報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「2日目の昼」

2017-08-25 19:53:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月12日11:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 勾当台公園]

 初音ミク:「仙台の皆さーん、こんにちはーっ!初音ミクでーす!」
 鏡音リン:「ボーカロイドのセクシィ美少女担当、鏡音リンでーっす!」
 鏡音レン:「鏡音レンです。今日はボク達の野外ミニライブに来て下さって、本当にありがとうございます」

 野外ステージでミクとリン、レンがマイクを取る。

 リン:「そんじゃ早速、始めちゃうYo!リン達、ボーカロイドの基本曲!せーの……」
 ミク・リン・レン:「“千本桜 Sendai Version”!」

 ステージ裏では……。

 敷島:「よし。出だしはOKだな」
 スタッフ:「敷島エージェンシーさん、ちょっといいですか?」
 敷島:「はい、何でしょう?」
 スタッフ:「MC後の捌けの動きなんですけど……」
 敷島:「はいはい」

 今回敷島についているのはエミリー。
 エミリーに寄せられたファンレターには概ね好意的なことが書かれていたが、シンディにあっては、未だに前期型の反省を求める声が多く寄せられていた。
 これについて、敷島はマスコミの取材にこう答えたことがある。

 敷島:「例えばあなたが車を飲酒運転していたところ、歩行者を轢き殺してしまいました。その車は人の血を吸った曰く付きの車ということになり、廃車になりました。しかしあなたは刑務所を出所後、再び免許を取って同じ車種の車を買いました。その車は悪いですか?」

 というもの。

 敷島:「車は悪くないでしょう?悪いのは飲酒運転したドライバーですね。後期型のシンディを憎むというのは、飲酒運転したドライバーではなく、事故後に買われた新車を憎むようなものです。シンディを使って殺人テロを起こしていたウィリーは、奇しくもその車に轢き殺される(暴走した前期型シンディに惨殺される)という大罰が下りました。それでも被害者の皆さんの鎮魂の為、当時のJARA財団は前期型シンディを捕らえ、スクラップ工場に送って『死刑』を執行しました。後期型のシンディって悪いですか?」

 と、続けた。

 エミリー:「あの、社長」
 敷島:「どうした?」
 エミリー:「シンディの件なんですが……」
 敷島:「シンディがどうした?」
 エミリー:「昨日のライブの時の手紙と、未だに非難の手紙が来ることを気にしているようです」
 敷島:「そうか。人間の中でも、感情でしか動けないヤツがそんなことしてくるんだよな。もっとも、その感情に訴えてファンを獲得する俺達が言える権利は無い。シンディには申し訳無いが、それで苦しむのも贖罪の1つだと思ってもらいたい。何故俺が、あえて前期型のメモリーやデータをそのまま移すことを訴えたのかというと、それも大きな理由の1つなんだ」
 エミリー:「はい」

 ミク:「ありがとうございましたー!」
 リン:「イェーイ!皆、乗ってるぅ〜?」
 レン:「リン、真面目にやろうよ!……すいません、姉がフザけて……」

 しかし、観客からは笑いが起こる。

 リン:「夏なのに季節外れの歌、歌っちゃったねぃ!んじゃ、今度はみくみくが夏ならではの歌、皆に送っちゃうYo!」
 レン:「ノリやすい曲だと思うので、皆さん楽しんで聴いてください。それでは……」
 リン・レン:「“Earth Day”!」

 リンとレンが下手に捌け、代わりにミクが上手からやってくる。

 ミク:「天文学と理論思考♪瞑想中の頭ん中♪」

 ミクの歌に合わせて、最前列のファン達がヲタ芸を始めるほど。

 敷島:「よしっ、2人ともお疲れさん」

 ステージ裏に戻ってきた鏡音姉弟を迎える敷島達。
 これが人間のアイドルなら汗拭きタオルでも持ってくるところだが、ボーカロイドにはそんなものは不要である。
 ただその代わり……。

 エミリー:「早く体冷やして!」

 アイスノンの保冷剤や氷の入った袋を持ってくる。
 ボーカロイドもアンドロイド。
 他の精密機械と同じく、熱は大敵なのである。

 レン:「はいはい」
 リン:「ふぅーっ、氷冷たーい!てか、水浴びしたーい」
 敷島:「水浴びなぁ……」
 レン:「リン、水浴びならプールで水着グラビアの仕事してるじゃないか?」
 リン:「えーっ?だってあれお仕事だもん!」
 敷島:「エミリー、ホテルにフィットネスでプールとか無かったか?」
 エミリー:「確か、ホテルメトロポリタン仙台にそれは無かったと思います」
 敷島:「そうか。そこらの市民プールじゃ、さすがに目立つもんなぁ……」
 リン:「海は?昔、一緒に行ったじゃん!」
 敷島:「あの時は今ほど売れて無かっただろ?だからまだ良かったんだけど、あとはあれ、表向きはボーカロイドの海水耐用実験ってのもあったし」

[同日12:00.天候:晴 勾当台公園]

 ミク:「ありがとうございましたー!」
 リン:「ありがとうございましたー!」
 レン:「ありがとうございました!」

 そこでリンが一歩前に出る。

 リン:「みんなーっ!」

 敷島:「ん?」
 エミリー:「あいつ、また何か……」

 エミリーが眉を潜めた。

 リン:「リン、私……すっごく、楽しぃーっ!!」

 リンの最後の言葉に、大勢のファンから歓声が上がった。
 そして、ステージ裏へ。

 ミク:「リン、最後の凄く良かったよ!」
 レン:「何か、1番美味しい所、リンに持って行かれた気がするなぁ」
 リン:「しょ、しょうがないでしょ。自然と口から出ちゃったんだから」
 敷島:「皆、よくやったぞ」
 リン:「んっふっふ〜。グッズの売り上げは順調でしたかな〜?」
 レン:「そういうメタ発言はやめようよ」
 敷島:「ははは……。何だろ。さっきのリンのセリフには驚かされたけど、むしろ今のメタ発言の方がしっくり来るのは……」
 ミク:「それより、次の現場がありますよね?」
 敷島:「ああ。ミクは……」

 敷島達はミク達の次の現場を確認した。

 リン:「次の現場も来てくれるの?」
 敷島:「悪い。今度はエミリー達も仕事が入ってるんだ。科学館で、『マルチタイプの演奏会』」
 リン:「おおっ!」
 レン:「秘書に護衛にメイドに演奏と、マルチタイプの方が大変だね」
 エミリー:「マルチタイプの宿命だ。マスターに求められることは何でもする」
 リン:「だから高いんだね。リン達は10億円くらいだけど」
 レン:「だからそういうメタ発言……」
 エミリー:「バッテリーを交換したら、次の所へ行け。社長の昼食の時間が無くなる」
 敷島:「おっ、それは困るな」
 エミリー:「私は引き続き護衛をさせて頂きますので」
 敷島:「あー、そいつは助かるよ。(国分町はすぐそこなのに……)」
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“Gynoid Multitype Sisters” 「2日目の朝」

2017-08-25 10:34:42 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日22:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 ホテルメトロポリタン仙台]

 井辺:「これは萌から聞いた話です」

 因みに萌とは、ひょんなことから井辺と知り合った妖精型ロイドである。
 KR団最後の女性科学者、吉塚広美(故人)が設計・製作したとされる。
 井辺と知り合った当時はまだ試作段階で性別も無かったが、DCJに保護された後は手に入れた設計図を元に改良され、性別も与えられて稼働している。
 今ではDCJロボット未来科学館のマスコット扱いになっている。
 井辺と共にKR団の東北拠点から脱出したという戦友である為か、井辺を1番に慕っている。

 井辺:「最近、科学館にロイドを売って欲しいというバイヤーみたいな人間が出入りしているというのです」
 敷島:「DCJはロボット製作部門がある。そこに売ってほしいと来るのは当然だろう?……まあ、科学館に行くのは違う気がするけど」

 あくまで科学館はパビリオン施設である。

 井辺:「それでも普通でしたら、そこに展示してあるロボットやロイドに興味を持って、『これはどこで売っているのか?』というなら分かりますよね」
 敷島:「当然だ。東京モーターショーみたいなものだな」
 井辺:「まるで直接買いに来たかのような素振りらしいんです」
 敷島:「本当にバイヤーだな。確かに萌だったら、色んな意味で実用性があるだろうからねぇ……」
 井辺:「いえ、それが萌やアルエットさんが欲しいというわけではないようです」
 敷島:「えっ?……まさか、ゴンスケが欲しいって?」
 井辺:「違います。シンディさんです」
 シンディ:「私ですか?……私は、非売品ですよ」
 敷島:「それに、DCJメーカー希望小売価格は50億円だ。そのバイヤーに払えるのか?」
 井辺:「『100億までならキャッシュで払う』とのことでした」
 敷島:「買う気満々だな、おい!……DCJさんは何と?」
 井辺:「シンディさんにあっては、既にオーナーとユーザーがおり、販売できないとお断わりしたそうです」
 敷島:「そりゃそうだろう。最高顧問の爺さんといい、シンディ、お前人気者だなー!」
 シンディ:「大変光栄です」
 敷島:「だったら、売ってやればいいじゃん。シンディのこの姿をベースにした9号機のデイジーがいただろ?どこに売られたんだか、俺は聞いてないけど。いっそのこと、10号機をシンディそっくりに造って、そのバイヤーに100億円で売り付けりゃいいんだ」
 シンディ:「ちょっと待って、社長。価格の計算が合わないんだけど……」
 井辺:「随分と値上げしましたね。社長と交渉したら、音を上げそうです」
 シンディ:「プッ……(笑)」
 敷島:「キミもさらっとギャグを言うな」
 井辺:「えっ???」
 敷島:「いや、いいんだよ。とにかく、エミリーやシンディにあってはデビューしていないにも関わらず、コアなファンが付いているくらいだ。どこかの金持ちが欲しがったのかもしれないな。うちの最高顧問が正にそうだったもんな」
 井辺:「とにかく、萌が言うにはそのバイヤーは、かなり熱心にシンディさんを欲しがっていた御様子。オーナーの奥様やユーザーの社長の所へ、いらっしゃるかもしれません」
 敷島:「多分、筋的にはアリスに先に話をしに行くだろうな。……あ、もしかしたらそれで科学館に来たのかもしれないぞ?」
 井辺:「なるほど。そう言われればそうですね」
 シンディ:「アリス博士とは直接接触はされていないようですね」
 敷島:「そりゃそうさ。あいつ、今は秩父の秘密研究所に出向中だからな。トニーも一緒だ」
 井辺:「3連休なのに、研究職もお忙しいんですね」
 シンディ:「井辺プロデューサー。秩父にはね、DCJの施設があるの」
 井辺:「ええ。それが研究所と営業所ですね。ビルの地上階が営業所。地下階が研究所」
 シンディ:「それだけじゃなく、近くには保養所もあるからね」
 井辺:「……なるほど。そういうことでしたか」
 敷島:「秩父の保養所まで行くのか?そのバイヤーとやらは?」
 井辺:「どうですかねぇ……」
 シンディ:「もし危険人物だとしたら、ちょっと心配ですね」
 敷島:「まあ、アリスも1人で“バイオハザード”シリーズのプレイヤーキャラできそうなヤツだからな」
 シンディ:「そういう問題じゃないって。……あー、“マリオ”と“ルイージ”が護衛に付いてるのか……」
 敷島:「お前から見れば頼り無い奴らだが、そこはバージョンシリーズの最新型だ。暴漢撃退には使えるだろう」

 マルチタイプにあっては、最新型が旧型に勝るとは限らないということが露呈してしまった(ジャニス&ルディ姉弟戦)。
 しかし、バージョンシリーズにあっては、最新型が旧型に勝って当然というのがある。

 敷島:「俺の所に来れば、話くらい聞いてあげるのに」
 井辺:「それは困ります。社長は今、このライブツアーの総責任者なのですし……」
 シンディ:「そうよ。それに、私の設計データはDCJさんが所有していることになってるのに、それとは直接関係無い社長が口出しするのはどうかと思うけど?」
 敷島:「ちっ、バレたか……」

[8月12日08:00.天候:晴 同ホテル2Fレストラン]

 井辺:「社長、おはようございます」
 敷島:「おっ、おはよう。先に食べてたよ」
 井辺:「はい」

 ホテル内のレストランでは、朝食ビュッフェを行っている所がある。

 井辺:「私は今日、仙台市科学館で結月さんと未夢さんに付こうと思いますが、社長はどうされますか?」
 敷島:「俺は午前中、ミクに付こうと思う。『マルチタイプの演奏会』は15時からだったな」
 井辺:「そうです。それでは私は午前中、結月さんと未夢さんに付きますので、午後は……」
 敷島:「夜はどうなってる?」
 シンディ:「KAITOがラジオに出演しますね。南里研究所時代にお世話になっていたラジオ局に、ゲスト出演するそうです」
 敷島:「ああ、あれか。他には?」
 エミリー:「MEIKOが仙台国際ホテルのレストランでディナーショーです。あと、巡音ルカが泉区のライブハウスでソロライブをやります」
 敷島:「泉区のライブハウスが。あそこがルカのデビュー地点だったもんな」

 もっとも、当初はアマチュアで歌っていた。

 敷島:「ミクとかはよく覚えてるんだけど、俺も一時期記憶喪失になったことがあるだろ?ルカをどうやってスカウトしたんだか、よく覚えてないんだ」
 エミリー:「DCJの試作機が平賀博士経由で南里研究所に送られたんですよ。最初は初音ミクを大人にした感じというコンセプトだったんですが、南里博士が色々と改造したら今に至ったわけです」
 敷島:「その時からDCJってあったのか。知らなかった」

 敷島はズズズとコーヒーを啜った。

 エミリー:「何かお持ちしますか?」
 敷島:「ああ。コーヒーもう一杯」
 シンディ:「プロデューサーは?」
 井辺:「ああ、すいません。では、適当に持って来てください」
 敷島:「学生の頃、レイチェルと一緒にアメリカ旅行した時、泊まったホテルの朝飯が足りなかったんだって?」
 井辺:「旅の疲れもあったのでしょう、きっと」
 敷島:「そうかな」
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“Gynoid Multitype Sisters” 「1日目は無事終了」

2017-08-24 23:45:43 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日20:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 スタッフA:「全プログラム終了です!」

 というスタッフの声と共に、大きく控え室で両手を挙げるボカロ達。

 初音ミク:「お疲れさまでしたーっ!」
 鏡音リン:「お疲れちゃーん!」
 鏡音レン:「お疲れさまでした!」
 巡音ルカ:「お疲れさまでした」
 MEIKO:「お疲れさまー!」
 KAITO:「お疲れさまです」
 未夢:「お疲れさまでした〜」
 Lily:「お疲れさまでした」
 結月ゆかり:「お疲れさまでした!」

 敷島がボカロ達の前に出る。

 敷島:「皆、今日はよくやってくれた。俺達もずっと見ていたけど、お客様達も大喜び!明日と明後日は別々に仙台市内またはその周辺の町のイベントに出ることになるが、今日と比べて小さなイベントだからとバカにせず、ここがボーカロイド発祥地だということをよく自覚して頑張ってくれ!」
 初音ミク:「分かりました!」
 巡音ルカ:「歌のお仕事でしたら、どんな仕事でも全力でやらせて頂きます」
 鏡音リン:「ふっふっふ〜!このセクシィ美少女ボーカロイド、リンちゃんにお任せ!」
 鏡音レン:「……と言いつつ、まさかの体当たりロケにぶつかった時、逃げないように見張っておきます」
 MEIKO:「私とLilyでロックフェス出場ってこの町じゃ初めてだから、プログラムしっかり入力してもらわないとね」
 Lily:「そうですね」
 KAITO:「ボクは握手会とソロCD発売イベントですか」
 結月ゆかり:「私は未夢さんと仙台市科学館でトークイベントですか」
 未夢:「一緒に頑張りましょうね」
 エミリー:「科学館は私とシンディも一緒に『マルチタイプの演奏会』も行う。恐らく私達のアコースティックで、何か持ち歌の披露もあるだろうから……」
 井辺:「失礼します。車の準備ができましたので、荷物を整えたら移動しましょう」
 敷島:「そうだな。平賀先生が先に仙台市内に行って、ホテルで待っててくれている。俺達も行こう」
 エミリー:「シンディ、どうした?」
 シンディ:「いえ、別に……」

 シンディは何故か浮かない顔をしていた。

 スタッフB:「すいません、プロダクションの方。出演者の皆さん宛てに届いたプレゼントはどちらに?」
 井辺:「ファンレターやアンケートなどは、私共が直接お預かりします。プレゼントにつきましては……」
 敷島:「シンディ、どうした?」
 シンディ:「あの手紙のことですけど……」
 敷島:「気にするなよ。あれはきっと、バージョン4.0が近くにいたから気をつけろって意味だろう。しかしそれはもう残骸になっていたわけだから、何も心配は無いよ」
 リン:「ふええっ!?バージョンがいたの!?」
 敷島:「ああ、ちょっとな。まあ、あくまで部品の一部が転がっていただけだったし。皆を動揺させたくなかったから、危険と判断されるまでは黙ってておこうということになったんだ」
 KAITO:「社長も人が悪いですよ。ボク達、今さらバージョンくらいで動揺しませんよ」
 MEIKO:「……と言いつつ、東京決戦の時はアタシの後ろで震えてたくせに〜?」
 KAITO:「あ、あれは昔の話だって!北海道決戦の時は、ちゃんと前に出て歌ってたよ!」
 MEIKO:「そうだったかしら?アタシのメモリーには……」
 敷島:「とにかく移動しよう。シンディ、お前は皆のファンレターと今日のアンケートを持ってくれ」
 シンディ:「分かりました」
 リン:「おお〜!こんなに沢山!?」
 KAITO:「ほんと、ファンってありがたいですよね」
 敷島:「お前達だけでなく、エミリーやシンディにも来てるんだ。『美人過ぎるガイノイドシスターズのお2人は、いつデビューしますか?』『エミリーさん、シンディさんの写真集が出たら絶対に買います!』『エミリーさんとシンディさんのスカートの深いスリットから覗くおみ足がたまりません(はあと)』とかな」
 リン:「おやおや〜?スカートの深いスリット担当のルカ姉が黙ってませんぞ〜?」

 https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=5948939(参照)

 ルネ:「別に、私は衣装よりも歌で勝負だと思ってるから」

 尚、上記イラストのように、ルカの衣装のスリットは左側にしか無いが、マルチタイプ姉妹の場合はチャイナドレスのように両側にある。

[同日21:30.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 ホテルメトロポリタン仙台]

 ホテルに入った敷島エージェンシーの面々。

 敷島:「あ、なに?交替で俺の護衛だ?」
 シンディ:「はい。奥様からの厳命です
 敷島:「俺は別に、国分町に遊びに行ったりはしないぞ。今夜は
 シンディ:「既に白状されておりますので、私が一晩中護衛致します」
 敷島:「エミリーはどうしたんだ?」
 シンディ:「姉さんは井辺プロデューサーの護衛です」
 敷島:「井辺君は未婚だから、浮気の心配は無いぞ」
 シンディ:「そういうことではありません。明日は日替わりで、私と姉さんが交替します」
 敷島:「マジかよ。せっかく、高級ホテルに泊まれるようになったっていうのに……」
 シンディ:「奥様の御命令ですので、何卒ご理解くださいませ」

 口調は秘書というよりメイドであるが、有無を言わせぬ迫力があった。

 敷島:「分かったよ。ちょっと俺は井辺君と明日のことについて、軽く打ち合わせしてくる。お前はここで待っていろ
 シンディ:「いいえ。今ツアーの総責任者である社長が動かれる必要はありません」

 すると、部屋のインターホンが鳴った。

 井辺:「失礼します。何か御用ですか、社長?」
 シンディ:「これから明日の事に関する打ち合わせをしたいんですって」
 井辺:「そうなんですか?」
 敷島:「くそっ……!あー、そうだよ!今後に関わる重大な案件だ!」
 井辺:「さすが社長です。もう情報をキャッチしておられるとは……」
 敷島:「ん?」
 井辺:「実はつい今しがた、私も萌から得た情報なんですよ。シンディさんの周辺のことですね?」
 敷島:「は?」
 井辺:「実は今日、萌が科学館……埼玉のロボット未来科学館のイベントに出た時のことらしいんですが……」

 井辺が語った新情報とは、敷島が初めて耳にする内容だった。
 まあ、当たり前だ。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「夏のボカロライブ」 3

2017-08-22 19:30:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日13:00.天候:晴 宮城県宮城郡利府町 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 セキスイハイムスーパーアリーナは命名権導入を機に付けられた名前で、正式名称は宮城県総合運動公園総合体育館という。
 東日本大震災発生後しばらくの間、メインアリーナは遺体安置所として使用され、サブアリーナは支援物資保管庫として使用された過去を持つ。
 だが、今はそんな過去があったことさえ忘れられるような、そんなライブが行われようとしていた。

 スタッフA:「すいません、出演者の皆さん。場当たりしたいと思いますので、ステージまで集合してください」
 初音ミク:「はい!」

 ステージでは巡音ルカが発声していた。

 巡音ルカ:「あーっ♪あーっ♪あーっ♪……すいません、私の声の開始をもう少し低くしてもらえませんか?」
 スタッフB:「了解です。調整します」
 ルカ:「お願いします」

 貴賓室でその様子を見る敷島と平賀。

 平賀:「敷島さん、取りあえずボーカロイド達の整備状況は良好です。いつでも行けますよ」
 敷島:「いつもありがとうございます」
 平賀:「いえいえ」

 と、そこへエミリーが急いでやってきた。

 エミリー:「失礼します!」
 敷島:「どうした?」
 エミリー:「これを見てください!」
 敷島:「手紙?」
 エミリー:「今日、こちらに届いたそうです」

 茶封筒で、日曜・祝日でも配達される簡易書留で送られていた。
 差出人は書いていない。
 エミリーが開けて中を確認した為に開封はされている。
 そこに入っていた手紙には、こう書かれていた。

『人殺しロボットがのうのうと活動することは許されない』

 とだけ。

 敷島:「これは……脅迫状か?何だこれ?」
 平賀:「恐らく、シンディ宛てじゃないですかね」
 エミリー:「私もロシアにいた時は、反乱分子達の粛清に当たったりもしましたが……」
 平賀:「いや、人間の殺傷数はシンディの方が明らかに上だ。しかも、わざわざ日本語で書かれてる。エミリーは日本に来てからは殺人をしていない。シンディならしていた」
 敷島:「前期型ね。後期型の今はしていませんよ」
 平賀:「しかしあまりにもデザインが前期タイプと同じな上、贖罪の為とはいえ、前期型のデータをそのまま受け継がせたということで、被害者を中心とした批判が残っているのもまた事実です」
 敷島:「あれだけマスコミを使って、アピールしたのになぁ……」
 平賀:「どうします、敷島さん?このことは……」
 敷島:「あくまでライブ開催に対する脅迫状ではないわけですから、黙殺します」
 平賀:「それでよろしいんですか?」
 敷島:「もちろん、エミリーやシンディには警備強化と、あとここの施設の管理者の皆さんにも伝えて来ます。手紙の内容が、本当にシンディを指しているかどうかも分かりませんしね」
 平賀:「分かりました」

[同日17:00.天候:雨 セキスイハイムスーパーアリーナ]

 シンディ:「皆、予定通り開場したわ!お客さん、一杯よ!」
 鏡音リン:「おお〜!」
 MEIKO:「ほんと、ファンってありがたいよね」
 KAITO:「ボク達が初ライブをした時は、本当数えるだけしかお客さん来なかったのにね」
 初音ミク:「わたしの時は、まだ研究所の事務員だった社長が……」
 ルカ:「私のデビューは小さいとはいえライブハウスだったけど……」

 ライブ前から盛り上がるボカロ達。
 その様子を見ていたシンディは少し悲しそうな顔をして、廊下に出た。

 敷島:「どうした、シンディ?」
 シンディ:「せっかく有名になって、こんな立派なアリーナでライブまでできるようになったのに、私のせいで足を引っ張ることになるかと思うと、何だか申し訳無くて……」
 敷島:「あの手紙のことか?まだ、お前のことだと確定したわけじゃない。むしろ、あれじゃないか。今でもどこかでバージョン・シリーズは活動しているだろう?一部はセキュリティロボットとして転用されたりもしているが、世間的にはテロ用ロボットとしてのイメージが物凄く強い。そいつらを一刻も早く何とかとしてくれっていう意味かもしれない。何しろあいつら、警察官のハンドガンじゃ歯が立たないからな」
 シンディ:「まあ、そうですね」
 敷島:「とはいえ、万が一のこともあるから、警戒は怠らないでくれよ」
 シンディ:「かしこまりました」

[同日18:00.天候:雨 同アリーナ]

 シンディ:「皆様、大変長らくお待たせ致しました。『夏休みボーカロイドライブ 2017』を只今より開催させて頂きます。……」

 シンディはヘッドセットにインカムを付けて進行役をやっていた。

 敷島:「よし、行けっ!」

 敷島はミクの背中を押した。
 ボカロ達がステージへ走る。
 まずは全員で歌うのがセオリー。

 井辺:「社長」
 敷島:「おっ、井辺君」
 井辺:「試しに会場の周りを回ってみましたが、怪しい人物などは見かけませんでした」
 敷島:「そうか。だけども、警備員でも警察官でもない井辺君に怪しいとバレる人物なんて、そうそういないだろう」
 井辺:「まあ、そうですね。ただその代わり、これが落ちていたんですが……」

 井辺はある金属片を取り出した。

 敷島:「何かの部品か?」
 井辺:「恐らくは……」
 敷島:「よし。シンディは進行やってるから、エミリーに鑑定させよう」

 敷島と井辺は一旦控え室に戻ることにした。
 平賀が待機している貴賓室に行く。

 敷島:「平賀先生」
 平賀:「おっ、敷島さん。井辺プロデューサーも一緒か」
 敷島:「これが何だか分かりますか?」

 敷島が平賀に金属片を見せた。

 平賀:「いや……?でも、何だかロボットの部品にも見えますね」
 敷島:「やはりそうですか。会場の近くに落ちていたそうです」
 井辺:「私が見つけたのはこれだけです」
 敷島:「今、エミリーを呼び戻していますから、エミリーに鑑定させようと思うんです」
 平賀:「それが確実ですね」

 しばらくしてエミリーが戻って来た。

 エミリー:「何かありましたか?」
 敷島:「エミリー。ちょっとこれを見て欲しいんだ。これが何の部品だか分かるか?」

 エミリーはその部品をスキャンした。

 エミリー:「バージョン4.0の部品です」
 敷島:「なにっ!?」
 エミリー:「右胸に内蔵されている自爆装置の一部だと思われます」
 井辺:「すると、バージョン4.0がこの近くにいたということですね」
 平賀:「それは危険ですね」
 エミリー:「私が探し出して、破壊しましょうか?」
 敷島:「待て待て。その度にデカい音出してたら、いくら何でも騒ぎになるだろう。お前の言う事聞くんだったら、速やかに会場から離れさせるんだ」
 エミリー:「分かりました」
 井辺:「すると社長、先ほどの手紙はシンディさんへの当てつけではなく、バージョン4.0に対する警告だったのでしょうか?」
 敷島:「いや、現時点ではまだ何とも言えない。取りあえずは、バージョン4.0の活動に注意することにしよう」
 井辺:「分かりました」
 平賀:「…………」
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“Gynoid Multitype Sisters” 「東北本線利府支線」 

2017-08-22 12:30:11 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日10:14.天候:晴 JR東北本線岩切駅]

 2両編成の電車が田園地帯の中を駆け抜けて、岩切駅に接近した。
 ここで東北本線の『本線』と『支線』に分岐する。
 敷島達が行くのは支線の方だ。

〔「まもなく岩切、岩切です。1番線に入ります。お出口は、右側です。この電車は、普通、利府行きです。塩釜、松島、小牛田(こごた)方面には参りませんのでご注意ください。乗り換えのご案内です。今度の仙石東北ライン下り、快速、石巻行きは3番線から10時25分。その後、東北本線下り、普通、小牛田行きは同じく3番線から10時52分です。この電車は岩切駅に3分停車致します。発車は10時17分です。新利府、終点利府へお越しのお客様は、発車までしばらくお待ちください。……」〕

 さらっと次の本線電車が約40分後というところが、やはり地方ローカル線である。
 支線であるはずの電車が何故トップナンバーの1番線に入るのかというと、かつては利府方面が本線だったからである。
 今では利府駅で線路がぷっつり切れているが、昔はその先まで続いており、東北本線の品井沼駅で合流していた。
 塩釜、松島方面が支線扱いだったのである。
 利府方面は山線と呼ばれ、当時の蒸気機関車で登るにはキッツイ坂があった。
 列車によっては重連(機関車を2台繋ぐこと)で通行していたほどである。
 そこで当時の鉄道運営側はその手間を省く為、塩釜、松島方面に海線と呼ばれる支線を作った。
 こちらは坂が緩やかだったので、蒸気機関車1台でも難無く通行できたという。
 そうしているうちに観光地も通る松島支線の方が段々と列車本数も多くなり、利府本線の方が衰退していった。
 そしてついに1962年4月20日に利府〜品井沼間が廃止され、それまで支線だった海線が本線となり、本線だった山線が支線となり、今に至る。
 利府駅が廃止にならなかったのは、代替路線が無かった為、利府町民の交通利便を図る為である(尚、新利府駅ができたのは山線廃止の20年後)。
 普段はラッシュ時以外、2両編成の701系が支線内を行ったり来たりするだけだが、今日みたいなセキスイハイムスーパーアリーナでイベントが行われる時は臨時増発も行われるなど、如何に支線化されたとはいえ、今すぐ廃止にされるほど需要が無いわけではない。
 また、それまで1面1線だけだった利府駅のホームも2面2線化され(つまり、1番線しか無かった駅に2番線が追加された)、けして需要が低過ぎるというわけではないことを物語っている。

 敷島:「ん……?」
 シンディ:「起きました?」
 敷島:「ああ……。長閑な所を走っていたものだから、ついついうとうとしてしまった。岩切か?」
 シンディ:「はい」
 敷島:「半分まで来たな」

 駅に到着すると、あちこちからドアチャイムの音が聞こえてくる。
 JR東日本仙台支社管内では、乗降ドアは終日半自動扱いになる。
 その為、ドアボタンを押す度にチャイムが鳴るというわけである。

 敷島:「ん?」

 敷島達は後ろの車両に乗っているのだが、ふと半室構造の乗務員室に目をやると、車掌が荷物をまとめて電車を降りていた。
 別の車掌と交替するのかなと思ったが、交替要因が来る様子が無い。

〔ドアボタンを押して、お乗りください。利府行き、ワンマンカーです〕

 敷島:「はい?」

 車内がガラガラなうちに、停車時間の3分が過ぎた。

〔ピンポーン♪ この電車は東北本線下り、各駅停車の利府行きです。新利府、終点利府の順に止まります。まもなく、発車致します〕

 車掌がいない状態で、空きっ放しのドアがチャイムの後で閉まった。
 そしてVVVFインバータの音を響かせて、電車が走り出す。

〔ピンポーン♪ 今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は東北本線下り、各駅停車の利府行きワンマンカーです。これから先、新利府、終点利府の順に止まります。途中の無人駅では後ろの車両のドアは開きませんので、前の車両の運転士後ろのドアボタンを押してお降りください。【中略】次は、新利府です〕

 敷島:「ほほぉ……。“最終電車”でもワンマンだったんだよなぁ……」
 シンディ:「社長、これ最終電車じゃないです」
 敷島:「いいか、シンディ!次の駅を通過したら、非常停止スイッチを引くぞ!幸いこの電車、向かって右側がガラ空きだ!バージョン4.0の腹掻っ捌いて、乗務員室の鍵を取る必要は無い!」

 701系電車はワンマン運転対応の為、運転席部分にしか運転室が無い。
 真ん中には運賃箱が置かれ、最近では右側には強化ガラスの仕切り版が設置された車両も存在するものの、やはりワンマン非対応の車両と比べれば解放感がある。

 シンディ:「私はその場所を知らないので、社長が引いてください」
 敷島:「おっと!そうだったな」

[同日10:23.天候:晴 JR利府駅]

〔ピンポーン♪ まもなく終点、利府です。お近くのドアボタンを押して、お降りください。運賃、整理券は駅係員にお渡しください。乗車券、定期券、Suicaは自動改札機をご利用ください。どなた様も、お忘れ物の無いよう、ご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 シンディ:「何事もありませんでしたね」
 敷島:「考え過ぎか……。やっぱり、あれは夢だったのかなぁ……」
 シンディ:「きっとそうですよ」

 電車が県道3号線の踏切を通過すると、すぐにホームに入る。
 最大8両編成まで停車できる有効長を持つが、普段からそんな列車はやってこない。
 改札口に近い前の方まで電車は進み、所定の停止位置で電車は止まった。
 尚、先ほど『1番線しか無かった駅に2番線が追加された』と述べたが、かつてはこっちのルートが本線だった頃は2番線があったので、実際には『1度廃止になった2番線が復活した』と表現する方が正しいだろう。
 尚、2番線を使用する列車で定期便はラッシュ時の1本しかなく、あとは臨時列車用である。
 Suicaに対応した自動改札機が設置されているが、そこから先はベタな地方ローカル駅の法則である。
 但し、町のコミュニティセンターが併設されている所だけが違うか。

 敷島:「どれ、タクシーで移動するか」
 シンディ:「そうですね」

 敷島達は駅前のタクシー乗り場に止まっていたタクシーに乗り込んだ。

 シンディ:「セキスイハイムスーパーアリーナまでお願いします」
 運転手:「はい」
コメント (2)
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