報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「卯酉東海道……もとい、子午東北」

2023-01-14 20:20:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月23日7時13分 天候:曇 栃木県宇都宮市川向町 JR宇都宮駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、宇都宮です。日光線、烏山線はお乗り換えです。お降りの際は、お忘れ物の無いよう、お支度ください。宇都宮の次は、那須塩原に止まります〕
〔「まもなく宇都宮、宇都宮に到着致します。お出口は、左側です。宇都宮では、後から参ります“はやぶさ”“こまち”1号の通過待ちを致します。5分ほど停車致します。発車まで、しばらくお待ちください。宇都宮からの、お乗り換えをご案内です。宇都宮線下り……」〕

 列車はダイヤ通りに走行している。
 各駅停車の宿命で、速達列車の通過待ちが発生する。
 東海道新幹線と違って本数が少ないせいか、ほぼ各駅で通過待ちが行われるわけではない。
 列車は下り副線の線路に入り、そこのホームに停車した。
 通過線の本線はホームが無い。
 典型的な新幹線の途中駅の構造である。
 日蓮正宗信徒にあっては、馴染みのある新富士駅と同じ構造と言えばピンと来るだろう。

 愛原「5分停車か……」

 私は時計を見た。

 愛原「ちょっと、食後のコーヒー買ってくるわ」

 私は席を立った。

 高橋「それなら、俺が買って来ますよ。先生は待っててください」
 愛原「そうか?」
 高橋「何にしますか?」
 愛原「ブラック無糖以外なら、何でもいいや。ジョージアのエメマンとか、サントリーのボスとかな」
 高橋「了解っス」

 高橋は席を立って、ホームに降りた。

〔「この列車は7時18分発、“やまびこ”201号、仙台行きです。終点、仙台まで各駅に止まります。グリーン車は9号車、自由席は1号車から6号車です。本日、指定席は7号車、8号車、10号車となっております。……」〕

 尚、リサは朝早かった為か、座席にもたれてウトウトしている。
 しかし、ゴウッと通過列車が風圧でこちらの列車を揺らして行くと……。

 リサ「おっ!」

 それで目が覚めたようだ。

 リサ「あれ……?ここ、どこ……?」
 愛原「まだ、宇都宮だよ。通過列車待ちで止まっているところだ」
 リサ「ふーん……。お兄ちゃんは?」
 愛原「飲み物買いに行ってもらっていたんだが……」
 リサ「あっ、ずるーい。わたしも買いに行く」
 愛原「7時18分の発車だからな、急げよ」
 リサ「分かった」

 リサもまたホームに降りて行った。

 高橋「お待たせしました、先生。プレミアムボスです」
 愛原「ありがとう」
 高橋「リサのヤツ、何しに行ったんですか?」
 愛原「あいつもジュース買うんだとよ。オマエ、ちょっと一緒に付いて行ってやれ」
 高橋「分かりました」

 その後、リサはオレンジジュースを手に、車内に戻ってきた。

〔「お待たせ致しました。7時18分発、“やまびこ”201号、仙台行き、まもなく発車致します」〕

 高橋「先生、次に長く停車する駅はどこですか?」
 愛原「福島駅でまた5分、その次の白石蔵王駅で4分停車するらしい。ただ、どっちも通過列車は無いんだよなぁ……」

 私は首を傾げた。
 もっとも、臨時の“はやぶさ”などが仕立て上げられた時の為なのだろう。
 コロナ禍のせいで、東北新幹線のダイヤもスカスカになってしまった。
 何せ、東北新幹線内においては、付属編成扱いの山形新幹線や秋田新幹線が単独編成で運転されるダイヤが発生しているのだから。

 高橋「俺的にはタバコ吸えるダイヤなので、助かります」
 愛原「あー、オマエはそうだろうな」

 全駅というわけでないが、たまにホームにも喫煙所がある駅というのは、もしかして……。

[同日08時44分 天候:雨 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅]

 宮城県に入る頃、窓に水滴が付き始めた。
 どうやら、予報通りに雨が降ってきたらしい。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙石東北ライン、仙山線、常磐線、仙台空港アクセス線、仙台市地下鉄南北線と仙台市地下鉄東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 愛原「だいぶ降ってる?」
 リサ「降ってるみたい……だね」
 愛原「まあ、しょうがないか」

