[1月16日06時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階]
愛原「ん……」
私は枕元に置いたスマホのアラームで目が覚めた。
私はそんなに夢を見る体質ではないのだが、今回は何故かリサと鬼ごっこしている夢を見た。
逃げるリサを捕まえ、その角を掴まないと勝てないという謎のルール。
どこかで見たマンガやアニメの第1話にストーリーが似ているが、まあ、夢というのは訳が分からんものだ。
まだ早朝のせいか、外は暗い。
夏場ならもう明るい時間ではあるが、真冬の今、東京では6時半くらいにならないと明るくならないだろう。
私は欠伸をしながら起き上がり、カーテンを開けて外の様子を見た。
私の想定では、ちょっとだけ積もっているだろうくらいに思っていた。
愛原「おー……まるで、実家の風景だな……」
半分寝惚けていた私は、納得したかのように窓に背を向けようとした。
因みに、私の実家は仙台市。
東部の市街地に近い場所である。
仙台市も山間部は雪が多いが、平野部ではそんなに雪は積もらない。
せいぜい、5cm前後。
積もっても、10cm前後が良いところだろう。
私が子供の頃は、30cmくらい積もった記憶があるのだが、地球温暖化だな。
そう思ったのだが、ちょっと待て。
ここは仙台じゃない。
東京だ!
愛原「実家の風景!?」
私は慌ててもう1度窓の外を見た。
愛原「な、何だこりゃ!?」
雪は殆ど止んでいたが、まだ暗い空にはどんよりとした雲が立ち込めているように見える。
本来ならまだ暗い時間なのに、薄明るいのは、積もった雪が僅かな光に反射しているからだと分かった。
そう。
昨夜の予報で言っていた3cm前後の積雪どころではなかった。
明らかに、10cm弱は積もっていた。
私は急いで着替えると、3階に向かった。
リサ「先生……?どうしたの……?」
エレベーターではなく、階段で下に下りようとする私を、いつの間にか背後にいたリサが声を掛けた。
リサも今起きたばかりなのか、寝惚けた声である。
振り向くと、暖房の全く入っていないクソ寒い廊下だというのに、リサは半袖の体操服にエンジ色のブルマという出で立ちでいた。
とはいえ、さすがに寒いのか、上に長袖のジャージを羽織ったが。
愛原「リサ……。今日は学校休みになるかもしれんぞ?」
リサ「ええっ!?」
愛原「外の様子は見たか?」
リサ「ううん……。それよりも、先生の叫び声が聞こえたから、それで起きた……」
愛原「俺自身は何ともない。とにかく、外を見てみろ!」
私は廊下の窓から、リサに外の様子を見させた。
リサ「すご……!」
さすがのリサも、外の雪景色には驚いたようだ。
愛原「予報の3倍くらいの量が降ったみたいだな。後で学校に確認するから、リサも着替えて下りて来いよ」
リサ「分かった……」
かつて学校に宿直制度があった時、宿直の教師が即座に校長先生や教頭先生に一報を入れ、休校か否かの判断を仰いだそうである。
今の東京中央学園に宿直制度は無く、外注の警備会社の警備員が泊まり込んで警備しているだけである。
かつての宿直室は、今は警備員の休憩室兼仮眠室に使われているのだそうだ。
とはいえ、それとは別に、こういう災害が予想される場合は、教職員がやってきて、休校か否かの判断を行うと聞いたことがある。
なので、早朝でも、休校か否かの連絡が来るはずなのだ。
私立の高校なので、通学時間の長い生徒も中にはいるからだ。
そこまでで無くても、うちのリサみたいな電車通学の生徒もいるから……。
愛原「おはよう」
高橋「あっ、先生。おはようございます」
3階に下りると、ダイニングでは高橋とパールが朝食の準備をしていた。
うちの家事をすることが、うちに住み込む寮費代わりとしている。
さすがにダイニングは、暖房が入って暖かい。
愛原「外の様子を見たか?」
高橋「ええ。予想外っスね。後で、雪掻きしないとですね」
愛原「! 雪掻きか!すっかり忘れてた!」
雪掻きの道具なんて買っていなかった。
今からスーパーとかに行って、買えるだろうか?
