報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「任務の後の一息」

2023-08-27 15:30:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月9日15時40分 天候:晴 東京都港区新橋 都営バス『新橋』停留所→業10系統車内]

 デイライトでの話が終わると、私達は事務所に戻ることにした。
 デイライトの事務所の近くのバス停から、菊川まで乗り換え無しで帰れるバスがあるので、それに乗って行くことにする。
 バスがやってくると、私達は前の乗客に続いて前扉から乗り込み、後ろの2人席に座った。
 私の隣には、リサが座った。
 さすがに断熱バッグは、それごと善場主任に渡しているので、帰りの荷物は自分達の私物だけである。
 1泊だけなので、リサ以外はそんなに大きな荷物ではない。
 リサのバッグも、膝の上に載せるだけで良かった。

 愛原「お前だけ荷物多いな?」
 リサ「一応、着替えとかね。見る?」

 リサはファスナーを開けて、使用済みの下着などを見せた。

 愛原「ここで出さない」

 私はたしなめた。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗客を乗せると、折り戸式の前扉を閉めて発車した。
 だいたい、席が埋まるほどの乗車率だった。
 もっとも、これから先、都心でも賑わう銀座などを通る為、この路線は概して利用客が多く、その為、本数も多い。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗常泉寺と本行寺へおいでの方は、終点とうきょうスカイツリー駅前でお降りになると便利です。次は、銀座西六丁目でございます〕

 このバスを終点付近まで乗ると、栗原家の道場まで行ける。
 鬼の男に全身火傷を負わされた蓮華は、意識を回復したが、卒業式はもちろん、大学の入学式の出席すら絶望的だと言われている。

 リサ「家に着いたら、洗濯できるかな?」
 愛原「自分で洗うのか?」
 リサ「先生のも洗ってあげようか?」
 愛原「で、どこに干すんだ?」
 リサ「わたしの部屋」
 愛原「……後でちゃんと返してくれよ?」
 リサ「うん!」
 高橋「先生。夕飯はどうしますか?」
 愛原「悪いけど、作ってもらえる?リサにはステーキでも焼いてやってさ」
 高橋「分かりました」
 リサ「……!」

 ガシッ!と無言で私に引っ付くリサ。
 どうやら、かなり嬉しいらしい。
 リサの場合、肉さえ大きければいいので、それこそ安い外国産の硬い肉でも大丈夫だ。

[同日16時31分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 都営バス『菊川駅前』停留所→愛原家]

〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営バス、築地駅、錦糸町駅、亀戸駅方面と都営地下鉄新宿線ご利用のお客様は、お乗り換えです。次は、菊川駅前でございます〕

 リサ「はい」

 リサ、降車ボタンを押す。

〔次、止まります。バスが停車してから、席をお立ちください〕
〔「菊川駅前です」〕

 引き戸式の中扉が開き、私達はここでバスを降りた。
 他にも、ここで降りる乗客は多い。

 高橋「先生。俺達はそこのマルエツで買い物してから帰りますので」
 愛原「分かった。じゃあ、俺達は先に帰るよ。お前達の荷物、持って行こうか?」
 リサ「大きいのだけ、持って行くよ」
 高橋「サーセン」
 パール「じゃあ、よろしくお願いします」

 私は高橋の荷物を預かり、リサはパールの荷物を預かった。
 高橋とパールはバス停前のスーパーに入り、私達は路地に入って事務所兼住宅に向かった。

 愛原「ガレージは開けなくていいな。どうせ今日は祝日で事務所は休みだ」

 というわけで、横の正面玄関であるガラス戸を開ける。
 高橋曰く、このガラス戸のガラスは防弾ガラスになっているらしい。
 ただの強化ガラスだと防犯性は低い為、それを上げるには更に防弾性を持たせる必要がある。
 そういうガラスなのだそうだ。
 単なる防犯目的でそのようにしたのであればいいのだが、他の窓ガラス全てがそうなっているということで、かつては暴力団の組事務所だったのではないかと言われている。
 何せ外から開けるのに、小さな鍵でボックスの蓋を開け、カードキーを当てた後で、正しい暗証番号を入れてようやく鍵が開くというシステムだ。
 停電時は、ドアに直接付いている鍵穴に大きなカギを差し込み、それで開けられるようになっている。
 さすがにリサのカードキーでは、開けられない。
 中に入って、すぐ目の前には上階に向かう階段がある。
 そして右側にはもう1つグレーに塗られた鍵付きの鉄扉があり、そこを開けるとガレージとエレベーターがある。
 エレベーターを起動させて乗り込み、3階のボタンの横にある鍵穴に鍵を差し込んで、3階のボタンが押せるように設定する。
 ついでに、4階もである。
 それでエレベーターが事務所のある2階だけでなく、居住区でもある3階や4階にも行けるようになる。

 愛原「洗濯機回すんだっけか?」
 リサ「うん。先生の服と下着も入れといてね。うへへへ……」
 愛原「おい、変なことしたら怒るぞ?」
 リサ「はーい……」

 そして、エレベーターが3階に到着した。

 愛原「寒いな。暖房を点けよう」

 私はエアコンの暖房を入れた。
 その後で、脱衣所にある洗濯機に行く。

 リサ「これは先生の下着~。下着はネットに入れて洗う~」
 愛原「男の下着なんて、普通に洗濯機にぶん投げて洗っていいんだよ」

 洗濯はリサに任せ、私は自分の荷物を置きに4階へ向かう。
 エレベーターで上がってもいいし、ビル側の階段で上がっても良い。
 明日からの平日も結構忙しいので、今から書類の準備をしておこうと思った。

[同日18時00分 天候:晴 愛原家3階]

 夕食の時間になり、私は4階から3階へと下りた。

 リサ「夜中までには乾くからね?」
 愛原「ああ。ありがとう」

 冬場の乾燥している今だからこそ、であろう。
 リサにとっては、乾いた洗濯物を届けに行くことで、私の部屋に行く口実のつもりなのだ。

 愛原「ステーキ、焼けましたよ。リサのはレアでいいんだったな?」
 リサ「えー、ブルーだよぉー?」
 愛原「それ、全然焼いてない肉だからダメだ」
 リサ「先生の肉、小さくない?」
 愛原「俺のはこれでいいんだよ」

 後でパッケージを見たら、リサのはやはりアメリカ産の牛肉で、大きさの割には安いものであったが、私のは国産のヒレ肉になっていた。
 硬めの肉であろうが、それでもリサはガツガツ食べていた。
コメント
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