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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「マイレージ、マイライフ」

2010年03月30日 | 映画(マ行)

 ジョージ・クルーニー主演のアカデミー賞ノミネート作品。

 人物造形が素晴らしく決まっている。現代人の特徴的なあり方を象徴する主役3人がいずれもアカデミー賞候補となったのもうなずける。それを書き込んだ脚本も含めて。

 人と人との関係が疎ましく、それを希薄化した環境に身を置いているつもりの主人公が、逆に人間関係の大切さを説く立場となり、自身もそれを悟るに至るヒューマンな物語だ。

 孤独で幸福、はありえないということがしみじみ伝わってくる。

 原題「UP IN THE AIR」のとおり、空撮の地上景観が多く挿入される。人間の営みを静かに見つめる神の視点のようでもある。

映画 「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」

2010年01月20日 | 映画(マ行)

 久々に満足度の高い鑑賞だった。文句なく面白い。

 北欧のミステリーで、何十年も前の女性失踪事件をめぐる話だ。「ミレニアム」は主人公のジャーナリストが発行する雑誌の名前。彼が謎解きの役回りであるが、ある若い女性と奇妙なコンビを組む事になる。

 この女性の特異なキャラクターが全編の魅力となっている。女性版のソフトなハンニバル・レクター博士の趣だ。

 コンビを組むに至る過程もその後の展開も眼を離せない。と言うか、観客の心を離さない。

 北欧ミステリーにはWOWOWで放映された「刑事ヴァランダー 白夜の戦慄」があるが、土地固有の光線があるのか、どちらも共通した色調は明らかにハリウッドものとは異なっている。

 本編最後に続編の予告が入り、こちらも期待度大だ。

映画 「My Son あふれる想い」

2009年09月09日 | 映画(マ行)

 NHK アジア・フィルム・フェスティバルで上映された韓国映画。劇場では未公開である。しかし、なぜ?と思わずにいられない。とてもよく出来ている。

 主人公は殺人を犯し、終身刑の判決を受けてすでに15年服役している男だ。

 終身刑が他の刑と違うのは目標がないことだ、と独白がある。死刑囚には刑の執行、刑期の決まった囚人には刑期満了の出所がある。何の目標もないまま毎日を送るのが終身刑の囚人というわけだ。

 そんな彼らの中から選考により、一日だけ出所して家族に会えるという制度が物語の核にある。唯一の目標を得た男が、外の世界にいて15年間まったく音信のなかった息子と母親に会いに行く1日の物語だ。

 それだけでも十分なストーリーなのだが、ひねりが効いていて、物語が終わるかと思われたところから逆に大きくうねり出す。なかなか冴えた脚本だ。

 加えてユーモアのセンスとファンタジーの気配が盛り込まれ、豊かな語り口を持ったすぐれた映画に接する至福の時を、テレビが与えてくれた。

 昨年の第9回フェスティバル上映作品がNHKのBShiで9月7日に放映されたものだ。10月19日(月)にBS2でもう一度、見ることができる。

映画 「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」

2009年09月08日 | 映画(マ行)

 確かに利口な犬ではないかもしれないが、この邦題のセンスほどひどくはない。

 原題は「MARLEY & ME」で、コメディではあるが、飼い主より先に老化して死んでいく宿命にあるペット犬との付合いが、むしろしみじみとした余韻を残す。

 原作者ジョン・グローガンのベストセラー・エッセイでオーウェン・ウィルソンが作者自身扮している。新聞のコラムニストとして、マーリーに関する記事が好評をはくし、名前を成していくさまが、犬との生活を通して描かれている。

 悪い映画ではないのに、このタイトルでは見に行かない人もいるのではと、そちらの方が気になる。

映画 「湖のほとりで」

2009年07月30日 | 映画(マ行)

 犯人探し映画ではない異色のミステリー。

 発端は変質者による幼児誘拐か?という出来事で、そこからある殺人事件へ導かれることとなる。

 舞台は湖のほとりの小さな町。しかし映画は犯人探しの派手なミステリーには発展しない。事件はむしろ触媒のようなもので、直接あるいは間接的に関わりのある住人たちの心の闇がじわりと炙り出される。

 イタリア映画で知らない俳優ばかり。都内ではひっそりと単館ロードショーだが、これがなぜか平日から混んでいる。

映画 「真木栗ノ穴」

2009年07月22日 | 映画(マ行)

 そうとは知らずに見ていたら、だんだん怖くなってきてホラー映画だと分かった。ラストのクレジットに原作は角川のホラー文庫と出ていた。なるほど・・・。

 現代版「牡丹燈篭」の趣だ。コインランドリーも宅配もあるから紛れもない現代の話だが、舞台となる鎌倉の切通しや、取壊し寸前のボロアパート、アジサイの花などふとタイムスリップして昔に戻ったかのような風情がある。