高橋「一応、車にスコップとか積んでありますけど、それ使えますかね?」
愛原「探索用のヤツか……。まあ、無いよりマシだな」
せめて、事務所の前の正面玄関と、その横のガレージの前くらいは除雪しておかないと。
三ツ目通りとか新大橋通りのような幹線道路なら、東京都が除雪してくれるだろうが、そこから一本入った区道なんかはなかなか除雪はされないだろう。
愛原「前はマンションにしろ事務所にしろ、完全に賃貸だったから、オーナーや管理会社任せだったもんな」
高橋「まあ、そうですね」
この物件も賃貸は賃貸なのだが、前の物件みたいに管理人が常駐しているわけではない。
だから、自分達でやるしかないのだ。
管理会社が出張って来るのは、消防設備点検やエレベーターの保守点検の時くらいか。
愛原「車の中に積まれているスコップというと……折り畳みのが2つか」
高橋「そうです。俺とパールでやりますよ。先生は事務所にいてください」
愛原「いいのか?」
リサ「わたしも手伝う!どうせ学校休みだろうし」
愛原「待て。まだ連絡は来ていない」
私は自分のスマホを確認した。
今のところ着信は……。
愛原「来た!」
東京中央学園から、一斉メールが来た。
それによると、公共交通機関の大きな乱れが発生していることから、今日は臨時休校にするとのことだ。
もっとも、明日はどうなるか分からない。
テレビのNHKを点けてみるが、今日の天気は『曇のち晴』とのこと。
午後からは日が差すということだ。
それで、どのくらい気温が上がるのかは分からない。
ただ、今日さえ凌げば、あとはまたしばらく晴天が続くだろうとのことだった。
愛原「やっぱり今日は休校だって」
リサ「そっかぁ……。でも、代わりにまた土曜日、登校だね」
愛原「3学期にもなったのに、まだ授業やるんだ」
リサ「まあ、色々とあって、臨時休校とかあったからね……」
愛原「あー……」
それなら、仕方が無いと思った。
愛原「とにかく、そうと決まったら、朝食にしよう」
パール「もうすぐできます。もう少しお待ちください」
愛原「分かった。……リサも着替えてきたら?」
リサ「食べたら着替える」
リサは学校に行く気だったのか、制服に着替えていた。
学校は休みになったし、雪掻きを手伝うのであれば、結局制服は着替えた方がいいだろう。
愛原「ん……」
私は枕元に置いたスマホのアラームで目が覚めた。
私はそんなに夢を見る体質ではないのだが、今回は何故かリサと鬼ごっこしている夢を見た。
逃げるリサを捕まえ、その角を掴まないと勝てないという謎のルール。
どこかで見たマンガやアニメの第1話にストーリーが似ているが、まあ、夢というのは訳が分からんものだ。
まだ早朝のせいか、外は暗い。
夏場ならもう明るい時間ではあるが、真冬の今、東京では6時半くらいにならないと明るくならないだろう。
私は欠伸をしながら起き上がり、カーテンを開けて外の様子を見た。
私の想定では、ちょっとだけ積もっているだろうくらいに思っていた。
愛原「おー……まるで、実家の風景だな……」
半分寝惚けていた私は、納得したかのように窓に背を向けようとした。
因みに、私の実家は仙台市。
東部の市街地に近い場所である。
仙台市も山間部は雪が多いが、平野部ではそんなに雪は積もらない。
せいぜい、5cm前後。
積もっても、10cm前後が良いところだろう。
私が子供の頃は、30cmくらい積もった記憶があるのだが、地球温暖化だな。
そう思ったのだが、ちょっと待て。
ここは仙台じゃない。
東京だ!
