[1月9日12時31分 天候:曇 静岡県熱海市田原本町 JR熱海駅→東海道線1874E列車5号車内]
発車の時刻になり、ホームから発車メロディが聞こえて来る。
特に変わったメロディではなく、汎用のメロディである。
何なら、一部の車両では乗降促進用としてのメロディとして搭載されているほど。
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
合成音声のイントネーションのややおかしい自動放送で持って、乗客の乗車が終わる。
そして、JR東海のものとは明らかに違うドアチャイムと共にドアが閉まった。
ガチャンと景気良く閉まるのは、ドアロック機構が通勤用と比べて違うのだろうか。
その後で、列車がゆっくりと動き出す。
今は電車だが、ゆっくり動き出す所は、まるで機関車牽引の客車列車のようだ。
そして、スーッと加速する。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東海道線、上野東京ライン、高崎線直通、普通電車、高崎行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、湯河原です〕
愛原「さーて……車内販売のお姉ちゃんは、どんな人かなぁ……」
リサ「」
パチッ(リサ、愛原に静電気程度の弱い電撃を行う)
愛原「いでっ!?」
リサ「先生は、わたしだけ見ててね?」
リサ、ギラッと赤い瞳を光らせて言った。
愛原「……はい」
グリーンアテンダント「失礼します」
そこへ、グリーンアテンダントがやってきた。
最初は車内改札である。
かつては専務車掌が乗り込んでいたが、今は全てグリーンアテンダントに委託されている。
だが……。
リサ「すいません。車内販売は?」
グリーンアテンダント(♂)「後ほどお伺い致します。失礼します」
愛原「…………」( ゚д゚)
パール「あら、イケメンね」
高橋「おい!」
パール「冗談よ」
愛原「皆、次の列車に乗り換えるぞ」
高橋「ええーっ!?」
パール「それには反対します」
リサ「メイドさんに一票!」
まさかの全員命令拒否。
いいもんいいもん……。
グリーンアテンダント「お待たせ致しました。車内販売でございます。何になさいますか?」
リサ「ポッキーと、つぶつぶ白桃ください」
グリーンアテンダント「ありがとうございます」
リサ「先生はァ?何にするのぉ?」
愛原「……缶コーヒー微糖……グスン」
高橋「じゃあ、俺は無糖のコーヒー」
パール「コーラ」
愛原「支払いは私のICカードで……」
グリーンアテンダント「ありがとうございました」
リサ「♪~♪」(^^♪
リサは喜んで、ジュースのボトル缶とお菓子の箱を開けた。
リサ「冬休み最後の旅行、楽しかったよ。ありがとう、先生」
愛原「どう致しまして……」
パール「普通の電車の車内販売で、酒やらつまみやら売ってるって凄いね」
高橋「温泉旅行帰りのオヤジ達に売れそうだぜ」
愛原「そして平日は平日で、サラリーマン達に売れるそうだ」
高橋「やっぱり……」
新幹線では車内販売は売れずに廃止、しかし在来線普通列車のグリーン車では盛況と。
この違いは一体何なのだろうか?
