報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「台風の週末」 

2023-01-05 16:23:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月17日21:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 外は雨風が強くなってきた。

 愛原「これでまだ強風圏内なんだ。明日の暴風圏内では、とても外に出られそうにないな」
 リサ「明日は引きこもりデーか……」
 愛原「まあ、そういうことだな。19日は……台風一過で、まだ風が強いかもしれない」
 リサ「この前みたいに?」
 愛原「そう」

 バスルームから、湯沸かし完了のメロディが聞こえてきた。

〔お風呂が、沸きました〕

 高橋「先生、お風呂どうぞ」
 愛原「おっ、すまんな。じゃあ、先に入らせてもらうよ」
 リサ「わたしも入るー」
 高橋「それじゃ俺もー」
 愛原「狭い狭い!うちは1人用だ」

 全く、油断も隙も無い。
 私は着替えとタオルを持って、バスルームに入った。
 バスルームに入っていると、換気扇の向こうから、強い風の音が聞こえてくる。
 今回の台風も、風台風なのかもしれない。
 大浴場では背中流しをしてくる高橋も、家ではしてこない。
 いや、してこようとはするのだが、私の方で断っている。
 風呂は1人で、ゆっくり入りたいものだ。

 愛原「おーい、上がったぞー」

 私の入浴時間は20分以上30分未満。

 高橋「うっス!次は俺の番!先生の残り湯、ガッツリ堪能させて頂きゃす!」
 愛原「気持ち悪いこと言うなよ……」
 リサ「ぶー……」

 リサはダイニングのテーブルに肘をついて、不貞腐れていた。
 テーブルの上にはトランプが散らばっている。
 どうやら、私の次にどちらが入るか、トランプ勝負で決めたようだ。
 カードの並べ方からして、どうやらポーカーをやったようだ。

 リサ「お兄ちゃん、やたらとツイてたけど、きっとイカサマをしたに違いない。わたしをバカにして!」
 愛原「『かゆうま日記』の出だしじゃないんだから……」

 私は苦笑いして、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

 愛原「それよりリサ、来週は生徒会長の“お別れ会”だろ?ちゃんと出るんだぞ?」
 リサ「うーん……分かった」

 栗原さんからの話で、リサは嫌がっていたらしいが、もしも欠席しようものなら、却って怪しまれる。
 リサにとっては計画の邪魔者なのかもしれないが、もう亡くなっているのだから、それ以上憎む必要は無いはずだ。

 愛原「リサはよくやった。あとは強制することは無いからな?」
 リサ「えー……でも、まだ3分の1程度だよ?もっと割合多くしなきゃ」
 愛原「ほぼ全ての学校でブルマが廃止になっている中、3分の1復活させたんだ。大したものだと思うよ」

 もっとも、人1人が死んでいる為、犠牲は大きかった。

 リサ「購買で短パンと一緒に売られるようになるまでは、頑張らないと」
 愛原「無理はするなよ」
 リサ「私の絵が完成したら、あれもPRになる」
 愛原「そうだな」

 高橋が入浴する時間は15分と短い。
 これもまた、少年院や少年刑務所時代の名残だという。
 最後にリサ。
 リサは上を脱ぎながら、バスルームに向かった。
 体操服の下に着ている、黒いスポプラが露わになった。

 高橋「先生、リサはクロでしたか?」

 リサがバスルームに入るのを確認してから、高橋が聞いてきた。

 愛原「限りなくクロに近いグレーだよ。リサのヤツ、ちゃんと証拠を消してる」
 高橋「さすがっスねぇ。学校の防犯カメラもっスか?」
 愛原「だろうな。もしも映っているようなら、警察辺りがリサを調べに来てるよ」
 高橋「なるほど……」
 愛原「BOWの中では1番の知能犯だよ。闇雲に襲ってくるようなタイプじゃない」
 高橋「ダメージを与え続けていれば、段々とクールじゃなくなるタイプっスね。チートアイテムがあればいいんですが」
 愛原「レールガンとか、対戦車砲とかかな?それでも行けるかね?」
 高橋「そんなのでも行けるかどうか分からない辺りが怖いっス」
 愛原「まあな」