愛原「実家の風景!?」
私は慌ててもう1度窓の外を見た。
愛原「な、何だこりゃ!?」
雪は殆ど止んでいたが、まだ暗い空にはどんよりとした雲が立ち込めているように見える。
本来ならまだ暗い時間なのに、薄明るいのは、積もった雪が僅かな光に反射しているからだと分かった。
そう。
昨夜の予報で言っていた3cm前後の積雪どころではなかった。
明らかに、10cm弱は積もっていた。
私は急いで着替えると、3階に向かった。
リサ「先生……?どうしたの……?」
エレベーターではなく、階段で下に下りようとする私を、いつの間にか背後にいたリサが声を掛けた。
リサも今起きたばかりなのか、寝惚けた声である。
振り向くと、暖房の全く入っていないクソ寒い廊下だというのに、リサは半袖の体操服にエンジ色のブルマという出で立ちでいた。
とはいえ、さすがに寒いのか、上に長袖のジャージを羽織ったが。
愛原「リサ……。今日は学校休みになるかもしれんぞ?」
リサ「ええっ!?」
愛原「外の様子は見たか?」
リサ「ううん……。それよりも、先生の叫び声が聞こえたから、それで起きた……」
愛原「俺自身は何ともない。とにかく、外を見てみろ!」
私は廊下の窓から、リサに外の様子を見させた。
リサ「すご……!」
さすがのリサも、外の雪景色には驚いたようだ。
愛原「予報の3倍くらいの量が降ったみたいだな。後で学校に確認するから、リサも着替えて下りて来いよ」
リサ「分かった……」
かつて学校に宿直制度があった時、宿直の教師が即座に校長先生や教頭先生に一報を入れ、休校か否かの判断を仰いだそうである。
今の東京中央学園に宿直制度は無く、外注の警備会社の警備員が泊まり込んで警備しているだけである。
かつての宿直室は、今は警備員の休憩室兼仮眠室に使われているのだそうだ。
とはいえ、それとは別に、こういう災害が予想される場合は、教職員がやってきて、休校か否かの判断を行うと聞いたことがある。
なので、早朝でも、休校か否かの連絡が来るはずなのだ。
私立の高校なので、通学時間の長い生徒も中にはいるからだ。
そこまでで無くても、うちのリサみたいな電車通学の生徒もいるから……。
愛原「おはよう」
高橋「あっ、先生。おはようございます」
3階に下りると、ダイニングでは高橋とパールが朝食の準備をしていた。
うちの家事をすることが、うちに住み込む寮費代わりとしている。
さすがにダイニングは、暖房が入って暖かい。
愛原「外の様子を見たか?」
高橋「ええ。予想外っスね。後で、雪掻きしないとですね」
愛原「! 雪掻きか!すっかり忘れてた!」
雪掻きの道具なんて買っていなかった。
今からスーパーとかに行って、買えるだろうか?
高橋「一応、車にスコップとか積んでありますけど、それ使えますかね?」
愛原「探索用のヤツか……。まあ、無いよりマシだな」
せめて、事務所の前の正面玄関と、その横のガレージの前くらいは除雪しておかないと。
三ツ目通りとか新大橋通りのような幹線道路なら、東京都が除雪してくれるだろうが、そこから一本入った区道なんかはなかなか除雪はされないだろう。
愛原「前はマンションにしろ事務所にしろ、完全に賃貸だったから、オーナーや管理会社任せだったもんな」
高橋「まあ、そうですね」
この物件も賃貸は賃貸なのだが、前の物件みたいに管理人が常駐しているわけではない。
だから、自分達でやるしかないのだ。
管理会社が出張って来るのは、消防設備点検やエレベーターの保守点検の時くらいか。
愛原「車の中に積まれているスコップというと……折り畳みのが2つか」
高橋「そうです。俺とパールでやりますよ。先生は事務所にいてください」
愛原「いいのか?」
リサ「わたしも手伝う!どうせ学校休みだろうし」
愛原「待て。まだ連絡は来ていない」
私は自分のスマホを確認した。
今のところ着信は……。
愛原「来た!」
東京中央学園から、一斉メールが来た。
それによると、公共交通機関の大きな乱れが発生していることから、今日は臨時休校にするとのことだ。
もっとも、明日はどうなるか分からない。
テレビのNHKを点けてみるが、今日の天気は『曇のち晴』とのこと。
午後からは日が差すということだ。
それで、どのくらい気温が上がるのかは分からない。
ただ、今日さえ凌げば、あとはまたしばらく晴天が続くだろうとのことだった。
愛原「やっぱり今日は休校だって」
リサ「そっかぁ……。でも、代わりにまた土曜日、登校だね」
愛原「3学期にもなったのに、まだ授業やるんだ」
リサ「まあ、色々とあって、臨時休校とかあったからね……」
愛原「あー……」
それなら、仕方が無いと思った。
愛原「とにかく、そうと決まったら、朝食にしよう」
パール「もうすぐできます。もう少しお待ちください」
愛原「分かった。……リサも着替えてきたら?」
リサ「食べたら着替える」
リサは学校に行く気だったのか、制服に着替えていた。
学校は休みになったし、雪掻きを手伝うのであれば、結局制服は着替えた方がいいだろう。