報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「南原清士の個展」

2023-01-29 21:37:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日10時30分 天候:晴 東京都中央区銀座2丁目 南原清士個展会場]

 チーン!と、古めかしいエレベーターがフロア到着のチンベルを鳴らす。
 ドアが開くと、すぐ目の前が個展会場の入口である。

 受付係「いらっしゃいませ」

 入口には受付係の女性が座っていた。
 女性……というより、リサ達と大して歳の変わらない少女に見える。

 リサ「!」

 リサはその受付係を凝視した。

 受付係「な、何ですか?」
 リサ「似てる……!あの絵のコに……!」
 愛原「そういえばそうだな……」

 展示されている絵を見ると、物の怪の類に襲われている少女の1人に似てるような気がする。

 受付係「ああ……。父は作品の人物のモデルに、私達を使っているもので……」

 受付係の少女は、やっとリサの行動の意図が分かったようだ。

 愛原「父?画家の南原……先生は、御結婚されているのか」
 受付係「はい。……あ、こちらにお名前と連絡先を書いてください」
 愛原「おっ、そうだった」

 私が記帳している間にも、連れてきた2人の少女は興味津々に南原氏の作品を鑑賞した。
 リサはBOWとしての視点、桜谷さんは美術部員としての視点で鑑賞しているようだ。

 愛原「今、私『達』って言ったね?ご兄弟がいらっしゃるの?」
 受付係「はい。妹がいます」

 すると受付係は、リュウグウノツカイの化け物を釣り上げる少女達の作品を指さした。
 セーラー服姿の少女達。
 うち、1人は釣り上げる際に勢い余って尻餅を付いてしまい、スカートがまくれて、中の白いショーツが丸見えになってしまっている。

 受付係「この、釣り竿を持っている方が私で、隣にいるのが妹です」
 愛原「うーむ……。違いがよく分からん」

 これも芸術なのだろうか。

 受付係「あ、私達は双子なもので……。絵では見分けが付かないのも、無理はありません」
 愛原「あ、そうなんだ。揃ってセーラー服を着てらっしゃるけど、中学生?」
 受付係「いえ、高校1年生です。セーラー服は、父の趣味です。学校はブレザーです」

 何だ、そうなのか。
 聞くと東京中央学園ではなく、別の高校だという。
 無論、聖クラリス女子学院でもない。
 南原氏はまだそんなに売れてはおらず、画家だけでは生活できない為、都内のデザイン専門学校にて講師の仕事をしながら、作品を描いているのだという。

 愛原「あのコ達はね、東京中央学園のコ達なんだ」
 受付係「! そうなんですか!」
 愛原「お父さんがそこのOBだろう?お父さんの話を学校で聞いて、是非他の作品も観てみたいってことになってね。それで、こちらにお邪魔した次第さ」
 受付係「父はちょっと今、席を外してまして……」
 愛原「そうなのか」

 まあ、そのうち戻ってくるだろう。
 個展というからには、作品の販売もされている。

 愛原「何だか西村寿行の小説に、挿絵を付けたらこんな感じ?というのもあるなぁ……」

 幸い、超絶エロシーンの絵ではないので、そこまで教育に悪いというわけではないか。
 というか、それ以前に……。

 愛原「中には化け物にセクハラ攻撃されてる作品があるけど、あれもモデルになったの?」

 さすがにその質問は恥ずかしかったようで、長女は俯いた。

 受付係「ポ、ポーズだけは取りましたけど……。あとは父の妄想で……」

 妄想で文章を書く雲羽百三と、妄想で絵画を描く南原氏と、どう違うのかが一瞬気になった。

 愛原「そうなのか」

 値段を見ると、どれも諭吉先生を必要とする額だ。
 まあ、完成度は高いので、妥当な額と言える。
 あまり高い物でなければ、リサの誕プレに買ってあげてもいいかな……。
 それにしても、作品の内容は、何もセーラー服の少女達が化け物にセクハラ攻撃を受けている物だけではない。
 多くは人物画ではあるが、エロ要素の全く無い物もあった。
 例えば、『山仕事をする男』というタイトルの作品がある。
 これはどこかの山奥にて、スコップを持ち、正面を向いて仁王立ちになっている男の姿を描いたものだ。
 しかしこの男、何故かサングラスを掛けており、白いスーツに黒いワイシャツ、そして白いネクタイを着けているのだ。
 ただ、それだけの絵である。
 しかし、何だろう?
 『山奥に死体を埋めに来たヤクザの幹部』に見えてしまうのは、気のせいだろうか?
 それとは場所が対照的な物がある。
 今度は、『港湾労働者』というタイトルの作品だ。
 何故か深夜の埠頭で、ドラム缶の前に立つ、先ほどの男がいるのだ。
 そして、その後ろでは影絵になっているが、2人の人物がコンクリートを捏ねているのが分かった。
 確かに、『港湾で何かの労働をしている者たち』ではあるだろう。
 しかし、何だろう?
 『ドラム缶の中には死体が入っていて、これからコンクリートを詰め、それから海に投げ込む計画のヤクザたち』に見えてしまうのは気のせいだろうか?
 申し訳ないが、こんな絵が本当に売れるのかサッパリ分からない。
 本職のヤクザさん達に売るつもりか?