 別に台風が来ているというわけではなく、普通の雨である。
 秋雨と言った方が良いか。

〔「11番線到着、お出口は右側です。仙台からのお乗り換えをご案内致します。東北新幹線下り……」〕

 愛原「まあ、降りる準備するか」
 高橋「はい」

 列車はATCによる自動ブレーキで、速度を落として行く。
 ポイントを通過して下り副線ホームに入ると、もう屋根があるので、雨に当たることはない。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点仙台、終点仙台です。新幹線、仙台より先へお越しのお客様は、向かいの12番線ホームにお進みください。……」〕

 私達は列車を降りた。

 高橋「先生、ここからは?」
 愛原「レンタカーを借りるさ。高橋、運転頼むな?」
 高橋「お任せください」

 駅レンタカーを予約している。
 予算の関係で、あまり大きな車は予約できなかったが、この荷物を載せるには十分である。

 愛原「ここでは、キップ2枚重ねてな」
 リサ「りょ」

 在来線に乗り換えることは無い為、そのままもう改札外に出ることになる。

 愛原「ヴィッツとかフィットとかになるけど、別にいいよな?」
 高橋「まあ、大丈夫っスよ。この前は、先生の実家の車、ノートで行ったんスから」
 愛原「それもそうだな」

 あの時は真夏だったが、今は少し涼しいくらいである。
 前回は半袖でもクソ暑いといった感じだったが、今は半袖でちょうど良いくらいの。
 雨が降っているので、尚更涼しく感じるのかもしれない。
 仙台駅の駅レンタカーは、やや分かりにくい所にあるという口コミではあるが、私達は迷わずに行けた。

 リサ「ちょっと、トイレ行って来る」
 愛原「あいよ」

 手続きしている間、リサはトイレに向かった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「久しぶりの長距離の仕事」

2023-01-14 16:10:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月23日05時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川]

 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らす。
 私は手を伸ばして、すぐにそれを止めた。
 そして、起き上がってベッドから這い出た。
 まだ、外は薄暗い。
 今日は秋分の日ということもあり、昼の時間も真夏の時と比べて短くなった感がある。
 それにも増して薄暗いのは、今日は空が曇っているからだ。
 東京では一時雨、仙台では雨だそうだ。
 私は部屋から出ると、洗面所に向かった。

 高橋「あ、先生。お帰りなさい」
 愛原「よお」

 高橋が先に起きていた。

 愛原「あとはリサだけか」
 高橋「リサなら、シャワー浴びてますよ」
 愛原「なに?そうなのか」
 高橋「どうせまた昨夜、オナりまくったんでしょ」
 愛原「それで済むなら、まだ平和的だ」
 高橋「先生の名前連呼しやがって、うるせーの何の!」
 愛原「ハハハ……。オマエの部屋は、リサの隣だったな」

 BOWの肉食性は底知れぬものだが、それと連動するかのように、性欲もとても強い。
 特に日本版リサ・トレヴァーは人肉食を好んでいたからか、性癖もかなり歪んだものだった。

 愛原「それで、タクシーは?」
 高橋「はい。アプリで呼んどきました。5時半くらいに来ます」
 愛原「ご苦労さん」

 しばらくして浴室から出てきたリサは私服に着替えたが、白いTシャツに黒いスカートという恰好だった。

 愛原「いいのか?その恰好で」
 リサ「うん、大丈夫。ちゃんと下にブルマ穿いてる」

 

 リサはスカートを捲って見せた。

 愛原「ああ、そう」

 まあ、リサもバカではないから、他に着替えくらいは用意しているだろう。

 リサ「朝食は?」
 愛原「駅弁でも見繕って」
 リサ「わかったー!」

[同日06:00.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅八重洲中央口→東京駅構内(JR東日本)]

