではそれを短く、どう収めているかも興味があった。ただ黒土監督はテレビ版でも脚本を書いているだけに、そこは自在に、渾身の作品を作り上げている。

 省略には二つの方法がある。一つは大きな影響のないエピソードを丸ごと落としてしまう方法。もう一つはある行為をあえて見せずにその前後の役者の表情や何気ない情景のカットで語らせる方法。こちらの方は文学的である。小説なら「行間を読む」にあたる。観客もボーっと見ていると気付かないかもしれない。しかしそれが言いようのない余韻を生み、藤沢文学の映画化に当たってとても良い香りを添えているように思われた。

 脇の役者陣も豪華で手堅い。長じてからの主人公の親友二人の配役が意外な抜擢だが味があった。(木村佳乃は必死の逃亡中にもちょっと落ち着きすぎ。)
 殺陣の演出では、実戦で初めて人を切る恐怖、多くの人を切ることによる刀の損傷をどう補うかなどリアルに描かれている。

 山田洋二監督ならこの作品をどう撮っただろう。

セブンソード

2005年10月21日 | 映画(サ行)
 面白い題材なのに、やや作り方が荒いように思われる。剣士たちとの出会いまでの状況も剣士の素性もよく理解できない。それ以外はストーリーは追えるものの、撮影と編集の荒さ(というより雑に感じる)で何のどういうところが画面に映っているのか分かりにくい。カメラが引き気味のシーンは問題ないし、壮大な光景も美しいだけに残念だと思う。「ヒーロー」「ラバーズ」を引き合いに宣伝されているがそれではチャン・イーモウ監督が泣きそうだ。

シン・シティ

2005年10月13日 | 映画(サ行)
 アヴァン・タイトル(タイトルが現われるまで)のエピソードがほんの数分だがカッコ良過ぎ、で見事に決まり観客のハートをつかんでしまう。

 オムニバス形式の各エピソードは完全に独立しているわけではなく、登場人物は相互にシティ内でニアミスがある。
 監督・製作陣の顔ぶれから、もしフルカラーの実写版なら相当に凄惨になったり荒唐無稽になるはずのシーンが、ペーパー上の劇画なら許せてしまうように違和感がない。ハイコントラストのモノクロームにワンポイント原色をからませた表現が素晴らしい。

 配役は豪華。3話の中ではブルース・ウィリスのエピソードと出番は少ないがジョシュ・ハートネットが印象に残った。そしてイライジャ・ウッドが相当怖い。

シンデレラマン ~ ウェイト・コントロール

2005年10月06日 | 映画(サ行)
 ハングリー・スポーツと言われるボクシング。体重調節のために食事の制限をするが、本作の場合は極貧で満足に食べられない中でリングに上がる。飢餓から脱出しようという意思も主人公の大きなパワーになっている。
 
 状況が痛いほど伝わってくるから感情移入も容易で、パワフルなファイトシーンでは手に汗握り、勝利が我がことのようにうれしい。
 マネージャーがセコンドを兼ねているが、選手が肉体的なファイトを受け持つとすればセコンドが精神面でのパートを支えていることが良く分かった。暗示とか催眠に近い鼓舞の仕方で選手を導く重要な役割を担っているのだ。

 時間の経過を描く手法も鮮やかで、場面転換やフラッシュバックの回想など興趣に富んだ表現は映画ならでは。

 主人公の妻を演じるレニー・ゼルウィガーは「ブリジット・ジョーンズ」では役作りのために体重を増やしたが、今回は極貧状態にもかかわらずそれほどやつれた感じはなかった。主人公の戦う理由の一つでもある夢を体現する必要からか?

四月の雪 ~ もうすぐ「春の雪」

2005年09月27日 | 映画(サ行)
 ヨン様ファンでもなく、韓流ブームにもさしたる関心がない、
 だけど熱心な映画ファンとして鑑賞してきた。

 大変淡白な、それこそタイトルどおり春の淡雪のような気品のある作品。
 丁寧な描写で、じれったいほどに抑制された、
 まるで中学の英語の教科書のような会話が続く。

 このままではみんなが不幸になってしまうのではないか
 というところまで来て「春の雪」が舞う。
 そこからの描写は前半からは想像も出来ないほど大胆に省略され
 一気にエンディングへ向かう。
 よく見ていないと結局どうなったのか分からない人がいるかも知れない。

 出逢うべきだった二人が出逢うまでに
 随分遠回りをしてしまったということなのだ。

 波の音とラスト近くの雪の中の花の色が
 抑制された画面の中で変節のポイントになっている。

 「春の雪」の公開は今月末。


Shall we dance? ~ 日米較差の物語

2005年08月25日 | 映画(サ行)

 最近Jホラーのハリウッド・リメイクがブームだ。西欧とは文化が違うといっても怖いものが怖いのは洋の東西を問わないということだろう。

 ホラー以外では古くは「七人の侍」→「荒野の七人」があるが、当然文化の違いは時代劇→西部劇という翻案作業を伴っていた。本作にはその翻案作業がない。したがって文化の違いが面白さの差になってしまった。