 愛原「リサ、何か良さそうな作品あったか?」
 リサ「うん……あった」
 愛原「本当か!?どれだ!?」
 リサ「これ……」

 リサが指さした作品は、明らかに私でも分かるものだった。

 愛原「“トイレの花子さん”か!?」
 リサ「うん、そう」

 それは『仮面の少女』というタイトルが付けられた作品だった。
 南原氏の娘達が基本的に夏服のセーラー服を着せられているのに対し、こちらの少女は冬服のセーラー服を着ている。
 しかも校章が明らかに、東京中央学園であった。
 木造の建物のどこかに力無く正座しており、こちらを左向きに振り返っている。
 そして、右手には仮面を持っているというもの。
 裸足だが、顔は物悲し気な雰囲気が滲んでいる。

 リサ「これはきっと……“花子さん”が自殺する前の絵だよ」
 愛原「そ、そうなのか」

 本名は斉藤早苗。
 おかっぱ頭であることと、タヌキ顔であるところはリサに似ている。

 愛原「これが欲しいのか?誕プレとしてなら、買ってやるぞ」
 リサ「ありがとう。第一候補として、これをエントリーしておくね」
 愛原「そうか。……ああ、ちょっとキミ。ちょっとこれ、『カートに入れる』にしてくれないかい?」
 受付係「は?」
 リサ「先生、通販じゃないんだから」
 愛原「おおっと!うちのリサが、この作品に関心を示しているので、キープしておきたいんだってさ」
 受付係「ありがとうございます!」
 愛原「南原先生は、まだお戻りにならないの?ちょっと話があるんだけど……」
 受付係「そろそろ、戻ってくると思います。もし良かったら、応接室でお待ちになりますか?妹が戻って来たので、お茶を出せますよ」
 愛原「ああ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて……」

 私は応接室で待たせてもらうことにした。
 で、リサは最終的に『仮面の少女』を所望したのであった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「リサの誕生日」

2023-01-29 15:38:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月1日09時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 リサ「いよいよ今日、17歳になります」
 愛原「うん、おめでとう」

 リサは朝食のトーストに齧り付きながら言った。

 高橋「見た目は13~14歳くらいだけどなw」
 リサ「お兄ちゃん!」
 愛原「だが、それがいい」
 高橋「先生!?」
 リサ「先生はロリババァが好きなんだもんね。わたしがGウィルスを保有している間は、ずっとそれが叶うんだもんね。変態w」
 高橋「おい!先生に何てこと言うんだ!」
 愛原「いや、ハハハ……。まあ、半分くらい当たってるから」

 リサには直接言ってないが、恐らく今の技術を持ってしても、体内のGウィルスを完全に消すことは不可能だろう。
 アメリカのシェリー・バーキン氏や、日本の善場主任みたいに、『体が化け物に変化しない程度に弱体化させることで、ほぼ人間同然とする』のが現実的ではないかと思う。
 アンチエイジングの効果が高過ぎるという副作用はあるが。

 リサ「それより今日は、連れて行って欲しい所がある」
 愛原「分かってるよ。ちょうど、高橋も友達と出かけるっつーから、ついでに乗せてもらうよ」
 高橋「サーセン。昔の、新潟時代の仲間が『東名を爆走したい』っつーもんで……」
 愛原「週末の東名なんて、渋滞当たり前で爆走できる余裕は無いと思うがな……」
 高橋「東名を走るというステータスが欲しいんだと思います」
 愛原「まあ、分かったよ。楽しんでこいよ」
 高橋「あざーっス!」
 愛原「但し、くれぐれも警察の御厄介になることの無いようにな?」
 高橋「わ、分かってます!」

 それから1時間ほどして、リサは学校の制服に着替えた。

 愛原「どうして制服なんだ?」
 リサ「画家の南原さんの話次第では、わたしも学校に行くから」
 愛原「そうなのか。じゃあ、俺もネクタイくらい着けるかな」
 高橋「先生!そろそろ、仲間が迎えに来ます!準備はいいっスか!?」
 愛原「ああ、頼むよ」

