報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「一夜明けて」

2017-05-27 11:17:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月29日07:00.天候:晴 東京都渋谷区 ドーミーイン渋谷神宮前]

 イリーナ:「うーん……」

 イリーナは設定したモーニングコールで目を覚ました。

 イリーナ:(魔力が強いってのも楽じゃないねぇ……)

 隣のベッドでは直弟子のマリアが酔い潰れて眠っている。
 さすがにもう酔いは醒めただろうか?
 イリーナは起き上がると、ライティングデスクの上に乗せた白紙の手帳に何かをロシア語で書き込んだ。
 それは夢日記。
 イリーナは予知夢をよく見るので、それを手帳に書き込んでいるのだ。
 人によって見る夢の背景は、モノクロだったりカラーだったりする。
 イリーナの場合、どちらも見るが、それだけなら大勢に影響は無い。
 要注意なのは、その背景が赤色になっている場合。
 ほぼ100%の確率で発生するフラグといっても良いもので、しかも大凶夢である。
 イリーナはそれを『赤い夢』と呼んでいるが、今回はそれが無かった。
 もちろん予知夢である為、それを見た後で、自分は回避することは可能。
 多くの場合は、イリーナ1人では食い止めることができない場合が殆ど。
 食い止めることができる場合、もう『赤い夢』として見ることが無い。
 実は今見た夢の中に、稲生の死亡フラグがあったのだが、ほぼ簡単に回避できるものだったので、『赤い夢』としては登場しなかった。

 イリーナ:「マリア、そろそろ起きなさい」
 マリア:「う……」

 イリーナが揺り動かすと、マリアはだるそうにしていた。

 マリア:「……あと5分……」
 イリーナ:「ダメよ。私がそう言った時、すぐに起こすでしょう?分かったら、あなたもすぐに起きなさい。ほら!」

 イリーナはマリアの上半身を起こした。
 ホテルに戻る前から良い潰れていたので、昨日着ていた服のまんまだ。

 マリア:「頭痛い……」
 イリーナ:「昨夜、飲み過ぎたからね。ポーションがあるから、それを飲みなさい」
 マリア:「昨夜……。えっと……」
 イリーナ:「深くは思い出さない方がいいよ。それより、早くその服着替えてお風呂に行こう。せっかくユウタ君が大きなお風呂のあるホテルを取ってくれたのに、まだ入ってない」
 マリア:「はあ……」

 マリアはベッドに座ると、しわしわになったブラウスを脱ぎ始めた。
 何の疑いも無く下着を替えていると、ふと気づいた。

 マリア:「師匠、私のブレザー知りませんか?」
 イリーナ:「あんた、酔っぱらってて暑いなんて言って、思いっ切り脱いでたじゃない」
 マリア:「は!?」
 イリーナ:「ユウタ君の前でスカートまで脱ごうとしたものだから、私が慌てて止めたんだからね」
 マリア:「……そうでしたっけ???(;゚Д゚)」
 イリーナ:「ユウタ君は昨日、お風呂に入ったのかな?ちょっと聞いてみましょう」

 イリーナはデスク上の電話機を取ると、それで稲生の部屋に掛けた。
 部屋同士、内線が掛けられる。

 イリーナ:「ん?あれ?」
 マリア:「どうしたんですか?」
 イリーナ:「なかなか出ないわねぇ……。まだ寝てるのかな?それとも……」
 マリア:「ユウタも酔い潰れてました?」
 イリーナ:「あなたが先に酔い潰れたものだから、それどころじゃなかったよ」
 マリア:「うっ……!」
 稲生:「はいっ、もしもし!稲生です!」
 イリーナ:「あっ、ユウタ君、おはよう。どうしたの、そんなに慌てて……」
 稲生:「あっ、いや、すいません!お待たせしました……」
 イリーナ:「別にいいのよ。昨夜は大変だったもんねぇ……」

 イリーナ、チラッとマリアを見る。

 マリア:「もうカンベンしてください……」
 イリーナ:「それでね、マリアったらまだお風呂入ってないから、これから行こうと思うんだけど、一緒に行く?」
 稲生:「あ、はい。行きます」

 その時、マリアがイリーナから受話器を奪い取った。

 マリア:「ユウタ!私のブレザー知らない!?」
 稲生:「ブっ、ブレザーですか!?じ、実はお預かりしています」
 マリア:「すぐ返して!」
 稲生:「わっ、分かりました!今、持っていきます!」

 イリーナはその間、稲生がどうして慌てたのか、どうしてすぐに電話に出なかったのかを水晶球で見てみた。

 イリーナ:「あー……若いっていいねぇ……」

[同日08:00.天候:晴 同ホテル]

 今回はマリア達の下着がパクられることは無かった。

 稲生:「ふう……」

 稲生は先に出て待っていたが、女湯から出て来たのはイリーナだけだった。

 稲生:「あっ、先生」
 イリーナ:「マリア、もうすぐ来るよ」
 稲生:「分かりました。このままホテルのレストランで朝食にしようかと思いますが、いいですか?」
 イリーナ:「そうしよう。今度は何でもいいよ」
 稲生:「はい」
 イリーナ:「昨夜は大変だったねぇ……」
 稲生:「そうですね。でもまあ、マリアさんの意外な一面が見れて……何か、良かったです」
 イリーナ:「うんうん、そうだね」

 するとイリーナ、こそっと稲生の耳元に寄る。

 イリーナ:「ユウタ君、マリアの匂いは良かったかい?」
 稲生:「ええっ!?」
 イリーナ:「その人の体臭がいいと思えば、それは体の相性が合うってことだよ」
 稲生:「あの……その……」
 イリーナ:「私もそうだけど、マリアもコーカソイドだから、体臭は結構あるんだよね」
 稲生:「はあ……」
 イリーナ:「電話に出れなかったのは、ちょうど『絶頂』にいたからかい?悪かったね。とんでもない時に電話しちゃって」
 稲生:「すいませんでした」
 イリーナ:「いやいや、あなたが謝ることはないよ」
 稲生:「ちゃんとファブリーズしておきましたから」
 イリーナ:「あー、それは余計だったかもね」
 稲生:「えっ?」
 イリーナ:「さっきお風呂でマリアに、『あのブレザーが一晩、ユウタ君という男の子の部屋に預けられていた意味を考えてみましょう』という課題を与えてみたの。そしたらね、『しばらく洗いません』だって」
 稲生:「え……?」
 イリーナ:「そこで稲生君へ、私という先生からの課題。『その答えに対する意味を考えなさい』」
 稲生:「か、課題の提出期限は?」
 イリーナ:「自由よ。むしろ、提出してもしなくても構わない。いや、むしろ提出先は私じゃなくてマリアの方がいいかな?ま、とにかく課題に対する答えを出したという所をいつの日か見せてくれればいいわ」
 稲生:「わ、分かりました」

 すると、そこへようやくマリアがやってきた。

 マリア:「遅くなりました」
 イリーナ:「はいよ。それじゃ、今度は朝食と行こうかね」

 イリーナは相変わらずの調子で向かい、後に続く2人の弟子は何となくぎこちなかった。

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