報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師の旅路」 〜西武バス〜

2018-08-28 19:11:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月26日14:46.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。東北新幹線、上越新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武鉄道野田線と埼玉新都市交通伊奈線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、上野に止まります〕

 列車が“ニューシャトル”の軌道と並走し、また東北新幹線と並走すれば、大宮駅はまもなくである。
 この時点で指定席は満席、自由席は立ち客も出たようである。
 周りの乗客達の会話によると、どうも帰省客は稲生くらいしかおらず、どちらかというと埼玉県内や東京都内であるという花火大会やさいたまスーパーアリーナへのイベント客の方が多いようである。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく大宮、大宮です。13番線に到着致します。お出口は、右側です。大宮からのお乗り換えをご案内致します。東北新幹線下り……」〕

 稲生とマリアは降りる準備をしていた。

〔「……尚、さいたまスーパーアリーナへお越しのお客様は、上野東京ラインの普通列車または京浜東北線にお乗り換えになり、次のさいたま新都心駅でお降りください。湘南新宿ラインは全列車通過となりますので、ご注意ください」〕

 稲生:「何かイベントでもあるんですね、きっと」

 埼京線北与野駅からでもアクセス可能だが、あえて案内しないか。
 湘南新宿ラインは元々ホームが無いので。
 誤乗した場合はそのまま指を咥えて、浦和まで乗り通すしかない。
 大栄橋(県道2号線)が見えて来ると、もう駅はすぐそこである。

 稲生:「大宮駅も、相当賑わってるだろうなぁ……」

 列車はホームに滑り込んだ。
 そして、ブレーキ→解除→ブレーキ→解除というハンドル操作を繰り返し、停止位置でやっと止まる。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ〜、大宮です。お忘れ物、落し物の無いようご注意ください。13番線に到着の電車は14時47分発、“あさま”618号、東京行きです。次は、上野に止まります」〕

 ぞろぞろと乗客達がホームに降りて来る。
 もちろん、稲生達もその中にいた。
 だいぶ降りたように見えるが、それでも車内を覗いてみると、あまり空席があるようには見えない。
 それほどまでに普通車は賑わっていたということだろう。
 無機質な電子電鈴を背に、エスカレーターを降りる。

 稲生:「おっ、やっぱり賑やかだなぁ……。ていうか……」

 大宮駅が賑わっていることよりも……。

 稲生:「暑いですね」
 マリア:「うん。クソ暑い」

 元々埼玉県内が暑いのに加え、人々の熱気で更なる暑さということだ。

 稲生:「少し休んでから行きます?」
 マリア:「そうしようか」

 新幹線改札口を出ると、多くの利用者が行き交うコンコースを抜け、東口の方に向かった。
 その途中にあるカフェに入る。
 ここはさすがにエアコンが効いて涼しい。

 稲生:「ちょっと軽く時間調整でもしていきますか」
 マリア:「おっ、いいね」

 アイスコーヒーを注文する稲生だが、マリアはアイスティーとスイーツを注文した。

 稲生:「甘い物は別腹ですか」
 マリア:「そう」

 テーブル席に向かい合って座るが、横に置いたバッグの中から人形達が顔を出し……。

 マリア:「はいよ」

 マリア、パンケーキを切り分けて人形達にお裾分け。

 ミク人形:「おいしー
 ハク人形:「おいしー

 この様子を見た稲生は……。

 稲生:(餌付け……?)

 と、思った。

 ベルフェゴール:「あー、これは選択肢を間違えたねぇ」
 レヴィアタン:「『餌付け』じゃなくて、『娘におやつをあげる母親』くらいの感覚でないとね」

 憑いて来ている悪魔達、何か後ろの席に座って言ってる。
 レヴィアタンはほんの数年前までは黒ギャルの姿をしていたが、今は白ギャルの姿をしている。
 悪魔というのはこの世界では正体を見せることは殆ど無く、ベルフェゴールが英国紳士のコスプレをしているのと同じように、レヴィアタンも稲生が興味を示す女の姿を借りているだけに過ぎないという。
 しかも、普通の人間には見えない。

 稲生:(悪魔達、うるさい)
 マリア:「勇太の御両親は家にいるんだって?」
 稲生:「日曜日ですからね。でも、父さんはゴルフに行ってるかもです」
 マリア:「こんなに暑いのに……」
 稲生:「涼しい所に行ってるんですよ、きっと」

 フランス人形くらいの大きさのミク人形達。
 スイーツをお裾分けしてもらうと、満足したのかさっさとバッグの中に戻っていった。

[同日15:30.天候:晴 JR大宮駅東口→西武バス大38系統車内]

 カフェで過ごした後は、最後の乗り換え先へと向かった。
 バス停のすぐ近くでは、エホバの証人が冊子配布をしている。
 この宗派に関して言えば、あまり魔道師は警戒していない。
 元々が異端審問から始まったとされる魔女狩り。
 エホバの証人自体がキリスト教主流派から異端視されている為、むしろ魔女扱いされて狩られる側だからである。

 稲生:「さすがに顕正会はいないか。たまに顕正新聞配りとかしてるんだけど……」
 横田:「クフフフフフ……。暑い中での布教活動、真にご苦労さまです。ですが、キリスト教の教えでは救われませんよ。まずは私めにあなたのパンティーの色を教えてくださいませんか?クフフフフ……」
 エホバ女性信者:「な、何ですか!?あなたは!?」
 横田:「冨士大石寺顕正会の横田です。先般の女子部班長会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。嗚呼、ブラウス透けブラがお美しい。私の分析によりますと、そのブラの形からして、貴女のパンティーの色は……ハァ、ハァ……」
 警察官:「ちょっとキミ。何してるの?」

 交番から警察官が出て来た。

 横田:「顕正会の折伏です。まずは邪教エホバの証人に折伏を……」

 どう見てもセクハラです。本当に、ありがとうございました。

 稲生:「放っといてさっさと乗りましょう」
 マリア:「あれで魔界共和党の理事だよ。信じられる?」
 稲生:「いや、ちょっと無理ですねぇ……」

 国際興業バスが出発した後、すぐ後にやってきた西武バスに乗り込む稲生とマリア。
 前者が大型車なのに対し、後者は中型車である。
 乗り込むと、1番後ろの席に座った。

〔発車します。お掴まりください。発車します〕

 バスは稲生達を乗せると、すぐに発車した。
 人間の乗客は他にいなかった。

 横田:「放しなさい!これは怨嫉謗法です!あなた達に罰が当たりますよ!」
 警察官:「いいからちょっと交番まて来て!」

 バスは交番の前を通り過ぎてロータリーを一周し、大宮中央通りに出た。

〔大変お待たせ致しました。ご乗車、ありがとうございます。このバスは住宅前、中並木、上小町経由、大宮駅西口行きです。次は仲町、仲町。……〕

 稲生:「マリアさん」
 マリア:「なに?」
 稲生:「多分、今回もブレない流れになるんでしょうね、きっと」
 マリア:「どうしてそう思うの?」
 稲生:「さっきの横田理事の寸劇が、それを如実に物語っているような気がしてしょうがないのです」
 マリア:「そこは師匠がいない(私達に危険が及ばない)という方を気にして予知した方がいいよ」

 取りあえず旧中山道とのスクランブル交差点において、すんなり右折できなかったことはお知らせしておく。

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