[11月6日07時00分 天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原家]
枕元に置いたスマホのアラームが鳴って、私はそれに手を伸ばした。
そして、アラームを止めて起き上がる。
カーテン越しに朝日が差し込んで来るので、今日も天気が良いようだ。
1階に下りて洗面所に向かうと、リサが先に顔を洗っていた。
リサ「あ、先生、おはよう。1人で寝る夜は寂しくなかった?」
リサは嫌味を込めて言ってきた。
昨夜、私と一緒の部屋で寝たがるリサを何とか宥めて諦めさせたのだが、それでまだブー垂れているようだ。
愛原学「元々俺の1人部屋なんだから、当たり前だよ」
リサ「子供部屋おじさん」
学「いや、実家暮らししてるんじゃないんだから、それは当てはまんないだろ。高橋はどうした?」
リサ「まだ寝てる」
学「そうなのか。まあ、朝食は母さんが作ってくれるし、今日くらいゆっくり寝させてあげよう」
リサ「うん、分かった」
異変は30分後に気づいた。
私達が顔を洗い、ダイニングに移動しても、高橋は起きてこなかった。
学「何だ、寝坊か。リサ、起こしてやってくれ」
リサ「分かった!」
リサがタタタッと奥の客間に向かう。
因みに客間は二間続きになっており、間を襖で仕切れるようになっている。
なので、高橋とリサはそれぞれ別々の和室で寝たわけである。
母親「もう少し寝させてあげたら?」
学「いやいや、9時には門伝さんの所に行かないといけないんだから、そろそろ起きないと」
高橋も私の助手である以上、一緒に動いてもらわないと。
そう思っていた時だった。
リサ「先生」
リサが目を丸くした状態で戻って来た。
学「何だ?起きないのか?」
リサ「お兄ちゃんの体温って、普段何度あったっけ?」
学「はあ?平熱は36度5分ってところだろう?」
リサ「あれって、36度5分あるのかな?わたしはもっと高いけど」
学「オマエはBOWだからな。それは往々にして体温が高い。それがどうした?」
リサ「お兄ちゃんの体、結構熱いんだけど……」
学「なにぃーっ!?何故それを早く言わんのだ!?」
私は急いで客間に向かった。
学「高橋、オマエ、大丈夫なのか!?」
高橋「せ……先生……。俺……ウィルスに感染したみたいです……。ゾンビ化する前に……どうか、先生の手で……俺に楽に……」
学「体は痒いか?」
高橋「いいえ」
学「食欲は一杯あるか?」
高橋「全然……ありません」
学「ただのコロナだ」
高橋「せ、先生……?!」
こちとらゾンビウィルスだの遺伝子変形ウィルスだのを相手にしているので、今更コロナなど怖くないわい!
母親「取りあえず、これで熱測って……」
高橋「さ、サーセン……」
母親が体温計を持ってくる。
母親「まあ!38度3分」
リサ「わたしの平熱」
学「オマエじゃない!明らかに発熱しているが、言うてそこまでの高熱というわけでもないな」
母親「取りあえず、市販の薬を……」
高橋「さ、サーセン……」
学「いや、いいんだ。それより、病院どうしよう?今日は日曜日だし……」
父親「それなら、舟丁に急患センターがある。ワシがそこに連れて行ってあげよう」
学「父さん、助かる!……コロナじゃなければいいが……」
高橋「ご迷惑をお掛けします……」
学「まあ、しょうがない」
リサ「わたしのウィルス、わけてあげようか?コロナもエボラもイチコロだよ?」
学「その代わり、人間を辞めることになるので却下します」
リサ「えーっ!」
取りあえず高橋のことは父親に任せることにした。
学「取りあえずこれ、高橋のマイナンバーカード」
父親「うむ。彼のことは、ワシ達に任せなさい」
[同日09時00分 天候:晴 同区保春院前丁 門伝家]
借りた卒アルを手に、母親の後輩である門伝女史の家に向かった。
うちの実家から徒歩圏内にある。
門伝涼子「あらぁ?先輩の息子さん?……と……」
リサ「先生のお嫁さ……フガッ!」
愛原学「姪っ子の者です」
私はリサの口を塞いで誤魔化した。
愛原「卒業アルバムを返納しに伺いました」
門伝「そうなの。わざわざありがとう」
愛原「それでですね、門伝先生の同級生であったと思われる斉藤玲子さんについてお聞きしたいのですが……」
門伝「先輩にも話したけど、ロクに口も聞いてないのよ。何か、家庭が複雑なコだって聞いたことはあるんだけどね。あんまり学校にも来てなかったし、あれこれ言えるほどじゃなかったのよ」
愛原「そうなんですか。どなたか、この人をよく知っている人とかいませんかね?」
門伝「まあ、当時の先生達なら知ってたかもね」
愛原「門伝先生の先生ですか」
門伝「ええ。担任の先生とかね」
愛原「その先生とお会いすることはできますか?」
門伝「そうねぇ……。御健在だと、もう御年80歳くらいになるかしら」
ということは、担任教師だった頃は30歳くらいか。
門伝「先輩の息子さん、東京で探偵をやってるって聞いたけど、本当だったのね?」
愛原「えっ、ええ、まあ、あまり売れないんですけど……」
リサ「超一流の名探偵です!」
愛原「お、おい!」
門伝「ちょっと聞いてみますね。ちょっと待っててください」
愛原「す、すいません!」
1度中へ通された。
応接間のような部屋で待つこと10分。
門伝「お待たせしました。連絡が着きました」
愛原「おお、ありがとうございます!それで、結果の方は……?」
門伝「それが……先生の話を聞いて、私も思い出したんですよ」
愛原「何を思い出されましたか?」
門伝「斉藤玲子さんの仙台の家は、火事で焼け落ちてるんです」
愛原「ええっ!?」
門伝「確か3年生の、夏休みに入る直前ですよ。それで夏休みの間、まずは平泉の親戚の家に滞在することになったそうです。福島の実家には戻れませんし……」
愛原「そうだったのですか……。火事の原因は何だったのでしょう?」
門伝「不審火ということでしたね」
愛原「不審火……」
原因不明だが、放火の疑いありということか……。
門伝「もし何でしたら、もっと詳しい話を教えるって、先生が仰ってました」
愛原「本当ですか!?でしたら、今すぐにでもお伺いしたいです!」
門伝「分かりました。こちらが、私の当時の担任の先生……。小松先生と仰います。今は愛子に家を買って、悠々自適の生活をされてますよ」
愛原「それは羨ましいですね」
私は小松先生の住所と連絡先が書かれたメモを受け取った。
愛原「色々とありがとうございました」
私とリサは、門伝先生の家をあとにした。
愛子は『あいこ』ではなく、『あやし』と読む。
青葉区にあって、JR仙山線でアクセス可能だ。
私達は仙台駅に行く為、最寄りのバス停に向かった。
枕元に置いたスマホのアラームが鳴って、私はそれに手を伸ばした。
そして、アラームを止めて起き上がる。
カーテン越しに朝日が差し込んで来るので、今日も天気が良いようだ。
1階に下りて洗面所に向かうと、リサが先に顔を洗っていた。
リサ「あ、先生、おはよう。1人で寝る夜は寂しくなかった?」
リサは嫌味を込めて言ってきた。
昨夜、私と一緒の部屋で寝たがるリサを何とか宥めて諦めさせたのだが、それでまだブー垂れているようだ。
愛原学「元々俺の1人部屋なんだから、当たり前だよ」
リサ「子供部屋おじさん」
学「いや、実家暮らししてるんじゃないんだから、それは当てはまんないだろ。高橋はどうした?」
リサ「まだ寝てる」
学「そうなのか。まあ、朝食は母さんが作ってくれるし、今日くらいゆっくり寝させてあげよう」
リサ「うん、分かった」
異変は30分後に気づいた。
私達が顔を洗い、ダイニングに移動しても、高橋は起きてこなかった。
学「何だ、寝坊か。リサ、起こしてやってくれ」
リサ「分かった!」
リサがタタタッと奥の客間に向かう。
因みに客間は二間続きになっており、間を襖で仕切れるようになっている。
なので、高橋とリサはそれぞれ別々の和室で寝たわけである。
母親「もう少し寝させてあげたら?」
学「いやいや、9時には門伝さんの所に行かないといけないんだから、そろそろ起きないと」
高橋も私の助手である以上、一緒に動いてもらわないと。
そう思っていた時だった。
リサ「先生」
リサが目を丸くした状態で戻って来た。
学「何だ?起きないのか?」
リサ「お兄ちゃんの体温って、普段何度あったっけ?」
学「はあ?平熱は36度5分ってところだろう?」
リサ「あれって、36度5分あるのかな?わたしはもっと高いけど」
学「オマエはBOWだからな。それは往々にして体温が高い。それがどうした?」
リサ「お兄ちゃんの体、結構熱いんだけど……」
学「なにぃーっ!?何故それを早く言わんのだ!?」
私は急いで客間に向かった。
学「高橋、オマエ、大丈夫なのか!?」
高橋「せ……先生……。俺……ウィルスに感染したみたいです……。ゾンビ化する前に……どうか、先生の手で……俺に楽に……」
学「体は痒いか?」
高橋「いいえ」
学「食欲は一杯あるか?」
高橋「全然……ありません」
学「ただのコロナだ」
高橋「せ、先生……?!」
こちとらゾンビウィルスだの遺伝子変形ウィルスだのを相手にしているので、今更コロナなど怖くないわい!
