報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」 3

2023-08-02 21:08:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月4日12時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家(新居)→珈琲館菊川店]

 お昼を回る頃になり、新居の方の引っ越しは大体終わろうとしていた。

 愛原「よーし。一旦、昼休憩にしよう。午後からは、事務所の引っ越しをするということで」
 高橋「ういっス!おう、オメーラ!昼飯にすっぞ!」

 私の部屋は4階の和室。
 旧居の洋室と比べれば、雰囲気がガラリと変わった。
 しかし、畳などは新しい物に交換されている。
 畳を傷めないよう、机や椅子の所にはカーペットを敷いてある。
 座卓と座椅子は新調した。
 ベッドはそのまま旧居からの物を持って来ており、こちらも畳を傷めないようにカーペットを敷いてある。
 広さは6畳間である。
 1人で使う部屋なのだから、これで十分である。
 同じ4階にあるリサの部屋は洋室で、こちらは7帖ほどある。

 愛原「昼食代は、1人1000円ずつでいいかな?」
 高橋「サーセン。なるべく、無駄遣いはさせないんで」
 愛原「別にいいよ」
 高橋「釣銭はチーム会費として全額徴収……」
 愛原「すなっ!」

 新居の引っ越しはこのくらいにしておいて、昼食を挟むことにした。
 午後は旧事務所に集合してもらって、今度は事務所の什器の運び出しと、その搬入である。
 といっても、実は什器の殆どは借り物なので、置いて行って良い。
 そして、新事務所には前のオーナーが置いていった什器や事務机があるので、これを使わせてもらえば良い。
 ぶっちゃけ、家の引っ越しよりも荷物は少ないかもしれない。
 何しろ、事前の見積もりで、トラックは2トン車1台で良いということが分かったくらいだ。
 まあ、私を入れてスタッフ3~4人程度の零細事務所だからな……。
 高橋やパールの知り合い達は、マックに行ったり、吉野家に行ったりとバラバラに昼食を食べに行く。
 私達は珈琲館に寄った。
 そこでは昼食でカレーとかを注文したのだが、パールはナポリタンを注文した。
 で、リサはカツカレー。

 リサ「キャビネットくらい、わたし1人で運ぶから、パワーを付ける為に」
 愛原「だからって、午前中みたいに食器棚を1人で運ぶ必要は無いんだぞ?」

 さすがにリサが1人でそんな重い家具を1人で運んだ時には、高橋の知り合い達もびっくりしていたが。

 リサ「さすがに張り過ぎた」
 高橋「で、先生。部屋には、リサ侵入防止の為の鍵を付けるんスか?」
 愛原「元が和室ということもあって、引き戸だからな。引き戸はさすがに密閉性が悪い」
 高橋「じゃ、普通のドアにリノベーションするんスか?」
 愛原「いや、引き戸の方が出入りは楽なんだよな。因みに……お前らも気づいたか?」
 高橋「えっ、何がっスか?」
 愛原「家のドア……。ドアというドアに、必ず鍵が付いている」

 引き戸であるにも関わらず、私がこれから使う部屋の扉にも鍵が付いていた。
 互い違いの2枚扉であるが、扉が交差する部分にネジ式の鍵が付いている。
 もっとも、リサのことだ。
 この程度の鍵では簡単にこじ開けてしまうだろう。
 そもそも、扉はもちろん、壁すらブチ破って来ると……ダメじゃん。

 リサ「ん?なに?」
 愛原「いや、あの扉だと、最低でも鉄扉にしないと、お前がブチ破って侵入してくるだろうなぁ……」
 リサ「鉄扉にしたって無駄だよ。むふー」

 リサは少し鼻息を荒くして答えた。

 リサ「それより、埼玉の『鬼の棲む家』みたいな仕掛けは無いの?」
 愛原「いや、図面を見る限り、そんな怪しい間取りは無かったよ」
 リサ「日光の民泊みたいなのは?」
 愛原「それも無いな。とにかく、普通の駐車場付き事務所兼住宅だよ。エレベーター付きの」

