報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔界稲荷」

2017-07-29 10:05:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間7月4日06:10.天候:晴 アルカディアシティ南部・サウスエンド地区]

〔「まもなくサウスエンド、サウスエンド。南端村入口、日本人街です。お出口は、左側です。各駅停車で参りましたが、当駅より先、デビル・ピーターズ・バーグまで急行電車となります。停車駅にご注意ください」〕

 威吹:「ユタ、着いたよ」
 稲生:「ん……?あー、ここか」

 ついうとうとしてしまった稲生だった。
 魔族の乗客が多い地下鉄では、なかなかそうはいかないのだが。
 環状運転を行う電車であっても、平気で途中駅から準急や急行、或いは各駅停車へと変更するのがここの環状線。
 大抵は比較的規模の大きい駅で種別を変えることが多い。
 これは日本の鉄道ほど定時性が確保されているわけではないので、運転間隔調整の為に行ったのが定着したもの。
 似たようなことは、ニューヨークの地下鉄で行われている。
 大幅な遅延が発生すると、回復運転の為に各駅停車が急行に変化することがあるとのこと。

〔「サウスエンド〜、サウスエンド〜。3番線の電車は外回り、急行電車です。停車駅はヘル・エ・ヴィス(恵比寿?)、ドワーフバレー(渋谷?)、インフェルノタウン(新宿)、デビル・ピーターズ・バーグ(池袋)です。各駅停車をご利用の方は、4番線で次の電車をお待ちください」〕

 元が魔王の君臨する世界、町であった為に、今でも地名は物騒なものが多い。
 後から開通した地下鉄は、◯◯番街とかが多いのとは大きな違いだ。
 こちら側には埼京線や湘南新宿ラインなど、実質的な快速運転を行う路線が無い為、環状線側で急行運転をするのだろう。
 幕式の行き先表示がクルクルと上から下へと変わる。

『環状線急行 外回り』『Loop line Express Outer train』

 1両おきに日本語表記と英語表記にするという。
 前面ではどういう表記にしているかというと……。
 側面の表記と似たような表示になっている。

『環状線急行 外回り』『Exp.Outer line.』

 更には魔族の係員がヘッドマークを付けている。

『デビル・ピーターズ・バーグまで急行』『Express for D.P.B.』

 稲生:「…………」
 威吹:「写真でも撮る?ユタ」
 稲生:「だからスマホの電池が無いって」
 威吹:「おっと……」

 公用語が日本語と英語の国ならではか。
 この王国は魔王がアメリカ出身の女王で、首相が日本人だからだろう。

 稲生:「じゃ、行こうかな」
 威吹:「こっちだよ」

 因みにここの高架鉄道は日本の鉄道と同じく左側通行である為、外回りがアウターになるのだろう。
 内回りと外回りの区別の付け方は簡単。
 日本の鉄道は左側通行で、◎を描き、その外円が外回り、内円が内回りなだけだ。
 鉄ヲタの稲生ですら間違ったのは、この鉄道会社の紛らわしさ。
 地下鉄線は右側通行なのである。
 軌道線もまた右側通行であることが多い。
 一時期、一党独裁制を敷いた魔界民主党が、右側通行だった道路交通を日本と同じく左側通行へと強引に変更する施策を行ったことがあったそうだ。
 これには日本の鉄道システムを採用している冥界鉄道公社の威光もあったとされている。
 しかし、軌道線(路面電車)も多く抱える魔界高速電鉄は猛反発。
 電気事業も行っているこの鉄道会社、何と党本部や関係施設の送電だけを止める強硬手段に出た。
 民主党側も国家反逆罪として、魔界高速電鉄の屋台骨である鉄道事業停止処分を下すなどした。
 その為、王都内の電車が全て運行をストップした日が3日間続いたという異例の事態が続いた。
 これには乗り入れて来た冥鉄も悲鳴を上げる。
 実は冥鉄は人間界から迷い込んできた人間を運ぶだけではなく、貨物鉄道事業も行っていて、人間界からの物資を輸送するという重大な使命も帯びていたのである。
 貨物ターミナルの無いインフェルノタウン駅で足止めを食らった。
 冥鉄側が仲裁に入り、元々ニューヨークの地下鉄を参考にして開通させた地下鉄部門だけは恒久的に右側通行にすることとし、軌道線に関しても単線区間や支線などの本数の少ない路線で影響の少ない部分のみ左側通行という形を取らせた。
 その後、魔界民主党は立憲君主制を掲げる魔界共和党との民共内戦に敗北し、政権の座を引きずり降ろされる。
 議会における議席の殆どを確保した共和党は、ルーシー・ブラッドプールを新女王に担ぎ上げると、それまで民主党が行っていた強引な施策を解除している。
 道路も元の右側通行に戻されたが、地下鉄の方は左側通行に戻されず、今でも右側通行のままである。
 高架鉄道に関しては、冥鉄との兼ね合いからこれも左側通行が行われている。

