報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の夜」

2022-05-28 11:25:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日18:30.天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 ホテルモントレ仙台6F・随縁亭]

 夕食はホテルの和食レストランで。
 カウンターで、目の前で揚がる天ぷらを堪能する。
 天ぷらだけでなく、刺身や寿司も出て来た。
 かつては生魚が苦手だったマリアだが、今は一応食べれるようになっている。
 アルコールを流し込みながら。

 佳子:「昨夜の失敗は、もう無しよ?」
 宗一郎:「わ、分かってるって。今日は飲むより、食べる方に専念するよ」

 宗一郎はそれでも日本酒を注文していたが。
 勇太は相変わらずビール。
 マリアは今回、ワインではなく、ウィスキーを注文していた。
 それでも後にほろ酔い気分になった宗一郎が、こんなことを言った。

 宗一郎:「ところで、キミ達はいつになったら結婚するんだい?」
 勇太:「ブバッ!」

 ビールを吹きこぼす勇太。

 勇太:「えーと……。本当は、今年度中にそうしたいところなんだけど……」
 マリア:「勇太のマスター昇格が保留になったので、結婚も保留中です」
 宗一郎:「作者がまたフラれたからって、気にすることないんだよ」

 雲羽:「うるせー」
 多摩:「シッ、黙れ。声が入ってしまうぞ」

 宗一郎:「だいたい、昇格が保留って、何かやらかしたのか?以前、うちの社員が警察の御厄介になったので、課長への昇格を1年延期にしたことがあったが……」
 勇太:「いや、違うよ。ロシアとウクライナの戦争のせいだよ」
 佳子:「そうか……。そういえばイリーナ先生、ロシアの人だったわね。今回来れなかったのも、戦争のせいでロシアに帰らないといけなくなったんだっけ」
 勇太:「そうそう。だから、僕だけじゃないよ。マリアだって、ミドルマスター(中級魔道士)への昇格審査に入る所が保留になっているんだから」
 宗一郎:「そうなのか。すると、戦争が終わらないことには、何ともならんのか?」
 勇太:「第三次世界大戦の危機が回避されるまでは、ね」
 マリア:「師匠の考えは分かりませんが、つまりそういうことです」

 その時、マリアの脳裏にフラッシュバックのような現象が起きた。
 それは自分が過去に経験した凄惨なものではなく、例えて言うなら何かの映画のワンシーン。
 しかし、そこの登場人物は間違いなくイリーナだった。
 イリーナが黒服達のマシンガン集中砲火を浴びて、窓ガラスを突き破り、そこから飛び出すというものだ。

 マリア:「師匠……?!」
 勇太:「マリア?」
 宗一郎:「どうしたね?」
 マリア:「No...Nothing...(いえ……別に……)」

 マリアはそう答えると、ウィスキーを飲んだ。

 マリア:(交渉がこじれて銃撃されたのか?でも、師匠のことだから、あれくらいで死ぬとは思えないけど……)

 作戦上、死んだと思わせることもある。
 実際、“魔の者”の眷属達との戦いの時も、それを匂わせることがあった。
 魔界にはもちろん、“魔の者”本体が日本国(特に本州)には入れないという常識を覆す出来事(本体は無理だが眷属は可)だった。

 マリア:「あの……」

 マリアは手を挙げた。

 宗一郎:「何かね?」
 マリア:「この後、勇太と出掛けてきてもいいですか?」
 勇太:「マリア?」
 宗一郎:「構わんよ。但し、遅くはならないように。そうだね……日付が変わる時間までには、戻ってきてもらいたい」
 マリア:「分かりました」

 食事を終えると、マリアと勇太はホテルを出た。

 勇太:「どこ行くの?」
 マリア:「できれば、2人で静かに話し合える所の方がいい」
 勇太:「それなら、ホテルのバーとか?」
 マリア:「なるべく御両親とは1つ屋根の下じゃない所の方がいい」
 勇太:「そうかぁ……。それじゃあ……」