 尚、1階ガレージ奥のエレベーターの隣には物置部屋もある。
 物置部屋というか、倉庫だろう。
 いずれにせよ、物置に使えそうだ。
 埼玉の『鬼の棲む家』には物置部屋の天井が子供部屋の床と繋がっていたが、少なくとも今回の家は2階が事務所になっているので、そんな仕掛けは存在しない。
 因みに外からは必ず駐車場を通らないといけないのかというと、そんなことはない。
 本来の正面入口は駐車場の横にあり、そこから階段が上へと繋がっている。
 事務所の2階までならともかく、家の3階まで階段で上がるのは大変だからと、前のオーナーはエレベーターを設置したのだろう。
 ビルの正面入口に郵便受けと施錠できるガラス戸があるので、住居部分の玄関のドアには簡単な鍵しか無い。

 愛原「あー……まあ、不思議だなと思う部分はあるか」
 高橋「何スか?」
 愛原「階段だよ。3階と4階を結ぶ階段も、外側にあるだろう?」

 ビルの中にはあるから、本来の意味での外階段ではない。
 ただ、住居部分の中に階段があるわけではない。
 だから、3階と4階の行き来は一旦、住居部分の外に出る必要がある。
 それは屋上に出る場合も同じ。
 屋上には物干し台があるので、洗濯物はそこで干せるようになっているのだろう。
 ただ、エレベーターは4階までしか行かないので、屋上に行くには4階から階段で上がることになる。
 随分、面倒な構造ではあるが、多分何かが増設されるなどして、そういうことになったのだろう。
 あと、それとは別にベランダもある。
 ……ベランダが増設部分かもしれない。
 何しろ、そこでも物干し竿を掛けておくアームが付いているので。
 もしかしたら、前のオーナーも、いちいち洗濯物を干すのに、3階の脱衣所に設置した洗濯機から4階の上の屋上まで干しに行くのが面倒だと思ったのかもしれない。
 いずれにせよ、庭は無いから、庭の代わりになるかもしれない。

 高橋「それもそうっスねぇ……」
 愛原「もしかしたら不便な所もあるかもしれないが、住んで都にするしか無いよ」
 高橋「そうですね」

 尚、エレベーターを使えば、外階段に出ずに済むという解決策はある。

 リサ「わたしが、『鬼の棲む家』にすればいいのかな?」
 愛原「流血の惨はやめてくれな?」

 私はやんわり釘を刺しておいた。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原家の引っ越し」 2

2023-08-02 16:18:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月4日09時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家・新居]

 時間通りに引っ越し先の新居に行くと、既にトラックが待機していた。

 運転手「おはようございます」
 愛原「おはようございます。今日は宜しくお願いします」

 私はすぐに持っていた鍵で、電動シャッターのスイッチボックスを開けると、それでガレージのシャッターを開けた。
 元々は機械設備保守会社が入っていた建物ということもあり、ガレージの高さは3メートルほどある為、普通トラックくらいなら難無く入れる。
 ガレージは乗用車2台分止まれるスペースがあった。
 トラックには、そこに入ってもらう。
 それから私は、ガレージ奥にあるエレベーターの電源を入れた。
 住居兼事務所の建物は4階建てで、1階が駐車場、2階が事務所、3階と4階が住居といった感じになっていた。
 小型のエレベーターもあり、それは4人乗りという小さいもの。
 2~3人乗りのホームエレベーターよりは一回り大きく、しかし小さなマンションや雑居ビルにあるエレベーターよりも一回り小さい。
 恐らく前のオーナーは、ホームエレベーターを設置したかったのかもしれない。
 ところが、この建物が建てられた当時は、まだホームエレベーターが普及しておらず、やむ無く業務用かつ乗用のエレベーターで、最も小さなサイズを導入したのだろう。
 おかげで今は、引っ越しの荷物の搬入に使えるわけだが。
 運送会社の運転手達は、こういうことに慣れているのか、テキパキとエレベーターに養生シートを貼り付けた。

 高橋「おう、オメーラ!遅ぇぞ!」
 元ヤン「おはざーっス!」

 高橋やパールの知り合い達も、続々と集結し始めた。

 愛原「今日は新年早々、御協力ありがとう。バイト代は弾むから、家の引っ越しと事務所の引っ越しの手伝い、よろしく頼む」
 高橋「オメーラ!先生に恥かかすんじゃねーぞ!」
 元ヤン一同「ヨロシクー!!」
 運転手「そ、それで、私達は何をすれば……?」
 愛原「ああ。このバイトのコ達に、トラックから荷物を渡してくれればいいです」
 運転手「分かりました」
 愛原「まずは大きい物から運ぼう。冷蔵庫とか、ベッドとか……」
 高橋「うっス!」

