報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「『どちらでもない』を選んだルート」 2

2018-04-16 19:26:58 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日00:15.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1F客間]

 『こっくりさん』の上をスススッと動き始めるルーブル硬貨。
 まず最初にやってきたのは『ち』。

 稲生勇太:「『ち』!?『ち』から始まる名前に知り合いは……!」
 ナディア:「しっ!黙って!」

 そしてまたスススッと硬貨が動く。
 今度は『よ』だった。

 勇太:「『よ』!?……千代田線?」
 稲生悟郎:「何でやねん!?犯人の名前やろ!」
 勇太:「それもそうか……」

 スススッ……。
 『つ』

 スススッ……。
 『と』

 スススッ……。
 『わ』

 スススッ……。
 『か』

 スススッ……。
 『り』

 スススッ……。
 『ま』

 スススッ……。
 『せ』

 スススッ……。
 『ん』

 勇太:「『ちよつとわかりません』?」
 悟郎:「『ちょっと分かりません』!?」
 ナディア:「エリゴス!」

 勇太達の目にはゴエティア系悪魔エリゴスの姿は見かけなかったが、ナディアのツッコミに『てへぺろ』しているのがマリアには見えた。

 マリア:「ナディアさん、困りますよ、こういう悪魔」
 ナディア:「そうねぇ……」
 悟郎:「本当に大丈夫なのかい?」
 ナディア:「悪魔にも得手不得手ってあるからね、何でも万能ってわけでもないのよ。それじゃ……せめて、犯人が何者なのかは分かる?」

 するとまた硬貨がスススッと動いた。

 『わ』……『か』……『る』……『分かる』

 マリア:「犯人の特定までは無理だけど、一応どんなヤツかまでは分かるということか」
 ナディア:「それじゃ、教えてもらいましょう。河合氏殺しの犯人は何者なの?」

 スススッ……。
 『よ』

 スススッ……。
 『う』

 スススッ……。
 『か』

 スススッ……。
 『い』

 勇太:「妖怪が犯人だったのか!」
 マリア:「じゃ、やっぱりイブキが犯人なのか?特典よりもプライドを選んだか」
 勇太:「そんな……!」
 悟郎:「でも、待てよ。ナディアの契約悪魔の力がどんなものなのかは知らんけど、威吹君の話なら俺も聞いてる。1度も会ったことは無いけどね。そんな俺でも知ってるくらいなのに、わざわざこんな魔法占いまでできる悪魔が知らないなんてことあるかい?」
 ナディア:「それもそうね」
 勇太:「妖怪にも色々います。どんな妖怪までか分かるといいんですけど……」

 するとまたスススッと硬貨が動く。

 勇太:「『よ』……『う』……『こ』……妖狐だって!?」
 マリア:「やっぱり犯人はイブキか!あの時、カンジはいなかっただろ?」
 勇太:「え、ええ……」

 もっとも、後に威吹の押し掛け弟子、威波莞爾はダンテの化身であったことが魔王城最終決戦の時に知ることとなる。

 マリア:「勇太。やっぱり魔王城の後で、威吹の家に行ってみよう。そして、真相を聞き出すんだ」
 勇太:「は、はい」

 それでも勇太には、やっぱり威吹がどうしても犯人だとは思えなかった。
 威吹が以前、酒に酔って言っていたのを思い出していたからだ。
 もしも河合有紗が本当に勇太と結婚できたら、彼女もついでに被盟約者の中に入れることができる。
 それは妖狐にとっては、合法的な獲物を2人手に入れることができるも同然なのだと笑っていた。
 ついでに子供ができれば、その子供も同じことだと。
 そんなことを喜びながら言っていた威吹が、稲生に殴られたくらいで手放すだろうかと。
 もちろん、高等妖怪である妖狐が人間なんぞに顔面を殴られた屈辱は大きいものだったろう。
 しかし、それにしてもだ。

 勇太:(でもやっぱり、僕の知ってる威吹が犯人だとは思えないんだよなぁ……)

 あとはマリアの話があったのだが、もう夜も遅いということで、この場はお開きとなった。
 元々1番やる気の無かったマリアだから、むしろ自分の番が無くなって清々したことだろう。

[同日02:00.天候:曇 稲生家2F・勇太の部屋]