 稲生:「……というわけなんだ」
 威吹:「なるほど」

 稲生の講釈を聞きながら、威吹は適当に相槌を打っていた。

[同日06:25.天候:晴 サウスエンド地区(南端村) 魔界稲荷]

 元々はサウスエンドと呼ばれている地区。
 今でも正式名称はそうなのだが、ここにいつの間にか日本人街が形成されると、サウスエンドを和訳した南端、そして日本人村なのだからと南端村と呼ばれるまでになった。
 だから先ほどのサウスエンド駅においても、駅名看板にカッコ書きで南端村と書かれている。
 魔界に迷い込んだ日本人達が作った村だとされ、現首相の安倍春明率いる魔界共和党の蜂起した村でもある。
 ここから共和党兵は環状線やその先にある地下鉄のトンネルを通って、魔王城への侵入を果たしている。
 で、この村の外れの小高い丘の上に真っ赤な鳥居が見える。
 大魔王バァル最終決戦での戦いの功績を認められた威吹がこちら側での市民権が与えられ、尚且つさくらと一緒に暮らす住まいを褒美として求めた所、何故か稲荷神社が建立された次第。
 白麗神社という名前なのだが、いつの間にやら「魔界稲荷」だとか「南端稲荷」とか呼ばれるようになった。
 その理由は、そもそも威吹や住み込み弟子の坂吹死屍雄が妖狐であること、禰宜のさくらが人間界にいた頃は稲荷神社にいたからであることが村人達に伝わったからだ。

 稲生:「ん?これは……」

 鳥居をくぐると両脇に狛犬があるのが別の神社。
 狛犬の代わりに狐がいるのが稲荷神社である。
 向かって左側は、赤い前掛けを着けた狐の石像なのだが、右側が……。

 威吹:「コラ!化けられてないぞ!」
 坂吹:「わわっ、すいません!」

 まるでバッキンガム宮殿の衛兵みたいに、直立不動で台座の上に立っている少年がいた。
 本来は左側の石像みたいに、狐に化けていたつもりだったのだろう。

 威吹:「妖狐のくせに化けるのヘタだなぁ……」
 稲生:「まあまあ。まるで門番みたいにカッコ良かったよ」
 坂吹:「エヘヘ、そうですか?」

 初めて会った時は随分とカタい感じだったが、あの時は緊張していたのだろう。
 今では打ち解けて、年相応の10代半ばの少年といった感じだ。

 威吹:「さくらは起きたか?」
 坂吹:「はい、先生。禰宜様は食事の支度をされておられます」
 威吹:「そうか。ユタの分も作ってもらうよう頼んでおくよ」
 稲生:「そんな、別にいいのに。すぐにイリーナ先生に連絡して、迎えに来てもらうように頼むから」
 威吹:「どうせここまで来るのに時間が掛かるだろ。僕はさくらに言ってくるから、ユタは適当に寛いでて。坂吹、ユタを案内して」
 坂吹:「了解しました。稲生さん、こちらへ」
 稲生:「う、うん。本当にいいのかなぁ……」

 稲生は困惑した様子で、坂吹の後を付いていった。
 威吹達の住まいの入口、玄関の扉をガラガラと開けるとそこにいたのは……。

 ①赤ん坊
 ➁白い狐
 ③逆さ女
 ④一振りの刀

(※バッドエンドはありません)
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“大魔道師の弟子” 「電車ごと 行き先替えて ここはどこ?」

2017-07-28 23:33:27 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間7月4日05:32.天候:晴 魔界高速電鉄(アルカディアメトロ)1番街駅 臨時ホーム]

 駅員:「あの、すいません」
 稲生:「ん……?」
 駅員:「そろそろ折り返し回送となりますので、降りて頂きたいんですけど……」
 稲生:「えっ!?」

 気がつくと、稲生は電車の中だった。
 乗っていたのは、あの205系電車。
 すぐ隣には稲生を膝枕にするようにして、威吹がロングシートに横になっていた。

 稲生:「こ、ここはどこ!?」
 駅員:「アルカディアメトロ1番街駅ですよ。もうこの電車は折り返し回送となりますので、お早くお降りください」
 稲生:「1番街駅!?」

 稲生達が乗っていたのはクハ車である。

 稲生:「威吹、起きて!何か魔界に来ちゃったみたいだよ!」
 威吹:「うむ……?」

 稲生と威吹がホームに降りると、JRの制服とは明らかにデザインの違う魔界高速電鉄の制服を着た駅員が大きく赤旗を上げた。
 それを合図にするようにしてドアが閉まる。
 電車は律儀に行き先表示を『回送』にしながら発車していった。
 どうやら稲生達が乗っていたのは、最後に駆け付けた1号車だったらしい。
 だが、出て行く電車を見ててびっくりしたことがあった。
 8号車から10号車が、まるで衝突事故の後みたいに大損傷していた。

 駅員:「お客様方は……こちら側の方ですか?」

 人間の駅員が話し掛けて来る。
 先ほど稲生達を起こした駅員だった。

 稲生:「あっと……僕は向こうの人間です。まあ、縁あって何回も出入りしていますが……」

 大魔道師に弟子入りし、契約悪魔も内定している為にほとんど不老不死が確定しているだけあって、もはや半分以上人間を辞めているようなものだ。

 威吹:「それよりどういうことだ?あの電車は黄泉の国行きじゃなかったのか?」

 威吹は眉を潜めた。
 銀髪の妖狐は眉毛の色も銀色なので、白い肌にそれはほとんど眉毛が無いように見える。

 稲生:「まあ、魔界自体が半分黄泉の国みたいなものだからねぇ……」
 威吹:「そうじゃない。ややもすれば、キノの故郷に行くかもしれなかったわけだ。それがちゃんと魔界に着いている。どういうことだ?」
 駅員:「実はあの電車に関しましては、私達も寝耳に水で……」
 威吹:「やはりそうか」
 駅員:「最近、冥界鉄道さんの方で、労使関係悪化による事件・事故が頻発しているという話です。人間界の鉄道はそれでダイヤが乱れたり、列車の運行そのものが停止するだけで済みますが、冥界鉄道さんの場合……うちもそうですが、列車自体が怨念を持って勝手に走ろうとするきらいがあるので、それを乗務員達で制御していたわけですよ」

 ところが、労使関係悪化によるストライキやサボタージュなどで、怨念による暴走列車を止める者がいなくなり、真夜中の人間界の鉄道ばかりか、こちらの魔界高速電鉄の線路までも暴走するようになったという。

 駅員:「あれを見てください」

 駅員は稲生達を進行方向に連れて行った。
 臨時ホームのある中央線ホームは、東京駅の中央線ホームと同じく、行き止まり式になっている。
 当然、車止めがあるわけだが……。

 稲生:「ああっ!?」

 車止めが無残にも破壊されていた。

 駅員:「さっきの電車が突っ込んで、やっと止まったんです。折り返し回送にならず、このまま居座り続けられたらどうしようかと思い、冷や冷やしました」
 稲生:(前3両が大破しても平気で自走できる上、平気で回送させる鉄道会社がここに……)

 稲生達は事故車両から遠く離れた最後尾に乗っていたので、無傷で済んだのだろう。

 駅員:「あなたは……魔族ですね。じゃあ、入国手続きは……」
 威吹:「そんなもの要らん」
 稲生:「あ、僕はこれを……」

 稲生はローブの中からタロットカードのようなものを出した。
 最初はタロットカードの絵柄のようなものが写っていたが、それが身分証に変わった。

 稲生:「ダンテ門流魔道師見習、イリーナ組の稲生勇太です」
 駅員:「これは失礼致しました。では、お2人とも入国手続きは省略となります」
 威吹:「当然だ」
 稲生:「すいません。……あの、駅員さん」
 駅員:「何でしょう?」
 稲生:「僕達以外に人間界から乗って来た乗客はいましたか?あ、生きている乗客です」
 駅員:「いえ、あなた方だけでしたね」
 稲生:「ええっ!?そんなはずは……」
 威吹:「いや、そんなはずはあるだろうな」
 稲生:「どういうこと?」
 威吹:「一先ず、移動しよう。僕の家に来るといい」
 稲生:「あ……うん」

[同日05:40.天候:晴 同駅環状線外回りホーム]

 1番街駅は東京でいう東京駅のようなものである。
 東京駅をコンパクトにしたような感じだ。
 環状線は山手線に相当する路線だが、その営業キロ数は山手線の2倍ほどある。
 その為、こちらの環状線は優等列車も運転されている。
 が……。

 稲生:「早朝だから、まだ各停しか無いかな」
 威吹:「別にいいじゃん」

 冥鉄と同じく、人間界からのお下がりを使用しているアルカディアメトロ。
 やってきた電車はウグイス色の103系だった。
 正に山手線である。

 稲生:「おっ、さすが103系。天井に扇風機付いてるよ」
 威吹:「うんうん」

 常春の国、アルカディア。
 とても、独裁者の魔王が君臨していた帝国だった場所だとは思えない。
 その魔王が去ったら去ったで、今度は人間のみによる一党独裁制が待っていた。
 現在は立憲君主制であるが、議会は実質的に一党制である。

 稲生:「それで、威吹の見立てとは?」

 ブルーの座席に隣り合って座り、冷たい金属の手すりに寄り掛かった稲生は威吹に尋ねた。

 威吹:「あいつらは、別世界の人間なんじゃないかって。で、曲がりになりにもあの暴走電車に対して非常停止措置を取ったことが僕達の勝利となって、行くべき所に行ったんじゃないかって思ったんだ」
 稲生:「おいおい。僕は実家に帰る為に埼京線に乗ったんだ。ここに来るのが目的じゃない」
 威吹:「あの電車にとっては、ここがキミの行くべき場所だと思ったのかもね」
 稲生:「おいおい、カンベンしてくれよ。僕は人間界でマリアさんと暮らすんだ。……あれ?あっ、そうだ!家に連絡しないと!」
 威吹:「鉄道マニアが電車の中でケータイかい?結構な身分ですな」
 稲生:「からかうなよ。ダメだ。スマホの電池、切れちゃってる。どこかで充電しないと」
 威吹:「だから、僕の家に来なって。電気も電話もあるよ」
 稲生:「申し訳無いねぇ……」
 威吹:「いいよいいよ。キミとは長い付き合いだったし。それに、件の報酬は何にするか相談もしたい」
 稲生:「そこか!」

 霧の都アルカディアシティ。
 電車は霧の中を突き進んで行く。
 高架線を走る環状線は、どちらかというと駅員も乗務員も乗客も人間の割合が多い。
 もちろん、威吹のように妖怪が利用することもあるのだが。
 逆に薄暗い地下鉄は、魔族の利用が多い。
 同じ鉄道会社かと思うほどの違いだ。
 因みにマドハンドと思しき手だけの集団が吊り革にぶら下がっているのだが、乗客が皆慣れているというのはある意味で怖い。
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“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 埼京線編 完結

2017-07-27 19:26:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10号車運転室]

 稲生:「鍵は手に入れました。これで1号車の車掌室に行って、向こうの非常ブレーキを掛けましょう!」

 稲生氏がそんなことを言った。

 愛原:「戻るだって!?」
 稲生:「この乗務員室の鍵は、後ろのヤツと同じですから」
 高橋:「バカか、テメェ!せっかくここまで来て、戻れだと!?」
 敷島:「このブレーキハンドルを右に回せば止まるんだろう?」

 ハンドルはまるで透明人間が運転しているかのように、マスコンハンドルがガチャガチャ動いている。
 スピードメーターを見ると、時速80キロくらいで走行しているのが分かった。
 ヘッドライトは点灯しているが、ライトに映し出されているのは線路だけで、それ以外は全くの闇のままだった。

 稲生:「この電車は冥界鉄道公社の車両なんです。このまま乗り続けていると、黄泉の国へ連れて行かれます。そうなると皆さんは、生きたままそこに行くことになるわけで、もう2度とこの世に戻って来ることはできません」
 愛原:「それとここのハンドルに触っちゃいけないのと、何が関係あるんだい?」
 稲生:「これは僕の魔道師の先生から聞いた話なんですが、無関係の僕達が運転台の機器に勝手に触ろうとすると感電死するらしいです」
 愛原:「それじゃ、車掌室に行っても同じことなんじゃないか?」
 稲生:「これを見てください。『スト決行中 動労』とあるでしょう?つまり、この鉄道会社でストをしているのは運転士だけなんですよ。ということは、車掌はノータッチということになります」
 愛原:「しかし、車掌もいなかったが……」
 稲生:「欠乗……ですね。車掌さんを乗せずに発車したのかもしれません。運転台の機器に触っちゃいけないのなら、後部運転室の車掌機器には触っても大丈夫というのが僕の理屈です」
 敷島:「分かった。さすがに、時速80キロで走行中の電車から飛び降りる度胸は俺には無い。どうせ飛び降りるのなら、この電車を止めてからだ。なるべく、安全な方法を取るとしよう」
 愛原:「分かりました」

 私は乗務員室の鍵を抜いて、ポケットにしまった。

 敷島:「稲生さん、この電車の中間車辺りは危険な状態だ。そこの辺りをよく肝に銘じてくれよ?」
 稲生:「分かりました」

 私達は急いで後ろの車両に向かった。
 9号車にいた死体の殆どが無くなっていた。
 殆どがゾンビ化してしまった為に、バージョン4.0のマシンガンで蜂の巣にされてしまったからだろう。

 会社員ゾンビ:「アァア……!」
 JKゾンビ:「ウゥウ……!」

 5号車に戻ると、まだゾンビがいた。
 それどころか……。

 酔っ払いゾンビ:「オォォ……!」
 愛原:「1人増えてる……」
 高橋:「酔っ払いはどこまでも迷惑なヤツだな」

 ゾンビに食い殺された酔っ払いもまた、彼らの仲間になっていた。
 今度の私はショットガンを手に入れている。
 霧生市のバイオハザードで既にゾンビは何人も相手にしていたから、ショットガンがあれば大丈夫なことくらい既に分かっている。

 愛原:「うりゃっ!」

 実は弾が不足していたのだが、幸いあのバージョン4.0とやらはショットガンも装備していたらしく、そこから銃弾を頂戴していた。
 私はゾンビを射殺した。

 敷島:「さすがです、愛原さん!」
 愛原:「こんなことは、もうこれっきりにしてほしいですよ」

 あとは3号車にも水の化け物がいたはずだ。
 これに関しては……。

 稲生:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!不浄なるものよ!この場から消え失せろ!ヌィ・フゥ・ラゥム!」
 愛原:「おおっ、ニフラムだ!」

 稲生氏の杖から光が放たれ、それが水の化け物を包み込んで消し去った。

 愛原:「さすが稲生さん、魔法使いですな!」
 稲生:「これでも初歩的な魔法なんです。杖を持ってきて良かった」
 高橋:「ていうか、おい。不浄なるものを消し去る魔法だってことは、さっきのゾンビもニフラムで消せたんじゃねーのか?」
 稲生:「あ……」
 愛原:「まあまあ、高橋君。MPは温存しておくのがベストだぞ。ゾンビに銃弾は効いても、さっきの水の化け物には効かないと思うから」
 高橋:「はあ……」

 そうして私達は1号車へと戻って来た。
 私と高橋のスタート地点だ。
 まさか、本当に戻って来ることになるとは……。
 私は1号車の運転室を開けるのに使った鍵を差し込んだ。

 愛原:「開いた!あとは!?」
 稲生:「あの赤いレバーを引いてください!」

 稲生氏は車掌スイッチの上にある赤いレバーを指さした。

 稲生:「それで電車が急停車するはずです!」
 愛原:「了解!しっかり掴まっててくれよ!」

 私は赤いレバーを掴むと、思いっ切りそれを引いた。
 ブシュッ!という何かエア漏れのような音が聞こえたかと思うと、電車がけたたましいブレーキ音を上げながら減速していった。
 よし!停車したら、このまま電車の外に脱出だ!
 そう思った時だった。

 愛原:「ん?」

 何故だか電車が急勾配を下り始めた。
 そのおかげで、減速力が落ちたような気がする。
 しかも、それが段々ときつくなってきた。

 愛原:「ちょっちょっ、ちょっ……!」

 ちょっと待て!何かおかしいぞ!?
 勾配が段々と垂直になっていく。
 先頭車の10号車を下にするようにして!

 愛原:「わわわわっ!?落ちる落ちる落ちるーっ!!」
 高橋:「先生!」
 敷島:「どうなってるんだ、一体!?」
 稲生:「わあーっ!!」

 稲生氏と幸太郎君、そして威吹氏がついに2号車の方へと『落下』して行った。
 急いで来たから、貫通扉は閉めていない。

 敷島:「み、皆さん、さようならーっ!!」
 愛原:「敷島さん!」

 敷島さんもついに脱落。

 高橋:「せ、先生!俺もうダメです!」
 愛原:「何なんだ、これは一体!?」

 必死にしがみついていた私達だったが、車両がついに1回転するかしないかの所でついに私達も落ちてしまった。

[7月4日23:40.天候:晴 東京臨海高速鉄道りんかい線 新木場駅]

 駅員:「あの、すいません」
 愛原:「ん……?」
 駅員:「そろそろ最終電車の時間なんですけど……」
 愛原:「えっ!?」

 気がつくと私は駅のベンチの上で寝ていた。
 横には高橋君がいる。

 愛原:「こ、ここはどこ!?」
 駅員:「新木場駅ですよ。りんかい線の。あと12分で最終の大崎行きが出ますから、ご利用になられるのでしたら……」
 愛原:「新木場駅!?」

 な、何だ!?私達は現実の世界に帰って来れたのか!?
 私はポケットからスマホを取り出した。
 もうすぐ電池が切れる状態ではあるものの、ちゃんと日付と時刻が刻まれていた。
 するとどうだろう?1日経っていた。

 愛原:「高橋君!高橋君!」

 私は隣に寝ている高橋を起こした。

 高橋:「……?先生!」

 高橋は飛び起きた。

 愛原:「すまん、高橋。どうやら、寝過ごして新木場まで来たみたいだ」
 高橋:「いつの間に?俺達は電車に乗っていて……あ、いや、夢でしたか」
 愛原:「それは……終電だと思って乗り込んだ電車は、実は化け物と同乗の電車だったという夢か?」
 高橋:「! そうです!」

 やはり、夢などではなかったのか。

 高橋:「先生、俺達は……!?」
 愛原:「いや、いい。どうやら、無事に帰って来れたようだぞ。もっとも、1日過ぎたみたいだがな」
 高橋:「1日!?」
 愛原:「あの電車に乗り込んでから、次の日のもう夜中になっちゃったってことさ」
 高橋:「どうしますか!?」
 愛原:「取りあえず、このりんかい線の終電で大崎まで行って、そこから山手線に乗り換えて帰ろう」
 高橋:「わ、分かりました」

 事務員の高野芽衣子君にはかなり心配を掛けたらしく、私のスマホにはいくつもの着信履歴が残っていた。
 不思議な体験だったが、ともあれ私達は無事に帰って来れたのだ。

 私達は当駅23時52分発の大崎行きに乗り込んだ。
 今度はちゃんと現役の車両であるのを確かめた上、行き先表示も何度も確認した。
 そして、最後尾に乗り込んで車掌が乗務するのもしっかり確認した。

 この習慣が、しばらくは続いたのである。
                                終
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“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 10号車 Final

2017-07-27 10:29:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10号車]

 バージョン4.0なるテロ用ロボットが私達に銃口を向ける。
 と、同時に魔法陣が光り出した。
 そして、その中から1人の人物が現れた。

 それは銀色の髪を肩まで伸ばし、頭に狐耳を生やした者。
 さっきの鬼と同じ、着物に袴という姿だったが、色合いはこちらの方がもう少し明るい。
 4.0も何が起きたのか分からず、フリーズしているようだった。

 稲生:「やったぞ!召喚成功!威吹、助けてくれ!」
 威吹:「ユタ!?何だ、いきなり!?ここはどこだ!?」
 稲生:「それどころじゃない!ピンチなんだ!取りあえず、このロボットを一刀両断にしてくれよ!」

 威吹と呼ばれた男もまた人間ではないようだった。
 しかしさっきの鬼と違い、角では無く狐耳を生やしていることから、鬼の一種ではないようだ。
 これがこの稲生勇太氏とやらの使い魔なのか?

 威吹:「わ、分かった!」
 4.0:「キュルルルルルル!」

 4.0は自動で再起動したらしく、再び銃口を向けて来た。
 この時、ガチャガチャガチャという音がした。
 恐らく、銃砲内に銃弾が不足した為、リロードしたのだろう。

 敷島:「いや、ちょっと待った!4.0を日本刀で斬るなんてムリ!頭部を狙撃用ライフルで撃ち抜くか、地道にショットガンで対応しないと!」

 敷島氏が叫ぶ。
 だが、威吹という名の男は全く意に介さない。

 威吹:「でやあーっ!」

 威吹氏は居合道の達人なのか?
 正しくそれで、まずは4.0のマシンガンを斬り捨てた。
 だが、肉弾戦も得意なのか、間合いに入った威吹氏を今度は太い左手で殴り付けてくる。

 高橋:「み、見えない!?」
 愛原:「速過ぎるんだ、あの剣豪!」
 威吹:「はーっ!!」

 4.0のボディに亀裂が入り、そこから火花が飛び散る。

 敷島:「嘘ぉ!?」

 このロボットについて、この中で1番詳しいであろう敷島氏が目を丸くした。
 まあ、その気持ちは分かる。
 ロボットに詳しくない私でさえ、こんな鋼鉄製の鈍重そうなヤツ、爆弾でも投げ付けてやらないと壊せそうにない気がしたのだ。
 それを日本刀でだけでなんて……。

 稲生:「威吹!コイツを真っ二つにしてくれ!」
 威吹:「何だかよく知らんが、了解!」

 で、本当にこの威吹という男は稲生氏の依頼にしっかり応えたのである。

 敷島:「稲生さん、このバージョン4.0が一体……?」

 敷島氏が、火花を散らして完全に動けなくなった4.0の中を覗き込んだ。

 威吹:「これでいいかい?」
 稲生:「助かったよ、威吹!ありがとう!……あ、御礼に僕の生き血啜る?後で生け贄とか欲しくならない?」
 威吹:「キミも魔法使いに染まったなぁ……。あ、そうだ。キミがよく見てた、JRの通販の……」
 稲生:「NREトレインショップ?」
 威吹:「魔界じゃ、いい鰻が手に入らないので、今度の土用の丑の日に鰻を送って欲しいんだ」
 稲生:「よし、分かった!そうするよ!」

 魔法使いと使い魔が報酬のことで話をしている間、私も敷島さんと同じくロボットの中を覗き込んだ。

 愛原:「こんなものが敷島さんの世界では、普通に歩いているんですか?」
 敷島:「普通、かなぁ……?まあ、私のような立場の人間はよく接する機会があります」
 愛原:「何だか大変そうですねぇ……。ん?」

 その時、私はロボットの体内からある物を見つけた。

 愛原:「高橋、ゴム手袋ある?」
 高橋:「あ、はい」

 高橋は本当に用意のいいヤツだ。
 実は私、適当に言っただけなのだが、本当に持って来たようだ。
 何しろ、仕事先が山の中と言っただけで登山ロープを持ってくるようなヤツだ。
 私はゴム手袋をはめて、感電しないよう慎重に手を入れて体内で発見したものを取り出した。

 敷島:「鍵ですか?どこの……」
 稲生:「あっ、それです!それが僕が探していたヤツ!」

 稲生氏は私から鍵を受け取った。

 敷島:「それはどこの鍵なんだい?」
 稲生:「乗務員室の鍵です!」
 愛原:「な、何だってー!?」

 稲生氏は早速その鍵を持って、運転室のドアに駆け寄った。
 もちろん、私達もついて行く。
 稲生氏はそれで運転室のドアを開けた。
 そして、中に入ると……。

 稲生:「遅かったか……」

 運転室内に運転士がいなかった。
 ただ、ハンドルだけがガチャガチャと動いていた。
 ハンドルの所にはただ、『スト決行中 動労』という血文字のプレートが置かれていた。
 これは車掌室には無かったものだ。

 稲生:「どうも冥界鉄道公社で、昔の国鉄闘争みたいなことが起きてるようなんです」
 敷島:「いやいや、日本の国鉄はストで本当に電車が動かなかったけど?」
 稲生:「こっちの鉄道会社は、電車自体が幽霊みたいなものなんで。ただ、勝手に走り回って大変なことになりますけど」
 愛原:「じゃあ、どうする?」
 稲生:「そうですねぇ……」

 ①運転台のブレーキハンドルを右に回す
 ➁運転台の赤い「緊急」ボタンを押す
 ③無線電話で救助を要請する
 ④1号車に戻って車掌用非常ブレーキを操作する
 ⑤乗務員室のドアから外に脱出する

(※恐らくこれが最後の選択肢になると思います。ゲームオーバー直行のものがありますので、ご注意ください)
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“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 10号車 その2

2017-07-26 21:34:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10号車]

 愛原:「何やってんだーっ!」

 私はショットガンを構え、死神のような姿をした者に発砲した。
 ショットガンとは散弾銃のことであり、日本語にした方が意味が分かりやすい。
 発砲された弾が広範囲に飛び散る銃である。
 死神の黒いローブに当たった弾はダメージを与えることができなかったが、大きな鎌に当たった弾はダメージを与えることができた……ように見えた。
 いや、何か昔のゲームで、死神のような姿をしたボスに弾を放つと、当たり判定が大鎌のみというキャラがいたような気がしたのだ。

 死神らしい姿をした者は大鎌を落としてしまった。
 やっぱり効いている!

 高橋:「先生、さすがです!」

 高橋もまたハンドガンを構えて発砲した。
 だが、そこから出て来たのは万国旗。

 高橋:「何だこりゃあ!?」
 敷島:「パーティー用グッズだったのか……」

 敷島氏が苦笑する。
 死神らしい姿をした者はクルッと振り向いた。
 そして、黒いローブを取る。
 それは死神などではなかった。

 敷島:「うわっ!?バージョン4.0だ!?何でこんな所に!?」
 愛原:「何ですか、それ!?」
 敷島:「KR団御用達のテロ用ロボットですよ!御存知ない!?」
 愛原:「知りませんよ!」
 山根:「やっぱり、違う世界の人なんだぁ……」
 敷島:「! あのモーションは!?……伏せて!マシンガン撃ってくる!!」

 私達が床に伏せると、ずんぐりむっくりのバージョン4.0と呼ばれたロボットが私達にマシンガンを撃って来た。
 右手がそれに変形させることができるらしいが、体の構造上、下に向かって撃つことができない。
 だから、床に伏せればやり過ごせるというわけだ。

 敷島:「シンディ!?シンディはいないか!?エミリーでもいい!あいつをブッ壊せ!!」
 高橋:「なに言ってんだ、オッサン!?」

 高橋はダッと運転室に走った。

 愛原:「おい、高橋!危ないぞ!」
 高橋:「大丈夫です!ロボットも所詮、後ろに目は付いてないっスから!」
 愛原:「なるほど、そうか!……って、ええっ!?」

 すると9号車から、また何かが現れた。

 ゾンビA:「アァア……!」
 ゾンビB:「ウゥウ……!」

 ゾンビの集団だった!
 やはり9号車の乗客達もまた、ゾンビウィルスに感染していたんだ!
 前方にはテロロボット!後方にはゾンビ!
 もはや、万事休すか!

 4.0:「キュルルルルルル!」

 だが、このテロロボットは、どうやら動く者に攻撃するように造られているらしい。
 10号車に入って来たゾンビ達を敵と認識したか、手持ちのマシンガンで次々と射殺していった。
 しかしその凄まじい攻撃ぶりに、私も幸太郎君も敷島さんも床から起き上がることができない。
 高橋はどうしてる!?

 高橋:「おい、コラ!テメェが元凶か!?」

 高橋は運転室との客室との間に磔になっている青年の所に辿り着いた。

 ???:「な、何のこと?僕はただ……」
 高橋:「うるせっ!とにかくオメェも何とかしろっ!」

 高橋は青年を拘束から解いてやった。

 青年:「魔法陣で僕の仲間を呼ぶから、あの化け物何とかしてくれよ!」
 高橋:「何とかって、オメェ……!」
 青年:「何だか知らないけど、9号車からやってきたんだよ!」
 敷島:「! 幸太郎君、もしかしてそれ、パソコンかい!?」
 山根:「う、うん……」

 敷島さんは幸太郎君の鞄の隙間から、ノートパソコンが覗いているのを見つけたようだ。

 山根:「通ってる塾で使ってるの。タブレットとかスマホとかを皆使ってるんだけど、たまたまお父さんがパソコンを買い換えたから、お下がりでこれ使ってるんだよ」
 敷島:「電源は入るか?」
 山根:「う、うん。多分……」
 敷島:「よし、電源を入れてくれ!」
 愛原:「敷島さん、何をするつもりですか?」

 敷島氏はスーツのポケットの中から、USBメモリのような媒体を出した。

 敷島:「この中に、あのロボットを奴隷扱いできる上位機種のデータが入っています。それをあいつに送信してやれば、いかにも上位機種から命令が飛んできたように思わせて停止させることができるという寸法です」
 愛原:「そんな簡単に行きますかね?」
 敷島:「行かなかったら、バッドエンドです。今、4.0はゾンビ退治に夢中になってますが、そいつらを全滅させたら、今度は私達を全滅させるでしょうから」
 愛原:「な、なるほど……!」
 山根:「社長さん!電源入ったよ!」
 敷島:「よし!ちょっと借りるぞ!」

 敷島氏は幸太郎君のパソコンに、媒体を差した。

 青年:「僕の名前は稲生勇太!この車両に乗っていたら、突然事故に遭って、それからもう何が何だか分からなくなって……」
 高橋:「事故だぁ!?……ま、ある意味で大事故だけどよ。それで、どうすんだ?」
 稲生:「あの魔法陣で僕の使い魔を召喚するから、あのロボットを止めてほしい!」
 高橋:「無茶言うな!テメェ、魔法使いだったら、魔法で何とかしろっ!」
 稲生:「僕はまだ修行中なの!」

 何だか高橋と青年がモメている。

 敷島:「よし!データを読み取ったぞ!あとは送信だ!」
 4.0:「キュルキュルキュルキュル!」

 ゾンビを全滅させたバージョン4.0は、クルッと振り向き、今度は高橋と稲生勇太君……とやらに銃口を向けた。

 高橋:「うっ!?」
 稲生:「死神の正体はロボットだったの!?何だかもうメチャクチャだ!」
 高橋:「一体、どうなってんだ、こりゃ!?」
 4.0:「ピ!?」

 4.0の動きが止まった。
 それどころか、ビックリした様子で後ろを振り向いた。
 敷島さんがパソコンのキーボードを叩いている。

 敷島:「エミリーから“ナイフ”もらっといて良かったぜ!そこの4.0!俺はエミリーのアンドロイドマスターだぞ!?その意味は言わなくても分かるな!?」

 すると4.0は頭を抱え、正にorzの体勢になった。
 土下座とも言うか?

 稲生:「今だ!」

 稲生と呼ばれた青年は、服装は普通の恰好だったが、その上に薄紫色のローブを羽織り、そして杖を持っていた。

 稲生:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!我は求め、訴えたり!我の召喚に応じ、その力を遺憾無く発揮したまえ!!」

 魔法陣の前で何か呪文を唱えている。

 愛原:「そうか!このメモはキミが書いたものだったのか!」
 稲生:「それは敵を撃退する為に、急いでメモしたものです。そうですか。拾ってくれたんですか」
 高橋:「ていうか、運転席はどうなってんだ!?」

 高橋は運転室のドアに向かった。
 ブラインドは全て下ろされ、中の様子を窺い知ることはできない。

 高橋:「おい、ここを開けろ!!」

 高橋は運転室のドアをこじ開けようとした。

 敷島:「おい、4.0!あのドアをこじ開けろ!」

 敷島さんがキーボードを叩く。
 どうやら、パソコンを使ってこのロボットに命令が出せるようになったらしい。
 が!

 敷島:「あれ!?」

 だが、パソコンの画面が消えてしまった。

 敷島:「ど、どうなってるんだ!?」
 山根:「あ、もしかしたら、バッテリー切れかも……」
 敷島:「何いっ!?」

 すると、4.0の両目がギラリと光った。

 稲生:「……集いて来たれ!速やかに!パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!稲生勇太の名の元に!」
 敷島:「き、キミ!その魔法陣で、うちのシンディかエミリーも召喚できないか!?」
 稲生:「な、何言ってるんですか?」

 魔法陣が光り出すのと、バージョン4.0が再び右手をマシンガンに変形させるのは同時だった。
 い、一体、これから何が起きる!?
コメント (3)
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