 勇太はマリアを地下鉄の駅に連れて行った。

[同日20:02.天候:雨 同地区 仙台市地下鉄仙台駅→南北線(列番不明)先頭車内]

〔2番線に、泉中央行き電車が到着します〕

 休日の夜とはいえ、仙台市地下鉄で最も賑わう仙台駅のホームは、電車を待つ乗客達で賑わっていた。

 マリア:「どこまで行くの?」
 勇太:「すぐ近くだよ。渡したキップで分かるでしょ?初乗り運賃で行ける距離だって」

 4両編成の電車がやってくる。

〔せんだい、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 こらちはホームドアが設置されていて、ホームドアが開くタイミングで電車のドアも開く。
 メーカーが同じなのか、ホームドアのドアチャイムは札幌市地下鉄と同じである。
 電車に乗り込むと、2人は開かないドアの前に立った。
 勇太はそこから進行方向の窓を見る。

〔2番線から、泉中央行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車メロディ(というかサイン音)の後で、電車のドアとホームドアが閉まる。
 車両の方は、かつては気の抜けるドアブザーだったが、東西線と同じドアチャイムに交換された。
 そして、電車が走り出す。

〔次は広瀬通、広瀬通です。一番町、中央通りはこちらです〕
〔The next stop is Hirose-dori station.N09.〕
〔日蓮正宗日浄寺へは北仙台で、日蓮正宗妙遍寺へは八乙女でお降りください〕

 進行方向を見てはいるが、マリアの手を握ることも忘れない。

 マリア:「少し深刻な話になるから、場所は考えてよね?」
 勇太:「分かってるって」

[同日20:10.天候:雨 仙台市青葉区国分町 某ラブホテル]

 マリア:「こ、ここが……『考えた場所』?」
 勇太:「2人きりになれる場所だし、静かな場所だよ?」
 マリア:「し、しかし……」
 勇太:「マリアが出した条件そのものにピッタリじゃないか」
 マリア:「そ、それはそうだけど……」
 勇太:「と、いうわけで入るよ」
 マリア:「ちょ、ちょっ……もう」

 勇太、半ば強引にマリアをラブホに連れ込む。
 だがマリアも、結局は一緒に入った。

 マリア:「先に話をしてからだよ?」
 勇太:「分かってるよ」

 宿泊はできないので、ご休憩で部屋を取る勇太だった。
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“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の夕方」 

2022-05-27 20:20:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日16:45.天候:曇 宮城県仙台市青葉区中央 JRあおば通駅→ホテルモントレ仙台]

〔「まもなく終点、あおば通、あおば通です。お出口は変わりまして、左側です。仙台市地下鉄南北線、東西線はお乗り換えです。ホーム後方、連絡改札をご利用ください。本日もJR東日本、仙石線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 稲生家の面々とマリアを乗せた電車は、再び市街地の地下を走行していた。
 このトンネルの名前を仙台トンネルという。
 そのままだ。
 ポイント通過の制限速度は時速25キロ。
 かなり厳しい速度制限だが、行き止まりの頭端式の駅なので、そうなっているのだろう。
 それでも、ポイント通過の際はガクンと大きく揺れる。
 キキィキキィと車輪の軋む音もトンネル内に響く。
 電車は1面2線の島式ホームに入線した。

〔「あおば通、あおば通、終点です。ご乗車ありがとうございました」〕

 電車を降りて、エスカレーターに乗る。

 宗一郎:「疲れたな。早いとこホテルに入って休もう」

 改札口を出るが、地上に出ず、地下道を通ってホテルに向かう。
 ホテルは仙台駅前にあるということだが、仙石線の仙台駅からでも、あおば通駅からでも大して距離は変わらない。
 因みに駅構内は鉄ヲタにお任せとばかりか、ここでは勇太が先導役となる。
 地上に出るエレベーターの場所も、お手のものだ。
 地上にエレベーターで上がると、そこはイービーンズ。
 そこから愛宕上杉通りを南方向へ少し進むと……。