 案の定というか、新潟ナンバーの走り屋仕様の車が現れた。
 かつて新潟に行った時に世話になったメンバーとは、また別のメンバーだという。
 さすがに新潟の時、全員が集まったわけではないということで。

 愛原「俺達が新潟に行った時、走り回ってた人達?」
 高橋「はい。あん時は、遠征で山形まで行ってたそうです」
 佐藤「佐藤ッス!マサさんの先生、今日はよろしくオナシャス!」

 新潟に行った時にも佐藤という人物がいたが、その佐藤とはまた別人。
 新潟は佐藤という苗字が多い(のに乗じて、在日朝鮮人が通名で『佐藤』を使い、紛れ込んでいるので注意が必要である)。
 愛原「いや、途中の銀座まで乗せてくれればいいんだよ」
 高橋「どうぞ。先生は後ろに乗ってください」
 愛原「ありがとう。チェイサーのツアラーVに乗るの、久しぶりだな」
 高橋「でしょう?」
 佐藤「たぬき顔の中学生は、マサさんの女っスか?」
 リサ「た、たぬき顔……!」
 愛原「いや、誉め言葉だからね、リサ!?」

 あー、確かに。
 リサの場合、どちらかというと、キツネ顔ではなく、タヌキ顔だ。

 リサ「中学生じゃなーい!!」
 佐藤「えっ、違う!?」
 愛原「こう見えて、女子高生なの」
 高橋「紛らわしい見た目してるからだぜ。気にするこたぁ無ェよ」
 佐藤「は、はい」

 私達はリアシートに乗った。
 他にも仲間の車、ホンダのアコードの改造車とか、ランエボなんかもいたりする。
 私達が乗るので、佐藤の車に乗っていた別の仲間は、ランエボの方に乗って行った。

 愛原「道分かる?」
 佐藤「カーナビ付いてますんで。住所オナシャス」

 カーナビ搭載の走り屋……w
 いや、別にいいんだけど、何かイメージ的にミスマッチというか……。
 私は東銀座駅を入力した。

 高橋「東銀座駅でいいんスか?」
 愛原「いいんだ。そこで、桜谷さんと待ち合わせしてるし、そこから個展は歩いて行ける距離だ」
 高橋「分かりました。それじゃ、出発します。おい」
 佐藤「へい!」

 佐藤はマニュアルシートのギアを入れると、改造したマフラーを吹かしながら車を発進させた。
 後ろから、仲間の車も付いてくる。
 共同危険行為系のように、『竹槍』『出っ歯』が付いているわけではないが、それでもアホみたいにデカいウィングが付いていたり、車高をローダウンしていたりする。
 そして、ギアチェンジの際に、ボヒュウッという音がするのも特徴であった。

[同日10時15分 天候:晴 東京都中央区銀座4丁目 東銀座駅前→同区銀座2丁目 南原清士個展会場]

 車はカーナビと高橋の補助もあってか、迷うことなく、東銀座駅の前に着くことができた。

 愛原「ありがとう!」
 高橋「いえ。お役に立てて、何よりです」
 愛原「じゃあ、気を付けて行けな」
 高橋「はい。あざーっス!」

 高橋達はこの後、首都高に乗って東名高速を目指すという。
 恐らく、この近くにある銀座料金所から都心環状線に入るものと思われる。
 都心環状線と言えばルーレット族が有名だが、ちょっとそれを体験して、それから……といったところだろうか。

 愛原「あまり無理な走りはしないように」

 私はそう念を押して、車を降りた。
 一旦、地下鉄の駅に入るのは、そこで待ち合わせをしている桜谷さんと合流する為である。
 因みに彼女もまた、学校の制服を着ていた。
 彼女の場合、学校に行くのが目的ではなく、『プロの画家さんに会うので、キチンとした恰好で来た』とのことである。

 愛原「個展は銀座2丁目だそうだ」

 私達は一方通行の路地を進んだ。
 スポーツ新聞や競馬新聞を持ったオッサンをよく見かけるのは、この近くに中央競馬のウィンズがあるからだろう。

 愛原「ここだな」
 リサ「フツーのビル……」
 桜谷「緊張してきました……」

 個展の会場は古めかしい雑居ビルの中にあった。
 薄暗いエントランスから中に入り、ビルの外観同様、古めかしいエレベーターに乗り込んで、会場となっているフロアを目指した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする