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SEA side

静けさの中で波の音だけが永遠に響きつづける。
美しいものとの出会いの記憶・・・・。

映画 「ボビー」

2007年06月11日 | 映画(ハ行)
 俳優エミリオ・エステベスの監督・脚本。素晴らしい才能だ。才能は才能を呼ぶかのごとく、これ以上考えられないような豪華スターの競演で見ごたえがある。

 久々に群像劇の王道を行くような作品。ロバート・アルトマン監督の傑作「ナッシュビル」や「ウェディング」に並ぶのではないだろうか。

 グランド・ホテル形式といえば、邦画では最近、三谷幸喜の「The 有頂天ホテル」があったが、大晦日のカウントダウン・パーティの代わりにロバート・ケネディ上院議員の暗殺がクライマックスとなる、こちらはシリアスドラマだ。

 死亡したのはロバート一人だが凶弾の乱射で傷ついた人は数人おり、彼らを中心にホテルの一日が動いていく。

 ラストのクレジットにシャロン・ストーンの名があったが、上映中はまったく気付かなかった。他にデミ・ムーア、レン・ハント、ヘザー・グラハムにアンソニー・ホプキンス、イライジャ・ウッド、ローレンス・フィッシュバーンと見ているだけでも楽しい顔ぶれだ。

 豪華俳優の中でもうけ役はレストランのボーイ、ホセ役を演じたフレディ・ロドリゲス。脇役としての出演は多いが本作では群像の中でかなりの比重を持っている。

 ゴールデン・グローブ賞(ドラマ部門作品賞)にノミネートされたほどなのに、日本でのロードショー公開は地味で、もったいなかった。

映画 「バベル」2 ~ 日本編に隠された謎

2007年06月04日 | 映画(ハ行)
 4つのストーリーが平行して描かれるが、日本編については他の3つほどの関連性がなく、あえて入れなくても・・・・という意見も一部にはあるようだ。しかし、果たしてそうだろうか?

 「バベル」とは旧約聖書に描かれる人間の神に対する不遜の象徴「バベルの塔」のことである。天に届かんばかりの塔を建て始めた人間に神は怒り、塔を破壊して人々の言葉を互いに通じ合わないようにしてしまう。そして、その地はバベル(混乱の意)と呼ばれるようになる。

 映画の中でそのような塔(高層マンション)に住むのが日本編の役所広司+菊池凛子の父娘である。その塔で神の怒りを買うようなどんな不遜な行為があったのか?

 日本編には多くの謎が隠されているのだ。

・そもそも娘は何をあんなに苛立っているのか?
 単に聾というだけなら彼女の周りの多くの友人も同じはずだ。
・娘は母親に死因について、なぜ刑事に嘘をついたのか?
・その母親はなぜ銃で自殺を図ったのか?
・そのとき使われた銃はどうなったのか?
・刑事の来訪は単なる確認に過ぎなかったのか?
・ラストシーンの全裸の娘をいたわる父親は何を意味するのか?

 特にこのラストシーンはどうやって撮ったのかと思わせるようにカメラがベランダを外部から写しながらズームバックしていく。あたかも神の視点を得たかのように。

 普通の父親ならベランダに裸でたたずむ娘を見たらどういう反応をするだろう。本作のような描写はありえない光景として目に映るだろう。そのありえない光景をかつて母親が見てしまったのだと考えたらどうだろう。
 上の多くの?に納得が行かないだろうか。

 忌まわしい思い出を持つ銃を父親はある方法で手放す。娘はそのことを知っており、刑事の来訪を深読みしてしまい、とっさに嘘をつく。

 神の怒りは深く、その連鎖が地上で多くの混乱と悲劇を招いたのだ。この日本編がないとそれらは意味のない出来事になってしまう。

映画 「バベル」

2007年06月01日 | 映画(ハ行)

 6人の人を介せば世界中のどんな人ともつながっている、というテーマの「私に近い6人の他人」という作品を思い出した。

 1丁のライフル銃が地上の4つの物語をつないでいく。群像劇としてどこかでまとまっていくことを期待したら裏切られることになる。各エピソードは、時間的には微妙に前後しているが、ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットの夫婦が巻き込まれる狙撃事件が収束するまでの時間軸にそって、同時多発的に描写される。

 同じ監督、脚本家コンビの犬をめぐる物語「アモーレス・ペロス」とともに、語り口の話芸を堪能できる作品。ともにすばらしい才能を持つ、寡作ながらいずれも純度の高い作品を生んでいる作家たちだ。

 話題の菊池凛子の個性は際立っており、アカデミー・ノミネーションも納得できる。他の役は必ずしもその俳優がやらなくても良いように思えたが、あの役だけは彼女無くしては考えられない。

映画 「ハンニバル・ライジング」

2007年05月07日 | 映画(ハ行)
 「羊たちの沈黙」に連なるシリーズ第4作。

 「スター・ウォーズ」はもともとエピソード4だったので、その前史を描く1~3があることは暗黙の了解時であった。少し古くは「ゴッド・ファーザー」がpartⅡで若き日のドン・コルレオーネを描いていた。

 ヒット作は「バットマン」も「エクソシスト」もビギンズやビギニングで、そもそも何故そうなったのかを続編で描き始めた。順序正しく描かれたのは「スパイダーマン」くらいか?

 で、今回「ハンニバル」誕生の秘話が明かされるわけだ。幼少から青年期の話なのでアンソニー・ホプキンスは出てこない。その分コクはないが、若きギャスパー・ウリエルは美しく、その顔の下にヌルリとした不気味な感触がある。

 続編とは言うもののほとんど独立した作品として鑑賞可能で、前作を知らずとも支障はない。逆に美的に洗練されたアンソニー・ホプキンス・ハンニバルの趣味、教養がこの環境から生まれえるだろうか、というギャップがありそうだ。

 配役ではあのコン・リーがハンニバルの叔母に当たる日本人の未亡人を演じている。ジャポニズムが日本人の目から見ると少し違和感ありだ。
 凶暴なホプキンス・ハンニバルが噛み付き防御のためにかぶせられていたマスクは、日本の鎧とヴィジュアル的なイメージを重ねている。

 5月1日、連休谷間の映画ファンサービスデーにしては少し入りが悪かった。皆「スパイダーマン3」に行ってしまったんだ。

映画 「ブラッド・ダイヤモンド」

2007年04月27日 | 映画(ハ行)
 レオナルド・ディカプリオがアカデミー主演男優賞にノミネートされた新作。同じ年に「ディパーデッド」の方はアカデミー作品賞を受賞しているわけだから、最も油ののった旬の俳優といえるだろう。もはやアイドル・レオ様の域は脱している。体つきも役もとても男っぽい。

 話の方は内乱に翻弄されるある黒人一家の話が中心に据えてあり、助演男優賞候補にもなったジャイモン・フンスー演じるその父親が主人公とも言える。
 それにレオの密売人と女性ジャーナリストが絡むのだが、このジェニファー・コネリーがなかなか良い。これまでで一番良いのではないか?

 ダイヤモンドの密売にからむ政府軍と反政府軍の紛争が描かれるが、これがなんとも凄まじい。特に少年を拉致して殺戮の戦士を作り上げていく「洗脳」が、ある東洋の島国で宗教団体が起こした事件を思い出させて怖い。

 密売という裏側の汚い世界のはずなのだがディカプリオが演じるからか、彼自身も悪人には見えないし、その職業も危険を伴うリスキーなビジネスではあるが悪いことのように見えない。むしろその生い立ちに起こった不幸な過去を告白されて、ジェニファー記者ととともに見ているこちらも同情してしまった。

 それにしても「ロミオ」も「タイタニック」も「ディパーテッド」も本作も、ディカプリオほど主役にして死んでしまう役者は他にいるかなぁ。そして、その死に役の時の作品ほど質が高いような気がする。

映画「バッテリー」

2007年03月26日 | 映画(ハ行)
 なんと、すがすがしいことか。どんな世代の人にも薦められる作品。

 主役の少年たちがとてもイイ。配役が決定したときすべてが決まったといっても良いだろう。孤高の修行者のような風情の天才ピッチャー原田巧の、人間としての成長を描く。

 自信にあふれていて、だから強くいられるのだが、それを大きく受け止めることのできる相手がいないと孤立してしまう。それをしっかり受けているキャッチャー豪役のまったく屈託のない笑顔には参った。無償の大きな愛がある。キャッチャーは女房役といわれるがこの作品を見ているとむしろ母親、母性を感じる。
 逆に天海祐希演じる母親との間には病弱な弟をめぐる確執がある。この構図が面白い。

 この巧の家族関係がどういう方向に向かって行くかが物語のもう一つの核となる。難病路線の悲劇に向かうと辛いが、弟の病気はある種の薬味になっている程度で、観客としては救われる。

 自分は野球のに関してまったくの門外漢だが、この映画を見ているとその素晴らしさを教えられ、それに打ち込んでいる人たちが羨ましくさえなる。

映画「ヘンダーソン夫人の贈り物」

2007年03月19日 | 映画(ハ行)
 ジュディ・ディンチの映画。御年73歳。元々は舞台のシェークスピア女優として活躍していたらしく、映画出演作の約半分は2000年以降の作品。
 6回のアカデミー賞ノミネートのうち受賞は98年の助演「恋に落ちたシェークスピア」だが4作品が2000年以降。(2005年は本作、今年の2006年アカデミー賞では「あるスキャンダルの覚え書き」で主演女優賞連続ノミネート)

 若い頃よりむしろある程度の年齢に達して以降、これほど華々しい活躍をしている女優は(男優でも)珍しいのではないだろうか。しかも文芸作品のみならず、スパイアクション・シリーズ「007」のなくてはならない顔でもあるのだから。

 富豪夫人が夫の遺産を元手に劇場経営に乗り出し、戦火の中でも劇場の火を灯しつづけるという実話に即した物語。しかもそれがイギリス初の「ヌードレヴュー」なのだ。そこに託されたヘンダーソン夫人の想いが作品のテーマとなる。

 劇場経営のパートナーとなる、これまた渋いボブ・ホスキンスとの友情+の関係が、戦火の下で黄昏れるロンドンの街並みをバックに忘れがたい余韻を残してくれる。

 監督のスティーヴン・フリアーズは今年のアカデミー賞で監督賞にノミネートされた「クィーン」が公開を控えており、こちらも期待したい。

映画 「パフューム -ある人殺しの物語-」

2007年03月13日 | 映画(ハ行)

 
 時代は「オリバー・ツィスト」の頃だろうか。海の向こうの、もう一人のオリバーの物語のように見えた。ただし、ピカレスク(悪党)版だ。

  「ガープの世界」や「ブリキの太鼓」のように一人の男の子が生れ落ちるいきさつから描かれる。この手のものは本作も含め、例外なくストーリーが面白い。が、サブタイトルにあるように殺人者の話なので、観客がストレートに感情移入は出来ない。
 主人公の風貌も特異で、「猿のような男」というのが第一印象だ。後でインタビュー記事を読んだら役作りのために動物の動きを研究したとあって、かなり納得した。

  映像感覚もシャープだし、何より「香り」がテーマなので画面から猥雑なパリの腐臭が漂ってこなくてはいけないが、隅々まで作り込まれた画面はリアルこの上ない。例えば家屋が崩壊するあの一瞬の映像のためにどれほどのお金がかけられたことか。

  ダスティン・ホフマンにアラン・リックマンなど配役は脇ほど豪華で、主役のベン・ウィショーはほとんど無名。しかしその細い体から発散する野性味なくしてこの作品は成立しなかったであろう。

  アロマテラピーは香りの効用を生活に生かす術だが、その究極形を現出するクライマックスは圧巻。なかば、宗教的な恍惚境に近いのだろう。

 ゴルゴダの丘での処刑から復活にいたるキリストをなぞったかのようなラストと合わせて極上のストーリーテリングに酔った。

  監督のトム・ティクヴァは18人の名だたる監督が結集したフランス映画の新作「パリ、ジュテーム」(オムニバス作品)でも印象的な一編を見せてくれる。

 「パフューム-ある人殺しの物語」


映画「パリ・ジュテーム」

2007年03月12日 | 映画(ハ行)
 1965年のヌーヴェル・ヴァーグ作品「パリところどころ」の現代版といった趣のオムニバス作品。今回は監督数も3倍、18人が約5分間のショートフィルムを競う。しみじみとした短編小説風が多い中に技巧派の映像が混じっている。

 昨年は「美しい人生」というオムニバスの佳作があった。こちらは一人の監督が9人の女性の人生からそれぞれ10分間を切り取って見せるワンシーンン・ワンカットのリアルタイム進行形がユニークで、ある人物が別の物語にも顔を出す「すれ違い」が魅力だった。

 今回はその倍の数のストーリーが互いにはほとんどかみ合うことなく描かれる。各監督は選ばれたパリのある街角を舞台に物語を展開させる。

 が、それぞれは短いながら、全体として魅力的な映画に仕上がっている。各編にキラ星のごとく登場するスターの魅力も大きい。特に印象に残ったのは「技巧派」の方で、「パフューム」が公開中のトム・ティクヴァ編と「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ編だ。

 前者はナタリー・ポートマン主演だが短い中に一本分のエネルギーを丸ごと注ぎこんだような作りになっている。人間が死ぬ時には、一瞬の間に一生の出来事が頭をよぎると言うが、そんな印象の作品だ。
 後者は全編中ただ一つのホラー系ファンタジーで、ヴァンパイアの恋を「シン・シティ」のような凝った映像で見せてくれる。こちらはイライジャ・ウッドが主演。

映画「不都合な真実」

2007年03月06日 | 映画(ハ行)
 聴衆に向かって講演している場面が何回か出てくるが、この映画全体がそのゴア氏の講演をビジュアル化して見せているようなものなので、画面は絶えずスピーチ調の英語が流れる。英語テープを聞くと眠くなる人は要注意だ。

 きわめて真面目に地球温暖化の危機を訴えているので、例えばマイケル・ムーア監督のユーモアあるドキュメンタリーでこの手の映画ファンになった人にはお勧めできない。ゴア氏自身はかなり前から環境問題を自分のテーマとして訴えてきていたようで、そのため政治家仲間からは変人扱いされていた様子も捉えられている。

 その部分はわが国の前・K泉首相がいついかなるときも郵政民営化を訴えていたのと近いかもしれない。ただこちらは本流に乗りそれを実現させてしまったが、ゴア氏の方はあわやという所で大統領になりそこなってしまった。

 「華氏911」と「不都合な真実」が大統領選挙前の同じ時期に公開されていたらどういう結果になったか?もしゴア大統領だったらイラクも世界も違うものになっていただろう。
 前者に主演したジョージ・W・ブッシュは2004年のゴールデン・ラズベリー賞のワースト主演男優賞、後者は2006年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞している。

 ただし、映画としての出来や面白さとこの評価は別物と考えた方が良いようだ。