[同日14時14分 天候:晴 東京都港区新橋 JR新橋駅→NPO法人デイライト東京事務所]
富士宮から半日掛かりで、ようやく目的地の新橋駅に到着した。
途中、海が見える区間では、リサがしばらくトッポを齧るのを忘れるほどに見入っていた。
どちらかというと山育ちのリサは、海を見ることが珍しいようである。
〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、東京に、停車します〕
私達は荷物を手に、電車から降りた。
グリーン車とはいえ、やや座席は硬めである。
それでも長距離利用を意識しているということもあり、普通車よりも腰を傷めずに済んだ。
改札口を出て、築地方面へと向かう。
その途中に、デイライトが入居しているビルがある。
善場「お疲れさまです。皆さん」
愛原「例の物、お持ちしました」
善場「ありがとうございます。それでは、報酬は後ほど振り込ませて頂きます」
私達は事務所内の応接会議室に通された。
高橋「先生、本当に大丈夫なんスか?いくら何でも、もう融けちゃってるんじゃ?」
愛原「アイスじゃないぞ。あれでいいんだ」
善場「ええ。中身は無事でしたので、良い仕事をしてくださいました。どうぞ、喫煙所で一服してきてください」
リサ「わたしもトイレ」
愛原「行ってこい行ってこい」
部屋には私と主任だけが残された。
愛原「たまには鈍行列車の旅も、いいものですな」
善場「愛原所長は、お気づきになりましたか」
愛原「まあ、この仕事も長くやらせて頂いておりますので。他の3人は気づいていない様子でしたけどね」
善場「それでも、どこかの誰かが引っ掛かって……こんなこと言っては不謹慎なのですが、愛原所長方を襲撃してくれれば、もっと成功でした」
愛原「あいにくと、そんなことは無かったですね」
善場「怪しい人物もですか?」
愛原「そうです。少なくとも、私の目線で見た限りでは、ですが」
善場「かしこまりました」
愛原「この件の真相、あの3人に話しても?」
善場「結構です。何でしたら、私からも説明させて頂きます」
愛原「分かりました」
しばらくして、3人が戻って来た。
リサ「またジュース買っちゃった。ここの自販機、安いから……」
善場「構いませんよ」
高橋「なあ、姉ちゃん。さすがに、ちょっと怪しいぜ。あんな大事なもの、各駅停車でゆっくり運ぶなんて有り得ねーよ」
善場「いい質問です。まずは、愛原所長から説明させて頂きます」
愛原「結論から言うと、俺達が運んだのは『偽物』だよ」
高橋「ニセモノぉ!?」
愛原「そうだ。本物はとっくのとうに、BSAAの手に入っているよ。それこそ、高橋の予想通り、ヘリで運んだってわけ」
高橋「ええっ!?」
愛原「民宿をタクシーで出た時、途中で黒塗りのハイエースとすれ違ったの、覚えてないか?」
高橋「いやぁ……」
パール「あー、確かにいましたね」
善場「あの車に、私が乗っていたのですよ」
高橋「はあ!?」
善場「あの車で、『本物』は回収しました。そして、それからヘリポートに運んで、BSAAのヘリに引き渡したというわけです。今頃、本物はBSAAの研究機関に渡っているはずです」
愛原「主任は主任で、その後で新幹線の駅まで行き、そこから新幹線で先に帰京したというわけですかね?」
善場「そんなところです。皆さんに在来線を利用して頂いたのは、私達と鉢合わせにならないようにする為と、なるべく『偽物』を長く運搬して頂いて、それを狙う組織を誘き寄せる為です。……まあ、そこまでは上手くいかなかったようですが」
愛原「高野君も強かですから、『さすがにそんなのに引っ掛かるわけないでしょう』なんて言いそうですね」
善場「まあ、“青いアンブレラ”はどうでもいいです。それより、もっと別のバイオテロ組織ですよ」
愛原「そんなのが未だにいるんですね」
