報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」 5

2023-08-03 16:53:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月4日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家(新居)3階ダイニング]

 夕食の時間になり、私はダイニングのテーブルに座った。

 愛原「キミ達のおかげで、無事に引っ越しが終わりました。ありがとうございます。そういうわけで……乾杯!」
 高橋「お疲れっスー!」
 リサ「お疲れー!」
 パール「お疲れ様です」

 私達は缶ビールを開けて乾杯した。
 リサはウーロン茶であるが。

 パール「今夜はすき焼きです」
 愛原「おっ、いいな!肉が安かったのか?」
 パール「はい」
 愛原「そういうことなら頂こう。リサは生で食べないように」
 リサ「ギクッ!」
 高橋「明日から事務所、本格稼働っスか?」
 愛原「いや、事務所を移転したことを役所に届けなきゃ。警察署とか……」
 高橋「サツっスか……」
 愛原「オマエ、一緒に行くか?」
 高橋「い、いえ。サツはちょっと……」
 パール「マサは区役所に行けばいいんだよ」
 高橋「区役所?」
 パール「菊川1丁目から2丁目に引っ越したんだから、住民票も移さないと。ですよね?愛原先生」
 愛原「そうだな。リサの学校にも行って、リサが引っ越したことも学校に伝えないと……」
 リサ「もしかして、デイライトも?」
 愛原「いや、デイライトにはもう伝えてある。住所も連絡先も。あとは予定通り、引っ越しが完了したことだけ報告すればいい。この報告が大事なんだよ」
 リサ「LINEで?」
 愛原「書留&速達だよ。……いや、だったらレターパックの赤いヤツの方がいいか。お前みたいなBOWが拠点を移したというのは、大きいことなんだよ。報告が遅れたら、お前は『暴走して脱走した』ことになり、BSAAが出動する」
 高橋「そして蜂の巣っスか。こんな化け物、マズい蜂蜜しか取れないっスよ」
 リサ「

 バリバリバリバリバリ

 高橋「ぎゃあっ!」

 リサから電撃のお見舞いを食らう高橋だった。

 愛原「俺はとにかく、本所警察署に行ってくるから。高橋は墨田区役所に行ってくれ」
 高橋「分かりました。ついでに婚姻届を……」
 愛原「リサの学校には、その後行こう」
 リサ「わたしが案内するー」
 愛原「いや、いいよ」
 高橋「先生?スルーしないでくださーい!」

[同日21時00分 天候:晴 新・愛原家]

 リビングから高橋とパールの部屋には、直に行ける2枚の引き戸が存在する。
 しかし、そこは閉め切りにしておいた。
 不思議なことに、この扉にも鍵が付いている。
 不動産屋からもらった鍵がやたら多いのにびっくりしたが、屋内の扉という扉全てに鍵が付いているらしい。
 因みに1階のガラス戸は、鍵が2つ付いたオートロック式。
 但し、外側からは普通の鍵で開ける。
 それでドアを開け、閉めると鍵が自動で掛かるシステム。
 また、内側からは内鍵になっているが、これで開けてドアを開け、またドアを閉めるとロックされる仕組みとなっている。
 これは3階と4階の階段に通じるドアだが、こちらもオートロック式。
 つまり、家の中にいながら、フロア移動するには鍵が無いとダメという不思議な家である。
 これは外部の客が、2階から勝手に上に行かないようにする為の防犯対策だと思うが、それにしても煩わしい。
 まあ、エレベーターを使えばいいわけだが……。
 とにかく、閉め切ったドアの前にテレビを置いて、ソファに座りながらテレビを観る。
 尚、テレビの向きをダイニングの方に向ければ、ダイニング側からでもテレビを観れる。

 パール「愛原先生、お風呂が沸きましたー」
 愛原「ありがとう」
 高橋「お背中、お流し致します!」
 リサ「わたしもー」
 パール「それじゃ、私も」
 愛原「狭い狭い!」

 尚、バスルームそのものは前回のマンションよりは一回り大きく、バスタブも、低身長の私なら足が伸ばせるサイズであった。

[同日23時00分 天候:晴 新・愛原家]