 勇太:「おーっ!すっごいホテル!」

 洋風のホテルが現れた。

 宗一郎:「1日目は和風の温泉ホテルだったからね。2日目は一転して、洋風にしてみた」
 勇太:「なるほど……」
 マリア:「ロンドンのホテルみたいですね」
 宗一郎:「思いっ切り凝ってるでしょう」

 中に入る。

 宗一郎:「それじゃあ、フロントに行って来るから待ってて」
 勇太:「行ってらっしゃい」

 内装の雰囲気は、言うなれば洋館。
 ホラー要素を無くした、マリアの屋敷と雰囲気は似ている。

 勇太:「そういえば、屋敷のエントランスホールには、こういうソファとかは置いてないね」
 マリア:「ホールであって、ロビーではないからね。来客だって、普段は無いもの」
 勇太:「それもそうか」

 しばらくして、宗一郎が戻って来た。

 宗一郎:「お待たせ」
 ホテルマン:「それでは、ご案内させて頂きます。お荷物、お預かり致します」

 荷物を部屋まで運んでもらうのに、ホテルマンを頼んだようだ。
 まずは、エレベーターへ。

 勇太:「エレベーターもレトロな雰囲気だ」

 高層ビルのエレベーターでは、基本的に外側に階数表示のインジゲーターは省略されている(非常エレベーターを除く)。
 ホテルモントレでは省略されておらず、ちゃんと階数表示のインジゲーターがあるのだが、何と扇形の針式である(車の速度メーターのように、このエレベーターが何階にいるのか、針で指し示すタイプ)。
 レトロなエレベーターは明治生命館や日本橋高島屋にもあるが、さすがにそこでもインジゲーターが針式ということはない。
 尚、モントレの場合はレトロ調であり、高島屋のように本当に扉が手動だったり、明治生命館のように扉が木製というわけではない。
 エレベーターそのものは最新式のものだ。
 ただ、外装と内装がレトロ調になっているわけだ。
 乗り込んでみて、内側のインジゲーターも横移動の針式。
 天井灯もシャンデリア風である。

 マリア:「師匠が泊まったら、『是非うちの屋敷にも導入を』なんて言いそう」
 勇太:「地下1階、地上3階建てだからいるかねぇ……」

 マリアの屋敷にも、エレベーターそのものは存在している。
 但し、屋敷の構造上、厨房が地下にある為、厨房で作った料理を上げ下げする為のエレベーターだ。
 学校などで給食のワゴンを運ぶエレベーターがあったりするが、あれをもう少し大きくしたタイプである(ぶっちゃけ、日本橋高島屋のエレベーターをコンパクトにした感じ)。

 ホテルマン:「こちらでございます」

 客室フロアでエレベーターを降り、客室に案内される。

 勇太:「おっ、広い!」

 広いのは当たり前。
 4人泊まれる、つまりベッドが4つ置いてあるファミリータイプだからである。

 勇太:「えっ、マリアも一緒なの!?」
 宗一郎:「そう!Welcome to the family,daughter!」
 マリア:「T-Thank you...dad...」
 佳子:「ちょっと、何言ってるのよ。マリアちゃん、顔真っ赤じゃない!」
 勇太:「『ようこそ家族へ、娘よ』???」
 宗一郎:「直訳するな。『キミも家族だ』と言ったんだ」
 勇太:「それ、アメリカ英語じゃないの?」
 宗一郎:「でも、通じてる。マリアさん、意味が分かるね?」
 マリア:「Yes...」
 宗一郎:「ありがとう」

 宗一郎はホテルマンから荷物を受け取った。
 ホテルマンが退出すると……。

 宗一郎:「それじゃ、スパに行こうか」
 勇太:「今から行くの!?」
 宗一郎:「疲れを癒やしてから、夕食の方がいいだろう。何しろ……昼は松島でだいぶ食べたから、今現在腹は空いてない」
 勇太:「あー、それもそうだね」
 マリア:「Ah...」

 マリア、チラッと佳子を見る。
 怒りのあまり、ヤケ食いするという一面を垣間見たマリアだった。

 佳子:「誰のせいだと思ってるのよ」

 思わず温泉ホテルのように、浴衣に着替えてから……というようなことをやりかかった勇太だが、ここはあくまでスパ設備があるだけのこと。
 よって、私服で行かなくてはならない。

 宗一郎:「宿泊者限定の割引券をもらったんだから、使わない手は無い」

 注意したいのは、温泉ホテルのように、宿泊客は何度でも無料で入浴できるわけではなく、1回ごとに入浴料が掛かることである。

 勇太:「そりゃそうだけど……。夕食は?」
 宗一郎:「このホテルのレストランだよ。和食でいいね?」
 勇太:「僕はいいけど……」
 マリア:「はい。私も大丈夫です」
 宗一郎:「じゃあ、決まりだ。行こう」
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“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」 3

2022-05-27 15:37:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日13:50.天候:晴 宮城県宮城郡松島町 観光船発着場]

 稲生家の面々とマリアを乗せた遊覧船は、無事に松島の船着き場に到着した。

 勇太:「着いた着いた」
 宗一郎:「ここで、少し観光ができるな」
 勇太:「因みに、泊まりはどこなの?」
 宗一郎:「何か、ここに泊まりたくなったなぁ……」
 勇太:「え?」
 宗一郎:「よし。観光案内所に行ってみて、良さそうなホテルがあったら泊まってみよう」
 佳子:「ゴールデンウィーク中なんだから、どこも満室なんじゃないの?」
 宗一郎:「分からんぞ。まだコロナ禍だから、そこまで客足は戻っていないかもしれない」

 稲生家の面々は観光案内所も入っている、松島海岸レストハウスに入った。
 船着き場に隣接している所で、遊覧船の松島側におけるチケット販売所でもある。
 そこに観光案内所もある。

 美人スタッフ:「こんにちはー。何をお探しですか?」
 宗一郎:「キミの心の宿に泊まりたいんだが?」(;゚∀゚)=3
 佳子:「ちょっとカメラ止めろ
 マリア:(;゚Д゚)

 ※只今、佳子が宗一郎を【ぴー】しております。しばらくお待ちください。

[同日14:30.天候:晴 同県松島町内 各店舗]

 宗一郎の軽はずみな行動並びに言動により、松島町内での宿泊は却下され、当初予定通りの仙台市内のホテルでの宿泊となった。

 佳子:「今回の旅行は温泉でゆったりするのが目的なんだから、余計なことはしないでいいのよ」
 マリア:「さ、さようで……。(師匠より怖い……)」

 マリアも禁忌とされた魔法を勝手に使ったことで、往復ビンタを食らったことがある。
 普段は目を細めて飄々としているイリーナも、この時はカッと目を見開いて叱責した。

 マリア:(怒らせたら、往復ビンタじゃ済まない……)
 宗一郎:「笹かまぼこ、焼きあがりました」
 佳子:「さっさとお醤油つけて頂きます」

 町内には笹かまぼこ店もあって、中には焼くのを体験できる所もあるのだが、そこで佳子は宗一郎に人数分作らせた。

 勇太:「い、いただきまーす」
 佳子:「焼き立ては美味しいわねぇ」
 マリア:(勇太ママの圧力が凄すぎて、喉を通りにくい……)

 尚、マリアにとって、将来は姑になるかもしれない相手である。

 勇太:「あちっ、あちあち!」
 宗一郎:「勇太、慌てて食べるな。熱いぞ」
 勇太:「う、うん」

 勇太は水を飲んだ。

 佳子:「あー、そうそう、マリアちゃん」
 マリア:「な、何でしょうか?」
 佳子:「もしも勇太が他の女の子に目や手を向けるようなことがあったら、遠慮なく懲らしめていいからね?」
 マリア:「あ、はい。それはもう……」
 勇太:「ブーッ!」

 勇太、口に運んだ水を噴き出した。

 宗一郎:「勇太、女ってのは大なり小なりメンド臭い生き物なんだ。お互い、御愁傷様な」
 勇太:「は、はあ……」
 佳子:「ちょっと、あなた」
 宗一郎:「はいっ!」
 佳子:「これの次は牡蠣が食べたいわ」
 宗一郎:「あ、はい!ただいま!」
 勇太:「ふ、フフ………。僕はマリア一筋だから、大丈夫……」
 マリア:「差し当たり、LINEでのエレーナの友達登録は削除しておけよ?」
 勇太:「ギクッ!」
 マリア:「それと、ルーシーとリリィもだ」
 勇太:「な、何でそれを……」
 宗一郎:「勇太。女ってのは、男のスマホのロックを何故か解除して中を見る生き物なんだ」
 佳子:「あなた、牡蠣のお店は!?」
 宗一郎:「も、もうちょっとで検索できますぅ……」

 この後、牡蠣の店や観光スポットを巡り巡った稲生家の面々だった。
 全て宗一郎の金で。

[同日16:05.天候:晴 同町内 JR松島海岸駅→仙石線1682S列車先頭車内]

 松島での観光を終えた勇太達は、宿泊先の仙台市内へ戻るべく、最寄りの松島海岸駅に行った。
 本数にはバラつきがあるものの、時間帯によっては当駅始発の電車がある。

〔「ご案内致します。この電車は仙石線上り、16時5分発、各駅停車の仙台方面あおば通行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 往路と同じ元山手線と埼京線の電車を寄せ集めた4両編成の電車が、副線ホームに停車していた。
 ドアの窓が小さいことから、勇太は自分達の乗車車両が元山手線だと分かった。
 その当時の頃からの物であろう、グリーンのモケットのシートに腰かける。

〔「お待たせ致しました。16時5分発、仙石線上り、各駅停車の仙台方面あおば通行き、まもなく発車致します」〕

 遠くから車掌の笛の音が微かに聞こえる。
 そして、首都圏の物よりはソフトな耳障りのドアチャイムと共に乗降ドアが閉まる。
 ドアエンジンのエアーで開閉するドアも、今や珍しくなった。
 電車はゆっくりと走り出す。
 東塩釜以東は単線となるので、本線に入る為にポイントを通過するからだ。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は16時5分発、仙石線上り、各駅停車の仙台方面あおば通行きです。途中、本塩釜には16時16分、多賀城には16時21分、仙台には16時43分、終点あおば通には16時45分の到着です。電車は、4両編成での運転です。お手洗いは、1番後ろにございます。次は陸前浜田、陸前浜田です」〕

 勇太:「あーあ……。色々回ったなぁ……」
 マリア:「足が疲れた……」
 佳子:「また温泉付きのホテルに泊まるから、温泉で疲れを落としましょう」
 勇太:「はーい」

 尚、宗一郎は土産物の荷物持ちをやらされていた。

 宗一郎:「荷物は土産物店から送れば良いのではないかね?」
 佳子:「あら?どなたにどれを送るか仕分けしないといけないんだから、ホテルからでいいじゃない。ホテルからでも送れるんだから」
 勇太:「それは確かに」

 電車は西へと進む。
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“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」 2

2022-05-26 20:54:09 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日11:59.天候:晴 宮城県塩竃市海岸通 JR本塩釜駅→マリンゲート塩釜]

〔「まもなく本塩釜、本塩釜です。お出口は、左側です」〕

 電車は高架線を走行している。
 本塩釜駅は塩竃市の中心駅であり、市役所の最寄り駅にもなっている。
 東北本線にも塩釜駅はあるが、こちらは山側にあり、市街地からは離れている。
 2面2線の対向式ホームに電車は入線した。
 ホームの佇まいは、何となく武蔵野線のそれに似てなくもない。
 しかし、仙石線には貨物列車は通っていない。
 仙台近郊の町の中心駅なので、けして寂しいわけではないのだが、静かな駅ではある。
 立ち番の駅員はいないし、発車ベルが流れるわけでもない。

 勇太:「父さん、大丈夫なの?」
 宗一郎:「何とかな……」

 電車を降りて、改札口に向かう。
 ホームが短いこと(6両編成分ある?)以外は、まるで首都圏にある駅のようである。
 自動改札機も、首都圏にあるものと全く同じである。
 そこをSuicaで通過する。
 マリンゲート口から駅の外に出て、遊覧船が発着しているマリンゲート塩釜に向かう。
 途中にイオンタウンがあるので、その前の歩道を通って行くのがポイント。

 宗一郎:「何だか腹が減ってきたな……」
 勇太:「ちょうどお昼時だからね」
 佳子:「それに、朝はロクに食べなかったでしょう?」
 宗一郎:「そうだな。遊覧船に乗る前に、お昼でも食べよう」

 マリンゲート塩釜に到着する。
 ただ単に遊覧船の発着場だけではなく、飲食店もあるし、何とハローワークもあったりする。

 勇太:「何を食べるの?」
 宗一郎:「いきなり重い物を食べるのはアレだから、蕎麦くらいにしておくか」
 勇太:「確かに軽いね」

 建物の中に入ると、大漁旗やマグロのオブジェが観光客を出迎えてくれる。
 先に遊覧船の窓口に行って、乗船券を購入する。

 宗一郎:「次の出航時間は13時?それじゃ、その便で。グリーン大人4名で」

 窓口の上には電光掲示の時刻表がある。
 まるで、駅の発車標だ。
 時刻と運航される船名、そして何バースから出るのかの案内。

 乗船券を購入すると、宗一郎は元気になったのか、

 宗一郎:「じゃあ、次は腹ごしらえしておこう」

 と、同じ建物内の飲食店に向かった。
 フードコート形式の蕎麦店である。

 マリア:「とり天うどん……とり南ばんうどん……?」
 勇太:「天ぷらのことだね。鶏肉の天ぷらのこと」
 マリア:「天ぷらか!」
 宗一郎:「私は蕎麦にしよう」
 勇太:「竈○炭○郎みたいに、山かけうどんは……無いか」
 マリア:「こら」
 勇太:「とり天そばで」
 マリア:「じゃあ、私も」
 佳子:「マグロワンタンそば頂くわ」
 宗一郎:「私もそれにしよう。まあ、昼は軽く蕎麦だけど、松島に着いたら、もっと色々な物が食べれるよ。笹かまぼことかね」
 勇太:「あ、そうか。作り立ての熱いかまぼこが食べれるんだった」
 宗一郎:「そういうこと」

[同日13:00.天候:晴 同市内 塩釜マリンゲート→丸文松島汽船“第三芭蕉丸”船内]

 出航時間になり、勇太達は船上にいた。
 遊覧船の中では定員300人の大型船で、三層構造になっている。
 1階は2等室、2階はグリーン室、3階が1等室になっていた。
 上に行くほど眺望に優れているからだろう。
 しかし、海面を進む迫力が良いというのであれば、1階席で良いだろう。
 宗一郎は2階席を購入したようである。
 名称は恐らくJRのグリーン車から取ったものだろう。
 座席自体は特に豪華というわけでもないのだが、1階席より空いているのは確かだ。
 せっかくなので、最前部の展望席に行ってみる。

 勇太:「これだけ見ると、名鉄のパノラマスーパーみたい」
 マリア:「冥鉄?」
 勇太:「いや、冥界鉄道公社の冥鉄じゃなく、名古屋鉄道の名鉄」
 マリア:「日本語は難しいね」
 勇太:「そ、そうだね」

 昔は航行しながらウミネコへの餌付け体験もあったそうだが、糞害がひどくなったので中止されてしまった。
 尚、2階には船尾部分に甲板があり、そこに出て潮風を浴びながらクルーズを楽しむこともできる。