 予約したタクシーに乗った私達は、それで東京駅に乗り付けた。

 高橋「領収証オナシャス」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 アプリだと領収書もそこに記録されるが、高橋は一応、紙の領収書も発行してもらった。
 それを受け取って、タクシーを降りる。
 ハッチを開けてもらって、そこから荷物も降ろした。
 中身は色々入っているが、まあ私のショットガンなんかも入っていたりする。
 もちろん、許可は取ってあるので念の為。
 それから、東京駅構内に入る。
 2回目の3連休初日ということもあり、通勤客の姿は殆ど無く、代わりに団体客の姿が多く見られた。

 愛原「キップは1人ずつ持とう」
 高橋「あざっす!俺、先生の隣で!」
 リサ「わたしも先生の隣で!」
 愛原「はいはい」

 必然的に、私が3人席の中央席になるのである。

 愛原「駅弁、買って行くぞ」
 リサ「おー!」

 新幹線ホームにも駅弁屋はあるが、在来線コンコース内の方が品揃えが多い。
 やはりというべきか、リサは肉系を所望した。

 リサ「牛肉弁当!」
 愛原「分かったよ。高橋は?」
 高橋「先生と同じので!」
 愛原「つったって、俺が買うのは幕の内弁当だぞ?」
 高橋「それでオナシャス!」
 愛原「分かったよ」

 駅弁を購入し、今度は新幹線改札口へ向かう。

 愛原「えーと……23番線か」

 私は発車標で、ホームを確認した。

 高橋「ん?各駅停車ですか?」
 愛原「3人席まるっと空いてる列車、それしか無かったんだよ」
 高橋「そうでしたか」

 エスカレーターでホームに上がる。

 愛原「タバコ吸いたかったら、ダッシュで行ってきて」
 高橋「あ、はい。それじゃ、行ってきまっス」

 23番線に上がると、既に10両編成の列車が停車していた。
 JR東日本の新幹線では最古参のE2系である。
 リサの条件では事前申請無しで乗れる車両が先頭車か最後尾であるが、1号車は自由席。
 指定席で10号車が普通車になっているのはE2系しか無い為、それを選んでいたらこの列車になったわけだ。
 東海道新幹線で言えば“こだま”で名古屋に向かうようなものだが、それでも高速バスよりは速いし、飛行機よりも安い。

〔23番線に停車中の列車は、6時20分発、“やまびこ”201号、仙台行きです。この列車は、各駅に止まります。グリーン車は、9号車。自由席は、1号車から、6号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 本来は7号車も自由席だが、団体客の予約があると、指定席に変更することがある。
 今回が正にそうなのだろう。
 もう既に乗り込んでいるのか、はたまた上野駅とか大宮駅とかの途中駅から乗ってくるのか不明だが、ホームにそれらしい団体客はいなかった。
 私達は先に列車に乗り込んだ。

 リサ「先生、隣は修学旅行みたいだよ」

 23番線の隣のホームは、新幹線ホームの14番線である。
 リサが指さすと、そこには東海道新幹線のN700系が停車していて、行先表示が『修学旅行』になっていた。
 恐らく、臨時列車の使われていないダイヤを使って運行されるのだろう。

 愛原「リサも来年だったな?」
 リサ「うん。わたし達は5月」

 修学旅行が行われる時期は、学校によってバラバラだ。
 特に、私立となるともっとバラつきがある。
 しかし、5月はまだ一般的な方だろう。
 リサはパスポートが取れないので、海外組には参加できず、国内組に参加するしかないのだが。

 愛原「そうか」

 荷物は荷棚に乗せ、リサは窓側、私は中央席に座る。

 リサ「お腹空いた。早く食べよう」
 愛原「ゆっくり食えよ」

 私はホームの自販機で買った冷たいお茶を開けると、まずはそれを飲んでから、弁当に箸を付けた。

[同日06:20.天候:曇 JR東北新幹線201B列車10号車内]

 発車の時間ギリギリになって、高橋が戻ってくる。
 ホームからは、発車ベルの音が聞こえてきた。
 東海道新幹線では発車メロディだが、JR東日本側ではベルである。

〔23番線から、“やまびこ”201号、仙台行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕

 東海道新幹線ほど放送がやかましくないのは、それよりも編成が短く、また、却ってホームドアも無いからだろうか。
 それでも甲高い客扱い終了合図のブザーは、聞こえてきた。
 ドアが閉まると、客室内にインバータの音色が流れて来て、時刻表通りに発車した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする