報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「戦いの前日」

2023-09-03 21:03:00 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月10日16時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所→愛原家]

 墨田区のとある警察署では一時期、署内でバイオハザードが発生し、職員や来庁者、留置場収容者は元より、たまたま署内にいた警察犬までがTウィルスに感染し、ゾンビ化。
 それをどうにか鎮静したのだが、感染力が弱くなっていることをBSAAや警察庁が注目し、そのサンプルが保管されていたのだ。
 保管状態はけして悪い物ではなかったが、輸送中の事故がマズかった。
 新宿区内の大学病院に輸送中、輸送車が事故に遭い、Tウィルスを積んだケースが破損。
 事故の衝撃で車のハッチが開いてしまい、そこからウィルスが漏洩してしまった。
 ウィルスそのものは長期間に渡って保管されていたこともあり、弱毒化が進んでいた。
 その為、普通の免疫を持った人間であれば、感染したところで、ゾンビ化するほどの重い症状にはならないだろうと専門家が発表している。
 免疫力の弱い老人、病人、子供は注意との事らしい。
 また、虫類や鳥類などは感染した後、変化の恐れがあるとのことで、むしろこちらの方が要注意とのことだ。
 虫類や鳥類は感染してもゾンビ化することはないが、前者は巨大化し、後者は凶暴化する。
 なので、リサと一緒にいる『魔王軍』の『四天王』の2人は早めに帰した方が良いだろうと判断した。
 リサのスマホにLINEを送ったのだが、未だに既読すら付かない。
 何をしているのだろうと、直接見に行くことした。
 エレベーターの鍵はもう1本あるので、それで3階と4階に上がれるようにした。
 まずは3階に上がる。
 ダイニングやリビングには、リサ達の姿は無かった。
 ということは、リサの部屋に直接いるのだろう。
 尚、ゴミ箱には彼女らが昼食に買ってきたマクドナルドの包み紙や袋が捨てられていた。
 再びエレベーターに乗り込み、4階に向かう。
 因みに2階も土足禁止にしていて、来訪者には2階の入口でスリッパに履き替えて頂くことにしている。
 来訪者には面倒を掛けて申し訳ないが、2階も土禁にすることにより、私達がスリッパのままで3階や4階と行き来ができるようにする為である。
 実際、2階の事務所フロアはタイルカーペットが敷かれている。

 愛原「ん?」

 4階でエレベーターを降りると、異様な声が聞こえて来た。
 それは、リサの部屋からだった。
 女の子同士、部屋で盛り上がっているのだろうと思った。
 ……確かに、盛り上がっていた。
 別の意味で。

 淀橋「あァ……ン……!リサ様……魔王様……もっと……もっと吸ってください……ぃぃっ!」
 小島「魔王様!ヨドばっかりずるい!私も!私の血も吸ってください!」

 吸血鬼に吸血されると、性的快楽を得ることができるのだという。
 男でも女でもだ。
 リサは食人鬼としても吸血鬼としても通用するタイプであるが、今回は2人の少女の血を啜ることにしたようだ。
 リサに触手を突き刺されて血中老廃物を吸い取られるのも、あれはあれでかなり気持ちの良いものだが、性的快楽とはまた違う。
 リサの唾液が直接入る吸血法だと、性的快楽という所が吸血鬼なのである。
 ドアの隙間から覗くと、3人の少女はほぼ全裸の状態で快楽に耽っていた。
 リサは淀橋さんの喉笛に牙を突き立て、そこから血を啜っている。
 吸っている本人も、片手で自分の下半身を弄っていた。
 さすがに、あれはマズい。
 やり過ぎて、2人の少女までも『鬼』の仲間にすることは許されていない。
 私は再びエレベーターで3階に降り、ダイニングの内線電話で、リサの部屋に掛けた。
 スマホと違い、内線電話の呼び出し音は甲高いブザーなので、気づかないわけがないだろう。
 因みに、ボタンを押している間、ずっと鳴り続けるタイプだ。
 リサは電話に出なかった。
 我に返って電話に出るまで、長いブランクがあるのだろう。
 私は、少し煽ることにした。

 愛原「発車、オーライ!」

 プーッ!

 愛原「オーバーランだよ。ちょっと下がって」

 プッ、プッ、プーッ!

 愛原「早く電話に出て頂戴」

 プーッ、プ、プ、プーッ!

 リサ「はーいっ!」
 愛原「よう、どうした?随分と勉強に集中してたみたいじゃないか?」
 リサ「何で邪魔するの!せっかくイキそうだったのに!!」

 リサ、どうやら隠す気は無いらしい。

 愛原「緊急事態発生だ。墨田区内でTウィルスが漏れ出たらしい」
 リサ「ええっ!?わ、わたしじゃないよ!?」
 愛原「知ってる。誰も、お前を疑っちゃいないよ。原因はちゃんと他にある。しかもウィルスはかなり弱いもので、普通の人間はゾンビにならないらしい」
 リサ「そうなんだ!?」
 愛原「その代わり、虫や鳥は感染して症状が出る恐れがあるそうだ。こんな真冬だ。虫は今更気にする必要は無いだろうが、カラスとかは別だからな。危険が出る前に、淀橋さんと小島さんには帰ってもらった方がいいだろう」
 リサ「わ、分かった」
 愛原「宿題は、もう終わったんだろうなぁ?」
 リサ「そ、それは大丈夫。終わってから、盛り上がってた」
 愛原「そうか、それならいい……わけねーだろ!吸血行為もいい加減にしろ!」
 リサ「ゴメンナサイ……」

 淀橋さんと小島さんには急いで帰り支度をしてもらった。
 この2人も何度もイかされたのか、それともだいぶ血を吸われたからなのか、ヒョコッヒョコッとした歩き方だった。
 さすがに途中で倒れられては困るので、私は高橋に命じて、彼女らを家まで送らせることにした。

 高橋「しょうがないっスねぇ……」
 愛原「悪いな、高橋。褒美として山梨との往復に、この車、使わせてやる」
 高橋「マジっスか!?それは助かります!」

 前の車は日光の民泊の時に、鬼の男にぶつけられてしまったが、何とか代わりの車をリースさせてもらうことができた。
 本当は荷物が多く積めるバネットの方が良いのだが、代わりの車が無く、それが手配できるまではADでということになった。
 高橋としては、そっちの方がまだいいらしい。

 愛原「無茶な走りするなよ?」
 高橋「分かってまーす!」

 私は高橋達を1階のガレージまで見送った。
 淀橋さんと小島さんは、ライトバンのリアシートに座る。
 リサはさすがに、見送りに来なかった。

 愛原「じゃあ、今日は悪かったね」
 淀橋「いえ……」
 小島「お騒がせてして、すいませんでした」

 高橋は運転席に乗り込むと、少女達の家の住所をナビに入力した。

 愛原「それじゃ、気をつけてな。シャッターのキーボックスの鍵、渡しておくから、帰ってきたらそれでシャッター開けて入ってくれ」
 高橋「了解っス」

 私は内側から電動シャッターを開けた。
 そして、高橋運転の車が出て行く。
 私はすぐにシャッターを閉めた。
 ……この時、私は気が付かなった。
 この隙に、一匹のゴキブリがガレージ内に侵入してきたことを……。
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