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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

THE RIVER

2010-05-13 15:53:41 | 好きな本
私にとっての3冊目のリチャード・ペック。
風邪ひきで家にこもっていたGW中に、2日で読み終えてしまいました。

ミシシッピがくれたもの
    リチャード・ペック

とてもよくできた話でした。
どこからその良さをほどいていったらいいのかわからないくらい。

とても昔の話でした。
3部構成になっていて、今→むかし→また今 と語られていきますが、
その「今」は1916年、第一次世界大戦にアメリカが参戦するよりも前で、
「むかし」は、1861年、南北戦争が始まった年のことです。

舞台はアメリカのイリノイ州の小さな町、グランドタワー。
ミシシッピ川を挟んで、すぐ向かい側がミズーリ州で、もうすこし南下していくと
南北戦争時には南軍だった、アーカンソー州やテネシー州に行く着くという
なんとも複雑な場所です。
表紙をめくって、扉の前に、南北戦争時代のアメリカの地図と、その拡大地図が
載っていますが、話を読み始める前も、終わってからも、何度もそこを開いて
見かえしました。


1916年。
父が運転するT型フォードに乗って、15歳の「私」は、父の両親と、同居するその兄弟に
会いにでかけます。
滞在中、祖母ティリーが話してくれたのは、南北戦争のころの家族のはなしでした‥。

第1章で出てくる祖母や、大おじ(ノア)、大おばの若い頃が、第2章以降(1861年に遡って)
全然知らなかった南北戦争時代の歴史とともに語られていきます。
そして何よりこの本で重要な位置を占めているのは「ミシシッピ川」です。
川の向こうからやってきた人、川をくだって戦いへ向かう人、川を見下ろす丘で
その流れを見やる日々‥。
ミシシッピは、あらゆる時間を呑みこんで、何事もなかったかのように滔々と
流れ続け、いつも「そこ」にあるのです。


私にとっては、もしこの本を読まなければ、言葉だけは知っていても、
その実を知らずに過ごしていたにちがいないことも多々あり、勉強になりました。



ひとつ、とても心に残るというか、留まっていることがあって、それは、
「私」の祖母ティリーと双子の兄ノアのことなのですが‥。
第2章以降第14章まで、その双子がまだ15歳の時の姿が描かれていて、
二人の母も登場します。
そして時代は、今にも南北に分かれて戦争が始まろうとしている時です。
双子の母は、ある晩、ティリー(娘)へ言うのです。おまえがいなくなることには
耐えられるけど、ノアが居なくなるのは耐えられない。だから軍へ入ると行って
家を出たノアを探しにいっておくれって。
それってどうなんでしょ?ティリーの心はズタズタですよね。

私の妹には、ノアとティリーのように、男女の双子の子どもがいるのです。
(私の甥と姪ですね)
だから、なんだかこの場面がひっかかってしかたがないのです。
どっちの子がより大切ということは、ないのだと思っていたけれど、人の心の
襞は深く、時には屈折しているのでしょうー。




アメリカはほんとうに大きな国です。
いつの日か、ミシシッピ川をこの目で見て、ニューオーリンズへも
行ってみたくなりました。
ディープなアメリカを感じることができるでしょうか。


コメント (4)
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