報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔界へ」

2022-07-26 16:27:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月14日10:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 チェックアウトの時間になり、勇太とマリアは部屋の鍵をフロントに返した。

 エレーナ:「それじゃ、ここから私が案内するぜ」

 エレーナはエレベーターのスイッチ鍵を持って来ると、これでエレベーターを地下階に行けるようにした。
 それで、地下階に向かう。
 そこは表向き、ホテルの機械室や倉庫があることになっている。
 その一画に、エレーナが寝泊まりしている部屋があるのだが。
 元々はボイラー室だった所を改築したもの。
 勇太達の行き先はそこではなく、エレーナの部屋の近く。
 そこに魔法陣が描かれている場所がある。

 エレーナ:「正直、今、穴は不安定だ。魔界のどこに出るか分からないと思った方がいい」
 勇太:「それでも、アルカディアシティのどこかには出るんでしょう?」
 エレーナ:「……と、思うんだが」
 マリア:「いい加減だな」
 勇太:「とにかく、行ってみよう。行かないことには、何も分からない」
 マリア:「……そうだな」
 エレーナ:「さすがは稲生氏だぜ。分かったら、さっさと魔法陣に入るんだぜ」

 勇太とマリアは、魔法陣の上に乗った。

 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

 エレーナが呪文を唱え、マリアが魔法陣に聖水を振り掛ける。
 魔女が『聖水』を使うのも不思議な話だが、とにかく魔法陣で使用するのである。
 魔法陣から紫色の光が現れ、2人はそれに包まれた。
 包まれた側から見れば、目の前が眩しくなって何も見えなくなるように感じる。

[魔界時間7月14日10:30.天候:不明 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ・地下トンネル?]

 光か消えると、2人は真っ暗な空間に送り込まれていた。

 勇太:「うわっ、真っ暗だ!」
 マリア:「ちょっと待って。今、光を……」

 マリアは魔法の杖を取り出すと、それでその頭部分を光らせた。
 少し赤みを帯びているのは、偽者の勇太を何人か叩き殺したからであろうか。

 勇太:「ここはどこなんだ?」

 コンクリートに包まれた空間なので、どこかの人工物の中のようだ。

 勇太:「あそこにドアがある」

 そして、そんなコンクリートの空間の隅に、1枚の鉄扉があった。
 鍵は掛かっていたが、幸いそれは内鍵になっていた。
 そのドアを開けると、その向こうも暗闇であった。
 違うのは、若干の明かりはあること。
 等間隔の白い明かりがポツポツと点いていて、まるでトンネルの中のようだ……。

 マリア:「何か来る!」

 その時、そのトンネルの向こうから電球色の光が近づいて来た。
 それは電車だった!

 勇太:「わっ、ととと!」

 2人は慌てて、今の倉庫のような部屋に飛び込んでやり過ごした。
 開業当時の地下鉄銀座線の車両に酷似した物が、6両編成で通過していった

 マリア:「地下鉄の倉庫なんかに送り込みやがって!」
 勇太:「でも地下鉄が走っているということは、アルカディアシティもだいぶ復興したってことじゃない?」
 マリア:「そうかもな……」
 勇太:「取りあえず、駅に向かって歩こう」

 2人は電車が来ないことを確認すると、トンネルの中に出た。

 マリア:「ここはどこなんだ?」
 勇太:「1号線のどこかだね。さっきの電車、①っていう系統番号付けてたから」
 マリア:「そうか……」

 今度は対向電車がやってくる。
 それは既に現役を引退しているニューヨークの地下鉄だった。
 魔界高速電鉄は、何でもありである。

[同日10:45.天候:晴 アルカディアシティ・デビルピーターズバーグ駅]

 電車が向かって行った方に歩いて行くと、そこは1号線の終点駅、デビルピーターズバーグ駅だった。
 電車が発車していったのを見計らって、ホームに上がる。
 先に勇太が上がって、マリアに手を貸す。

 マリア:「こういう時、師匠みたいな浮遊魔法が使えると楽なんだけどな」

 マリアは勇太に手を貸してもらいながら、ホームに上がった。
 どうしてもよじ登る時に、足を大きく上げる関係で、マリアのスカートの中が見えてしまう。
 マリアはあまりオーバーパンツを穿くのが好きではないのだが(冬場はストッキングは穿く)、代わりに魔界ではスポーツ下着を着けて来ることが多い。
 実際勇太が見たマリアのショーツは黒色をしていたが、スポーツメーカーが製造したスポーツタイプのショーツだろう。

 勇太:「難しいの?」
 マリア:「才能があれば、ミドルマスター辺りから使える。無かったら、ハイマスターから」
 勇太:「結構厳しいな」
 マリア:「で、どうする?取りあえず、駅に着いたけど……」

 デビルピーターズバーグ駅は、東京で言えば池袋みたいな所にある。
 アルカディア王国の国土自体、まるで東京都を数倍拡張したかのような形をしており、王都も23区のような場所にあった。
 ここで考えられる選択肢は3つ。

 1:魔王城へ向かう。(1番街へ)
 2:魔界民主党本部へ向かう。(1番街へ)
 3:威吹の家に向かう。(サウスエンドへ)

 勇太:「こっちの安倍首相がどんな状態だか知らないのに、迂闊に関係先に向かうのは危険だと思う。威吹の様子も気になるし、威吹の家に行ってみたいと思うんだけど、いいかい?」
 マリア:「まずは情報収集だな。分かった。そうしよう。どうやって行く?」

 1:地下鉄を乗り継いで行く。
 2:路面電車を乗り継いで行く。
 3:高架鉄道で行く。
 4:辻馬車で行く。

 勇太:「高架鉄道で行こう。あれなら乗り換え無しで行ける」
 マリア:「分かった」

 地下鉄や路面電車、高架鉄道は同じ鉄道会社である。
 しかし運営本部はそれぞれ違う為、改札口はそれぞれ別となる。
 しかも改札口の出口は、フリーである為、キップを持っていなくても良い。
 ターンスタイル型の自動改札機を通って、コンコースに出ると、高架鉄道の乗り場へと向かった。

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