報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「家族旅行2日目の昼」

2022-05-26 16:04:39 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月4日10:30.天候:晴 宮城県仙台市太白区秋保町湯元 ホテル瑞鳳→送迎バス車内]

 宿泊客用の送迎バスは2便出ている。
 初便はホテル8時半発だったが、宗一郎ダウンの為、2便の10時半発にした。
 頭痛薬やら胃腸薬やら飲んで、どうにか歩けるくらいにまでは回復したが……。

 運転手:「おはようございます。お荷物、お預かりします」
 佳子:「よろしくお願いします」

 往路で乗ったのと同じ中型観光バスが、正面入口の車寄せに横付けされていた。
 荷物室に荷物を預け、それからバスに乗り込む。
 復路の便は、往路よりも乗客は少なかった。
 恐らく、初便の需要の方が大きいのだろう。
 宗一郎は後ろの席に誰も乗っていないことを確認すると……。

 宗一郎:「もう少し休むから、着いたら起こしてくれ」

 と、座席のリクライニングを倒れるだけ倒し、窓のカーテンを閉めた。

 マリア:「うちの師匠みたいですね」
 佳子:「ホント、心配掛けちゃってゴメンねぇ……」
 マリア:「いえ……」

 バスはスタッフ一同の見送りを受けながらホテルを出発した。
 見送り用の横断幕に英文が記載されていたのは、マリアを意識してのことか。

 マリア:「着いたら、どうするの?」

 バスが県道に出てから、勇太の隣に座るマリアが言った。

 勇太:「あくまでも、父さんが通常状態だったらの話として……。仙石線に乗り換えて、塩釜に行くよ。そこから、遊覧船に乗ってみるんだって。ほら、僕達、ずっと山の中に住んでるから、こういう時に海を見ておこうってことでね」
 マリア:「なるほど。それはいいアイディアだ」
 勇太:「だいぶ前、威吹と一緒に乗った松島の遊覧船があったでしょ?」
 マリア:「そんなこともあったなぁ……。冥鉄バスで山奥に行った帰りに乗ったアレか」
 勇太:「そうそう!あれの親戚だと思えばいい」
 佳子:「そうか。勇太達は、もう遊覧船に乗ったのよね?」
 勇太:「その時乗ったのは、松島湾を一周して戻るヤツだったと思う。塩釜からは乗り降りしてないよ」
 佳子:「良かった。それじゃ、ルートが被ることは無いのね」
 勇太:「と、思うよ」

[同日11:15.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅東口→仙石線乗り場]

 バスは市中心部の混雑に巻き込まれたものの、無事故で仙台駅東口バスプールに到着した。

 運転手:「到着です。ありがとうございました」

 バスを降りて、預けた荷物を受け取る。

 勇太:「父さん、大丈夫?」
 宗一郎:「うーん……まあ、少し良くなった感はあるが……。おかしいな。こんなに酒が弱かったかなぁ……」
 佳子:「歳を取ったんでしょう。もう、若くはないんだから、ムリはダメよ」
 宗一郎:「面目ない……」

 往路はエレベーターを利用したが、復路ではエスカレーターを利用する。
 それでペデストリアンデッキの2階に上がり、駅舎には入らないで、また下の歩道に下りた。
 その時もエスカレーターを使う。

 歩道を北の方に歩くと、東西自由地下通路の入口がある。
 これは地下を走る仙石線乗り場との共用である。
 エレベーターがあったので、それに乗って地下へ向かった。

 勇太:「電車は20分おきか。川越線の川越から西みたい」

 JR線のうち、仙石線だけは地下を通っている。
 当然、SuicaやPasmoが使える。

 佳子:「ほら、ベンチに座って休んでて」
 宗一郎:「すまない……」

 宗一郎は電車が来るまでの間、ベンチに座った。

[同日11:29.天候:晴 JR仙台駅・仙石線ホーム→仙石線1131S列車最後尾車内]

〔ピンポーン♪ まもなく10番線に、列車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側まで下がって、お待ちください〕

 接近放送が地下ホームに鳴り響き、また、風も吹いて来た。

 勇太:「そろそろ来るよ」

 マリアの金髪が風に靡く。
 トンネルの向こうから、強風と轟音を立てて4両編成の電車が入線してきた。
 隣のあおば通駅においては、先頭車寄りに地下鉄との連絡通路がある為、そこは乗客が多い。
 なので、そこから一番離れた最後尾の方が空いている。
 接近放送は簡易的なもので、行き先が案内されることはない。
 仙石東北ラインが開通したことにより、仙石線内の電車は全て各駅停車のみとなった。
 電車がホームに停車すると、首都圏においては、車内での運行情報チャイムとして鳴るものと酷似した音色のドアチャイムが鳴る。
 半自動ドア機能搭載であるが、コロナ対策による換気促進の為か、自動ドアとなっていた。
 205系3100番代と呼ばれる車両。
 元は山手線や埼京線を走行していた中古車を、仙石線用に改造したものである。
 鉄ヲタはドアの窓の形状を見るだけで、元山手線か埼京線かを当てることができる。
 内装はそんなに変わっておらず、緑色の座席のモケットなどは首都圏で走行していたものと同じである。
 そんな座席に腰かけた。

 勇太:「バケット形状じゃない座席に座るのも久しぶりだ」

 他のホームでは発車メロディだが、仙石線ホームだけは発車ベルである。
 これは、仙石線ホームだけ停車時間が短く、発車メロディを流せないのかもしれない。
 また、発車ベルの後で、何か自動放送が流れるわけでもなく、車掌が笛を吹いてドアを閉めるだけだ。
 仙石線の高城町駅から西は205系のみで運転されているが、それでもホームドアは無い。
 地方ローカル線では、設置費用が捻出できないのか。
 電車が走り出すと、コロナ対策で開けられた窓から黴臭い風が入って来る。

〔「本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。仙石線、各駅停車の高城町行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です」〕

 自動放送は導入されていないので、車内放送は車掌による肉声。

 マリア:「こういう地下を走っている間は、とても海に向かう電車だとは思えないな」
 勇太:「まあね。だからこそ、着いた時のギャップが面白いんだろうね」

 仙石線の下り方向先頭車には、クロスシートを備えた車両がある。
 クロスシートとロングシートとを切り替えできるタイプなのだが、ボックスシートを備えた仙石東北ラインが開通したことにより、今ではロングシートに固定されてしまっている。
 トイレもその車両にある。
 しかし、勇太としては座席定員が少ない上に混雑している先頭車よりも、空いている最後尾の方が良かった。
 尚、シートモケットが緑色のせいか、マリアの契約悪魔、ベルフェゴールもしれっと離れた席に着席しているが、誰も気にしない。

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