 「穴」は隣室を覗き見をすることになる、アパートの壁の穴だ。この乱歩的な趣向もノスタルジックの要因を形成している。

 血飛沫もモンスターも出てこないがジワーッと背筋が凍るような良質のホラーだ。

 西島秀俊が主人公の小説家・真木栗を演じる。

映画 「MW-ムウ-」

2009年07月07日 | 映画(マ行)

  玉木宏と山田孝之が主演するミステリー・アクション。映画とテレビでお互いには逢うことになかった「ウォーター・ボーイズ」の競演だ。

 手塚治虫の原作があるだけに、コミック版の「世界観」と比較したくなるのかも知れないが、冒頭の長い追跡劇を見ているうちに、謎解きアクションと割り切れてくる。

 タイトルバックで謎の元になる過去の出来事が描かれ、それと冒頭の誘拐劇がどう繋がっていくのか、その全貌がしだいに明かされていく。

 幼年期の体験が主役の二人を離れがたく結び付けているが、成長過程は不明だし、長じてからの関係性描写も濃密ではないので、世界観と結びつく人間ドラマはあまり期待しないほうが良い。

 玉木の悪役が底知れぬ恐ろしさを秘めているような冒頭に比べ、単に精神に異常をきたした小粒な悪人に収束してしまうようで惜しい。

映画 「マン・オン・ワイヤー」

2009年06月17日 | 映画(マ行)

 美しい詩的な印象のドキュメンタリー作品。

 関係者のインタヴューと当時のフィルム、スチル写真および役者による再現映像で構成されている。

 フィリップ・プティという綱渡りの大道芸人の壮大な夢とその実現が描かれる。

 強い一念は現実のものとなる、というが、彼の夢は「今は無き」ワールド・トレード・センターの建設計画を見た時に始まる。この地上420mのツイン・タワー間に張ったワイヤーを渡るという夢だ。その時点ではWTCは「まだ無い」わけだが。

 「強い一念」のせいか、WTCが着工する。この、9.11の標的となって崩壊する映像を何度となく目にしたそのビルが、どのように建てられたのかを観客は見る事が出来るのだ!!
 ビルが建たないことにはフィリップの夢も実現しない。WTCは彼の希望であり、夢の実現のための必要条件なのだ。

 大道芸は写真や映像には残っても形として残らない。後には、彼らがそれを実現したと言う事実が残るだけだ。
 一方、芸人が希望を託した「建築家の夢の塔」は現実の形として残る・・・はずだったのに、そのWTCも今はもうない。

映画 「マルタのやさしい刺繍」

2009年06月02日 | 映画(マ行)
 
 珍しいスイスの映画。台詞はドイツ語で語られる。

 美しいスイスの山あいの町が舞台である。登場人物が物語の中で訪れる事はあっても、その街の住民が主人公になるのは珍しい。したがって町として抱える高齢化や地場産業の発展の問題がテーマの根底にはある。

 イギリスならば寂れた炭鉱の町を舞台にした映画が多く作られている。そのスイス版、高齢の女性版といったら良いだろう。

 それにしても彼女らのたくましさと可愛さはどうだろう。ユーモアのセンスも抜群の作品だ。邦画なら新藤兼人監督の「午後の遺言状」があるが、本作では老いのその先にあるものとは無縁の、老女のバイタリティに生きることの素晴らしさを感じさせてもらった。

 お婆ちゃんのランジェリーショップも、こんなに洒落た店なら近くに一軒くらいあっても良いなと思った。入る度胸はないけど・・・。

映画 「モンテーニュ通りのカフェ」

2009年06月01日 | 映画(マ行)

 幸福な気分に浸れる群像劇だ。

 ギャルソンには男性しか雇わない(男性名詞だから?)という名門カフェで、ヒロインがそのギャルソンの職を得る。

 そばの劇場の建物はコンサートホールとギャラリーが併設されており、公演日が同日となるそれぞれに関わるアーティストらにヒロインが絡む。

 観客も音楽と演劇と絵画・彫刻を同時に楽しむことが出来る、お得な映画だ。

 絵画オーナーもアーティストもそれぞれに迷いや悩みを抱えているが、パフォーマンスの当夜に向けて群像が収束的に幸福感に包まれていく。

 ヒロインのセシル・ドゥ・フランスは、昔で言えばマルレーヌ・ジョベベールのような可愛い女優さんだ。

 映画監督、製作者で出演作も多いシドニー・ポラックが本作では映画監督役で出演している。この作品は2006年製作だが公開は2008年4月、その一月後に彼は帰らぬ人となってしまった。