報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

どうやら、サトー様からはコメントを頂けなかったようである。

2013-07-30 00:24:50 | 日記
 “ボカロマスター”より。 

[22:00.都内某所の高層ビルの一室 敷島孝夫]

 外は大雨が降っている。台風の直撃で、都内の交通機関は乱れに乱れているようだった。
 いや、今はそんなこと、どうでもいい。
 私達は今、ドクター・ウィリーが潜伏しているビルに突入している。
 誰かが最上階にいると思われるウィリーの元へたどり着けば良い。まさか、それが私になるとは……。
「ウェルカム」
 広い執務室に、そいつは座っていた。
「あんたがドクター・ウィリーか?」
「その通り。君とは都合3回ほど、相見えておる。覚えているかね?」
「…………」
 3回も?1度だけ、旅行先の鬼怒川温泉で会っているだけだと思うが……。
「まあ良い。今となっては、どうでもいいことじゃ。さて、キミがここに来たのは偶然ではない。わしのセオリーである」
 何だか、喋り方と雰囲気は南里所長に似ているなぁ……。そう思っていると、
「南里とわし、よく似ておると思ったか?」
 ウィリーはニヤリと笑った。
「奴とは50年以上もの付き合い、かつ同じ釜の飯を長期間に渡って食ったものじゃ。自然と似てしまうのも、至極当然」
「それなのに仲違いして、もったいない」
 私が嫌味を込めて言ったが、それとて想定内だったのか表情を変えない。
「反論はせんよ。理由も若気の至った故よ。あいにくとわしはロボットは作れても、タイムマシンまでは作れん。できれば若い頃に戻って、もう1度仲良くやり直せたらなと思っておる」
「その本人が死んだもんだから、好き勝手言ってるな?」
「何とでも捉えてもらってよろしい」
 それにしても、灯台もと暗しとは良く言ったものだ。つい奴は国外に潜伏しているものと思っていたが、都内の高層ビルにいるなんて……。
「では、本題に入るとしよう。お茶でもと思うが、あいにくと“娘”は下のフロアに行っておってな、しばらく待たれい」
 シンディのことか。南里もエミリーを娘のごとく大事にしていた。
「ろくでもない話だろ?どうせ」
「まあ、聞いてくれ。キミ、勤めている会社が無くなる上、南里が死んで、これから仕事の当てはあるのかね?」
「……平賀先生が、財団事務所の事務職を紹介してくれるそうだ」
 私は渋々といった感じで答えた。なんでこんなマッド・サイエンティストに、身の上話をしなくてはならんのだ。
「ふむ、そうかね」
 その時だった。
「ただいまぁ」
「! シンディ!」
「あら?お客さん?」
「俺とは何回も会ってんだろうが!ったく……」
 シンディのトボけた態度にイラッときた。だが、彼女の手には赤く染まったナイフが握られていた。
「お前、それ……!?」
「敷島君。まだ話の途中じゃぞ」
「はあ!?」
「それでじゃの、もし良かったら、うちの研究所で働かんか?給料は南里の2割……いや、3割増しを約束しよう」
「ええっ!?」
「ねー、聞いてよ、ドクター。あの平賀って奴、最後までアタシに刃向かって来てさぁ、チョーウザいからこれで刺しちゃった♪」
「なにいっ!?お前、何て事を……!」
「どうかね、敷島君?希望すれば独身寮として、渋谷の新築マンションも紹介するが?」
「え、あ、いや、ちょっと……!」
「ドクター、聞いてる?結局、七海って奴が殴り掛かってきやがって、とどめまでは刺せなかったんだけどォ……」
「それ、本当か!?」
「因みにボーナスは年3回支給。これだけでも、財団の薄給とは比べ物にはならんほどの……」
「ねーえ!ドクターったら!今度は初音ミクを……」
 もう話がメチャクチャだ。私が混乱しかかっていると、信じられない事が起きた。
「今なら初回特典付きで……」
聞けっつってんだろォォぉっ!このクソジジィィィィィっ!!
「!!!」
 初めてだ。目の前で、他人が殺される様を見るのは……!
 シンディは、あろうことか、持っていた血染めのナイフで、仮にも“親”であるドクター・ウィリーを……。
 あんなに苦労して追い掛けたマッド・サイティストの、呆気無さ過ぎる人生の……幕切れ……。

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