 愛原「そろそろ寝るか……」

 私が風呂から上がって、リビングで寛いだ後、自分の部屋に行こうとした。
 こうなると、楽に行こうする場合はエレベーターとなる。

 高橋「うーん……」

 高橋は階段に出るドアについて、色々と調べていた。

 愛原「どうしたんだ?」
 高橋「いえ、さっき気づいたんスけどね。1階の入口のドア。あれ、防弾ガラスなんスよ」
 愛原「えっ、そうなの?」
 高橋「他にも調べてみたんスけど、この事務所と家の窓、全部防弾ガラスなんです」
 愛原「どういうこっちゃ?」
 高橋「まず、事務所が2階にあるのと、家が3階と4階にあって、エレベーター以外のフロア移動が難しくなっている理由を考えてみたら……」
 愛原「みたら?」
 高橋「もしかしてここ、ヤクザの事務所だったんじゃないスかね?」
 愛原「ええっ!?機械設備保守の会社だったって聞いたぞ!?ヤーさんのフロント企業に、そういうのあるかなぁ?」
 高橋「か、もしくは、その会社の前に入っていたのがヤーさん達とか」
 愛原「明日、警察署に行った時に調べてみるか……」

 もしかして、案外安く手に入った理由って……。

[1月5日02時05分 天候:晴 新・愛原家]

 愛原「……ん?」

 ここはどこだ?
 あー、そうだ。
 確か、新しい家に引っ越して来たんだっけ。
 築浅というわけではないが、安く事務所と住居を一体化する為の物件を探していたら、ここだったというわけだ。

 愛原「トイレ……」

 トイレに行きたくなり、私は部屋から出ようとした。

 愛原「……おっと」

 引き戸で、鍵も昔ながらのネジ式だったことを思い出す。
 これ、外側から鍵で閉めようとすると、コツがいるんだよなぁ……。
 まあ、私がいない時は別に閉める必要はない。

 愛原「あー……そうか」

 トイレは2階、3階、4階にある。
 図面を見た時、4階には無いのかと首を傾げたが、納戸の横にあった。
 これの構造もおかしい。
 2階や3階のトイレは、同じメーカーの同じ型式の便器なのだが、4階のトイレだけは節水タイプの便器で、メーカーも違う。
 どうやら、4階のトイレは後付けらしいのだ。
 元々は別の洋室か何かあった場所、恐らく間取りとしては私の部屋と同じく6畳ほどだった部屋を切り取り、トイレを新たに設置し、狭くなった部屋を納戸に転用したものだと思われる。
 さすがに4階にも居室が2つあるのに、トイレが無いのは不便だとされたのだろう。
 2階と3階のトイレはタンクに直接付いたレバーで水を流す仕組みだが、4階のトイレは壁の操作ボタンを押して水を流すタイプである。
 もちろん、ウォシュレット付き。

 愛原「もしもこの建物が、元は暴力団の組事務所だったのだとしたら、他にも何か痕跡があるかもしれない」

 さすがに死体までは無いだろうがな。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」 4

2023-08-03 11:20:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月4日13時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川1丁目 愛原学探偵事務所(旧事務所)]

 午後になり、今度は事務所の引っ越しを開始した。
 大きなキャビネットや事務机はそのまま置いて行くことにし、代わりに新事務所にある什器類を使わせて頂くことにする。
 その為、大きな荷物といったら、応接室のソファとかテーブルとか、給湯室のテーブルや椅子、冷蔵庫、パーテーションなどであった。

 愛原「掃除もしっかりしていかないと、だな。マンションの方もだったが……」

 やっぱり住居と事務所は、一緒の建物にして正解だなと思った。
 もっと事務所が大きくなるのなら、それでもいいのだが、今はさすがに持て余してしまっている。
 いざ引っ越しの時も、やはり大変だし。
 掃除はリサやパール、パールの友人達に任せることにし、荷物の運び出しは高橋や高橋の友人達にお願いしよう。

 高橋「先生!ちょっといいっスか?」
 愛原「何だ?」
 高橋「何だかんだ言って、トラックに積み込めるの、デカいヤツだけでいっぱいいっぱいらしいんス」
 愛原「そうなのか」

 事務机や什器は一切持って行かないのかというと、そうでもなく、新しくこちらで購入したものもあるから、それは持って行く。
 どうやら案外、こちらで購入した物が嵩張るようなのだ。

 高橋「小さい物については、俺達の車で運ぼうと思ってるんスけど、いいっスかね?」
 愛原「違法改造車で持って行くのは……」
 高橋「あ、いやいや、バネットの方っス」

 高橋は事務所で借りている商用バンのことを言った。
 ああ、あれか!
 あれも後ろに荷物は積み込めるからな。
 隠密行動用にわざと商用バンをリース契約していたが、こういう所で役に立つとは!

 愛原「そうだよな。あれも持って行くんだし、小物はあれに積んで行こう」
 高橋「了解っス!」

[同日14時00分 天候:晴 同区菊川2丁目 新事務所]

 新事務所に到着し、今度はエレベーターで2階に運ぶ。

 愛原「こっちです」

 私は机などのレイアウトを指示している。
 ただ、事務所自体は旧事務所よりやや使い勝手が悪いかもしれない。
 まず、独立した応接室が無い。
 その為、仮眠室代わりの部屋も無いので、ソファは逆にマンションで使っていたものに換える。

 元ヤンA「これはどこっスか?」
 愛原「それはトイレの隣に置いて」
 元ヤンA「うっス」
 元ヤンB「お買い得な新古商品のダブルベッドが……」
 愛原「いらんっちゅーに」

[同日15時00分 天候:晴 新事務所]

 愛原「よしっと。こんな所かな」

 あとは細々した微調整が必要だが、それは私達が自分でやることにする。
 取りあえず、バイト達はこれで帰すことにしよう。

 愛原「はいはい。それじゃ、今日はどうもありがとう。ご苦労さん」

 私はバイトの1人1人に、今日のバイト代を渡して行った。

 高橋「それじゃ、チーム会費、全額徴収~!」
 元ヤン一同「ええ~っ!?」
 愛原「くぉらっ!」
 トラック運転手「それでは請求書の方は、こちらの住所でよろしいですか?」
 愛原「あ、はい。ここでお願いします」
 運転手「ありがとうございます」

 高橋の知り合いのツテで紹介された運送会社であるが、トラック運転手は比較的普通の人。
 そして、解散後に……。

 愛原「気のせいかな?高橋の知り合いの一部が、パールの知り合いをお持ち帰りしていたような……?」
 高橋「まあ、ナンパまでは禁止してないっスから……」
 パール「ちょっと待って。あいつ、『男嫌いだから』とか言ってた癖に、ウソついてたから後でボコす」

 パールはスマホを取り出すと、どこかとLINEを始めた。

 愛原「女の方が怖いねぇ……」
 高橋「ですね……」
 リサ「先生、部屋の整理してくる」
 愛原「あー、そうだな。俺もWi-Fiの設定とかしてこよう。この家にも、Wi-Fiを導入しないと……」
 パール「先生。私は夕食の買い出しに行ってきます」
 愛原「ああ、分かった」
 高橋「こういう時、善場のねーちゃんが引っ越し祝いにいくらか包んでくれるとありがたいっスね?」
 愛原「アホ。変な所に期待するな。それに、善場主任は今頃、京都の山奥で調査中だよ。俺達が行ってもいいのに、よほど危険なのかな?」
 高橋「俺も京都の山奥は行ったことないっスねぇ……」

 家のWi-Fiの設定は高橋に任せ、事務所の方は私がやることにした。
 他にも電話線の開通とかやらないといけないし。
 案外、事務所の引っ越しも面倒なものだな。
 明日は役所の手続きにも行かないとだし。
 新事務所、本格始動は来週からだったりして。

[同日17時00分 天候:晴 新事務所]

 愛原「もう、外もすっかり暗くなったな」
 高橋「そうですね」
 愛原「そういえば、王子の事務所から菊川の事務所に移転した時、俺はいなかっただろ?あれはどういうことだったんだ?」
 高橋「俺も、よく分かんなくて……。何か、探偵協会とか、善場の姉ちゃん達があれよあれよと言う間に、移転しちゃったんです」

 探偵協会というと、斉藤元社長が上級幹部を務めていた組織だ。
 あとは、デイライトの肝煎りか。

 愛原「よしっと。電話は開通した。新しい電話番号、顧客の皆さんに教えないとな」
 高橋「俺がTwitterで拡散しておきますよ」
 愛原「そ、そうか」
 高橋「あとはLINEでも拡散しておきます」
 愛原「そ、そうか」

 高橋が管理している、当事務所のTwitterアカウントを見ると、『新事務所の移転作業、完了しました!お仕事の依頼、お待ちしております! TEL03‐○○○○‐×××× FAX03‐△△△△‐□□□□』みたいな感じ。

 愛原「まあ、いいか」
 高橋「それじゃ、俺も夕食の支度をしてきますんで」
 愛原「ああ、悪いね」

 今のところ、大口顧客はデイライトさんだけになってしまったからな。
 善場主任が帰京されないことには、恐らく仕事の依頼は来ないだろうから、それまでに本格始動できるようにしておかないと。
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