 エレベーターはあるとはいえ、4人乗りの小型タイプだ。
 あまり大きい物は、逆に積めない。
 冷蔵庫は乗せられるが、ベッドは1度解体、机も事務机以外の物は解体しないと乗せられなかった。
 それらは上で組み立てる必要がある。
 こういう時、高橋やパールが仲間を呼んで人海戦術をやってくれるのは助かった。

 パール「本当に、私も住んで宜しいのでしょうか?」
 愛原「うちで高野君の代わりに事務員やってくれるんだろ?寮として提供してやるよ」
 パール「ありがとうございます」

 正直、事務所を空にして、新しい仕事の依頼を受けられないというのは痛かったからな。
 パールならメイドとして働いていたこともあるし、斉藤家では電話の取次ぎなんかもやっていた。
 メイドだから掃除もできると、正に女版高橋といった感じである。
 高橋もそうだが、根はハイスペックなのに、家庭環境の悪さでこうもグレてしまうのは何だか複雑だ。
 高野君も何気にそうだが、パールも戦闘力は高い。

 愛原「事務所で留守番してくれる人が欲しかったんでね。キミなら高野君の代わりをやれるだろうし、戦闘力もある。ただ、不審者がよほどのことで無い限り、殺人は無しな?」
 パール「先生の御命令は絶対がこの事務所の掟でしたね。かしこまりました」
 愛原「あ、ああ。まあ、よろしく頼む」
 元ヤンA「マサのセンセー!マサとパールの『愛の巣』はどこっスか?」
 愛原「え?なに?どういうことだ?」
 元ヤンB「うちで経営するリサイクルショップから、マサとパールへの引っ越し祝いっス!売れ残りの品で申し訳ないんスけど、ダブルベッドをタダでプレゼントです!」
 高橋「テメ、コラ!なにシレッと在庫処理してんだよ、あぁっ!?……先生、どこに運べばよろしいでしょうか?」
 愛原「結局受け取るんかーい!……一応、お前達の部屋は3階を考えている」

 3階は玄関があり、最初にすぐトイレがある。
 その隣にキッチンとダイニング。
 それとリビング。
 リビングの隣に洋室の8畳間があり、そこを高橋とパールの部屋に充てようと考えている。
 尚、3階には他にも風呂がある。
 リビングには前の事務所で使っていたカウチソファを転用しよう。
 これなら、誰かが泊まりに来ても、そこで寝れる。

 高橋「おう!3階だとよ!」
 元ヤンB「了解っス!」
 愛原「でも、エレベーターは使用中……あれ?」
 高橋「ひゃっは!あいつ、階段で行きましたよ!」
 元ヤンA「リサイクルショップでも、客先に商品配達しに行く時、アパートやマンションの階段を上るらしいんで」
 愛原「若いっていいねぇ。それじゃ、高橋とパールは3階の部屋に行って、ベッド組み立てて来なよ」
 高橋「分かりました!」

 高橋とパールも、階段を駆け上って行った。

 リサ「あの2人、内縁の夫婦でしょ?そのうち、子供できちゃうかもよ?」
 愛原「もしそうだったら、デキ婚ってことで、また引っ越しだな」
 リサ「ええっ?」
 愛原「いや、あいつらがだよ?あくまでもここは、『独身寮』として提供しているだけだから」
 リサ「ああ……。お兄ちゃん達が出て行ったら、わたし達2人っきりになれるね?」
 愛原「あ、ああ……。そうだな……」
 リサ「大丈夫!御飯なら、お兄ちゃん達から作り方教わってるから任せて!」
 愛原「それは頼もしい……」

 もう少し大きな家を買って、『家族寮』にしても良かったかなと今更考えた私だった。

 リサ「ねぇ、リサイクルショップ屋さん!」
 元ヤンB「何スか?」
 リサ「ダブルベッド、まだ無いの?」
 元ヤンB「ダブルベッドっスか?」
 愛原「どこに設置するんだ、どこに!?」
 リサ「わたしか先生の部屋。で、わたしが先生と一緒に寝るー」
 愛原「アホか!」
 元ヤンB「そういうことでしたら、ヤリ部屋仕様のベッドが、お買い得っスよ?」
 愛原「いらんっちゅーに!てか、ヤリ部屋仕様って何だよ?!」

 ラブホにあったベッドということだろうか?
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