さすがにそれがどういう組織なのかまでは、主任は教えてくれなかった。
愛原「あんな大事な物を、民間の探偵業者に運ばせるわけないじゃん。指示の内容自体がおかしかったんだから、私はそこで見抜きましたよ」
なので、恐らく高野君も見抜いていただろう。
だから、私達に全く接触してこなかったというわけだ。
高橋「ちぇーっ!」
愛原「まあ、そういうなよ。これも立派な仕事なんだから」
善場「そうですよ。ちゃんとした契約に基づくものです。任務が無事完了しましたので、後ほど報酬はお支払いさせて頂きます」
愛原「ほら」
高橋「へーへー」
リサ「わたしは冬休み、最後の旅行に行けて良かったかな」
善場「明日から学校、頑張ってくださいね」
リサ「はい」
というわけで、私達の任務は完了した。
発車の時刻になり、ホームから発車メロディが聞こえて来る。
特に変わったメロディではなく、汎用のメロディである。
何なら、一部の車両では乗降促進用としてのメロディとして搭載されているほど。
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕
合成音声のイントネーションのややおかしい自動放送で持って、乗客の乗車が終わる。
そして、JR東海のものとは明らかに違うドアチャイムと共にドアが閉まった。
ガチャンと景気良く閉まるのは、ドアロック機構が通勤用と比べて違うのだろうか。
その後で、列車がゆっくりと動き出す。
今は電車だが、ゆっくり動き出す所は、まるで機関車牽引の客車列車のようだ。
そして、スーッと加速する。
〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東海道線、上野東京ライン、高崎線直通、普通電車、高崎行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、湯河原です〕
愛原「さーて……車内販売のお姉ちゃんは、どんな人かなぁ……」
リサ「」
パチッ(リサ、愛原に静電気程度の弱い電撃を行う)
愛原「いでっ!?」
リサ「先生は、わたしだけ見ててね?」
リサ、ギラッと赤い瞳を光らせて言った。
愛原「……はい」
グリーンアテンダント「失礼します」
そこへ、グリーンアテンダントがやってきた。
最初は車内改札である。
かつては専務車掌が乗り込んでいたが、今は全てグリーンアテンダントに委託されている。
だが……。
リサ「すいません。車内販売は?」
グリーンアテンダント(♂)「後ほどお伺い致します。失礼します」
愛原「…………」( ゚д゚)
パール「あら、イケメンね」
高橋「おい!」
パール「冗談よ」
愛原「皆、次の列車に乗り換えるぞ」
高橋「ええーっ!?」
パール「それには反対します」
リサ「メイドさんに一票!」
まさかの全員命令拒否。
いいもんいいもん……。
グリーンアテンダント「お待たせ致しました。車内販売でございます。何になさいますか?」
リサ「ポッキーと、つぶつぶ白桃ください」
グリーンアテンダント「ありがとうございます」
リサ「先生はァ?何にするのぉ?」
愛原「……缶コーヒー微糖……グスン」
高橋「じゃあ、俺は無糖のコーヒー」
パール「コーラ」
愛原「支払いは私のICカードで……」
グリーンアテンダント「ありがとうございました」
リサ「♪~♪」(^^♪
リサは喜んで、ジュースのボトル缶とお菓子の箱を開けた。
リサ「冬休み最後の旅行、楽しかったよ。ありがとう、先生」
愛原「どう致しまして……」
パール「普通の電車の車内販売で、酒やらつまみやら売ってるって凄いね」
高橋「温泉旅行帰りのオヤジ達に売れそうだぜ」
愛原「そして平日は平日で、サラリーマン達に売れるそうだ」
高橋「やっぱり……」
新幹線では車内販売は売れずに廃止、しかし在来線普通列車のグリーン車では盛況と。
この違いは一体何なのだろうか?