 「高校の卒業パーティ以来ダンスを踊ったことがないアメリカ」と「生まれてからダンスなど一度も踊ったことがない日本」の文化差は決定的である。程度の差はあるにせよ、ダンスはアメリカでは誰もが高校までに一度は経験するものだということだ。したがってそれが趣味と言っても、それほど奇異な目で見られることはないはずだ。
 加えて、同じく、華やかなダンスのステージを夢見るにしても「キャリアウーマンを妻に持つシカゴの弁護士」と「パート勤めの妻を持ち郊外にようやく家を構えられた東京近郊のサラリーマン」とでは夢までの距離感がまるで異なってくる。

 そのギャップが少ない分リメイク版はコメディとして一回り小振りだが、そのかわりロマンチックで素敵な夫婦愛のドラマにはなっている。


ZOO ~ 見てから読んだ

2005年08月08日 | 映画(サ行)

 乙一の短編集「ZOO」の10作中5作が映画になっている。原作ものの場合「読んでから見るか」「見てから読むか」だが、本作は見てから読んだ。
 タイトルバックのデザインが見事でオムニバス形式の五編はバラエティに富んでおり、見ごたえがある。

 ただ、タイトルにもなっている五番目の「ZOO」は??の怪作になっている。映像を見る限りピーター・グリーナウェイのイギリス映画「ZOO」を思わせる部分があり、ひそかにオマージュがささげられているのかと思ったが、後で原作を読むとこの映画についての記述がある。10作中では最も難物で映画にしにくいと思われるが、原作も映画も表札タイトルにした作だからはずせなかったのであろうか。
 「SEVEN ROOMS」は2次元化した「CUBE (キューブ)」のような作品。一部屋の何もない空間セットを作れば撮影可能かと思われた。

 今回映画化されなかった残りの5作で「ZOO 2」が製作されれば最も見てみたいのは「落ちる飛行機の中で」。全作中でも魅力ある作品の一つで、むしろなぜ今回の映画化からはずされたのかを聞いてみたい気がする。


スター・ウォーズ ~ 4から見るか、1から見るか?

2005年07月15日 | 映画(サ行)

 「エピソード3」が公開された。東宝のフラッグシップ館であるマリオンの「日劇1」で公開されていた「宇宙戦争」は一週間あまりで上映の場を「SW」に譲り渡した。
 これで第1作「エピソード4」が公開されたときにストーリーとしてはすでに終わっていたことになる1~3がその全貌を現し、完結したことになる。

 物語的にはこの続きに当たるエピソード4~6が来年以降毎年リバイバル公開されれば後3回は楽しめることになる。1~6を順番に時系列で見るのも悪くない。
 というのは、6が最も祝祭的な雰囲気にあふれており、全体のエンディングとしては晴れ晴れした気分に浸れるからである。
 ただ、エピソード4から公開順に見ると、ルークとダース・ベイダーの関係が一つのミステリーとして物語を深めていくキーになっていることがわかるのでので、果たしてどちらが良いのか?

  4~6、1~3をそれぞれ一つの作品とすると「ゴッド・ファーザー」がpart2の方で先代の話を描いた構成になっていることと通じるものがある。

 それにしてもこの夏は「バットマンビギンズ」「宇宙戦争」と娯楽大作がそろったが作品の出来では本作が他を大きく引き離した感がある。


サハラ ~ 夏は飲み水に気をつけよう

2005年06月28日 | 映画(サ行)

 夏の大作が押し寄せる前の弱気の公開だが以外に面白い。
 砂漠の太陽光 集光装置など007シリーズを思わせるメカも登場するがそれはごく一部で、むしろ人によるアクションが前面に出ている。

 悪役のランベール・ウィルソンも「権化」ではなく、自ら誘発した環境汚染にたじろいでいる。戦闘は敵味方とも将軍自らが最前線で戦う「キングダム・オブ・ヘブン」の世界。主人公はどんな過酷な状況でもバディとジョークを飛ばしている。過去の話がうまく現在につながってくるが財宝をめぐるアドベンチャーというわけでもない。と、中途半端なところはある。

 また、南北戦争の装甲艇がいくらなんでもアフリカまで行ってしまうだろうかとか、話の発端の奇病が伝染病ではなく水の汚染が原因ならその地域は全滅しないのかとか、いろいろあるが、難しいことを考えなければアクション映画として楽しめる作品。


ザ・インタープリター ~ 母音の前では「ジ」と発音する

2005年06月27日 | 映画(サ行)

 一度はパスしかかったが、監督としては久々のシドニー・ポラック作品なのでやはり見ることにした。犯行計画を聞いたために犯人に狙われる通訳、というような単純な役どころでニコール・キッドマンが出るはずは無いだろうと思うが、まさにそのような展開する。

 台詞を追う字幕のテンポが速いので、謎解きの「何故?」の部分を読み落とさないように注意しないと、よく分からないまま終わってしまう。相変わらず美しいキッドマンだが少し頬がふっくらしたかな、という感じ。

 それにしても母音の前のtheは「ジ」と(舌をかんで)発音すると中学でも教えるのに、このタイトル「ザ・インタープリター」はいかがなものか。字幕翻訳の戸田奈津子さんはなんとも言わなかったのだろうか?