報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔道師の旅路」 〜目的地、到着〜

2018-08-30 19:16:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月26日15:40.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区]

〔次は上落合八丁目、上落合八丁目でございます〕

 下車バス停が近づいて来たので、稲生は降車ボタンを押した。

〔次、止まります。バスが停車してから、席をお立ちください〕

 通常の自動放送は女声だが、注意換気は男声。
 バスは多くの車が行き交う県道上の停留所に停車した。

 稲生:「大人2人お願いします」
 運転手:「はい、どうぞ」

 稲生達はSuicaで運賃を支払った。

 運転手:「ありがとうございました」
 稲生:「どうも」

 前扉から降りる。

 ミク人形:「ども!」
 ハク人形:「どーもっ!」
 運転手:「ありが……ええっ!?」

 慌てて人形達をバッグに押し込むマリア。

 マリア:「ダメじゃない!勝手に出て来ちゃ!」
 ミク人形:「むぎゅ!」
 ハク人形:「むぎゅう……!」
 稲生:「魔法使いのファミリア(使い魔)は自由人だなぁ……」

 と、稲生。

 マリア:「温かい目で見てる場合じやないぞ。勇太もいずれはファミリアを持つんだ」
 稲生:「な、なるほど」
 マリア:「その際はイブキでいいんだな?」
 稲生:「威吹も家族持ちですからねぇ……」

 バス停の前にあるコンビニに立ち寄る。
 バスの中は冷房が効いて涼しかったが、降りると灼熱地獄が待っていた。
 それから待避する為に入ったと言えよう。

 稲生:「東京都内よりも暑いですからね、埼玉は」
 マリア:「暑さが世知辛い」

 ここでアイスクリームとペットボトル入りのアイスコーヒーを買った稲生達。
 で、またもや気温35度の外に出る。

 稲生:「長野も30度でしたが、5度の違いは大きいですね」
 マリア:「まあね」

 魔道師のローブは見た目には暑苦しいが、魔力が備わっていることもあり、着ると結構涼しいらしい。
 取りあえず、足早に稲生の実家に向かった。

[同日15:50.天候:晴 さいたま市中央区 稲生家]

 佳子:「まあまあ、マリアさん。こんな暑い中、ありがとうございます」
 マリア:「マタ、オ世話ニナリマス」

 マリア、自動通訳魔法を切る。
 そして、勉強中の日本語で話す。

 稲生:「また、いつもの部屋に」

 稲生はマリアを1階奥の部屋に案内した。
 既に来客用の折り畳みベッドが展開されている。

 マリア:「ここは落ち着く」
 稲生:「そうでしょう」

 マリアは荷物を置いた。

 稲生:「今、お茶を入れてきますから。アイスでも食べててください」
 マリア:「そうさせてもらう」

 稲生が客間から出て行くと、マリアは荷物の中から水晶球を出した。

 マリア:「師匠、師匠。マリアンナです。応答願います」

 まるで無線通信のようだと、他の魔女達からツッコミを入れられるマリア。
 だが、水晶球の向こうからは何故か銃声の音が。
 それも1つだけではない。
 ハンドガンの『パンパンパン!』という音もするし、ショットガンの『ズドン!ズドン!』という音も聞こえた。
 更に遠くからはマシンガンの『タタタタタ!』という足踏み式ミシンのような音もすれば、似たような音でもっと重低音のある『ダダダダダ!』という音も聞こえた。
 恐らくこれは据置式ガトリング砲の音だろう。

 マリア:「何事!?」
 イリーナ:「あ、マリア。今、先生は忙しいからまた後でね」
 マリア:「どこにいるんですか!?」
 イリーナ:「占いの依頼で、ちょっとソマリアまで……」
 マリア:「何でそんな無政府状態の所に行ってるんですか、もう!」
 イリーナ:「反政府軍の大佐から、『この戦争の行く末を占ってくれ』と頼まれたものでねぇ……」
 マリア:「魔道師でも蜂の巣にされたら死にますよ!?早いとこ脱出してください!」
 イリーナ:「ちょっと待ってね。今、ヒッチハイクしてるところだから」
 マリア:「ヒッチハイク!?」

 水晶球にどこのぞの軍隊か不明だが、1台の装甲車が停車した。

 イリーナ:「Hey!Excuse me!I need your car!I want to leave...(ちょっと失礼!乗せてくれないかしら?行き先は……)」

 明らかに装甲車に乗った軍人が、イリーナに銃口を向けているのだが。
 マリアはそこで通信を切った。

 マリア:「……ま、師匠のことだから何事も無く日本に来ることだろう」

 そこへ稲生がアイスコーヒーを持って来た。

 稲生:「何か、銃声のような音が聞こえましたが……?」
 マリア:「師匠にとっては、戦場もビジネスエリアということだ」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「私は地道に魔界で賞金稼ぎをする方を選ぼう」
 稲生:「は、はあ……」

 イリーナは極端だとしても、人間界で稼ぐ魔道師の方が多い。
 エレーナもその1人。
 マリアは時折魔界に足を運んでは、賞金首の悪質モンスター退治で金を稼いでいるようだ。

 マリア:「勇太もそろそろ考えた方がいいよ」
 稲生:「そうですねぇ……」

 女戦士サーシャ(本名、アレクサンドラ)と一緒に旅をした時、彼女に言われたことだが、どうしてもダンジョンを探索する際、魔法の結界が張られた場所などがあり、その対策として魔法使いが必要になることが多々あるという。
 稲生も見習ながら、魔法陣や結界については本科(教養科目)の1つとなっている為、何とか対応できた。

 稲生:「またサーシャが冒険に出るようになったら、行ってみようかなぁ……」
 マリア:「いや、別に女戦士だけがパートナーじゃないからね?」
 稲生:「違いますよ。赤の他人が一緒より、少しは顔見知りと行った方が気も楽じゃないですか」
 マリア:「女と行くなって言ってんの!」

 鈍い稲生に、少しキレ気味のマリア。

 稲生:「……すいません。威吹と行ってきます」
 マリア:「それならいい」

 マリアはアイスコーヒーにミルクを入れて口に運んだ。

 稲生:「イリーナ先生は、いつこちらに?」
 マリア:「さあ?そのうち、ひょっこり現れるだろう」
 稲生:(何の心配もしていないうちは、大丈夫ってことなんだろうなぁ……)

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