[同日14時14分 天候:晴 東京都港区新橋 JR新橋駅→NPO法人デイライト東京事務所]
富士宮から半日掛かりで、ようやく目的地の新橋駅に到着した。
途中、海が見える区間では、リサがしばらくトッポを齧るのを忘れるほどに見入っていた。
どちらかというと山育ちのリサは、海を見ることが珍しいようである。
〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、東京に、停車します〕
私達は荷物を手に、電車から降りた。
グリーン車とはいえ、やや座席は硬めである。
それでも長距離利用を意識しているということもあり、普通車よりも腰を傷めずに済んだ。
改札口を出て、築地方面へと向かう。
その途中に、デイライトが入居しているビルがある。
善場「お疲れさまです。皆さん」
愛原「例の物、お持ちしました」
善場「ありがとうございます。それでは、報酬は後ほど振り込ませて頂きます」
私達は事務所内の応接会議室に通された。
高橋「先生、本当に大丈夫なんスか?いくら何でも、もう融けちゃってるんじゃ?」
愛原「アイスじゃないぞ。あれでいいんだ」
善場「ええ。中身は無事でしたので、良い仕事をしてくださいました。どうぞ、喫煙所で一服してきてください」
リサ「わたしもトイレ」
愛原「行ってこい行ってこい」
部屋には私と主任だけが残された。
愛原「たまには鈍行列車の旅も、いいものですな」
善場「愛原所長は、お気づきになりましたか」
愛原「まあ、この仕事も長くやらせて頂いておりますので。他の3人は気づいていない様子でしたけどね」
善場「それでも、どこかの誰かが引っ掛かって……こんなこと言っては不謹慎なのですが、愛原所長方を襲撃してくれれば、もっと成功でした」
愛原「あいにくと、そんなことは無かったですね」
善場「怪しい人物もですか?」
愛原「そうです。少なくとも、私の目線で見た限りでは、ですが」
善場「かしこまりました」
愛原「この件の真相、あの3人に話しても?」
善場「結構です。何でしたら、私からも説明させて頂きます」
愛原「分かりました」
しばらくして、3人が戻って来た。
リサ「またジュース買っちゃった。ここの自販機、安いから……」
善場「構いませんよ」
高橋「なあ、姉ちゃん。さすがに、ちょっと怪しいぜ。あんな大事なもの、各駅停車でゆっくり運ぶなんて有り得ねーよ」
善場「いい質問です。まずは、愛原所長から説明させて頂きます」
愛原「結論から言うと、俺達が運んだのは『偽物』だよ」
高橋「ニセモノぉ!?」
愛原「そうだ。本物はとっくのとうに、BSAAの手に入っているよ。それこそ、高橋の予想通り、ヘリで運んだってわけ」
高橋「ええっ!?」
愛原「民宿をタクシーで出た時、途中で黒塗りのハイエースとすれ違ったの、覚えてないか?」
高橋「いやぁ……」
パール「あー、確かにいましたね」
善場「あの車に、私が乗っていたのですよ」
高橋「はあ!?」
善場「あの車で、『本物』は回収しました。そして、それからヘリポートに運んで、BSAAのヘリに引き渡したというわけです。今頃、本物はBSAAの研究機関に渡っているはずです」
愛原「主任は主任で、その後で新幹線の駅まで行き、そこから新幹線で先に帰京したというわけですかね?」
善場「そんなところです。皆さんに在来線を利用して頂いたのは、私達と鉢合わせにならないようにする為と、なるべく『偽物』を長く運搬して頂いて、それを狙う組織を誘き寄せる為です。……まあ、そこまでは上手くいかなかったようですが」
愛原「高野君も強かですから、『さすがにそんなのに引っ掛かるわけないでしょう』なんて言いそうですね」
善場「まあ、“青いアンブレラ”はどうでもいいです。それより、もっと別のバイオテロ組織ですよ」
愛原「そんなのが未だにいるんですね」
さすがにそれがどういう組織なのかまでは、主任は教えてくれなかった。
愛原「あんな大事な物を、民間の探偵業者に運ばせるわけないじゃん。指示の内容自体がおかしかったんだから、私はそこで見抜きましたよ」
なので、恐らく高野君も見抜いていただろう。
だから、私達に全く接触してこなかったというわけだ。
高橋「ちぇーっ!」
愛原「まあ、そういうなよ。これも立派な仕事なんだから」
善場「そうですよ。ちゃんとした契約に基づくものです。任務が無事完了しましたので、後ほど報酬はお支払いさせて頂きます」
愛原「ほら」
高橋「へーへー」
リサ「わたしは冬休み、最後の旅行に行けて良かったかな」
善場「明日から学校、頑張ってくださいね」
リサ「はい」
というわけで、私達の任務は完了した。