[同日23:30.天候:雨 同マンション]

 愛原「どーれ。そろそろ寝るか……」

 風呂はリサが1番遅い。
 恐らくの話だが、風呂の中でオナニーをしているのかもしれない。

 高橋「先生、明日は事務所開けるんスか?」
 愛原「明日の方が厳しいだろう?多分、無理だな」
 高橋:「ですよね」
 愛原「まあ、書類を捌くだけなら、家でもできるから」
 高橋「俺も手伝います」
 愛原「悪いね。まあ、とにかく今夜はもう寝るとしよう」
 高橋「リサ。消灯時間だぞ」
 リサ「んー」

 リサはソファに寝転がりながら、ビーフジャーキーを齧り、スマホゲームをしていた。
 体操服とブルマを着ているが、ブルマは紺色のものだった。
 完全に部屋着と夜着代わりである。
 リサに言わせると、今度は水色や臙脂色のブルマも購入したいという。
 『パツパツのヤツ買うから、先生、ちゃんと見てね』とのこと。

 高橋「それじゃ先生、おやすみなさい」
 リサ「おやすみなさい」
 愛原「おやすみー」

 私は自分の部屋に入ると、鍵を3つ閉めた。
 これはリサ侵入防止用である。
 もっとも、リサが本気になればドアを破壊することは可能だし、クローゼットの壁を破壊して侵入してくることも可能だ。

 愛原「それにしても、凄い風だ……」

 前回同様、停電になるとは思えないが、まだまだ残暑が続いているだけに、停電でエアコンが使えなくなるのは勘弁してほしい。
 私はそう思いながら、ベッドに入った。

[9月18日09:00.天候:雨 同マンション]

 今日は久しぶりの休みだ。
 今日はゆっくりしよう……。
 そう思っていたのだが、同居の2人はそう思わなかったようだ。
 私の部屋のドアの3つの鍵。
 1つは最初から付いている、普通の鍵。
 もう1つはカードキータイプで、最後の1つは暗証番号タイプ。
 一応、高橋に管理を依頼しているのだが、リサのヤツ、何故だか暗証番号はすぐに見つけてしまう。
 鍵についても、寄生虫と触手をキーピック代わりに使うので、開けてしまうことがある。
 実質的に、カードキータイプがベストというわけだ。
 こればかりは、リサが持っている日本アンブレラのゴールドカードキーでも開けられない。

 高橋「おはようございます!先生が快適な休日を過ごせるよう、お掃除に入りたいと思います!」
 愛原「えー……そりゃ、助かるけど……うわなにをするやめr」

 私はリサの触手に絡め捕られ、部屋から引っ張り出されてしまった。

 リサ「先生、おはよう!」
 愛原「おはようじゃないよ。もう少し、ゆっくり寝てようと思ったのに……」
 リサ「先生、忘れたの?『どんなに休みの日でも、9時には起きろ』って言ったじゃん」
 愛原「あー……そうだっけ?……そうだったかも」

 どうやら、頭を打って忘れてしまっていたようだ。

 愛原「分かった分かった。起きるよ」

 私は欠伸をしながら、洗面所に向かった。

 愛原「台風は?」
 リサ「現在進行形で上陸なう」
 愛原「あー、そうだな」

 窓の外は薄暗く、風は窓をガタガタ揺らし、時折、バケツの水をぶっ掛けでもしたかのように、大粒の雨が窓に当たる。
 テレビを点けると、台風中継をやっていた。

 愛原「うん。こりゃ、事務所開けられるわけないや」
 リサ「そうだね」
 愛原「リサは体操服のままか?」
 リサ「そう!」
 愛原「そりゃ楽だ」

 家で緑色のブルマを穿くことが少なくなったのは、一応、それが学校指定の物として復活したからだろう。
コメント
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