 マリア:「この船は外洋に出たりしないよね?」
 勇太:「しないよ。あくまで、塩釜湾から松島湾に向かうだけだから」

 湾から湾を航行するだけであり、太平洋フェリーや商船三井フェリーのように外洋に出ることは無い。

 勇太:「それがどうしたの?」
 マリア:「いや、師匠が『日本国内から出るな』って話をふと思い出してね」
 勇太:「バリバリ日本国内だから大丈夫でしょう」

 広い意味では排他的経済水域内までOKのはずなのだが、狭い意味となると、さすがにギリギリ狙いはマズいだろうか。
 国内航行のフェリーまでなら、ギリOKと思われる。

 勇太:「竹島や尖閣諸島、北方領土も本来は日本の領土なんだけど?」
 マリア:「“魔の者”がどこまで手が伸ばせるかだね。私は本州には手が出せないんじゃないかって思ってる」
 勇太:「そうなの?」
 マリア:「だって考えてもみてよ。いくら眷属とはいえ、“魔の者”の手先は北海道で暗躍したんだよ?」
 勇太:「あっ、そうか!」

 本物の“魔の者”は警戒して日本領土までは入って来れないが、しかし眷属ならOKということか。
 そしてその眷属達ですら、本州には入れなかった。
 揺さぶりを掛ける為、東日本大震災を起こしてみたり、コロナウィルスをばら撒いてみたが、全く動じることはなかった。

 勇太:「本州には入ってこれないってどういうことなんだろう?」
 マリア:「そりゃあ、師匠がそこに屋敷を構えたからだろう」

 とマリアは言ったが、勇太は違うと思った。

 勇太:(大石寺があるからじゃないのか?“魔の者”って、実は第六天魔王のことじゃ?)

 もちろん、勇太の想像である。

 マリア:「ちょっと、デッキに出て見ない?」
 勇太:「行く」

 2人は船尾甲板に出た。
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“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」

2022-05-26 16:04:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日10:30.天候:晴 宮城県仙台市太白区秋保町湯元 ホテル瑞鳳→送迎バス車内]

 宿泊客用の送迎バスは2便出ている。
 初便はホテル8時半発だったが、宗一郎ダウンの為、2便の10時半発にした。
 頭痛薬やら胃腸薬やら飲んで、どうにか歩けるくらいにまでは回復したが……。

 運転手:「おはようございます。お荷物、お預かりします」
 佳子:「よろしくお願いします」

 往路で乗ったのと同じ中型観光バスが、正面入口の車寄せに横付けされていた。
 荷物室に荷物を預け、それからバスに乗り込む。
 復路の便は、往路よりも乗客は少なかった。
 恐らく、初便の需要の方が大きいのだろう。
 宗一郎は後ろの席に誰も乗っていないことを確認すると……。

 宗一郎:「もう少し休むから、着いたら起こしてくれ」

 と、座席のリクライニングを倒れるだけ倒し、窓のカーテンを閉めた。

 マリア:「うちの師匠みたいですね」
 佳子:「ホント、心配掛けちゃってゴメンねぇ……」
 マリア:「いえ……」

 バスはスタッフ一同の見送りを受けながらホテルを出発した。
 見送り用の横断幕に英文が記載されていたのは、マリアを意識してのことか。

 マリア:「着いたら、どうするの?」

 バスが県道に出てから、勇太の隣に座るマリアが言った。

 勇太:「あくまでも、父さんが通常状態だったらの話として……。仙石線に乗り換えて、塩釜に行くよ。そこから、遊覧船に乗ってみるんだって。ほら、僕達、ずっと山の中に住んでるから、こういう時に海を見ておこうってことでね」
 マリア:「なるほど。それはいいアイディアだ」
 勇太:「だいぶ前、威吹と一緒に乗った松島の遊覧船があったでしょ?」
 マリア:「そんなこともあったなぁ……。冥鉄バスで山奥に行った帰りに乗ったアレか」
 勇太:「そうそう!あれの親戚だと思えばいい」
 佳子:「そうか。勇太達は、もう遊覧船に乗ったのよね?」
 勇太:「その時乗ったのは、松島湾を一周して戻るヤツだったと思う。塩釜からは乗り降りしてないよ」
 佳子:「良かった。それじゃ、ルートが被ることは無いのね」
 勇太:「と、思うよ」

[同日11:15.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅東口→仙石線乗り場]