 勇太は2階の自室に1人で寝ていた。
 2階にはもう1つ部屋があり、悟郎はそっちの部屋で寝ている。
 マリアとナディアが客間で寝ていた。

 稲生:「う……ううん……」

 その時、勇太は寝苦しさで目が覚めた。
 勇太は寝る時は室内の照明を全て消灯して真っ暗にするタイプだ。
 なのでまだ夜中のこの時分、目を開けてもそこに広がるのは闇であるのは当たり前だ。
 枕元に置いたスマホの時計を見ると、まだ丑三つ時。
 丑寅勤行を行うにしても、まだ早い時間である。
 尚、丑寅勤行とは日蓮正宗の法主上人が午前2時半から大石寺客殿で行うものを言うのであって、それ以外の者が行う場合は例え時間帯が丑寅の刻であったとしても、丑寅勤行とは本来呼ばない。
 勇太はそんなことを考えながら、スマホの明かりを消そうとした。
 時間を確認する時、画面が光るわけだから、それで部屋全体がうっすらとボンヤリ照らされるからだ。

 勇太:「!?」

 その時、勇太は一瞬室内に誰かがいるような気がして、1度消したスマホの明かりをもう1度点けた。
 もちろん、本来なら気のせいだろう。
 仮に誰かが入って来るとしたら、当然勇太を起こしてからだから……。
 だが、気のせいなんかではなかった。
 ボウッと光るスマホの明かりに映し出されて、勇太の視界に入ってきた者は……。

 

 勇太:(わああああああああっ!!)

 それは少女であった。
 勇太にいきなり寒気が走る。
 霊気だ!
 すると今、勇太を見下ろしているこの少女は幽霊なのだ!
 勇太はビックリして大声を上げたが、声が出なかった。

 幽霊:「やっと……会えたね……」
 勇太:「……!……!!」
 幽霊:「私のこと……忘れてたでしょう……?……だけど、思い出してくれたみたいね……。だから、こうして出てこれた……!」

 勇太はこの時、気づいた。

 勇太:「有紗さん!?」

 そう、この幽霊は河合有紗に似ていた。

 幽霊:「ようやく気づいてくれたようね……」
 勇太:「ど、どうして今頃……!?」
 有紗の幽霊:「あなたが会いに来てくれないからよ……。だから、会いに来ちゃった……」
 勇太:「そ、そんな……!冥鉄は……」
 有紗:「会いに来てくれたと思っていたのに……あなただけいなくなるなんて……!」
 勇太:「ど、どういうこと!?」

 確かに勇太は魔道師として、冥界鉄道公社の列車に乗り、この人間界と魔界を行き来したりしたことがある。
 本来、冥界鉄道公社とはこの世とあの世を結ぶ幽霊列車を運行する鉄道会社である。

 有紗:「迎えに来たのよ……。こっちの世界は寂しいから……」

 有紗がゆっくりとこちらに手を伸ばしながら近づいてくる。
 勇太は……。

 1:「南無妙法蓮華経」と題目を唱えた。
 2:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」と呪文を唱えた。
 3:「やめてくれ!」と叫ぶ
 4:「消えてくれ!」と叫ぶ
 5:逃げる

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4 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2018-04-17 10:20:27
ところで、ふと気づいたんだが、怪奇・ホラーものにすると、途端に閲覧者数が少なくなるのだ。
私はこういうの好きなんだけどね。
特に、人間に恐怖を与える側がその時何を考えているのかを考察するのが良かったりするんだな。
その点において、威吹の存在は作者にとっても都合が良かったというわけ。

悪趣味と言えば悪趣味だけどね。
返信する
つぶやき 2 (雲羽百三)
2018-04-18 08:32:47
今年度より、現在の警備隊の隊長に昇格した。
顕正会でも組長止まりだったが、世法において、それを追い越した。

無宗教の功徳です。
返信する
Unknown (マイケル)
2018-04-19 08:22:16
百三さん、おはようございます。
お疲れ様です。

おお、凄い!
おめでとうございます!

百三さんって、結構マッチョだったりするんですか?
返信する
マイケルさんへ (雲羽百三)
2018-04-19 10:20:33
こんにちは。ありがとうございます。

いえいえ、私はマッチョではありませんよ。
文科系、文系の低身長です。
もちろん、ゴリマッチョも弊社にはいます。
でも、私のような者も必要らしいですね。
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