母親「取りあえず、これで熱測って……」
高橋「さ、サーセン……」
母親が体温計を持ってくる。
母親「まあ!38度3分」
リサ「わたしの平熱」
学「オマエじゃない!明らかに発熱しているが、言うてそこまでの高熱というわけでもないな」
母親「取りあえず、市販の薬を……」
高橋「さ、サーセン……」
学「いや、いいんだ。それより、病院どうしよう?今日は日曜日だし……」
父親「それなら、舟丁に急患センターがある。ワシがそこに連れて行ってあげよう」
学「父さん、助かる!……コロナじゃなければいいが……」
高橋「ご迷惑をお掛けします……」
学「まあ、しょうがない」
リサ「わたしのウィルス、わけてあげようか?コロナもエボラもイチコロだよ?」
学「その代わり、人間を辞めることになるので却下します」
リサ「えーっ!」
取りあえず高橋のことは父親に任せることにした。
学「取りあえずこれ、高橋のマイナンバーカード」
父親「うむ。彼のことは、ワシ達に任せなさい」
[同日09時00分 天候:晴 同区保春院前丁 門伝家]
借りた卒アルを手に、母親の後輩である門伝女史の家に向かった。
うちの実家から徒歩圏内にある。
門伝涼子「あらぁ?先輩の息子さん?……と……」
リサ「先生のお嫁さ……フガッ!」
愛原学「姪っ子の者です」
私はリサの口を塞いで誤魔化した。
愛原「卒業アルバムを返納しに伺いました」
門伝「そうなの。わざわざありがとう」
愛原「それでですね、門伝先生の同級生であったと思われる斉藤玲子さんについてお聞きしたいのですが……」
門伝「先輩にも話したけど、ロクに口も聞いてないのよ。何か、家庭が複雑なコだって聞いたことはあるんだけどね。あんまり学校にも来てなかったし、あれこれ言えるほどじゃなかったのよ」
愛原「そうなんですか。どなたか、この人をよく知っている人とかいませんかね?」
門伝「まあ、当時の先生達なら知ってたかもね」
愛原「門伝先生の先生ですか」
門伝「ええ。担任の先生とかね」
愛原「その先生とお会いすることはできますか?」
門伝「そうねぇ……。御健在だと、もう御年80歳くらいになるかしら」
ということは、担任教師だった頃は30歳くらいか。
門伝「先輩の息子さん、東京で探偵をやってるって聞いたけど、本当だったのね?」
愛原「えっ、ええ、まあ、あまり売れないんですけど……」
リサ「超一流の名探偵です!」
愛原「お、おい!」
門伝「ちょっと聞いてみますね。ちょっと待っててください」
愛原「す、すいません!」
1度中へ通された。
応接間のような部屋で待つこと10分。
門伝「お待たせしました。連絡が着きました」
愛原「おお、ありがとうございます!それで、結果の方は……?」
門伝「それが……先生の話を聞いて、私も思い出したんですよ」
愛原「何を思い出されましたか?」
門伝「斉藤玲子さんの仙台の家は、火事で焼け落ちてるんです」
愛原「ええっ!?」
門伝「確か3年生の、夏休みに入る直前ですよ。それで夏休みの間、まずは平泉の親戚の家に滞在することになったそうです。福島の実家には戻れませんし……」
愛原「そうだったのですか……。火事の原因は何だったのでしょう?」
門伝「不審火ということでしたね」
愛原「不審火……」
原因不明だが、放火の疑いありということか……。
門伝「もし何でしたら、もっと詳しい話を教えるって、先生が仰ってました」
愛原「本当ですか!?でしたら、今すぐにでもお伺いしたいです!」
門伝「分かりました。こちらが、私の当時の担任の先生……。小松先生と仰います。今は愛子に家を買って、悠々自適の生活をされてますよ」
愛原「それは羨ましいですね」
私は小松先生の住所と連絡先が書かれたメモを受け取った。
愛原「色々とありがとうございました」
私とリサは、門伝先生の家をあとにした。
愛子は『あいこ』ではなく、『あやし』と読む。
青葉区にあって、JR仙山線でアクセス可能だ。
私達は仙台駅に行く為、最寄りのバス停に向かった。
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