 バスは市中心部の混雑に巻き込まれたものの、無事故で仙台駅東口バスプールに到着した。

 運転手:「到着です。ありがとうございました」

 バスを降りて、預けた荷物を受け取る。

 勇太:「父さん、大丈夫?」
 宗一郎:「うーん……まあ、少し良くなった感はあるが……。おかしいな。こんなに酒が弱かったかなぁ……」
 佳子:「歳を取ったんでしょう。もう、若くはないんだから、ムリはダメよ」
 宗一郎:「面目ない……」

 往路はエレベーターを利用したが、復路ではエスカレーターを利用する。
 それでペデストリアンデッキの2階に上がり、駅舎には入らないで、また下の歩道に下りた。
 その時もエスカレーターを使う。

 歩道を北の方に歩くと、東西自由地下通路の入口がある。
 これは地下を走る仙石線乗り場との共用である。
 エレベーターがあったので、それに乗って地下へ向かった。

 勇太:「電車は20分おきか。川越線の川越から西みたい」

 JR線のうち、仙石線だけは地下を通っている。
 当然、SuicaやPasmoが使える。

 佳子:「ほら、ベンチに座って休んでて」
 宗一郎:「すまない……」

 宗一郎は電車が来るまでの間、ベンチに座った。

[同日11:29.天候:晴 JR仙台駅・仙石線ホーム→仙石線1131S列車最後尾車内]

〔ピンポーン♪ まもなく10番線に、列車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側まで下がって、お待ちください〕

 接近放送が地下ホームに鳴り響き、また、風も吹いて来た。

 勇太:「そろそろ来るよ」

 マリアの金髪が風に靡く。
 トンネルの向こうから、強風と轟音を立てて4両編成の電車が入線してきた。
 隣のあおば通駅においては、先頭車寄りに地下鉄との連絡通路がある為、そこは乗客が多い。
 なので、そこから一番離れた最後尾の方が空いている。
 接近放送は簡易的なもので、行き先が案内されることはない。
 仙石東北ラインが開通したことにより、仙石線内の電車は全て各駅停車のみとなった。
 電車がホームに停車すると、首都圏においては、車内での運行情報チャイムとして鳴るものと酷似した音色のドアチャイムが鳴る。
 半自動ドア機能搭載であるが、コロナ対策による換気促進の為か、自動ドアとなっていた。
 205系3100番代と呼ばれる車両。
 元は山手線や埼京線を走行していた中古車を、仙石線用に改造したものである。
 鉄ヲタはドアの窓の形状を見るだけで、元山手線か埼京線かを当てることができる。
 内装はそんなに変わっておらず、緑色の座席のモケットなどは首都圏で走行していたものと同じである。
 そんな座席に腰かけた。

 勇太:「バケット形状じゃない座席に座るのも久しぶりだ」

 他のホームでは発車メロディだが、仙石線ホームだけは発車ベルである。
 これは、仙石線ホームだけ停車時間が短く、発車メロディを流せないのかもしれない。
 また、発車ベルの後で、何か自動放送が流れるわけでもなく、車掌が笛を吹いてドアを閉めるだけだ。
 仙石線の高城町駅から西は205系のみで運転されているが、それでもホームドアは無い。
 地方ローカル線では、設置費用が捻出できないのか。
 電車が走り出すと、コロナ対策で開けられた窓から黴臭い風が入って来る。

〔「本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。仙石線、各駅停車の高城町行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です」〕

 自動放送は導入されていないので、車内放送は車掌による肉声。

 マリア:「こういう地下を走っている間は、とても海に向かう電車だとは思えないな」
 勇太:「まあね。だからこそ、着いた時のギャップが面白いんだろうね」

 仙石線の下り方向先頭車には、クロスシートを備えた車両がある。
 クロスシートとロングシートとを切り替えできるタイプなのだが、ボックスシートを備えた仙石東北ラインが開通したことにより、今ではロングシートに固定されてしまっている。
 トイレもその車両にある。
 しかし、勇太としては座席定員が少ない上に混雑している先頭車よりも、空いている最後尾の方が良かった。
 尚、シートモケットが緑色のせいか、マリアの契約悪魔、ベルフェゴールもしれっと離れた席に着席しているが、誰も気にしない。
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